動物キャラバトルロワイアル4っぽふさふさ
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2010/04/18(日) 11:01:27:x//Ny0Cx
- 動物なキャラでバトロワを
しようっていうスレだにゃ。
キャットファイト?いいえ漢の闘いです!(メスもいるよ)
予約をされる場合の期限は5日。延長は2日まで。
まとめwiki
ttp://www6.atwiki.jp/animalrowa/pages/1.html
したらば
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/11497/ - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/18(日) 11:03:35:x//Ny0Cx
- 3/5【ぼのぼの】○ぼのぼの/●アライグマ/○クズリの父/●ヒグマの大将/○アライグマの父
2/4【ポケットモンスター】○ピカチュウ/○ニャース/●ミュウツー/●グレッグル
1/3【忍ペンまん丸】○まん丸/● タヌ太郎 /●ツネ次郎
2/3【魔法少女リリカルなのはシリーズ】○ザフィーラ/○ユーノ/● アルフ
1/2【ジョジョの奇妙な冒険】○イギー/●ペット・ショップ
2/2【ケロロ軍曹】○ケロロ軍曹/○ギロロ伍長
0/2【銀牙―流れ星銀―】●銀/●赤カブト
1/2【HUNTER×HUNTER】●メレオロン/○イカルゴ
1/2【ハーメルンのバイオリン弾き】○オカリナ/●オーボウ
2/2【聖剣伝説Legend of Mana】○ラルク/○シエラ
1/1【ダイの大冒険】○クロコダイン
0/1【グラップラー刃牙】●夜叉猿
1/1【ワンピース】○トニートニー・チョッパー
0/1【金色のガッシュ】●ウマゴン
1/1【真・女神転生】○パスカル
1/1【真・女神転生if】○ケットシー
1/1【DQ5】○キラーパンサー
1/1【狼と香辛料】○ホロ
1/1【東方Project】○因幡てゐ
0/1【スーパーマリオシリーズ】●ヨッシー
0/1【クレヨンしんちゃん】●シロ
0/1【ペルソナ3】●コロマル
1/1【大神】○アマテラス
0/1【機動武闘伝Gガンダム】●風雲再起
1/1【十二国記】○楽俊
0/1【もののけ姫】●モロ
1/1【うたわれるもの】○ムックル
1/1【サイボーグクロちゃん】○クロ
1/1【クロノトリガー】○カエル
0/1【MOTHER3】●ボニー
27/47 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/18(日) 15:33:01:x//Ny0Cx
- 予約状況
19日
アライグマの父
22日
まん丸、イカルゴ、クズリの父 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/18(日) 19:01:32:qEgTNGEQ
- 乙
今生き残っている中で最強ってだれだろう - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/18(日) 20:54:16:x//Ny0Cx
- 本人のやる気を別にするとアマ公じゃないか?
筆調べが時間停止且即発動のチートだし
あとはクロコダインが地力と実戦経験で抜き出ている感じ
経験はラルク、シエラも相当だろうけど
あの二人も百歳超えてンじゃなかったっけ? - : ◆k3fZfnoU9U [] 2010/04/19(月) 02:59:19:BSWb3jZy
- 気づいたら夜更かし状態orz
ケロロ、オカリナ、キラーパンサー、ケットシー、楽俊
以上のメンバーを予約します。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2010/04/19(月) 08:52:43:EGMyKlNg
-
織田信長
- 2代織田信高(七男)
- 3代織田高重
- 4代織田一之
- 5代織田信門
- 6代織田信倉(養子)
- 7代織田信直(養子)←←← 大和宇陀松山藩主織田高長の孫(信雄の系統)
- 8代織田長孺
- 9代織田長裕
- 10代織田信真(1842~?) ←←←明治維新後、写真師になって、その後消息不明
- (11代から14代は不明)←←← 親戚に迷惑をかけるから、あえて16代信義氏が製作配布した家系図では4代不明としたとか(週刊新潮の記事より)
- 15代織田重治(1917~1995?)←←←1842から1917の間に5人もいる
- 16代織田信義
- 17代信成(次男)←←←信雄の末裔なのに、大徳寺でなく信孝建立の本能寺・信長廟へ行って、信長の声が聞こえたらしい…
織田信成が織田信長の子孫って本当?【2代目】
ttp://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/skate/1271421161/
- : ◆k3fZfnoU9U [sage] 2010/04/20(火) 02:40:11:Wf/SFWoG
- 不安なところがありますので、
したらばの方に仮投下しました。
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/20(火) 08:45:27:gJlv76MQ
- 乙
復活展開はほかのロワでもあるから問題ないと思う
あるいは死亡直前に寄生されたとか - : 代理投下:今日も明日も変わるけれど―― ◇TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/20(火) 20:20:35:Wf/SFWoG
- (一)
空に暗雲が立ち込め、風が俄かに勢いを増している。その唸りは魔獣の咆哮のようだ。
ならば、大きく音を立てて翻る旗は風の爪牙に弄ばれる獲物だろうか。
旗から視線を戻し、イカルゴは辺りに目を配った。
屋上から見える風景は、崩れだした空に怯えたように沈んでいる。東には海岸線がはっきりと見えるが、海を渡る西の高架は少し霞んでいた。
立ち騒ぐ海原を鏡に映したような空の下、砂丘を行く三つの影に目を留める。雨が降り出す前にサッカー場に辿り着ければいいが、この空模様だとぎりぎりだろう。
降り出せば、臭いや音といった情報が失われてしまう。逃亡者には恵みの雨だろうが、待ち受ける側には雨音は呪詛の呟きようにしか聞こえない。念能力者であれば幾つか対抗策も立てられるが、彼らは違う。
具現化系の能力者と思わしきザフィーラも、念能力者ではない。
それどころか、ザフィーラは同じ大地に生きる住人ですらない。
反芻し、しかしイカルゴは苦笑のようなものを刻んだ。
彼が述べた、参加者がそれぞれ異世界から集められたという話は易々とは信じ難いものだ。誇大妄想も甚だしいとさえ思う。
ただし、イカルゴの常識からみればザフィーラの能力には奇妙な点があったことも事実だ。
念とは自身が元々持ちうるオーラを自在に操る術である。ひいては、どの念能力も使い手のオーラと同等の波長を発している。しかし、ザフィーラの能力である「鋼の軛」からはザフィーラの気配どころか、オーラそのものが“凝”を以てしても見えなかった。
少なくとも彼の能力は、念とは違う系統のものであることは認めていいだろう。
奇妙といえば、クロたちに同行しているイッスンにもある。存在自体が不可思議ではあることは置いておくとして、彼のデータがアームターミナルに入っていなかったのだ。
ザフィーラによると、イッスンはトナカイのデイバッグに入っていたらしい。加えて、彼の名は名簿に載っていない。
その事実だけ見れば、イッスンは支給品であると判断できるし、否定する理由もない――そのことを告げた時、本人だけは大いに否定していたが。
生物だから例外なのか。イカルゴに支給されたブリがあれば確証が得られたのだろうが、今寄生している大トカゲに襲われたために紛失してしまっている。
少し残念だが、だからといってデイバッグを探しに行く危険を冒すほどの価値がある情報とも思えない。
しかし、わざわざ支給品のデータをアームターミナルに入れているのだから、生物だとかそういう理由で省くとも考えにくい。
何らかのトラブルによりイッスンは紛れ込んだという仮説はどうだろうか。しかし、それにはイッスンの首に巻かれた糸が邪魔となる。あれが首輪と連動している以上、イッスンもまた、予めこの殺し合いに組み込まれているという証明に他ならない。
ついでに言えば、その糸のデータもアームターミナルには入っていなかった。
単なる入力漏れの線はどうか。あり得ないことではない。
もしくは――キュウビの知らぬ所で投入されたのか。すると、キュウビ側はそれほど統制が取れた体制にはなっていないことになる。
ただし、イッスンの話によれば、彼らの“世界”の文明レベルは大して高くないようだった。そこから考えると、“異世界”の道具の扱いはキュウビの担当外になっているとしてもおかしくはない。
これはキュウビに誰かしら“異世界”に精通した協力者がいるということが前提になるが。
問題は、イッスンがキュウビの思惑の外だった場合に、この件が持つ意味だ。単なる気まぐれやミスなのか。
- : 代理投下:今日も明日も変わるけれど―― ◇TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/20(火) 20:22:14:Wf/SFWoG
- それとも――キュウビに知られてはならない何かを期待してのことなのか。
思わず思考の迷路に没入しそうになり、イカルゴは頭をふった。
ただでさえ空気が淀んできたせいで、思ったより視界が開けていないのだ。答えのない考察にかまけている暇はない。
視界は、雨が降り出せば更に悪くなる。雨合羽の類はないし、来訪者の捕捉が遅れることは必至だ。
円を張るべきがしばし迷うが、やったところで視界以上の範囲を保持し続ける自信はない。イカルゴは溜息をついた。
それに、監視をするならもっと高所がいい。ここから近いところだと電波塔あたりが妥当か。クロたちが帰ってきてからでも、場所を移動するべきだろう。
「といっても、あいつらが帰ってくるまでここを確保していなくちゃ意味ないよな」
どこであっても、監視を怠っては地の利は無と化す。
ただし、このまま続けても監視以上の役割はできそうにないなと、イカルゴは口を曲げた。
この強風は弾道に大きな支障になる。それにこのまま天候が悪化するのであれば狙撃自体出来なくなる。何しろ精度はあげられず、長大な間合いという狙撃の利点はなくなってしまうのだ。やらない方がいいかもしれない。
誤って当ててしまえば、自体は酷くややこしいものになってしまう。交渉など、ほぼ不可能だ。
もっとも、狙撃そのものにどれほどの効果があるのかは疑問が残る。悠々と防いでみせたザフィーラのような存在が他にいないという保証はない。
とすれば、銃撃はいたずらに存在を知らせるだけに終わるかもしれない。
しかし、それは表向きの問題だ。
どうであれ、外敵が来れば撃つしかないのだ。当てるのであれば、少なくとも威嚇ではなく、仕留める覚悟で撃たなくては自らの首を絞めることになる。
防ぐ能力があるのであれば尚更、殺せるときに殺さなければ自分だけでなくまん丸やクズリらの身が危ない。
だが――。
「そう思うのは簡単だよな……」
イカルゴは自嘲気味に呟いた。ラルクを撃てなかったことが嫌でも蘇る。命を奪う引き金は堪らなく重い。そして殺害の業を背負うことが堪らなく恐ろしい。
果たして撃てるか。自問するも、否定だけが頭を占める。
「キルアたち、どうしてるかな」
沈んだ表情でイカルゴは独りごちた。
今回の作戦では、主力こそネテロやモラウといったハンターたちだが、その過程には自分やメレオロンの能力が深く関わっていた。
- : 代理投下:今日も明日も変わるけれど―― ◇TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/20(火) 20:23:19:Wf/SFWoG
- しかし、今――。
自分達はこんなことに参加させられている。
作戦を延期するほどの余裕はなかった。ならば、自分達なしでキルアたちは王に立ち向かうことになるのだ。
失敗するとは思わない。だが、非常に不利な状態で遂行しなくてはならないのは確かだ。
しかしながら、この殺し合いに巻き込まれたことが一方的に不運とも思えなくなっていた。
それというのも、イカルゴの決意が脆く浅薄な代物であったことがこの地で判明したからだ。作戦のために自分の手を汚すことも厭わないつもりだったのに、結局自分は危険な相手を殺せなかった。
もしあのまま作戦に移行していたら、大切な局面でヘマをやらかしていたかもしれない。そのために計画が瓦解する場合だって有り得る。
自分が思っていた以上に卑怯者だった。
キルア達にとって、卑怯者の自分が消えたことはマイナスとは言い切れないのだ。
だが――メレオロンは違う。
“天上不知唯我独損”で王直属護衛軍の念を封じさせるには彼の能力は不可欠だった。圧倒的な護衛軍を前にして、ナックルは正面から戦わなくてはならない。
護衛軍と相対した時、おそらく彼は死ぬだろう。共闘するシュートも。もしかしたらキルアまでも。
その様が容易に想像できるが故に、そのことを考えることさえもとても恐ろしかった。
しかも、今すぐ帰れたところでメレオロンはもういない。生き残ったのは役立たずの方のキメラアントだ。
「おまえは簡単に死んじゃいけないやつだったんだぞ……」
いなくなってしまった仲間に、イカルゴはぼそりと語りかけた。
そのとき、東で煙が上がったのが見えた。
(二)
廊下に敷かれた柔らかい絨毯の感触を楽しみながら、まん丸はクズリの父と共に部屋の中を歩き回っていた。その足取りは軽い。屋敷の探検は辛い記憶を一時的にでもまん丸から目を逸らさせてくれたらしい。
地階から三階まで、ぐるりと回って来た。
この屋敷にある部屋は全て豪奢な調度品で占められており、部屋そのものが光り輝いている様だ。しかし、だからといって悪趣味ではない。
建物の雰囲気は格式高く厳かではあるものの、威圧感はそれほど感じられなかった。幾つも設けられた窓が外の光を適度に取り込んでくれているせいかもしれない。
クズリの父が、何度目かの感嘆の息を吐いた。
「いやはや、まったくニンゲンっていうのは凄いねえ。こんなものを作ろうだなんて、ワタシは考えもつかないよ」
「ボクもこんな凄いお家は初めてです」
- : 代理投下:今日も明日も変わるけれど―― ◇TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/20(火) 20:24:19:Wf/SFWoG
- まん丸はこれまで見て来た部屋のこともざっと思い返してみる。ネンガさまの屋敷よりも確実に大きい。調度品の類も全く違った。木の臭いが感じられないことが、少し気になるが。
クズリの父が、そうだろうねえと頷いた。
「こんな大きい巣は中々ないよ。ケイムショも今思い出せば凄かったけれど、ここまで飾りはなかったからねえ」
「クロさんは大頭領さんのお家だって言ってましたね」
「よほどの大家族か、用心深いんだろうねえ。ダイトーリョーさんは」
言いながら、クズリの父は南側の窓から海を見遣っていた。まん丸もつられて窓の外を見た。背伸びして見た鉛色の海は三角の波が立ち、窓枠は風に軋んでいる。
丁寧に磨かれたガラスには、まん丸とクズリの父の姿が映っていた。クズリの父がひょいとまん丸を見下ろした。
「ところでまん丸くん。なーんか、君とは初対面って気がしないんだよ。ひょっとして、ワタシら似てないかい? 頭身とか輪郭とか」
「……うーん、そうかなあ」
窓に写る自分とクズリの父をまじまじと見比べる。
クズリの父には嘴はないし、羽毛もないし、毛色だって違う。
共通点は目と鼻の穴が二つあることぐらいだと思ったが、まん丸は口にしなかった。
「似てる似てる」
クズリの父は何処か面白そうに頷いた。後ろで組んでいた腕を解いて、腹をぽりぽりと掻く。
「しかしまあ、子供はウマゴンやぼのぼのくんたちだけじゃなかったんだねえ。こう言ってはなんだけど、ワタシの坊やが連れて来られていなくて本当に良かったよ」
「クズリさんはお父さんなんですね」
「そうだよ。わざわざ父って載っているんだから」
クズリの父は苦笑のような物を浮かべて、窓から目を逸らした。解いていた腕をもう一度後ろで組み直していた。
「もし坊やがいたら、心中穏やかじゃなかったろうね。まだ、小さくてね。未だに中々二本足で立てないんだよ。他にも色々あってねえ。そんなんじゃダメだぞって口を酸っぱくして言い聞かせているんだけど、難しいようだ。
まったく可笑しいね。今大変なことに巻き込まれているのはワタシなのに、坊やのことの方が心配なんだよ。まだワタシがいなくちゃダメなんだ」
内容とは裏腹に、クズリの父は少し嬉しそうに続けている。
まん丸は相槌を打ちながら、まだ海を見ていた。灰色の海原は綺麗とは言えないが、それでも地上よりは幾分馴染みが深い。それに、どんどん命が理不尽に失われていく大地より海はずっと安全だ。
ただし、ザフィーラの話では、この海をずっと泳いで行ってもシシカト島にはつかないらしい。不思議に思ったし、理由も訊いたが、結局よく分からなかった。
「――だからねえ、坊やがいたらまん丸くんともこうしてお話していられなかっただろうねえ」
- : 代理投下:今日も明日も変わるけれど―― ◇TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/20(火) 20:25:52:Wf/SFWoG
- 少し声の調子が変わった気がして、まん丸はクズリの父を振り仰いだ。しかし、まん丸からは背負ったバイオリンしか見えなかった。
「どうしたんだい?」
視線に気付いたのか、クズリの父はくるりと体の向きを変えた。その表情はさっきと変わらない飄然としたものであった。まん丸は首を横に振った。
「ううん。なんでもないです」
「そうかい。いやね、アライグマはどうしているかと考えるんだよ。あれはあれなりに子煩悩だから。……しかしまあ、親っていうのは厄介なものだよ。子供の前じゃいつでも恰好よく居たいんだ。もうガタがきているのがばれているのにね」
「うーん。クズリさんは元気に見えます」
「嬉しいことを言ってくれるなあ。でもね、頭薄くなってるんだよ。本当に」
はははとクズリの父は渇いた笑い声を上げた。そのまま部屋を出て行ったクズリの父を、まん丸は慌ててよたよたとついて行った。
部屋を出ると、クズリの父が立ち止まっているのが見えた。彼の視線の先を辿ると、ずっと奥まった所に扉がある。
「そういえばあそこはまだだったねえ」
すたすたと近寄ったクズリの父は取っ手に飛びつくと、全身を使って漸く開けることができた。酷く重い戸が開くと、少しカビ臭い風が轟と飛び出してきた。
「……この巣は、更に地面の下へ続いている、ようだねえ」
少し荒い息を吐きながらクズリの父が呟いた。扉の先には地下へ続く階段がすぅっと続いている。
階段の先は薄暗く、正面に立っても先がよく見えない。底の方で小さな非常灯がぼんやりとした灯りを放っているのが分かった。暗がりは底の無い沼のようで、少し怖い気がした。
「行ってみようか?」
「………………うーん」
だから、クズリの父の申し出にまん丸はすぐに返事が出来なかった。何があるのか興味はあるけれど、あまり行きたくはない。何か怖いものが隠れていそうだし、この風景は地下鉄を連想させる。
「嫌みたいだねえ」
まん丸の躊躇を見て、クズリの父がぽんとまん丸の頭に手を置いた。
「それじゃあ、ここで待っていなさい。いや、イカルゴのところに戻っていた方がいいかな。ここはワタシひとりで見てくるからね」
言うが早いか、クズリの父はさっさと階段を下りて行ってしまう。勝手に歩いたら危ないのにとまん丸は慌てて追いだした。 - : 代理投下:今日も明日も変わるけれど―― ◇TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/20(火) 20:27:06:Wf/SFWoG
- 「一人で行ったらダメ――!」
まん丸はよたたたと階段を下りていったのだが、途中で足がもつれて転んでしまった。そのままクズリの父を巻き込んで階下まで転がり落ちる。一瞬だけ垣間見えたクズリの父の顔が物凄いことになっていたのが、まん丸は少し怖かった。
壁にぶつかって、漸く二匹は止まった。
「……あのねえ。暗いんだから気をつけなくちゃダメだぞ。特にまん丸くんは足が短いんだから」
「……ごめんなさい」
少しきつい口調のクズリの父に、まん丸は小さくなった。クズリの父は嘆息すると、汚れを払いながら立ち上がった。体重が軽かったためか、幸いに二匹とも大した怪我もせずに済んだ。
クズリの父が扉を押し開ける音がした。途端に光がまん丸を照らす。扉の先の空間は、開閉と同時に自動で灯りが点く仕様らしい。白々としたコンクリートの床にまん丸の影が黒く落ちる。
クズリは扉を潜っていってしまったが、まん丸はすぐには追わなかった。怒られたせいもあるが、クズリの父が危ないことをしていたのにという、釈然としないものがあったせいかもしれない。
「まん丸くん、いつまでもいじけてないで来てごらん」
とぼとぼとした歩調で入ったまん丸を、四方をコンクリートで固められた空間が出迎えた。広さは地上の一部屋分ほどのようだ。
蛍光灯の下に、天井まである棚が両脇に並んでいる。しかし、物自体はあまり収納されていないようだ。木箱が疎らに納められているだけである。
一番奥にある棚の前でクズリの父が首を捻っていた。その足元にはサッカーボールを二つに割って台に貼り付けたような、半球形の物体が置かれていた。
「まん丸くん、これなんだと思う?」
「割られたボールに見えます」
「……たしかにワタシのヤマアラシデビルがこの洞穴にあったことは不思議ではあるけども重要なのはそれじゃなくて、コレだよコレ」
クズリの父は棚を指でつんつんと突いた。
「なんでこれだけ物が一杯置かれているんだろうね?」
確かに、その棚だけ物がぎっちりと納められている。言われてしまうと気になり、まん丸はクズリの父の横で首を捻った。
「他に分ければいいのに。他の棚が寂しそう。ここに集めなきゃダメなのかなあ」
「そうだねえ。まるで物で後ろにある何かを隠しているみたいだ。……まん丸くん、ちょっと一緒にこの棚を押してみようか」
言われるままに棚に両翼をかけ、クズリの父と一緒に横の方向へ力を掛ける。思ったよりも軽い手ごたえで棚は動いた。ざりざりと耳障りな音を立て、棚は横へずれて行く。どうやら棚に納められている箱は全て空のようだ。
そして、それまで棚に隠れていた壁が露わになった。果たしてそこには隠し扉があったのである。
- : 代理投下:今日も明日も変わるけれど―― ◇TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/20(火) 20:28:05:Wf/SFWoG
- 「出て来たー!」
クズリの父の言った通りだと、まん丸は感嘆の声を上げる。
鼻高々と言った面持ちで、クズリの父が早速それを押し開けた。先程と同じような、しかしより湿っぽい風が部屋へと入ってくる。
部屋の明かりは床をほんの少し浮かび上がらせるだけに止まり、大部分は無明の黒に覆われていた。大きな魚の口を覗きこんでいるような感覚に襲われる。
「大きな抜け穴だねえ」
「抜け穴?」
「風が入ってきているからね。何処かに繋がっているはずだよ。プレーリー・ドッグなんかの巣と同じさ」
クズリの父の声は反響し、やがて闇の中に消えて行く。
「ここはこんなもんでいいだろう。詳しいことはクロたちが帰って来てからだ。それじゃイカルゴの所に戻ろうか」
その言葉と共に、扉はがちゃりと音を立てて閉じられた。
【G-4/豪邸/一日目/正午】
【イカルゴ@HUNTER×HUNTER】
【状態】健康、ヨッシーに寄生中、蚤育成中、屋上にて待機中
【装備】蚤弾(フリーダム)、キルアのヨーヨー@HUNTER×HUNTER
【道具】デイバッグ(支給品一式(食糧なし)×2、幸せの四葉@聖剣伝説Legend of Mana、シュバルツの覆面@機動武勇伝Gガンダム、ハンティングボウ@銀牙
【思考】
基本:殺し合いから脱出、可能ならキュウビ打倒
1:まん丸、クズリの父と豪邸でザフィーラ達の帰りを待つ。
2:侵入者はまず足止めの後、対話をする。しかし、状況によっては問答無用で撃つ。
【備考】
※原作25巻、宮殿突入直前からの参戦です。
※イカルゴの考察
・イッスンはキュウビの想定外?
・キュウビには異世界の協力者がいる?
・キュウビ側の統制は取れていないかもしれない
【まん丸@忍ペンまん丸】
【状態】:頭に打撲(小)、決意 、全身にすり傷(小)
【装備】:忍刀@忍ペンまん丸 、折り紙×10枚@忍ペンまん丸、サトルさん@忍ペンまん丸
【道具】:支給品一式、チョコビ(残り4箱)@クレヨンしんちゃん
【思考】
基本:念雅山に帰りたい、殺し合いには乗らない
1:イカルゴ、クズリの父と豪邸でザフィーラ達の帰りを待つ。
【備考】
※原作終了後からの参戦です。
- : 代理投下:今日も明日も変わるけれど―― ◇TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/20(火) 20:29:18:Wf/SFWoG
- 【クズリの父@ぼのぼの】
【状態】:全身に擦り傷(小)
【装備】:ハーメルのバイオリン@ハーメルンのバイオリン弾き
【所持品】:支給品一式、グリードアイランドカード(初心、神眼)@HUNTER×HUNTER、グリードアイランドカード(複製)@HUNTER×HUNTER×3
カベホチ@MOTHER3、ダムダム草@ぼのぼの、打岩@グラップラー刃牙
【思考】
基本:殺し合いから脱出
1:まん丸、イカルゴと共に豪邸でザフィーラ達の帰りを待つ。
2:ぼのぼの、アライグマ、アライグマの父を探す。
【備考】
※ウマゴン、オーボウと情報交換をしました。
※アームターミナルにイッスンのデータは入っていなかったようです。
※豪邸の地階から三階まではホワイトハウスを再現しています。そして地下二階は倉庫となっており、ヤマアラシデビル@ぼのぼのの他にも道具があるかもしれません。
※地下倉庫には抜け道が隠されています。それが何処に続いているかは書かれる方にお任せします。
【ヤマアラシデビル@ぼのぼの】
クズリの父が発明した広範囲無差別攻撃兵器。半球の装置から打ち上げられた大量の棘が上空から地面に降り注ぐ。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/20(火) 20:30:27:Wf/SFWoG
- 以上で代理投下終了です。
- : ◆k3fZfnoU9U [sage] 2010/04/21(水) 02:31:52:SgILGgoy
- 指摘点の修正をしましたので、
本投下を開始します。 - : Four Piece of History ◆k3fZfnoU9U [sage] 2010/04/21(水) 02:32:38:SgILGgoy
- 『…プックルが言っていたことが正しい可能性が出てきたってことだな。ということはやはりキュウビの目的は人間に関するものなのか? だとすると…』
「ラ、ラクシュン殿、何一人で呟いているでありますか? 男はもう死にそうな状態なのでありますよ!」
『おっと、そうだったな。保健所にはおいらから連絡しておく。あと連絡したらおいらもそっちに向かうからさ。ケロロはそれまで怪我人のほうを見ておいてくれないか?』
新たな情報を得て考察を固めようとした楽俊に、ケロロは男の処置についてまくしたてるように尋ねた。
楽俊はほんの少し慌てたような声で返事をした。
「ラクシュン殿…、分かったであります。我輩に任せるでありますよ!」
ケロロはそう言って電話を切ると一目散に男のもとに走って行った。
どこぞのハリネズミのごとく足が8の字を横にした感じで男のもとに舞い戻った。
そして給食室前ケロロの胸中に一つの不安が上がり、自然と足が遅くなっていった。
(気軽に任せるでありますとは言ったものの……我輩にできるでありましょうか…)
応急処置とはいえケロロは治療に不慣れだった。
だが、今この場にはケロロ一人しかいない。
ぼのぼのはてゐを呼びに行かせたのでここにはいない。
そのことを思い出した途端、彼の胸中に後悔の念が湧きあがってきた。
てゐはヒグマの大将を殺した可能性がある。
そんなやつのところに子供を向かわせてしまった。
これは軍人としては失格の答えであろう。
例えるなら、赤ん坊を虎の巣に向かわせるようなものである。
しかし、これは過去に起きたことであるため彼には何もできない。
それ以前に現在ぼのぼのが今どこにいるのか分からない。
もし彼がレーダーのようなものを持っていたら、追いついて連れ戻すこともできただろう。
だが、運の悪いことにそのようなものを持ち合わせてはいない。
それよりも今は男の応急処置をこなさなければならない。
そのどこからともなく湧き出る義務感は彼の足は保健室に導いた。
「あれ?や、やけに道具が少ないでありますな」
保健室で道具を探し始めたケロロは違和感に気がついた。
道具の数が不自然に減っていたからだ。
「誰かがここによって持っていったんでありましょうか?」
そんな独り言をつぶやきながら応急処置に使えそうな道具を選ぶ。
- : Four Piece of History ◆k3fZfnoU9U [sage] 2010/04/21(水) 02:33:59:SgILGgoy
- ◇
「あ、あれ?なんでこう都合よく救急セットが置いているでありますか?」
道具を揃え駆け足で給食室に向かったケロロは、足を踏み入れるなり脳内に『?』を浮かべる。
何故かご都合主義な展開の如く治療に使えそうな道具が置いてあったからだ。
「お、落ち着くであります。き、きっと親切な誰かが置いて行ってくれたであります」
そう考えながら男の前に向かっていく。
ちなみにここに治療道具を揃えたのはまごうことなくケロロ自身であるのだが、
彼が『電話をかける』ことで頭がいっぱいになってしまった結果、
この記憶は彼の脳内から忘却の彼方へと飛び去ってしまったのである。
何はともあれ男の前に来たケロロは、男の様子に違和感を覚えた。
どこか影がさし1ミリも動く気配がしない。
まるで人生に燃え尽きたかのようにそこに留まっているだけに見える。
恐る恐る男に近寄りそっと顔を覗き込んだ。
瞳に安らかながらも恐怖でひきつった表情が映りこむ。
まるで心地よい絶望に我が身を委ねているかの如く…。
「あ、あの、大丈夫でありますか?」
その表情に一抹の不安を感じたのかケロロは恐る恐る男に声をかけた。
しかし男は黙したまま、口を開く素振りすら見せない。
「あ、あの~、我輩の声が聞こえていないでありますk…え?」
その素振りに疑問を感じ、男に触れたケロロはあることに気づいてしまった。
人間の体温にしてはあまりに冷たすぎる。
まるで氷を触ったかのようだった。
生物学的にいえば人間は恒温生物に分類される。
すなわち常に温かさを保っているはずである。
その人間が生きている限り寝ていようが起きていようがいつも保たれているはずである。
その体温が失われているというのはその生命が生きているということを、頭から否定していることに他ならない。
もはや死んでいるのは確定的に明らかと言わざる負えない。
この事態にケロロは顔面蒼白になった。
- : Four Piece of History ◆k3fZfnoU9U [sage] 2010/04/21(水) 02:35:44:SgILGgoy
- (こ、このままだとこれからこっちに来るラクシュン殿たちに知れたら、
我輩が疑われることは間違いないであります。
し、しかしここで迂闊に動くと何と思われるか…。
我輩は…我輩は…)
「我輩は…我輩はなんて愚かな間違いを犯してしまったでありましょうかぁ!」
ケロロの思いはいつの間にか叫びへと変わり、冷蔵庫内部に響きわたる。
「こ、こういうときは慌てず騒がず忍び足、我輩にできることをするであります。」
そういうなりケロロは男の死体を仰向けに寝かせ、あたかも応急処置をしたかの如く治療道具を散らかし始めた。
「これで我輩の責任が少しは軽くなるであります。さて、後は……」
一通りの『偽装』をすませたケロロは次にやるべきことを模索するべく冷蔵庫内をうろうろし始めた。
【C-4/学校 給食室 冷蔵庫内/1日目/午前】
【ケロロ軍曹@ケロロ軍曹】
【状態】健康、錯乱(小)
【装備】:ジムのガンプラ@サイボーグクロちゃん
【道具】ガンプラ作成用の道具
【思考】
1:次は何をするべきか…
2:とりあえずギロロと合流したい
3:安全な場所でガンプラを作る
※ピカチュウ、キラーパンサー、オカリナをゲームに乗ったと誤解しています(名前は知らない)
※ピカチュウ、キラーパンサーの言葉は通じないようです。他は不明。
※キュウビに宇宙人の協力者がいるか、キュウビ自身が宇宙人であると考えています。
※会場の施設は、全て人間が以前使用していた物と考えています。
※ぼのぼのと情報交換をしました。
※給食室に、加藤清澄@バキの死体があります。
※給食室の加藤清澄を重要人物と考えています。
- : Four Piece of History ◆k3fZfnoU9U [sage] 2010/04/21(水) 02:36:39:SgILGgoy
- ◇ ◇ ◇
「ふあぁ~あ、なあ、オカリナ、ちょっといいか?」
「えっと、何でしょうか?」
「この本読んでみないか」
「え?」
やや遅めの朝食を終え、暇を持て余しているとプックルが大欠伸をしながら提案してきた。
プックルの前には分厚い本が置いてある。
「えっと、この本がどうかしたのですか?」
「ああ、放送がかかる前にピカチュウが見てほしいものがあるって言ってただろう」
「えっと、この本がそうなのですか?」
オカリナは戸惑ったような声でプックルに聞き返した。
「ああ、そうだ」
「まさか……たった今思い出したのですか?」
「いや、そういうわけではない。余りに退屈なのでな」
オカリナはジトッとした目でプックルを呆れたように見る。
それに気付いたプックルはまるで子供が親に催促するかのように前足で適当に本を開く。
オカリナはプックルの前に飛んでいき本を読み始める。
同時にプックルも本の挿絵に視線を向ける。
◇
「む、これはどういうことだ?」
「動物だけが住んでいる森?」
プックルが適当に開いたページを読んだオカリナは内容に疑問を感じた。
そこには動物だけがとある森に住む様子が描かれていたからだ。
これだとプックルの考察と矛盾してしまう。
念のため次のページを開いても人間の姿はどこにも描かれていない。
(これって……もしかして……)
断言することはできないが、この内容から考えられる可能性は一つしかない。
- : Four Piece of History ◆k3fZfnoU9U [sage] 2010/04/21(水) 02:37:32:SgILGgoy
- 「プックルさん、もしかしてここには人間に関係ない動物もいるのではないのでしょうか?」
「な、そんなはずはない…」
「だって現にこの世界には人間が描かれていないじゃないですか!」
「いや、もうちょっと先を読めば人間が出てくるはずだ」
人間と一切関わりがない動物が参加している可能性もある。
そのことは一緒に本を読んだプックル自身も勘付いているはずだ。
それでも本の内容にどこか納得できていないのかプックルは人間を書き忘れたのだと言い張ろうとしている。
しかし読み進めても人間が出て来ないまま、次の物語に移ってしまう。
「結局出てきませんでしたね」
「…もしかしたらこれ自体が罠かもしれんな」
「罠…ですか?」
「オレ達を混乱させるために嘘を書いた可能性も考えられる」
「あの、そのようなことをする必要があるのですか?」
プックルの突拍子のない考えに首をかしげる。
確かに嘘である可能性もある。
しかし殺し合いをさせるのにわざわざこんな嘘をつく必要があるのだろうか。
そう考えたオカリナはプックルに聞き返す。
「あ…そういえば、ピカチュウは…えっと、確か……『キュウビがこの本を書く理由が思いつかない』って言っていたような気がするな」
―ちなみに『本を書く理由がない』と言ったのはプックルなのだが、彼自身はそのことをすでに忘れていた。
「えっと、キュウビがこの本を…」
「ああ、キュウビぐらいしかこの本を書くやつがいないしな」
「……確かにそれぐらいしか考えられませんね」
「なあ、もう少し読み進めてみないか?」
「そうですね」
プックルは今思い出したという表情で本に関する考察を述べる。
しかしここまで来ても確実と言えるのは『本を書いたのはキュウビ』という一点だけである。
これだけでは分からないことが多すぎるので続きを読もうとした時、2人の耳に再びけたたましい怪音波が襲いかかってきた。
一瞬ぎょっとして音のほうに思わず振り向くと、電話が今すぐ取ってくれと言わんばかりに2人を呼んでいた。
- : Four Piece of History ◆k3fZfnoU9U [sage] 2010/04/21(水) 02:38:21:SgILGgoy
- オカリナは電話のそばに飛んでいき、人間に変身する。
「おい、変身しても大丈夫なのか?」
「ええ…、少し休憩しましたし…、こうでもしないと…えっと、『じゅわき』…を持つことが…出来ませんからね」
しばらく休んでいたもののプックルにはオカリナ自身無理をしているように見えたため、彼は慌てて尋ねた。
しかし、オカリナはそのことを気にしていないかのように、受話器を取る。
それでもプックルは不安そうな顔でオカリナの方を見続けている。
「えっと、どなたでしょうか」
『その声は…オカリナか?』
電話の向こうから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「えっと、その声は楽俊さんでしょうか?」
『ああ、そうだ。』
「あ、あの楽俊さん、そんなに慌ててどうしたのですか?」
『さっき死にそうな男が見つかったって話を聞いたんだ』
「え?し、死にそうな男って…どういうことですか?」
焦っているような楽俊の声に首をかしげながらも聞き返す。
すると楽俊は重体の男が発見されたことを伝えてきた。
そのためオカリナは吃驚して即座に尋ね返す。
『学校という建物でケロロとかいう奴が見つけたらしいんだ!』
「学校?ケロロ?」
『まあ、ケロロのことは置いておくとして、えっとだな、地図で言うと…』
楽俊の声とともにオカリナも地図を取り出して確認しようとする。
デイバックから地図を取り出そうとした時、ギイという音が聞こえてきた。
振り向くとプックルが体を押し付けるようにして扉を開けている。
- : Four Piece of History ◆k3fZfnoU9U [sage] 2010/04/21(水) 02:39:21:SgILGgoy
- 「え?…プックルさん、何してるのですか?」
「何って…怪我人がいると聞いただろう。急がなければ手遅れになる」
「ちょっと待ってください。怪我人がどこにいるのかわかるのですか?」
「あ……」
オカリナが呼びかけるとプックルは怪我人のもとに急ぐように促してきた。
それに対しオカリナは怪我人の場所を訪ねる。
当然聞いていないのだから分からない。
プックルは頬を赤らめながらオカリナのそばに戻ってくる。
恥ずかしい思いをしたためか尻尾も垂れ下がっていた。
そんなプックルの様子に苦笑いしながら楽俊が言っていた場所を地図で確認する。
どうやら目的地はC-4にあるようだ。
このことを確認するために置きっぱなしにしている受話器を持つ。
『おーい、聞こえるか?』
向こうから楽俊がきょとんとした口調で尋ねていた。
「お待たせしました。」
『オカリナ、何があったのか?』
「ええ、実はプックルさんが足早に出かけようとしていたもので…場所も確認しましたので今から向かいます。」
『あ、オカリナ、ちょっと待ってくれ』
「え、何でしょうか?」
現場に向かおうとすると楽俊は割り込むように呼びとめてきた。
オカリナは受話器を戻そうとした手を一瞬とめて再び耳を当てる。
『ケットシーという奴から聞いたんだが、お前の親父さん、まだ無事みたいだぞ』
「え、えっと、そのケットシーという方が父と会ったのですか?」
突然父の話題が出てきたため、オカリナは少しうろたえてしまった。
それと共に涙がわずかながら眼の下にたまっていく。
無意識にその涙を拭いながら、確認するように父のことを聞き返す。
『ああ、聞いたのは電話でなんだけど、ケットシーはついさっきおいらと合流して…ぐあっ』
「え、楽俊……さん?な、何かあったのですか?楽俊さーん」
- : Four Piece of History ◆k3fZfnoU9U [sage] 2010/04/21(水) 02:40:08:SgILGgoy
- 受話器の向こうから楽俊の呻き声と共に爆発音が響いた。
これらの音を聞いたオカリナは一瞬目を見開き、受話器の向こうにいる楽俊に呼びかけ続けるが返事は返ってこない。
その代わりうっすらとケットシーだと思われる声が聞こえてくる。
オカリナはプックルの口に軽く手を当て静かに聞き耳を立てる。
ケットシーは独り言を発しながら楽俊の周辺を漁っているようだった。
物を放り投げる音がたびたび聞こえてくる。
『しー ゆー あげいんだぁ! アンタの事は 忘れないぜェ!』
やがてこの言葉を最後にケットシーの声が聞こえなくなる。
オカリナは受話器を置き、悲しい表情を浮かべながらしばらく黙りこむ。
「オカリナ、しっかりしろ」
「あ……、すみません。でも、楽俊さんは…もう…」
この様子を見かねたプックルはオカリナに呼び掛ける。
オカリナは我に返ったが楽俊の安否について不安を感じていた。
「それはまだ分からないのではないか?」
「え?」
「命からがらとはいえ逃げ延びた可能性も考えられる。」
「プックルさん……すみません、その可能性もありますね。」
そんなオカリナにプックルはまだ可能性があると述べる。
オカリナは少し考えた後、プックルの述べた可能性に同意した。
「でもどうしましょうか?」
「む、どうかしたのか?」
「楽俊さんが言っていたじゃないですか。大怪我をしている男が見つかったって」
「ああ、そうだったな」
「ここからだとホテルの方が近いみたいですが…大怪我している男がとても気になりますし」
オカリナは魔力の消費を抑えるためカラス形態に戻った後、地図で位置関係を確認する。
その結果ホテルの方が近かったのだが、重症の男が気かがりになっていた。
その時オカリナはある事実を思い出す。
- : Four Piece of History ◆k3fZfnoU9U [sage] 2010/04/21(水) 02:41:01:SgILGgoy
- 「そういえば、ピカチュウさんがホテルに向かっていませんでしたか?」
「む、そういえばそうだったな。では、俺たちは学校の方に向かった方がいいということだな」
「ええ、向こうについてからピカチュウと連絡を取れればいいのですが…」
「それは何とかなるだろう。」
「相変わらず大雑把ですね。」
ピカチュウは保護した子犬を送った後、ホテルに向かう手筈になっていた。
そのため後でピカチュウに連絡を取ることで楽俊の安否を確認することにした。
オカリナの大雑把というツッコミに、プックルは頬を膨らませていたが…。
◇
「これだけあれば大丈夫ですね」
「準備はできたみたいだな。では目的地に向かうぞ」
「あ、ちょっと待ってください」
「今度はなんだ?」
「ニャースさん達が来たときのためにメモを残しておこうと思いまして」
「そうだな、できるだけ早く頼む」
治療に使えそうな薬を一通りバッグに入れ、出発しようとした矢先オカリナはプックルを呼びとめる。
ここに来るであろうニャース達に重症の男が見つかったことなどを伝えるためのメモを残すためだ。
嘴で器用にメモを書くオカリナをプックルはまじまじと見ている。
「お待たせしました」
「ああ、なるべく急ぐぞ」
「ええ」
掛け声とともに1羽と1頭は勢いよく保健所を飛び出した。
- : Four Piece of History ◆k3fZfnoU9U [sage] 2010/04/21(水) 02:41:50:SgILGgoy
- 【E-2/保健所/1日目/午前】
【チーム:主をもつ魔物達】
【共通思考】
1:首輪を手に入れて、解除法を探す。
2:仲間になれそうな動物を見つけたら仲間に入れる。敵なら倒す。
3:緑ダルマ(ケロロ)に会ったら『ガンプラ』を取り戻す。
4:お城に向かう
5:脱出の手がかりを探す。
【備考】
※互いの知り合い、世界や能力等について情報交換しました。イギー、ニャースとも情報交換しました。
※それぞれが違う世界から呼ばれたと気付きました。
※次元や時空を操る存在(ポケモンや妖精)がキュウビによって捕らえられているかもしれないと考えています。
※この会場にいる獣達は全員人間とかかわりをもつ者だと勘違いしています。
※その間違えた前提を元にキュウビの呪法が人間に対してつかわれるものだと推測しています。
※『ガンプラ』が強力な武器だと誤解しています。
※ケロロ(名前は知らない)が怪力の持ち主だと誤解しています。敵ではない可能性も知りました。
※『世界の民話』に書かれている物語が異世界で実際に起きた出来事なのではと疑っています。
※楽俊の仮説を知りました。
※帽子のネコが危険な動物だと知りました。
※まん丸、ツネ次郎への伝言を預かりました。
※保健所にメモが残されています。主な内容は以下の通りです。
・学校に重症の男がいること
・そのため学校に向かったこと
・楽俊が何者かに襲われたこと
【キラーパンサー@ドラゴンクエスト5】
【状態】ダメージ(小。治療済)
【装備】炎の爪@DQ5、世界の民話
【道具】:支給品一式×2(キラーパンサー、ケロロ)、不明支給品0?1(武器、治療道具ではない)、きのみセット@ポケットモンスター(クラボのみ、カゴのみ、モモンのみ、チーゴのみ、ナナシのみ、キーのみ)
【思考】
基本:ゲームには載らないが、襲ってくる奴には容赦しない。キュウビは絶対に倒す
1:C-4の学校に向かい重症の男を治療する。
2:C-2付近へ死体の捜索。
3:ピカチュウの知り合いとオーボウを探す
4:お城を調べたい。
※参戦時期はED後です。
※『世界の民話』の内五編の内容を把握しました。
※人間と関係ない参加者もいるのではという仮説を聞きましたが信じようとしていません。
※ケットシーを危険な獣と判断しました。
【オカリナ@ハーメルンのバイオリン弾き】
【状態】魔力消費(中)
【装備】なし
【道具】支給品一式、ミニ八卦炉@東方project、治療用の薬各種、不明支給品0?2(治療道具ではない)
【思考】
基本:ゲームには載らない。キュウビを倒す
1:C-4の学校に向かい重症の男を治療する。
2:C-2付近へ首輪の捜索。
3:オーボウと、ピカチュウの知り合いを探す。
4:できるならミニ八卦炉は使いたくない
※参戦時期は死亡後です。
※自分の制限について勘付きました。
※人間と関係ない参加者もいるのではと思っています。
※ケットシーを危険な獣と判断しました。
※治療用の薬の内訳は後の書き手にお任せします。
- : Four Piece of History ◆k3fZfnoU9U [sage] 2010/04/21(水) 02:42:34:SgILGgoy
- ◇ ◇ ◇
「うっひゃあー、こんな高い建物始めてミルゼー」
ケットシーは見上げるように建物を見上げていた。
建物の看板には筆文字で『キュービーぐらうどほてる』と書かれている。
「ヒーホー、楽俊のもとにハリーアップ、さもなきゃチャンスが逃げちゃう」
誰が聞いてるのもわからぬ独り言を叫びながら建物――ホテルに入っていく。
豪華なシャンデリアが輝くロビーを颯爽と駆け抜け、
階段を無邪気な子供のように駆け上がっていく。
ここまで生体マグネタイトを得ることに失敗し続けているため
心の中では焦りを募らせていた。
彼の言動からは微塵も想像がつかないわけだが…。
「確かここだったっけなー?」
ケットシーはある部屋の前で立ち止まった。
「ラクシュンは三〇九って言ってたっけなー?」
ドアにつけられているプレートを見ると三〇九と書かれている。
まさにケットシーが呟いた部屋番号と同じだった。
「ビンゴだぜー、よーし」
いたずらを思い浮かべた子供のような笑顔を浮かべながらドアノブを掴み…
「ラクシューン、オイラがゴールインだぜー」
「うわっ、誰だ」
ドアを勢いよく開けてドカドカと入り込んだ。
今の音に吃驚したのか大きいネズミが目を見開きながらケットシーの方に振り向いていた。
「ラクシューン、このケットシーのこと忘れるなんて悪魔より酷すぎるゼー」
「なんだ、ケットシーか。全く脅かすなよな。誰かが襲ってきたと思ったぞ」
「ヒーホー、ごめんちょラクシュン」
「まあいいや、ここまでくんのに疲れてるだろうからしばらく体を休めておけ」
ケットシーはどうせもうすぐ自分の糧になるのになと思いながら、適当に相槌を打った。
そんなことを知らない楽俊は休憩を勧めた為、言葉に甘えてすかさずベッドの上に飛び乗り身を委ねた。
少しの間ふかふかした後、楽俊が見えるように体を捻らせ座る姿勢を取る。
- : Four Piece of History ◇k3fZfnoU9U代理 [] 2010/04/21(水) 18:24:08:aJjnWGoE
-
「その声は…オカリナか?――ああ、そうだ。」
誰かとの会話が耳に入り、楽俊の方を振り向くとどこかに電話をかけていた。
心なしかどこか焦っているような感じがする。
(さっそく大チャーンスが訪れたゼー)
今までの不幸はこの時のためだったといわんばかりに、
楽俊に気づかれないように隠しておいた銃を取り出し照準を彼に合わせる。
そしてトリガーを引く指に力を込め…
「さっき死にそうな男が見つかったって話を聞いたんだ」
楽俊が相手に言った伝言を聞いた途端、あっという間に指の力が抜けた。
死にそうな男、それ即ち生体マグネタイトの摂取に最も適した獲物である。
この偶然得た情報に、思わず頬が緩む。
「学校という建物でケロロが見つけたらしいんだ!――まあ、ケロロのことは置いておくとして、えっとだな、地図で言うと…」
そう言いながらふと楽俊はケットシーの方を振り向いた。
突然のことにびっくりして銃を後ろに隠す。
彼のきょとんとした様子からするとケットシーが銃を取り出したのには気づいていないようだ。
楽俊はバッグから地図を取り出しそれを見る。
- : Four Piece of History ◇k3fZfnoU9U代理 [sage] 2010/04/21(水) 18:25:34:aJjnWGoE
- 「ねぇねぇ、死にそうな男ってどういうコトー?」
「おっと、お前さんには言ってなかったな。えっとだな、お前さんが来る前にそういう話を聞いたんだ。」
ケットシーは地図を見ている楽俊に近づき横から尋ねる。
彼は少し言葉に詰まらせながら質問に答えた。
「ふーん(それがリアルの話ならそいつからもマグネタイト頂き決定ー)」
この返事に手を後ろに回しながらあまり関心がないように相槌を打ちながらも、
他人から見たら腹黒いとしか言いようがないことを頭の中で計画を立てる。
楽俊は地図を見ながら、置きっぱなしにしている受話器を再び掴んでいた。
「おーい、聞こえるか?」
楽俊はきょとんとした口調で尋ねていた。
電話の相手がどこかに行ってしまったらしい。
しかし、相槌を打ち始めたところをみると電話の相手は戻ってきたようだ。
「あ、オカリナ、ちょっと待ってくれ。――お前の親父さん、まだ無事みたいだぞ」
(そういやオイラ、ラクシュンにそんなこと言ってたっけなー)
一瞬電話のことを思い出す。
あの時、そして今も殺される運命だろうとは思ってないはずだ。
楽俊が電話に意識を取られている隙に銃を再び楽俊に向け――
「あ、いや、仲間を集めてたら偶然聞いただけなんだけ…ぐあっ」
指に力を込め――弾丸が放たれた。
放たれた弾丸は後ろを気にとめていなかった楽俊をいとも軽々と貫いた。
「ケットシー…これは…どういうことだ……?」
楽俊はケットシーの方に体を向け息だえだえになりながらも問い詰めようとした。
ケットシーは構わずもう一発楽俊の腹に撃ち込む。
この一撃で楽俊は気を失ってしまったようだ。
ケットシーは楽俊に近づくと傷口に手をかざしそこから可能な限りマグネタイトの採取を始める。
受話器から楽俊を呼ぶ声が聞こえるが、ケットシーの耳には入ってこない。
- : Four Piece of History ◇k3fZfnoU9U代理 [sage] 2010/04/21(水) 18:27:46:aJjnWGoE
- ◇
「あれ?もうこれっぽっちかよー。リトルすぎー、けどまーいーや、ギリギリセーフでマグネタイトをゲットしたことだし、ラクシュンはナニ持ってたのかなー?」
楽俊からはケットシーにとって満足な量のマグネタイトを採取することはできなかった。
しかしここで失敗していたら間違いなく自分は死んでいた。
そう考えると運がいいことには間違いない。
そのことを一人で納得するやいなや、そばに置いてあった楽俊のデイバッグを開け中身の物色を始める。
「ヒーホー、お手軽イージーにオイラの顔が見れるなんて、ポッ」
最初に取り出した手鏡で自分の顔を見て顔を赤らめる。
しばらく覗いたのち、その手鏡を自分のデイバッグに入れ再び中身を漁り始めた。
「オイラと持ってるものが同じかよー、こんなダブりすぎな人生ツッマンネー」
他に入っていたのはカマンベールチーズを除き、ほとんどケットシーが持っているものと同じものしかない。
愚痴を零しながら時計やら筆記用具やらをあちこちに投げていく。
さり気にチーズだけは抜け目なく自分のバッグに入れていたのだが…。
そして、最後に取り出したものは何の変哲もない小瓶だった。
振ってみるとカランカランと音がする。
ケットシーはさっそく蓋をあけ中身を取り出した。
「なんだよー、こんなシケたもんなんてノーサンキューだぜー」
中身を手に取ったケットシーは心底がっかりした。
入っていたものは小さい金属片ただ一つ。
当然ながら武器として使うには無理がある代物だ。
それにこんなものを欲しがるやつなんていないに決まっている。
そう思ったケットシーは無造作に金属片を放り投げた。
その金属片は空中に縦楕円の軌道を描き楽俊の傷口へと落ちていく。
しかしケットシーはすでに楽俊に興味を無くしていたため、気づいていなかった…。
「しー ゆー あげいんだぁ! アンタの事は 忘れないぜェ!」
部屋の外から覗くような形でそう言い残したケットシーは、
学校にいるはずの次なるターゲットに狙いを定め部屋を後にした。
【D-4/ホテル前/1日目/午前】
【ケットシー@真女神転生if...】
【状態】:疲労(小) 、帽子なし
【装備】:まぼろしのてぶくろ@MOTHER3 、デザートイーグル@真女神転生if...(装填弾丸なし)
【所持品】:支給品一式、和道一文字@ワンピース、コロナショット@真女神転生if...(14発)、雷の石@ポケットモンスター、拡声器、折れたシャムシール@真女神転生if...、巨大キノコ@スーパーマリオシリーズ、グリードアイランドカード(追跡)@HUNTER×HUNTER 、
ケットシーの帽子@真女神転生if...、フィジカルミラー@ペルソナ3、カマンベールチーズ@現実
【思考】
基本:生き残る。ゲームに乗るかキュウビに逆らうかは他の参加者をよく確かめてからにする
1:C-4の学校に行き重症の男から生体マグネタイトを頂く。
2:余裕があれば首輪の解除をする。
【備考】
※雷の石をマハジオストーン@真女神転生if...と勘違いしています
※まぼろしのてぶくろを防具と勘違いしています。拡声器を攻撃アイテムと勘違いしています。
※魔法の制限の可能性に気づきました
※グリードアイランドカードの使用法を聞きました
※オカリナ、ヒグマの大将、グレッグル、ミュウツーの情報を聞きました
※帽子をかぶった猫のことを自分のこととは思っていません。
※カマンベールチーズは楽俊に支給された食料です。 - : Four Piece of History ◇k3fZfnoU9U代理 [sage] 2010/04/21(水) 18:29:46:aJjnWGoE
- あ、順番が違う
すまん - : Four Piece of History ◇k3fZfnoU9U代理 [sage] 2010/04/21(水) 18:31:36:aJjnWGoE
- 「その声は…オカリナか?――ああ、そうだ。」
誰かとの会話が耳に入り、楽俊の方を振り向くとどこかに電話をかけていた。
心なしかどこか焦っているような感じがする。
(さっそく大チャーンスが訪れたゼー)
今までの不幸はこの時のためだったといわんばかりに、
楽俊に気づかれないように隠しておいた銃を取り出し照準を彼に合わせる。
そしてトリガーを引く指に力を込め…
「さっき死にそうな男が見つかったって話を聞いたんだ」
楽俊が相手に言った伝言を聞いた途端、あっという間に指の力が抜けた。
死にそうな男、それ即ち生体マグネタイトの摂取に最も適した獲物である。
この偶然得た情報に、思わず頬が緩む。
「学校という建物でケロロが見つけたらしいんだ!――まあ、ケロロのことは置いておくとして、えっとだな、地図で言うと…」
そう言いながらふと楽俊はケットシーの方を振り向いた。
突然のことにびっくりして銃を後ろに隠す。
彼のきょとんとした様子からするとケットシーが銃を取り出したのには気づいていないようだ。
楽俊はバッグから地図を取り出しそれを見る。
「ねぇねぇ、死にそうな男ってどういうコトー?」
「おっと、お前さんには言ってなかったな。えっとだな、お前さんが来る前にそういう話を聞いたんだ。」
ケットシーは地図を見ている楽俊に近づき横から尋ねる。
彼は少し言葉に詰まらせながら質問に答えた。
「ふーん(それがリアルの話ならそいつからもマグネタイト頂き決定ー)」
この返事に手を後ろに回しながらあまり関心がないように相槌を打ちながらも、
他人から見たら腹黒いとしか言いようがないことを頭の中で計画を立てる。
楽俊は地図を見ながら、置きっぱなしにしている受話器を再び掴んでいた。
- : Four Piece of History ◇k3fZfnoU9U代理 [sage] 2010/04/21(水) 18:32:25:aJjnWGoE
- 「おーい、聞こえるか?」
楽俊はきょとんとした口調で尋ねていた。
電話の相手がどこかに行ってしまったらしい。
しかし、相槌を打ち始めたところをみると電話の相手は戻ってきたようだ。
「あ、オカリナ、ちょっと待ってくれ。――ケットシーという奴から聞いたんだが、お前の親父さん、まだ無事みたいだぞ」
(そういやオイラ、ラクシュンにそんなこと言ってたっけなー)
一瞬電話のことを思い出す。
あの時、そして今も殺される運命だろうとは思ってないはずだ。
楽俊が電話に意識を取られている隙に銃を再び楽俊に向け――
「ああ、聞いたのは電話でなんだけど、ケットシーはついさっきおいらと合流して…ぐあっ」
指に力を込め――弾丸が放たれた。
放たれた弾丸は後ろを気にとめていなかった楽俊をいとも軽々と貫いた。
「ケットシー…これは…どういうことだ……?」
楽俊はケットシーの方に体を向け息だえだえになりながらも問い詰めようとした。
ケットシーは構わずもう一発楽俊の腹に撃ち込む。
この一撃で楽俊は気を失ってしまったようだ。
ケットシーは楽俊に近づくと傷口に手をかざしそこから可能な限りマグネタイトの採取を始める。
受話器から楽俊を呼ぶ声が聞こえるが、ケットシーの耳には入ってこない。 - : Four Piece of History ◇k3fZfnoU9U代理 [sage] 2010/04/21(水) 18:34:10:aJjnWGoE
- ◇
「あれ?もうこれっぽっちかよー。リトルすぎー、けどまーいーや、ギリギリセーフでマグネタイトをゲットしたことだし、ラクシュンはナニ持ってたのかなー?」
楽俊からはケットシーにとって満足な量のマグネタイトを採取することはできなかった。
しかしここで失敗していたら間違いなく自分は死んでいた。
そう考えると運がいいことには間違いない。
そのことを一人で納得するやいなや、そばに置いてあった楽俊のデイバッグを開け中身の物色を始める。
「ヒーホー、お手軽イージーにオイラの顔が見れるなんて、ポッ」
最初に取り出した手鏡で自分の顔を見て顔を赤らめる。
しばらく覗いたのち、その手鏡を自分のデイバッグに入れ再び中身を漁り始めた。
「オイラと持ってるものが同じかよー、こんなダブりすぎな人生ツッマンネー」
他に入っていたのはカマンベールチーズを除き、ほとんどケットシーが持っているものと同じものしかない。
愚痴を零しながら時計やら筆記用具やらをあちこちに投げていく。
さり気にチーズだけは抜け目なく自分のバッグに入れていたのだが…。
そして、最後に取り出したものは何の変哲もない小瓶だった。
振ってみるとカランカランと音がする。
ケットシーはさっそく蓋をあけ中身を取り出した。
「なんだよー、こんなシケたもんなんてノーサンキューだぜー」
中身を手に取ったケットシーは心底がっかりした。
入っていたものは小さい金属片ただ一つ。
当然ながら武器として使うには無理がある代物だ。
それにこんなものを欲しがるやつなんていないに決まっている。
そう思ったケットシーは無造作に金属片を放り投げた。
その金属片は空中に縦楕円の軌道を描き楽俊の傷口へと落ちていく。
しかしケットシーはすでに楽俊に興味を無くしていたため、気づいていなかった…。
「しー ゆー あげいんだぁ! アンタの事は 忘れないぜェ!」
部屋の外から覗くような形でそう言い残したケットシーは、
学校にいるはずの次なるターゲットに狙いを定め部屋を後にした。
【D-4/ホテル前/1日目/午前】
【ケットシー@真女神転生if...】
【状態】:疲労(小) 、帽子なし
【装備】:まぼろしのてぶくろ@MOTHER3 、デザートイーグル@真女神転生if...(装填弾丸なし)
【所持品】:支給品一式、和道一文字@ワンピース、コロナショット@真女神転生if...(14発)、雷の石@ポケットモンスター、拡声器、折れたシャムシール@真女神転生if...、
巨大キノコ@スーパーマリオシリーズ、グリードアイランドカード(追跡)@HUNTER×HUNTER 、
ケットシーの帽子@真女神転生if...、フィジカルミラー@ペルソナ3、カマンベールチーズ@現実
【思考】
基本:生き残る。ゲームに乗るかキュウビに逆らうかは他の参加者をよく確かめてからにする
1:C-4の学校に行き重症の男からも生体マグネタイトを頂く。
2:余裕があれば首輪の解除をする。
【備考】
※雷の石をマハジオストーン@真女神転生if...と勘違いしています
※まぼろしのてぶくろを防具と勘違いしています。拡声器を攻撃アイテムと勘違いしています。
※魔法の制限の可能性に気づきました
※グリードアイランドカードの使用法を聞きました
※オカリナ、ヒグマの大将、グレッグル、ミュウツーの情報を聞きました
※帽子をかぶった猫のことを自分のこととは思っていません。
※カマンベールチーズは楽俊に支給された食料です。 - : Four Piece of History ◇k3fZfnoU9U代理 [sage] 2010/04/21(水) 19:08:19:aJjnWGoE
- ◇ ◇ ◇
「…プックルが言っていたことが正しい可能性が出てきたってことだな。ということはやはりキュウビの目的は人間に関するものなのか? だとすると…」
『ラ、ラクシュン殿、何一人で呟いているでありますか? 男はもう死にそうな状態なのでありますよ!』
「おっと、そうだったな。保健所にはおいらから連絡しておく。あと連絡したらおいらもそっちに向かうからさ。ケロロはそれまで怪我人のほうを見ておいてくれないか?」
新たな情報を得て考察を固めようとするが、ケロロは男の処置についてまくしたてるように尋ねてくる。
そのため考察を一時中断して慌てながら怪我人を診るように伝える。
『ラクシュン殿…、分かったであります。我輩に任せるでありますよ!』
ガチャンという音が向こうから聞こえてくる。
楽俊は一旦受話器を下ろしたあと保健所の番号を入力する。
「ラクシューン、オイラがゴールインだぜー」
「うわっ、誰だ」
突然ドアが勢いよく開く音と共に子供っぽい大声が響き渡った。
吃驚した楽俊は入力していた指を止めドアの方に振り向く。
「ラクシューン、このケットシーのこと忘れるなんて悪魔より酷すぎるゼー」
「なんだ、ケットシーか。全く脅かすなよな。誰かが襲ってきたと思ったぞ」
「ヒーホー、ごめんちょラクシュン」
「まあいいや、ここまでくんのに疲れてるだろうからしばらく体を休めておけ」
部屋に入ってきたのはケットシーだった。
彼曰くここに呼び出されてから不幸の連続だったらしいが、根っからの陽気さはそれを微塵にも感じさせない。
現に彼の謝り方はとてつもなく軽い。
彼らの置かれている立場を考えると『謝る気がないだろ!』と言われても文句は言えない。
しかし温厚な性格の楽俊はそのようなことを気にせずにケットシーに休憩を勧める。
ケットシーがベッドにダイブするのを横目で見ながら、番号の入力をやり直す。 - : Four Piece of History ◇k3fZfnoU9U代理 [sage] 2010/04/21(水) 19:10:32:aJjnWGoE
- ◇
『えっと、どなたでしょうか?』
しばらく呼び出し音がした後、受話器からオカリナの声が聞こえてくる。
どうやらまだ保健所にいたようだ。
「その声は…オカリナか?」
『えっと、その声は楽俊さんでしょうか?』
「ああ、そうだ。」
オカリナはまだ電話に慣れていない様子だ。
かく言う楽俊もやっと慣れたといったところだったりする。
『あ、あの楽俊さん、そんなに慌ててどうしたのですか?』
「さっき死にそうな男が見つかったって話を聞いたんだ」
『え?し、死にそうな男って…どういうことですか?』
楽俊自身の声が慌てている様子だったため、オカリナの方から聞き返された。
楽俊は重体の男が発見されたことを伝えると、オカリナはうろたえた様子で尋ね返してきた。
「学校という建物でケロロとかいう奴が見つけたらしいんだ!」
『学校?ケロロ?』
「まあ、ケロロのことは置いておくとして、えっとだな、地図で言うと…」
ふとケットシーの方を見ると、彼も興味しんしんと言った様子で楽俊を見ていた。
この様子に首をかしげながらも学校の位置を確認するため地図を取り出す。
「ねぇねぇ、死にそうな男ってどういうコトー?」
「おっと、お前さんには言ってなかったな。えっとだな、お前さんが来る前にそういう話を聞いたんだ。」
学校の場所を確認しているとケットシーが突然割り込んでくる。
楽俊は少し言葉に詰まらせながらも質問に答えた。
「ふーん」
ケットシーはそんなものに関心がないといった様子で手を後ろに回しながら相槌を打っている。
学校の場所を確認した楽俊は再び受話器を耳に当てる。
「オカリナ聞こえるか?場所はな。…ん?」
なにやら騒がしい。
受話器の向こうから『何してるのですか?』や『怪我人がどこにいるのかわかるのですか?』というオカリナの声が聞こえてくる。
「おーい、聞こえるか?」
『すみません、お待たせしました。』
「おーい、オカリナ、何かあったのか?」
何度か呼びかけていると再びオカリナが出てくる。
楽俊はなんとなく想像はつくものの何かあったのか尋ねた。 - : Four Piece of History ◇k3fZfnoU9U代理 [sage] 2010/04/21(水) 19:11:14:aJjnWGoE
- 『ええ、実はプックルさんが足早に出かけようとしていたもので…場所も確認しましたので今から向かいます』
「あ、オカリナ、ちょっと待ってくれ」
『え、何でしょうか?』
後ろにいるケットシーから得た情報だが、オカリナに伝えるべきことがある。
そのため現場に向かおうとするオカリナを割り込むように呼びとめた。
「ケットシーという奴から聞いたんだが、お前の親父さん、まだ無事みたいだぞ」
『え、えっと、そのケットシーという方が父と会ったのですか?』
楽俊はケットシーから聞いていたことをオカリナに伝える。
すると、オカリナは確認をとるような感じで聞き返してきた。
「ああ、聞いたのは電話でなんだけど、ケットシーはついさっきおいらと合流して…ぐあっ」
その情報を提供したケットシーと合流したことを伝えようとすると、突然背後から衝撃を受ける。
その衝撃と同時に体中に激痛が走る。
倒れながらもなんとか後ろを見ると、ケットシーが自分に鉄筒を向けている。
ふと下を見ると腹から血が流れている。
「ケットシー…これは…どういうことだ……?」
激痛が走ったのは一瞬だったものの全身の痛みはわずかに残っている。
それでも楽俊はケットシーに問い詰めた。
しかしケットシーは聞く耳を持たずさらに鉄筒から弾丸を放つ。
その弾丸は無情にも楽俊の腹を貫く。
この一撃で再び激痛が楽俊の身体を駆け巡る。
そして強烈な痛みは楽俊を気絶へと追い込む。
- : Four Piece of History ◇k3fZfnoU9U代理 [sage] 2010/04/21(水) 19:13:34:aJjnWGoE
- ◇
楽俊は暗い闇の中にいた。
意識はあるものの辺り一面は黒で覆われている。
(何も…見えない?……ん?)
急に自分の魂が流れ出す感覚に襲われる。
抵抗しようとするも身体自体が動かない。
その間にも魂は流れ出ていく。
(納得は…できないが……おいらはもう…死んでしまうんだな)
楽俊は自らの死を悟る。
同時にキュウビを倒すどころか、直接闘いを挑むことすら出来なかった自分自身に不満を持つ。
(もう…どうにも……ならねぇな…、頭が……霞んで…)
次第に考える気力も失われていく。
そして彼の意識は深い闇へと落ちる。
どこまでも、どこまでも…。
◇
亡骸を除き誰もいないホテルの一室。
ケットシーが投げた小さな金属片―DG細胞が楽俊の亡骸を侵していく。
生前の人格を消しゴムで消すかの如く彼の脳を浸食する。
やがて亡骸はゆっくりと立ち上がる。
「きいいいぃぃぃりゅりりゅりしいいいぃぃぃ!」
立ち上がると共に魔物はおぞましい産声をあげる。
もはや穏便であった彼の面影は何一つ残ってない。
「殺ス…全テ殺ス」
生前の彼が言うとは思えぬ台詞を発し、魔物と化した楽俊は怪力でドアを壊し犠牲者を探し始めた。
- : Four Piece of History ◇k3fZfnoU9U代理 [sage] 2010/04/21(水) 19:15:20:aJjnWGoE
- 【D-4/ホテル/1日目/午前】
【楽俊@十二国記】
【状態】:自我崩壊
【装備】:なし
【道具】:なし
【思考】
基本:見カケタ奴、殺ス
1:誰かを見つけたら問答無用で殺す
【備考】
※一度死んだあとDG細胞に浸食されたため、自我が崩壊しています。
※DG細胞により戦闘力と再生力が強化されています。強化の程度に関しては次回以降の書き手にお任せします。
※楽俊の基本支給品(食料除く)が部屋中に散らかっています。
【DG細胞@機動武勇伝Gガンダム】
デビルガンダム化したディマリウム合金の一種。
感染すると肉体が強化されるがゾンビ兵と化する。
また死者を復活させることもできるが、
細胞の影響なのか生前と人格が異なる状態となる。
代理投下終了です
ああ、楽俊…
ここでDG細胞か…ケットシーは本当にもうねw - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/21(水) 19:51:16:aJjnWGoE
- アライグマの父、代理投下します
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/21(水) 19:53:19:aJjnWGoE
- バンッっと威勢の良い音と共に、アライグマの父は足元のスイッチを踏み抜いた。
その音を合図にして、正面の格子がガラガラと引き上げられていく。
上空に漂っている疾飛丸が動き出せない間に、体を丸めてアライグマの父は格子をくぐり抜け、目の前のコースを見渡す。
――やっぱり特に妙なしかけは無えようだな――
レース前に格子の間から見たコースの様子と、実際のコースとのズレが無いことを確認し、続いて軽く後ろを振り返る。
格子は今まさに引き上げ終わる直前で、そのすぐ後ろで疾飛丸が二、三回その身を震わせている。
はやる気持ちを押えきれないのか、その動きはまるで闘牛場の牛が突撃する時に後ろ足で地面をこする仕草にどこか似ていた。
そんなやる気充分の疾飛丸を視界の端に捉えて再びアライグマの父が前を向くのと、
格子が上がりきって疾飛丸の前を遮るものが無くなるのは、ほぼ同じタイミングだった。
アライグマの父が走りだす。
疾飛丸も文字通り飛びだす。
アライグマの父はドタドタと音を立てながら走る。
疾飛丸はスーッと風に流されているように飛ぶ。
アライグマの父は走り続ける。
疾飛丸ももちろん飛び続ける。
アライグマの父が疾飛丸の方に振り向く。その分スピードは遅くなる。
疾飛丸にはアライグマの父は見えている。スピードも遅くはならない。
アライグマの父が疾飛丸に抜かれる。
疾飛丸がアライグマの父を追い抜く。
ちょうどコースの半分を過ぎた時、順位が入れ替わった。
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/21(水) 19:54:25:gx3AXC1z
- sien
- : Raccoon Over The Castle代理 [sage] 2010/04/21(水) 19:54:54:aJjnWGoE
-
疾飛丸が先頭におどり出る。
アライグマの父が後退する。
疾飛丸は変わらぬペースで飛び続ける。
アライグマの父のペースが一段上がる。
疾飛丸からは特に何の音も聞こえない。
アライグマの父の呼吸音が大きくなる。
疾飛丸の表情は変わらない。もとい変えようが無い。
アライグマの父が歯をくいしばる。顔の赤みが増す。
疾飛丸のスピードは最初と変わらない。常に一定のペースで飛ぶ。
アライグマの父が走るスピードを上げる。足音のテンポが短くなる。
疾飛丸がアライグマの父に追いつかれる。それでもスパートをかけたりはしない。
アライグマの父が疾飛丸に追いつく。さらにギアを一段上げ腕をふり腿を上げる。
その結果。
入り口と同じ形のゴールに先に着いたのは、アライグマの父。
三本勝負の一本目を制した格好となった。
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/21(水) 19:55:17:gx3AXC1z
- SIREN
- : Raccoon Over The Castle代理 [sage] 2010/04/21(水) 19:55:43:aJjnWGoE
- 「旦那ア、中々ノ走リップリデシタゼ。トテモ一児ノ父親ニャ見エマセンナ」
「うる、せえ、よ、テメエ、が、チンタラ飛んで、やがるから、だ、ろうが!」
「ソリャ最初ハ、アッシノ速サガドンナモンカ相手ニ知ッテオイテモラワント、公平タァ言エヤシマセンシ」
「けっ、妙に、りちぎ、な、紙っペラ、だな、おい」
二本目のコースを目指す途中の階段を登りながら、試合後の感想をぶつけ合う対戦者たち。
勝者であるはずのアライグマの父が息を切らしながら毒づくのに対して、
敗者であるはずの疾飛丸が全く変わらず淀みなく返答している姿を見ていると、どちらが勝者なのか一目では分かりづらい。
ギシ、ギシと先に進む度に木製の階段から音が鳴る。アライグマの父には、その音は安心できる音だ。
彼にとって、今まで見てきたこのユウエンチは訳の分からないものが多すぎる。
やたらと硬く、ざらざらしているのに石ころの一つも見当たらない地面――アスファルト――や、
首が痛くなるほど上を見なければ先端が見えない輪っか――観覧車――や、
それよりもさらに大きく、横にも奥にも広い現在地――キュービー城――。
しかしその中にあるここは、仕組みなどはさっぱり分からずとも木の匂いがする。木の音もある。
近くに居るのはシマリスでもなくアザラシでもなくスナドリネコでもなく、吹けば飛び千切れば破れそうな紙ではあるが。
ただでさえ、空腹と貧血が重なった状況で一心不乱に走り呼吸が荒くなっている所に、
さらに意味の分からない匂いや音を聞かされるよりはこの音はまだマシだ。
そうアライグマの父が息を整えながら内心考えていると、上のほうから光が差してきた。階段の終りが見えたのだ。
「サテ旦那ア、ココガ二本目ノコースデスゼ。スタートハ一本目ト同ジ、ルールモ勝敗ノ付ケ方モ同ジ。違ウノハコースノ中身ダケデサァ」
「おい、中身が違うってのは、どういうこった」
「ソコハ見テノオ楽シミ。実際ニ走ッテミテ感ジテクダセエ」
そう言われ、アライグマの父は格子の間からコースの先を見るが、既に違いが見てとれる。
先程のコースでは確認出来たゴールが見えない。かといって、距離がとても長いわけではない。つまり……
「おい、なんで坂道があんだよコラ」
「タダ走ルダケジャ面白クネエデショウ?」
「答えになってねえぞテメエ!」
アライグマの父が思いっきりガンを飛ばしても、疾飛丸は何処吹く風と言わんばかりに
フヨフヨと移動し、格子の前に立ってその時を待つ。
それを見ていたアライグマの父もはぁ~、と一際大きなため息をつき、呼吸を整える。
そして、二本目のレースが始まった。
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/21(水) 19:56:18:gx3AXC1z
- C¥
- : Raccoon Over The Castle代理 [sage] 2010/04/21(水) 20:00:37:aJjnWGoE
- けっ、さっきは出発も一緒だったからな、今回は先に差を広げておかねえと。
にしてもいきなり坂道かよ。
あの紙は飛んでやがるから関係ねえが、こっちは二本の足で登るんだぞこら。
メンドクセえもの拵えやがって……って、もう下りか!
ああくそう、こんなビミョーな坂道なら無くてもいいじゃねえかよ。
大体、何で俺はこんなことしてんだ。
よくよく考えてみりゃあ、腹が空いたから何かしら食い物を探してたのによお。
なんで走り回ってんだおい。
余計に腹が減るだけだろが。
かといって、今後ろを飛んでやがるハズのアイツに負けるのも気に入らねえ。
クソったれ、それもこれも腹が減ってるからだ。
あの丸太に頭ぶつけた時に、食いものが落ちたのがなあ……
あれは俺のもんだろう?誰かが拾って食ってたら承知しねえ。
あの猿だろうがワニだろうが思いっきりケツを蹴っ飛ばしてやる!
多分あの丸太もあの野郎たちがはぁ!?
痛てえ!何だ一体!?
頭?頭をぶつけたのか俺は!
何に?特に何も無いはずだろう?
こりゃあ丸太!?何でこんなところにって……下からかよ!
ああくそう、腹減ってるせいで余計なこと考えてる間に出てきたのか!
それに気がつかず、俺はそのまま激突した、と。
とんだ間抜けじゃねえかおりゃあ。
ああくそ、今度は頭が痛てえ。
畜生、あの野郎先に行きやがった!
待ちやがれ、ふん捕まえてとっちめてやる。
なぁにが「ヨク分カリヤセン」だ。
しっかり丸太の先っぽのちょっと上を飛んでるじゃねえかよ。
どうみても仕掛けを知ってる飛び方だぜありゃ。
っと、アブねえアブねえ。
二度も三度も同じ手に引っかかる訳ねえだろう。
俺が近づくと下からニョッキリというわけか。
仕掛けが分かれば、あとは脇を通りゃ済む話だ。
にしても、あれが直前に出てくる仕掛けで良かったぜ。
足元からあんなのが飛び出てきたら、足や股がエライ目にあっちまう。
特に股に当たってみろ、身動きが取れなくなるに決まってる。
それを考えりゃ、少しはマシなのか。
まぁとっ捕まえてひっぱたくのは変わらねえがな。
- : Raccoon Over The Castle代理 [sage] 2010/04/21(水) 20:01:34:aJjnWGoE
- よっしゃあ、あの紙に追いついてきたぜ。
よく見りゃ上のほうにも妙な出っ張りがあるみてえだな。
野郎も一応は速さを出せないようにされてんのか。
そういや最初の場所に鳥もいた気がする。
てコトは、あの猿やワニもここを走ることがあるかもしれねえのか。
アイツらなら格子をぶち壊して、先に進みそうだがなあ。
ん?何だこのゴゴゴゴって音は?
上から聞こえてくるぞ、まさか今度は丸太が降ってくるのか!?
いや違え、上の方で丸太が横に動いてるんだ!
何であんなよく解らんことを……と思ってたらこっちにも来たぜ。
今度はちゃんと前を確認してるからな、さっきのような下手はうたねえ。
せーの、おりゃあ!
へっ、飛び越せば何てことは無いぜ。
つーことは、上のヤツは飛んでいる連中向けの仕掛けか。
色々考えてやがるな、コレを作った奴も。
飛んだり跳ねたり、いちいち面倒くせえ動きをさせやがる。
お、アイツも足止めか。
ざまーみろ、この間に抜き返してやる。
本当ならこの時に怒鳴りつけてやるんだが、流石に息がやばくなってきやがった。
畜生、年は取りたくねえなあ。
足の方はまだ大丈夫だが、息が苦しくなってきてるぜ。
こうやって、丸太を飛んだ、り、屈んでかわし、たりするから、余計に疲れる。
野郎は飛んでいるから疲れねえだろうけどよ。
っと、やっと最後が見えてきたか。
この下のほうの丸太を飛び越えりゃ、この先には何もねえ。俺の勝ちだ。
テンシュカクとやらにある『良い物』は後回しにして、まずは食い物だ。
空きっ腹で血も足りない俺をここまで走り回らせたんだぞ。
たらふく飯を食わなきゃやってらんねえぜ。
あの紙をとっちめるのはその後だ。
さあ飛ぶぞ、いち、にの、さんっ!
………………。
…………。
……。
ああ、そういう事をするのかテメエらは。
最後に上と下、両方の丸太をずらして出してきやがった。
このままじゃ、上の丸太に頭をぶつけちまう。
でも、俺にゃそれを防ぐことは出来ねえ。
こうやって考えてる間にもどんどん近づいてくる。
ああくそ、痛てえんだろうなあ。
せめて歯ぁ食いしばっ!!
クソったれ、やっぱりいってえ!
いてえ!いてえよ!
頭の中でグワングワン響いてるぞ畜生!
しかも上向いて倒れてるからあの野郎が先に行くのが見えやがる!
そんなに見せつけてえのかよコラァ!
覚えてやがれ、只じゃ済まさねえぞあの野郎……
二本目を制したのは疾飛丸。
アライグマの父は、落ち着いて走っていれば勝てたレースだが、後の祭りである。 - : Raccoon Over The Castle代理 [sage] 2010/04/21(水) 20:02:14:aJjnWGoE
- 「おい、俺はもう帰る」
「旦那ア、キュウビ様の話聞イテ無カッタンデ?」
「そうじゃねえ、このキュービー城から出て行くってんだ!!」
怒り心頭と言わんばかりに眉間に皺を寄せながら宣言するアライグマの父。
顔が赤いのは先程ぶつけただけではあるまい。
「大体よお、なんで俺がこんなに飛んだり跳ねたりしなきゃなんねえんだ!
そういうのはガキがするべきことだろうが!別に獲物を追っかけてるわけでもねえのにこれ以上やってられるかああ!!」
「ソウハ言ッテモ旦那ア、ココジャソウイウ決マリニ……」
アライグマの父のまさかのリタイア宣言に疾飛丸も困惑を隠せない。
彼からすれば、一勝一敗で迎えた三本目を楽しみにしていたところに冷や水を浴びせられた格好である。
「うるせえええ!いいから食い物よこしてさっさと帰らせろ!!」
しかし、アライグマの父がこれから三本目を走ってくれるとは到底思えないのも事実であり、疾飛丸は考える。
このまま三本目を走るように説得するか。
参加賞の食べ物を渡してお引き取り願うか。
いざ考えを比べてみれば、答えを出すのは簡単であった。
「ワカリヤシタ、旦那ガ三本目ヲ走ッテクレソウニナイノハ、アッシモ理解シヤシタ。
今カラ食イ物持ッテクルンデオ待チクダセエ」
「判ったんならとっとと持って来い!」
そうしてしばしの後、参加賞として疾飛丸が持ってきたのは梅干とお粥と炭酸の抜けきったコーラの三つ。
とある世界では試合前に食べるには最適の食事とされている。
アライグマの父も、梅干は論外としてコーラとお粥は文句も言わず全て平らげた。
食事のあとの盛大なゲップが出た所で、疾飛丸が話を切り出す。
「サテ旦那ア、少シ目ヲツブッテクレマセンカネエ」
「あ?何でだよ」
「コレカラ旦那ヲ転送、ツマリ他ノ所ヘ飛バスカラデサア」
「ちょっと待て、いきなりそんなこと言うな」
「オ、準備出来タヨウデ。ソンジャオ達者デ~」
「ふざけんなああぁぁぁ」
こうしてまたもやアライグマの父は大移動を開始する。
心の準備が整わないうちに転送されるはめになったのは、三本目を楽しみにしていた疾飛丸の腹いせか。
それを確認する術も、自分がどこに行くのかもアライグマの父が知ることは出来ない。
今はただ、空腹が癒えた代わりに頭痛がひどくなっていくのを感じるばかりである - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/21(水) 20:02:24:gx3AXC1z
- 煙草
- : Raccoon Over The Castle代理 [sage] 2010/04/21(水) 20:03:06:aJjnWGoE
- 【???/???/一日目/正午】
【アライグマの父@ぼのぼの】
【状態】:頭部に怪我、尻尾に切創(止血)、疲労(中)、軽度の貧血、
【装備】:ディバック
【所持品】:地図、空飛ぶ靴@DQ5、魔除けの札@大神
【思考】
基本:積極的に誰かを襲うつもりはない……?
1:ふざけんなああぁぁぁ
2:自分がどこへ行くのか不安。
3:観覧車を自由に動かす方法を探す。
4:息子たちが心配。
5:疾飛丸はあとでシバく。
【備考】
※札は少し湿っています。
※アイテムの説明は読んでいません。
※イギーと情報交換をしました。
※空飛ぶ靴は遊園地の入り口前が指定されていました。
※B-1からA-2の遊園地入り口までの間にアライグマの父の支給品が落ちている可能性があります。
※空を飛んだ時、月が地上よりも大きく見える気がしました。
※ボニーの考察は獣の卍参照。
※疾飛丸はキュービー城から出られません。また、キュービー城に関すること以外は答えられません。
※疾飛丸との三本勝負で二本先取すると、“良い物”が貰えるようです。また、負けても菓子が貰えるようです。
※レース場のイメージはアライグマの父の主観です。参加者によっては他のことに気付くかも知れません。
※参加賞は梅干とお粥と炭酸の抜けきったコーラ@グラップラー刃牙でした。しかし他の参加者も同じものとは限りません。
※アライグマの父が何処に転送されたかは次回の書き手さんにお任せします。 - : Raccoon Over The Castle代理 [sage] 2010/04/21(水) 20:05:37:aJjnWGoE
- 代理投下終わりです
原作の雰囲気のまんまの親父だw
確かにこいつは短気だからこうなるよなw
そしてどこへ飛ばされたのやら… - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/22(木) 00:33:25:L3s+Ax3H
- お二方とも遅ればせながら投下乙です。
>今日も明日も変わるけれど――
イカルゴだんだん揺れてきてるな。
でも腹を括らないと、自分どころか仲間すら守れませんよ。
クズリ、メタ的な意味で鋭いw
そして、ホワイトハウスの地下に倉庫ですか。
隠し扉の後ろにだけものを集中させるなんて主催者、
カモフラージュが下手すぎるw
>Raccoon Over The Castle
親父丸太運無さすぎるw
どんだけ丸太喰らってんだこいつはw
堪忍袋の緒が切れレースを放棄した挙句ワープとは…
どこに行くかで命運が分かれるな。
最後になりますが、途中からの代理投下感謝します。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/22(木) 02:01:08:POfnNH45
- DG細胞って大丈夫か? ありとあらゆる意味で。
それだけなしにして楽俊を殺したほうがいいと思うんだが。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/22(木) 08:54:27:aUotBZq1
- Gガンキャラが出た時点で出るとは予想できたことじゃないか
このくらいのやつはほかロワでもあったから大丈夫だろ - : ◆k3fZfnoU9U [sage] 2010/04/24(土) 02:17:55:CWxgvhBe
- カエルを予約致します。
- : ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/25(日) 21:27:05:p+6QG+WA
- ニャース、キラパン、オカリナ、クロコダインを投下します。
長くなってしまったので途中で猿さん喰らう予定です。1
0分以上たって途切れていたらしたらばに投下していますので、代理投下お願いいたします。 - : 風は悽愴 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/25(日) 21:28:20:p+6QG+WA
-
(一)
外に飛び出した私たちを出迎えたのは唸るような強風だった。その風圧に、私の小さな翼は翻弄されそうになる。慌てて風を掴み直し、私は体勢を立て直した。
数刻前の穏やかさから一変し、上空の雲は大きな獣の群れのようにうねるように奔っていく。雨が来る。それも、もう間もなく。
湿り気は翼を重くするものだけど、この不調は天候のせいじゃない。
羽ばたき一つ一つに身体が軋みを上げるのが分かる。まだまだ若いつもりだったんだけどな。
「飛ぶのが難しいなら背中を貸すか?」
私の無様な飛行を見たプックルさんが心配そうな声を掛けてくる。普段なら遠慮する所だけど、今回は彼の言葉に甘えよう。
「申し訳ないですけど、お願いできますか」
調整しながら、私はプックルさんの背中に降り立った。紅色の柔らかな鬣に、私は身を埋めた。この動作だけでも、とても億劫だ。羽を休めた途端に、更に倦怠感が身体を包む。この姿で居る限り寿命で力尽きることはない。
とはいっても、この疲労は休息や睡眠で回復できる類のものではないから厄介だ。
それでも飛ばずにいられるだけでも多少楽にはなる。意外なことだけど、軽やかに大地を駆けて行くプックルさんの背中は、中々居心地がいい。ただ、動いていないと嫌な推測に思いを巡らせることになりがちだった。
まずは楽俊さんのこと。プックルさんの言うとおり、生きている可能性は零じゃない。だけど、あの声は致命的なものを含んでいた。命を多く奪ってきたからこそ、その命が続くか終わるかの判別が可能になってくる。
勿論外れる場合だってあるし、外れてほしい。だけど、あの状況でケットシーとやらが仕損じる理由もない。時間はたっぷりある。仮にピカチュウさんが全速力でホテルに向かった所で、到底間に合うものでもない。
もう一つは――。
「人間が出てくるとはな」
そう……。人間が見つかったことだ。
それが誰なのかは勿論だけど、この事実は危惧していたキュウビが参加者と縁ある部外者を人質にとっている可能性を示唆している。そうでなくとも、部外者が囚われている可能性は高くなった。
ただし、発見されたという学校がそうした部外者の収容所とは考えにくい。となると、必要が無くなったから捨てられたと考えた方が自然だと思う。例えば、その縁者である参加者が亡くなったとか。
この説だと、発見された方が私の知り合いの誰かである線は薄い。
ただ、重傷ということが気になる。捕まる時に、もしくはそれからも抵抗したために痛めつけられていたのだろう。キュウビが衛生環境等に気を遣うようにも思えないし。もしくは、痛めつけてからから放逐したのか。
今この時にサイザーさまが苦しんでいるとしたら……。
勿論。サイザー様は簡単に捕まるような方じゃない。ただ、ハーメルンさんたちを先に捕縛されたら分からない。あの人たちちょっと……いや相当抜けてるし。
それに加えて、キュウビの力が未知数なのも気にかかる。
もしもサイザー様を人質に取られ、殺し合いを強要されたら――私は今の方針を貫く自信はない……。
サイザー様と他の方たちを秤にかけたら、私は迷わずサイザー様をとる。あの子が私のすべてだから。
キュウビに敵対する行動を選択したのも、あの子が悲しむからだ。
やっぱり私って魔族なんだなあ。今更だけれど。
「話を聞けるぐらいには元気で居て欲しいものだ。うまく運べばキュウビとの直接対決も遠くないかもしれんぞ」
プックルさんは剛毅に笑う。彼は、自分の主たちが人質に取られているとは考えないのだろうか。
……考えないんだろうな。多分。
彼が楽観的だとか、私の発言を忘れているとか、主を妄信しているとかってだけじゃない。彼は主を持ちながらも自立しているのだ。誰かに一方的に依ることなく。
「なんか少し楽しそうですね」
- : 風は悽愴 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/25(日) 21:29:15:p+6QG+WA
-
私の口調には少し棘のようなものが含まれていた。
だけど、プックルさんはそれには気付かなかったようだ。肩越しに振り返った彼の瞳は、曇天の下で活き活きと輝いている。
「そう見えるか? でもまあ、たしかにそうかもな。これまでずっと。主のために戦ってきた。それはお前も同じだろう? だが、こいつは他の何でもない、オレの戦いだ。オレたち、人間に仕えてきたものたちのな。こう……グッとこないか?」
「……いえ、全然」
胸の内の焦りを悟られないよう、私はわざと連れない風を装った。
オレたちの戦い。プックルさんの言葉に、私は動揺していた。とはいっても、彼の言葉に感銘を受けたわけじゃない。残念ながら。
私はキュウビを倒すと彼らに告げた。そこに、生き残りたいという気持ちは微塵も含まれていなかった。そのことに気づいてしまったから。
それは多分、一度死んでいるせいじゃない。
サイザー様に危害が及ぶかもしれないからキュウビを倒す。それしか、私にはない。
私はずっと、あの子にかこつけて生きて来た。あの子のためという鎖で、自分を律していた。そうして世界と関わってきた。あの子のためと、人間を――そして同胞を殺してきた。その果てに、成り行きで人間たちの救世主の一人になろうとさえしていた。
まったくもって都合のいいことだと思う。軽蔑していたギータやドラムなどの方が余程真摯だった。魔族の立場で、これ以上ないほどに純粋に人間と向き合っていたんだから。
私に意志などなかった。多分、今も――。
「むぅ。漢心が分からん奴だ。やはり雌雄関係なく睾丸は必要だと思う次第だ」
「そんな汚らわしいもの要りません。邪魔ですし」
ぼやくプックルさんに、私は苦笑する。
彼は私とは違う。隷属ではなく、もっと健全で親密な関係を主と築いてきたんだろう。それが少し嫉ましい。
沈んでいく思考を振り払うために、私は話題を探した。そういえば、プックルさんから本を無理やり預かったんだっけ。ずっと彼が咥えているもんだから、涎で酷いことになってたし。これにしようかな。
「ところで、あの本のことなんですけど、ちょっといいですか?」
結局、話題は何でもよかったんだけどね。ただ堂々巡りしそうな思考を遮断したかった。それに、先程プックルさんとのあの本について話し合った後からずっと考えていたことがあったのだ。
「……俺の仮説は間違っていないぞ。何せ間違いだという証拠がないからな」
そんなわけで話に出したのだが、プックルさんは途端にどこか拗ねたような声音になった。まだ自分の仮説に拘泥しているようだ。余程自信があったみたい。
サンプルの少ない状況で立てた仮説なんだから覆されるのは仕方ないことだと思うんだけど。
ただ、強面の彼が子供のように意地を張っている様は、少し可愛いと思う。
「多分あれは人間という表現を使っていないだけなんだ。忘れたか? 星を喰う存在の話にも人間は出ていなかったじゃないか。自慢じゃないがオレはすっかり忘れていたぞ!」
何故か胸を張ったような口調で告げてくる。嘆息を一つ溢して、私は翼を軽く振った。
「なんで偉そうなんですか。それに話したいのはそのことじゃありませんよ。あの本の持つ意味です」
「意味? ピカチュウの同じで拘るんだな。今のところ名称をぼかす理由もないし、キュウビがあれを書く理由もない。つまりは存在に意味はない。理由を考えるのも馬鹿馬鹿しい。殺し合いの役に立たん代物だと分かっていることで充分だ。
何か出来た所で、せいぜいオレのすまーとな仮説を混乱させようとするぐらいだ。その目論見を見事オレは看破したがな」
そう。プックルさんの言うとおり。本には、殺し合いに関する限りメリットがない。
そんな無意味なものを製作し、支給する。こんな無駄なことはない。キュウビの遊び心とも考えられるけど、それは余裕がある場合だ。
この殺し合い自体に不備がないかというと否としか言えない。殺し合いを催す場としては、ここはあまりにも非合理的すぎる。
遊びを入れる暇があるならば、その前により効率的に殺し合いを進められるようにしようとするのが当然だと思う。
この殺し合いが呪法――儀式であるならば尚のこと、万全を期して臨むはずだ。ただでさえ幾つもの異世界を渡る大掛かりなものであることだし。
- : 風は悽愴 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/25(日) 21:31:28:p+6QG+WA
- 「そこなんです。もしですが、この本がキュウビの手によるものでないとしたら? そして、無意味に“見せかけたい”のだとしたら、これの存在意義が変わってきませんか?」
後半部分の彼の妄言は丸っきり無視して私は問い掛けた。こちらの意図を測りかねているのか、プックルさんの速度が少し落ちる。それともツッコミが欲しかったのかな。
「……何が言いたいのか見当もつかんが」
彼の鳴き声には少し落胆した響きがあった。これは本当に後者だったのかもしれない。まあ、気にしないでおこう。揺れたので、彼の体毛をもう一度しっかりと掴み直す。
「私たちに是を以て何かを伝えたい存在がいるかもしれないってことです。それも、この儀式の行使に深く関わっていて、それでいてキュウビとは別の思惑を持つ存在が。キュウビに仲間がいることが前提の話ではありますけど」
「無意味に見せかけたいというのは、どういう意味だ?」
「木の葉を隠すなら森の中ってことですよ」
首を傾げたプックルさんに私は言葉を重ねた。彼に支給されていた物品を例に挙げる。
「プックルさんのバッグに入っていた柿の葉ですけど、あれはどうみてもただの葉っぱでしたよね?」
「オレの世界には世界樹の葉と言う反魂の力を持つものがあったし……実は隠された力とかがあるんじゃないかという期待を熱く胸の内に秘めているのだが」
「いやでも、“古本屋・本の虫の老夫婦思い出の品”と説明ありましたし。ていうか、秘めた所でどうなるもんでもないでしょ」
「むぅ……世界樹の葉は売れるんだぞ、250ゴールドで」
「どんだけ安く買い叩かれてるんですか……。物価とかその辺を知りませんけど。ま、それは置いといて。殺し合いの参加者に渡すものとして、あまりにナンセンスだと思いませんか?」
「まあ、な。そういえばあの犬の鞄には笛も入っていたな。余程クジ運がないらしい」
プックルさんは苦笑したようだ。私からすれば、笛は一概に無力とは言い難いんだけど。ただ、ここで口を挟むとややこしいことになるので黙っておく。
「そうでしょう? わざわざ支給するんですから、殺し合いを効率的に進めるための物品であるべきです。武器とか防具とか。それなのに、こういった物を紛れ込ませるのは無駄がすぎます。しかし、こういった役に立たない代物は他にも沢山支給されているんだとしたら……?」
しばしの沈黙。鬣越しに流れて行く世界は、淡い赤色だ。やがて意味することが伝わったのか、プックルさんの耳がぴくんと動いた。
「……なるほどな。キュウビ以外の何者かがオレたちに知らせたい何かを、キュウビに気付かれずに入れるためにゴミのような代物を多数投入して誤魔化したと言いたいのか」
「ええ。その何者かの真意は分かりませんし、実際にいるとも限りません。ですが、こう考えれば、あの本の説明は付くと思うんです」
私は言い切った。
こう言ってはなんだけど、我ながら相当飛躍した考えだ。気を紛らわすためとはいえ、後で思い返したら赤面するんだろうな。それに付き合わされたプックルさんには申し訳ないけれど、まあ、聞くだけならタダだし。
と、プックルさんが肩越しに私をちらと見た。内心を見透かされたのか、その目には揶揄するような色がある。
「その本が“森”に相当するのかもしれないぞ?」
「……否定はしませんよ」
「更に加えると、おまえの説はキュウビが殺し合いの効率化など考えていない場合には意味をなさんな」
意外な切り返しに、私は鬣に埋めていた顔を上げた。戯れとはいえ、根本から指摘されるとは思わなかった。
無意識に、私は嘴をとがらせた。
「確かに、このは殺し合いは非効率的な要素が多すぎます。でも、これは手が回らなかったと考えられるのではないですか? 呪法を行うということは、何かしら事を急ぐ必要があったからでしょう?」
- : 風は悽愴 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/25(日) 21:32:43:p+6QG+WA
-
私の脳裏には大魔王ケストラー復活のために、そして聖杯のために魔族たちが奔走していた記憶が鮮明に残っている。あれは自らの永遠の命を保つという、切羽詰まった事情があったのだ。
事が大きくなればなるほど、それで解決せねばならない問題も大きいものだと思うんだけど。
「そいつは、おまえが呪法のための殺し合いを効率的に進めなければならないと信じ込んでいるからだ」
今度は私が困惑する番だった。どう相槌打っていいものか迷う。プックルさんは続けた。
「確かに、あの魔王は呪法のために殺し合ってもらうと言っていた。だが、果たして呪法とこの殺し合いは直接結びつくのか?」
「と、いいますと?」
「殺し合いは呪法に関与しているが、殺し合いそのものが呪法とは限らんってことだ。そもそも、キュウビは呪法と言ったが、そいつをオレたちに告げる必要はないんだ。それが真実だとしてもな。
殺し合わねば呪法が完成しないのなら、そりゃあ自分から弱点を曝すようなもんじゃないか」
「………………」
「それをわざわざ教えるということは、オレたちにこの殺し合いこそ呪法だと思わせたいという意図があるとも勘ぐれる。または、殺し合いを隠れ蓑に別の何かを進行させているのかもしれん。仮に殺し合いが呪法にとって重要性が低いものとしよう。
さて、真面目に支給品を整えたりすると思うか?」
「……いいえ。もしくは、無駄に力を入れた遊びを入れてくるかもしれませんね」
無意味な遊びをギータやオルゴールあたりならやってくるだろう。キュウビがそんな性格とは思えないけど。
「だろう? 効率化なんぞ二の次だ。第一、殺し合いを迅速に進めたいのなら、わざわざこんな広い舞台を用意しないだろ。それこそ闘技場か何か、狭い場所に押し込めてしまえばいいんだ。この舞台の広さでは時間稼ぎにこそなるものの、スムーズな進行など無理だ。
現にオレたちは半日経つのに四匹の獣にしか直接遭遇していない。
さて、こうだとしたら本に意味などあると思うか? 一転、無意味になっただろ?
要するに、まだ分からん部分をあれこれ考えたところで暇つぶしにしかならん。だから、今理由だのなんだのを考えるなんてのは馬鹿馬鹿しいんだ。
大体、おまえの仮説はキュウビの言動や行動が真実であることが大前提じゃないか。しかも、あいつの話を裏付ける物証も推察するに足る情報もない。土台が泥沼じゃあ、どうしようもない」
プックルさんはそう言って、少し苛立たしげな吐息をついた。
……なるほど。プックルさんはこんな風に殺し合いを見ていたのか。だから、彼と私たちの議論に時たまズレが生じていたのだ。単にその……天然なんだと思っていたんだけど。
がふぅと、プックルさんが咳払いをしたのが聞こえた。
「あのな。考えても仕方のないことに執着することを、それこそ無駄と言うんだ。どんな結果だろうと、もう起こってしまったんだから俺たちにはどうしようもない。まあ、なんだ……こうでもしないと目を逸らせないなら、付き合いはするがな」
「………………」
しかも、私のことなんかお見通しと来た。鈍いようで、彼は中々どうして聡いところがある。それとも大雑把な彼に気遣われるほど、陰気な空気を纏っていたのだろうか。なんか……ショックだ。
無言の私に対し、プックルさんの胡乱気な視線が向けられる。
「どうした?」
「……プックルさんって頭が悪いわけじゃなかったんだなあって。ただ非常識で大概に於いて大雑把なだけだったんですね。驚きです」
「ほう。どんな風にオレを見てたのか後でじっくり話し合う必要があるようだな」
「必要ないです。言ったまんまですし」
「……ないのか」
半眼になって呻くプックルさんを見て、私は失笑した。不機嫌そうに彼が鼻を鳴らす。
突然。彼の身体を緊張が伝流のように迸ったのを感じる。体毛が総毛立ち――刹那の後、彼は後方へ飛び退った。
「ちょっと――!?」
私は非難の声を上げ――それは半ばで途切れた。
寸前まで身体があった場所を一本の大きな杭が唸りを上げて貫いたのだ。それは着地点の大地を地響きと共に大きく抉り、土塊と粉塵を周囲にばらまいた。杭だと思っていた代物が、寸断された大木だと漸く気付く。
- : 風は悽愴 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/25(日) 21:34:08:p+6QG+WA
-
まったく気付かなかった。自分で思っている以上に衰弱してるってことか。
プックルさんが怒りも露わに吼えた。脇手の森から大柄な人影が姿を現す。鎧と大きなマントを着込んだ、隻眼の赤い竜人。巨大な剣を担ぐ姿は、私に幻竜王ドラムを思い起こさせた。
竜人は私たちを舐めるように見、そして隻眼を細める。プックルさんもまた、その竜人を凝視していた。顔見知りなのだろうか。
「丁度よく威勢のよさそうなのが居たもんだな」
その言葉を背後に置き去りにし、竜人は一気に間合いを詰めてくる。大地を揺らすような踏みこみと共に、担いでいた大剣が一息に振り下ろされた。その際に巻き起こった烈風が、見た目通りの質量を持った業物であることを報せている。
そして、竜人が殺し合いに乗っていることも。
寸での所でプックルさんは左方へ身を躍らせて避ける。叩き斬られた空気が、旋風となって彼の体毛を掻きまわしていった。着地と同時に小刻みに跳んで、プックルさんは竜人との間合いを取った。
切っ先は大地を割っていた。竜人の膂力は相当なものだ。
「先に行け。足止めはやってやる」
竜人から目を離さずにプックルさんが小さく唸る。確かに、ここで時間を取られれば人間は助からないかもしれない。引いては、貴重な情報源が失われてしまう。
だけど――。
竜人の放つ威圧感は、私まで息が詰まりそうなほどだ。一人では荷が重い。それはプックルさん自身も分かっている。彼の全身が総毛立ち、尻尾は緊張でぴんと張り詰められているんだから。
ここで私が変身を解けば、援護が出来る。だけど多分……私の命はない。一度失った命に未練はない。ただ、人質を取られている可能性が幾許かでもあるのなら簡単には捨てられない。
躊躇っている私に、プックルさんが吼えた。
「頭の悪いメスだなあ。オレに治療が出来ると思ってるのか? それにな、オスの面子ってのは立てるもんなんだぞ」
髭に緊張を奔らせながら、それでもプックルさんは不敵に笑って見せた。卑怯な私を後押ししてくれている。私の行動を――正当化してくれている。
竜人が下段の構えから、その巨体には似合わぬ滑らかな動きで迫る。
……ありがとう。そして、ごめんなさい。
目を伏せ、私は彼の背中を蹴った。翼を広げ上空へと羽ばたいた私は、風を掴んで一気に厚い雲の元へと舞い上がる。
風が私の翼を奪おうと襲い掛かってくる。だけど、負けるわけにはいかない。私は悲鳴を上げる自分の身体に鞭を入れた。
大地と大気の悲鳴を背中に聞きながら、私は学校へと急ぐ。音はやがて小さくなっていった。
- : 風は悽愴 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/25(日) 21:34:56:p+6QG+WA
-
(二)
下段から振り抜かれた剣先が蛇のように伸びる。それを身を沈めてやりすごし、プックルは猛然と踏み込んだ。しかし、その途中で頭上に影が落ちたのを見、彼は足を素早く踏みかえて横転する。
地面越しの振動に、小さく体が跳ねた。
振り下ろされたのはリザードマンの野太い尻尾だ。鱗と筋肉という天然の装甲に覆われたそれはさながら鉄棍のようだ。現に叩かれた地面は陥没し、砂利が大きく弾ける。
実質、二刀を振るわれているに等しい。リザードマンは爪先の方向に身体を反転させると同時に、手首を返した刀で地面を薙いだ。落ちかかってきた刃を、プックルは大きく跳躍して躱す。
荒い息をつきながら、プックルはリザードマンを睨めつけた。気を抜けば竦みそうになる四肢を叱咤し、汗ばむ足裏で大地をしっかりと掴む。この大トカゲは、自分には少々重すぎる食べ物だと認める。頃合いを見て、逃走に移るのが最善だと本能が告げていた。
逃げ切る自信はある。
ただし、気がかりなのはニャースたちが自分たちの臭いを追ってくるかもしれないことだった。ニャースらがどんな魔物か知らないが、ピカチュウの話からは闘争に向いた種ではなさそうだ。アマテラスに関しては全く情報がない。
逃走した後、ニャースたちがリザードマンと遭遇する可能性は高い。とはいえ、どのみちプックル自身にも勝算が薄いのでは心配した所で結果は同じだ。
(気にせずに逃げ、首輪の解除が可能なものを新たに見つけるのも一つの手ではあるが――)
リザードマンは既に大剣を青眼に構え直していた。リザードマンは無造作に間合いを詰めると、半身を捻った上半身から肩口へ鋭く打ち込んできた。凄まじい迫力を伴った一撃は、周囲の空気を破裂させながらプックルへと迫る。
それを際まで引き付け、プックルは素早く足を送った。
逃げ遅れた体毛が一房、剣風の中を舞う。
プックルの身体は大剣の陰へと入った。プックルは四肢を収縮させると疾風の如く跳びかかる。咆哮と共に前足の魔爪を布の上から叩き込んだ。しかし、あろうことか爪は紫紺の絹布の上を滑ってしまった。分厚い布地に阻まれた爪がしゃしゃと口惜しげな声を上げる。
(くそ……なーんか見覚えがあるような気がしていたと思えば! ついでにあの留め紐も!)
プックルは忌々しく口吻を歪めた。リザードマンが身に付けているマントは、大魔王との決戦で彼の主が纏っていた代物だ。その柔らかな外見とは裏腹に驚くほどの強度を誇り、耐熱・耐寒効果まで併せ持つ。ほぼ全身を覆う布は、これ以上ないほどの強固な鎧と化すのだ。
渾身の一撃をいなされ、プックルは一瞬ではあるものの無防備な状態となった。それを見逃すほど、相手は盆暗ではなかったようだ。動きを止められたプックルの背に大剣の切っ先が突き込まれる。身を捩るも――逃れきれない。
しかし運よく剣先は逸れ、脇腹を掠めるに終わった。それでも衝撃にプックルの身体は弾かれる。零れた血が、色あせた草の上にどす黒い綾を落とした。
跳ね起きたプックルを迎えたのは漆黒の突風だ。颶風を纏う刀身に、プックルは敢えて飛び込んだ。半歩にも満たぬ動きで身体を捌くと、刃は戸惑うように空を刈った。
プックルは地面を蹴りあげた。跳躍の勢いを乗せて突きあげた前足をリザードマンの下顎に叩き込む。
戛と鉛を叩いたような音が響いた。
- : 風は悽愴 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/25(日) 21:35:58:p+6QG+WA
-
まるで巌を殴ったように、プックルの肩を痺れが突きぬける。多少無理な体勢からだったためか、爪は鱗を削いだだけで下の肉にまでは潜り込まなかった。それでもこの一撃にリザードマンは多少よろめく。
相手の顎を蹴り、プックルは小さく後方へと跳んだ。リザードマンの左手が空を掴む。それを視界に捉えながら着地したプックルは再度突進した。
(こりゃあ……ひょっとするとひょっとするかもしれんぞ)
プックルの思考に浮かぶのは、脇腹を掠めたあの突きだ。あれは外してはならない、外すはずのない一撃だった。乳離れしたての子供ならいざ知らず、このリザードマンの体捌きは熟練の匂いを漂わせている。
それなのに彼は刺突を外し、それ以外の斬撃はプックルの動きを追尾しきれない。
加えて、先の左手もまた、プックルを掴むには微妙に位置がずれていた。
リザードマンの面相を見やる。彼が身に付けている眼帯には乾き切っていない血のにじみが残っていた。これは相手がこの地で右目を失ったことを物語る。
つまり――相手は片目での立ち回りに慣れていない。
と、プックルを迎え撃つ上段からの斬り下ろし。しかし、やはり軌道はプックルを捉えるには僅かにずれている。回避する必要もなく、そのすれ違いざまにプックルはマントからはみ出たリザードマンの足に爪を突き立てた。
赤い鱗を剥ぎ、その下の肉を僅かにえぐり取る。ぱしと、小さな血の花が咲き、焼かれた傷口から薄く煙が立ち昇った。
リザードマンが小さく舌打ちしたのを聞く。
怒りの咆哮の如く薙ぎ払われた尻尾を、プックルは躱さずに気合いの呼気と共に両足を交差させて受け流した。その一合で、懐に入られては満足に迎撃も出来ぬと悟ったか、リザードマンは素早く退いて遠い間合いを取ろうとした。されど、それをプックルは許さない。
草はらを駈ける雷光の如く、プックルは疾駆する。そして、細かい踏みこみと旋回を重ねて縦横無尽にリザードマンの全身に襲いかかった。迸る雷火のような獣影に対し、体勢を整え切れていないリザードマンの斬撃は虚空を打ち砕くのみ。
切り裂かれた空気が嘲笑うかのように重々しい唸りを立てる。
プックルの爪牙は腕や足、尻尾といったマントに覆われていない部分を浅く細かく切り裂いていく。重さを捨てて迅さを重視した攻めであるため、表面しか削れていない。だがしかし――。
(それで構わん!)
特に執拗に狙ったのは剣を握る右腕だった。幾つも刻まれた浅い傷から流れ出る血が、赤い鱗を艶めかしい朱に塗り潰していた。
首筋へと放った一撃がマントの留め具を捉え、紫紺の布がはらりと地面に広がる。
マントの下から現れたのは、所々を砕かれたぼろぼろの鎧だ。その下の鱗は無惨にも鬱血している。
掬いあげるような剣が迫るのを見、プックルは大きく後ろへ跳んだ。まぐれか、剣筋だけはプックルを両断していた。
上空へと突きぬけた烈風を噛み砕き、プックルは仕上げと稲妻を放つ。
青光りする閃光の蛇はリザードマンの右腕に喰らいついた。血と肉が焦げる臭いと共に、大剣が轟を伴って大地に倒れ込んだ。
常ならば撃たれた所で剣を取り落とすことなどなかっただろう。だが幾重にも重ねられた傷は、霧雨が巌を穿つように少しずつ右腕の感覚を奪っていたのだ。
稲妻の道筋を辿るように、プックルの身体が金色の風と化した。集中して狭まる視野に昂揚を感じながら、プックルは魔爪を振りかざした。
爪を突き立てるのは何処でもいい。肉に潜り込ませた上で爪に込められた魔力を解放する。内部より焼かれれば、如何にリザードマンといえども只では済まない。
血を浴びて光る紅蓮の魔爪は鎧に覆われていない腹部へと吸い込まれ――同じ紅蓮の爪に掴み取られた。リザードマンの左手が、繰り出したプックルの前足をしかと捕縛している。
リザードマンがにたりと口端を吊り上げたのが見えた。
- : 風は悽愴 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/26(月) 00:10:24:OXhvS3PF
-
「もう――慣れた」
呟きと同時に、プックルの腹部に右拳が叩きつけられた。半身を抉り取られたかのような衝撃が背中へと突き抜ける。
体腔で臓腑が断末魔を上げたのを感じながら、プックルの身体を大きく弧を描いて弾きとばされた。受け身も取れずに地面に墜落し、二三回大地を転がる。ごぼりと、プックルの咥内から大量の血塊が溢れ出た。
足音が近づく。起き上がろうにも身体に力が入らない。それに加えて、右前足がへし曲がっている。殴り飛ばされたときに折れたらしい。プックルがあれだけの手管を弄したのに、相手はたったの一撃でそれを打ち破ってしまった。
肺が酸素を求めて喘ぐが、せり上がる血塊に阻まれる。咳込むたびに激痛が全身を蝕み、感覚を奪っていく。
ぽつぽつと雫がプックルの顔に落ちてくる。とうとう空が泣きだしたらしい。
足音が止まった。目だけを向ければ、大剣を携えたリザードマンが隻眼を歪めてこちらを見下ろしていた。
「中々やるな。名を訊こうか」
「知って……どう、する? 墓、でも建て、るつも……りか……?」
プックルは僅かに歯を剥いた。この返答にリザードマンは苦笑を浮かべた。それをすぐに掻き消し、大剣を両手で下段に構える。
激しさを増す雨粒が刀身をより黒く染め上げて行く。
プックルは忍び寄る死の気配を感じ取りながらも、じっとリザードマンの動作をつぶさに注視した。視界が霞んでいくのは雨のせいだけではない。されど、プックルは静かに足掻いた。目を閉じるのを良しとしなかった。
もう動くことは叶わない。だが、やれることはまだ、ある。
下段に構えられていた大剣はゆっくりと流れるように持ちあげられ、八双のような構えに変わっていく。リザードマンがそれまでよりも深く、息を――吸った。
(くら、え……!)
プックルは残った力を全て爪先へと注ぎ込んだ。
炎の爪が一瞬だけ眩く輝き、一条の炎が放たれた。雨粒のカーテンを貫きながら、烈火の渦はリザードマンの左目へと迫る――。
「最期まで諦めぬ魂、見事だ!」
炎は幅広の刀身の上で弾けて消えた。リザードマンは即座に腕を返し、火炎を大剣の腹で受けてのけたのだ。炎の残滓を散らしつつ、刃は再度構えられる。
(しくじ……った――)
刃唸りを纏い、大剣は振り下ろされた。
- : 雨迷風影 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/26(月) 00:11:39:OXhvS3PF
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保健所らしき建物が見えた。強さを増す風に吹き飛ばされぬよう、マントを抑えながらニャースは叢を駆け抜ける。マントの透明化機能を用いているが、草を踏みつけ走ることまでが消えるわけではない。臭いの道筋が消えるわけではない。
人間はどうでも、獣を誤魔化しきることは難しい代物だ。
殺し合いに乗った獣が今にも飛びかかってくるのではないか。彼の鼻と耳が周囲に誰も居ないことを報せているにも関わらず、視えぬ恐怖に身を縛られていた。
頭を占めるのは墓地に置き去りにしてきたアマテラスのことだ。そして、白毛のライコウのような獣のこと――。
アマテラスは不可思議な技を持っている。充分に勝てるはずだ。だから大丈夫だ。
そう自分に言い聞かせる。しかし、それを別の思考が両断する。
それならば、なぜアマテラスは追いついてこないのか。
滲みだす涙を振り払い、ニャースは這う這うの体で叢から飛び出した。
入り口の手前でマントを脱ぎ捨て、屋内へと飛び込む。
「オカリナ! プックル! ニャースにゃ! アマ公がっ……」
助けを求めた声は、がらんとした室内の空気の中で萎んでいった。大声で叫んだにも関わらず、誰も出てくる気配はない。冷えた空気が室内に渦を巻き、何処かへと抜けて行く。
誰も居ない。ここで落ち合う約束をしたというにも関わらずだ。
(まさか、ここも襲われたにゃか!?)
その考えに、さぁと血の気が引いていく。しかし、辺りをよく確認してみれば、リノウム張りの床に獣毛が散らばってはいるものの、争ったような痕跡はない。
ただし、何者かの接近に気付いてここを後にした場合も考え得る。
尻尾をせわしなく揺らしながら、ニャースは玄関ホールを歩き回った。ふと、受付カウンターに紙きれが乗せられていることに気付いた。
その紙には綺麗な筆跡で、オカリナとプックルは学校で見つかった人間の男の許に向かったこと、そして楽俊が何者かに襲われたらしいことが書かれていた。
楽俊が襲われた。その記述に、ニャースは頭を殴られたようなショックを受けた。楽俊には襲われても、それに対処する力はない。一度だけ物理的な衝撃を反射すると言う鏡を持っていたが、それがどれほど役に立つかは知りようがない。
もし自分が保健所へと向かうなんて考えを起こさなければ、もしくはもっと強く誘っていればこの事態は避けられたかもしれない。白い猛獣に襲われることは変わらないとしても、三者がばらばらになることは回避できた。
最悪、この地でずっと行動を共にしてきた友人を二人同時に失うことになる。
そして何より気に障るのは、オカリナたちが襲われた楽俊よりも学校に現れたという人間の男を優先したことだ。脱出に繋がるかもしれない光明を見つけ出したのは楽俊だ。
ホテルに向かっているはずのピカチュウを信頼したのかもしれない。冷静に間に合わないと判断したのかもしれない。
- : 雨迷風影 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/26(月) 00:13:58:OXhvS3PF
-
しかし、どうやって彼女らはその情報を知ったのだろうか。考えられるのは、逃げのびた楽俊から直接連絡を受けたか。
それとも、襲われた現場に居合わせたのか。何か新たな情報を得た楽俊が、オカリナたちに電話でそれを伝えようとする様は容易に想像できる。その最中に楽俊が襲われた。
どちらにしろ、それを知った時点では手遅れだ。それは分かる。
だから、まだ事態の終わっていない人間のことを選択するのは理にかなっているとも思う。
だが、感情が納得しない。待っていてくれても良かったのにと思ってしまう。
そうであれば、合流した所でアマテラスを援護に行き、ホテルに突入し、そして学校へ向かう。そんな手だって打てたのだ。
けれども、今のニャースにはここでオカリナたちの帰りを待つか、彼女らを追うことの二つの道しか残されていない。楽俊とアマテラスの両方を一時的にしろ見捨てなければならないのだ。
かといって、自分が救援にいったところで足手纏いになるのは明白だ。己の無力さに対し、低い唸り声が喉から洩れる。
ニャースは苛立たしげに床を踏みならし、外へ飛び出した。まだオカリナかプックルのものらしき臭いの道が色濃く残っている。
出ていって間もないということだ。すぐに追いかければ、合流できるかもしれない。
ニャースはマントを拾い上げて頭から被ると、臭いを追いかけ始めた。透明化した上で、北へと続く道を只管に走る。傍から見れば、二つの肉球が地面を叩く音だけが路上に響く奇妙な現象に映ることだろう。
線路を渡り終わった所で、ぽつぽつと雨粒が地面に落ち始めた。降り出す前に合流したかったのにと、ニャースは足を速めた。途中で何らかのトラブルに見舞われて目的地を変更しないとも限らない。
雨足はどんどん強くなっていく。ニャースは煩わしげに布を内側から払った。
もともとマントのサイズが大きくて引き摺っていたのだが、それに加えて雨にぬれた布はべたべたとニャースの手足や尻尾に絡みついてくる。幾度かは足を取られ、転びそうにすらなった。
風に煽られた雨粒が容赦なくニャースの顔面を叩いていく。
オカリナたちの痕跡はとうに雨に洗い流されてしまっていた。もう、彼女らが学校に向かったのだと信じるしかない。
北へ進むにつれ、突き立った丸太や大きく割られた地面など、異様な光景が目に付くようになった。
戦闘の跡――と判別するには戸惑われるぐらいに荒らされている。この破壊をやってのけるような獣がここに居たのだ。これに巻き込まれたのはオカリナたちなのか。破壊者はまだ近くに居るのか。
思わず立ち止まって周囲を見渡したニャースの目に、大きな影が雨の帳の向こうに佇んでいるのが映る。
マントの機能が働いていることを再確認して、ニャースは影に用心深く近づいた。リザードのような姿をした、とても大きな獣だ。鎧を着こんでいることから見て、獣というよりも楽俊に近い存在なのだろう。
獣人はこれまた大きな剣のようなものを突き立てると、地面から何かを拾い上げた。布のようだ。それを打ち広げ、何度か雨の中で振り回しては泥を払っている。
破壊者は目の前の獣だと、直感がニャースに伝えていた。
(う、迂回せにゃ……東は――ダメにゃから、西の森から……)
首を西に巡らせた時、ニャースは息をのんだ。獣人から十メートルほど離れた所に何かが転がっている。それは獣の死体のように見えた。
この破壊の犠牲者か。これがオカリナたちが学校に向かった後に行われたかどうかが問題だった。もしかすれば、そこに転がっているのがオカリナかプックルなのかもしれない。
布を羽織り直していた獣人が動きを止めた。ゆっくりとニャースの方に目を向けた。存在がばれたのか。だが、今ニャースは透明になっているのだ。下手に動きさえしなければ、気のせいだと思ってくれるはずだ。
ニャースはじっと息を殺した。ただ視線を向けられているだけなのに、全身に悪寒が奔るのだ。震える足が視界を揺らした。雨とは別に、冷や汗が身体を湿らせていく。
- : 雨迷風影 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/26(月) 00:15:31:OXhvS3PF
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(ここにはにゃんにもいないにゃ。はよぅ、あっち行け。ぜーんぶ、おみゃあの気のせいにゃから!)
胸中で、必死に相手が去ってくれることを願った。しかし、その願いに応えたのは飛沫を上げる踏み込みの音だった。傍らの大剣を引き抜いた獣人が、ニャースの方へと一直線に突進してくる。見えていないはずなのに、その足運びに迷いはない。
(にゃ、にゃして――!?)
ニャースは泡を食って、逃走に移ろうとした。しかし、極度の緊張に痺れた足は言うことを聞かない。無理に動かした足は、あろうことかマントを踏み付け、ニャースは背中から地面に大きく転倒した。
酷く緩慢に視界の風景が曇天へと変わっていく。雨粒がマントを叩く音だけが、やたら大きく聞こえた。
(そうか! 雨ゃ粒で……!)
倒れながら、獣人がニャースの位置を正確に把握していた理由に気付いた。宙で雨粒が弾けていれば、誰だって怪しむだろう。気付いた所で、もう無意味だが――。
目の前を鋼の塊が颶風と共に通り過ぎた。中空にその軌跡が一瞬だけ残るも、すぐに雨粒の幕がそれを覆い隠していく。
転んだ拍子にニャースはマントの加護から抜け出てしまった。宙から浮き出たように、猫の姿が水溜りに現れた。
主を失ったことで、マントもその白い姿を雨雲の下に曝した。泥水で見るも無残に汚れてしまっている。拾う間もなく、マントは太い足に踏みつけられて泥の中へと沈んだ。
ニャースは視線を上げた。
獣人は振り抜いた剣を頭上に掲げ、その棟に左手を添えていた。ニャースを見下ろす細い虹彩は、雨よりも冷たく彼を貫いていた。抵抗する僅かな意気地すら打ち砕く、覇者の視線だった。
振り上げられた刃は、ニャースに己の死が不可避であることを如実に語っていた。これは絶対の、王の宣告だ。鋼の上に躍る雨粒の一つ一つがはっきりと見えた。
しかし、死を前にしているというのに、ニャースの心は酷く静かだった。受け入れざるをえない死は、寧ろ生き物を悟りに近い境地へと至らせるのかもしれない。身体から力が抜け、ただ終わりの時を待つ。
生きることを諦めたとき、死は恐怖ではなくなるらしい。
「……おみゃあは何で殺し合いに乗ったのにゃ?」
獣人の視線を真っすぐ見返しながら、ニャースは穏やかに問い掛けた。振り下ろさんと蠢いた獣人の腕がぴたと止まる。
「聞いてどうする? 最後の足掻きを止めはせんが、時間稼ぎなら無駄だと思うぞ」
応える獣人の声は寧ろ優しかった。大きなマントから覗く鎧はボロボロで、手足や顔には幾つものの新しい傷がある。余程の激戦を重ねて来たらしい。しかし、それらの傷は獣人の風格を微塵も殺いではいない。 - : 雨迷風影 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/26(月) 00:18:21:OXhvS3PF
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ニャースは小さく笑みを零す。
「そういうのじゃにゃい。ただ、自分が死ぬ理由ぐらい知っておきたいにゃろ」
目の前に居る獣人は恐怖に駆られてキュウビの目論見にのるような手合いではない。そんな男が参加者全員と敵対してまで殺し合う理由は何か。
血を好む戦闘狂であるならば、とっくに刃は振り下ろされているだろう。
かといって、時間をかけて嬲ることを楽しむ嗜虐趣味にも見えない。獣人の隻眼にあるのは、獰猛でこそあるものの、とても理知的な光だ。
消去法で、キュウビの齎す賞品が目当てということになる。この覇王のような獣が、数十の命を奪ってまでも叶えたい願いだ。興味がないと言えば嘘になる。
獣人は苦笑を刻んだ。肩に大剣を乗せ、吐息をつく。
「さっさとこの戯れを終わらせるためだ。ロモスの地にて大事な任務があってな、悠長にもしてられん」
「……早く帰りたいだけ、にゃのか?」
「身も蓋もない言い方をすればそうなるな」
獣人はもう終わりだとばかりに、大剣を構え直した。
それを見据えながら、ニャースの思考は再び回転を始めた。
ただ帰りたいだけ――。
胸中でもう一度反駁する。
獣人は誰かを殺してまで叶えたい願いがあったわけではない。元の世界へ戻る最短の手段として、殺し合いに乗ることを選択したのだ。
ただ帰還することが目的ならば、殺し合いに乗る必要はない。殺し以外の代替案を提示できれば――それを相手に納得させられれば、死を免れられるかもしれない。
事態を切りける糸口を見つけたことで、ニャースの中で生への渇望が狂おしいまでに燃え上がっていく。
「さて、覚悟は――」
「そ、その首輪! 首輪、外したくはにゃいか!?」
ニャースは口早に叫んだ。再び動きを妨げられた獣人の目に苛立ちが灯る。それを無視し、ニャースは続けた。相手が動こうとする前に、舌で攻め切る。
「き、キュウビはこれが呪法と言っていたにゃ! たとえ最後の一匹ににゃれたとしても、無事還してくれるとは限らにゃい。いや、むしろ還さない可能性の方が余っ程高いにゃ! こんにゃ殺し合いを強要する奴を信用するにゃんて、これっぽっちも出来にゃい。そうにゃろ!?」
「……還さぬのならば、あの魔王を後悔させてやるだけだ」
「考えが足らん奴だにゃー。反抗すれば、キュウビは首輪を爆発させるだけにゃ。そうにゃれば、おみゃあは大事な任務とやらには戻れにゃいにゃー」
わざと挑発するような口調で告げる。そうやって自分を鼓舞しなければ、舌が固まってしまいそうだった。膨れ上がる獣人の怒気に竦み上がりながらも、ニャースは言葉を重ねていく。
「く、首輪を付けられている限り、にゃーたちはキュウビと同じ土俵の上で対峙することすらかにゃわない。帰るために殺し合いに乗るのも結構にゃが、そりゃキュウビの掌で踊っているだけ。さっきの剛毅な言葉も、け、獣が檻の中で勇ましく吼えているような、もんにゃ」
「……貴様ならば、この首輪が外せると?」
「外せるだけの技術と知識は持ってるつもりにゃ。首輪に機械の類が使われていることも、幾つかの情報から確信を以て判断できる域にまできているにゃ。
大体、こ、これから、首輪をどこかで手に入れ、研究所で解析する予定にゃった。巻き込まれた獣たちの中で、こういった技術を扱える奴が他にいると思っているのかにゃ!?」
幾つか嘘に近い事実を織り込みながら告げる。獣人が獰猛に歯を剥いた。
- : 雨迷風影 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/26(月) 00:19:35:OXhvS3PF
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「いないとも限らんだろ」
「おみゃーはあの線路を走る車が何ゃにで動いているか、知っているにゃか?」
「……魔法には違いあるまい」
「おみゃーはアホか。ありゃ架線から電力を取り込み、主制御機で電圧を制御された電流をメインエンジンに通して、そこで生まれた動力が歯車を回転させて車軸に力が伝達されることで車輪が動いているんだにゃ。
そんにゃことも分かってにゃい癖に、にゃーを殺して首輪を外すチャンスをふいにするんかにゃ!?
にゃーを殺して、キュウビに尻尾振ってご機嫌を取る方がいいんにゃか!」
「………………」
沈黙を雨音が埋めて行く。愚弄され、獣人の隻眼は憤怒に染まっている。獣人の中で、ニャースは惨たらしく何十回も殺されていることだろう。
掲げられた両腕は爆発を求め、別種の生き物のように細かく収縮している。いつ両断されてもおかしくない。
それでも殺意の衝動が抑え込まれているのは、獣人が高い知性と理性を有している証拠だ。ニャースの言葉を吟味し、何が一番己の利益となるかを考えている。
ニャースは唾を無理やり呑み込んだ。もう一押しで、自分を殺さないだけの価値があると思わせられる。
「首輪が解除出来れば、爆破の心配はにゃくなる。それに首輪を外してやると言われて、嫌がる奴はいにゃいにゃ。生き残った全員の首輪が外されれば、キュウビは何らかの動きを見せる筈にゃ。それが脱出の好機ににゃる」
「………………」
「全員の首輪の解除と、おみゃーが皆殺しを完遂させるのとどっちが早いか分からにゃい。にゃけど――」
「……もういい。分かった」
ニャースの言葉は獣人の苛立った声に遮られた。
構えられていた大剣がゆっくりと地面に下ろされていく。獣人は深く大きく息を吐いた。
「おまえの命、しばし預けよう」
殺意を全身に湛えたまま、獣人は苦々しく告げた。その言葉を聞いた途端に緊張が解け、膝の力が抜ける。前足で身体を支えながら、ニャースは声を絞り出した。
「ほ、ほんとか!?」
「ああ。だが、首輪が解除できないようであれば、その場で殺す」
獣人の大剣の切っ先がニャースの鼻先に向けられる。禍々しい鉄塊の圧力に息が詰まった。剣先はすぐに除けられたが、ニャースの呼吸が再開されるのには数十秒を要した。
こんな相手を自分は挑発を口にし、取引を申し出たのか。今更ながら、己の無謀さに怖気がはしる。
獣人は剣を肩に担ぐと、ニャースに立てと告げた。
「こいつは預かっておく。逃げられちゃ叶わんからな」
獣人は踏みつけていたシルバーケープを拾うと、それを自分のデイバッグへと突っ込んだ。逃がしてくれるのではなかったのだろうかと、ニャースは目を白黒とさせた。
- : 雨迷風影 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/26(月) 00:23:51:OXhvS3PF
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「……もしかして、おみゃーも来る気か?」
「当然だろう。それとも、同行されては不味いわけでもあるのか? あの強きな発言は、やはり嘘か?」
そうであるなら死ねと、獣人の刃が語っていた。ニャースはぶんぶんと首を横に振って立ちあがる。
「そのためには自由にできる首輪が必要だな。付いてこい」
有無を言わさぬ声に、ニャースは黙って従った。獣人が向かった先は、あの死体の許だった。長い犬歯を持つ、大型のペルシアンのような獣が胸部を両断されて絶命している。
断面からは臓器が毀れ、流れ出た血が泥水と混じって周囲に赤黒い池を作っていた。
その遺骸に、獣人は大剣を振り下ろした。
斬ると言うよりも押し潰すと言った方が正しい。肉と骨が爆ぜる音が雨の中に響く。跳ね飛ばされた頭部が泥水の中を転がった。
獣人がその頭部を拾い上げ、首輪を丁寧に抜いていく。ニャースはというと、膝をついて声もなく嘔吐していた。オカリナらと何事もなく合流していたとしても、似たような光景を目にすることになった筈だが、それでも直視し続けるなど無理だった。
しかも――あれはオカリナかプックルの可能性だってあるのだ。顔を上げて死体を見る。力なく横たわった下半身には毛皮に包まれた睾丸があった。
(あれは……違うにゃ。オカリナはメスにゃし。あの獣の顔は、プックルというよりもゲレゲレという感じにゃ。だから……薄情者の二匹は無事に――)
口の中で弁解を呟いていたニャースの許に首輪が放られた。泥水の中に落ちた首輪には小さな肉片と獣毛がこびりついていた。それを見て、出しつくしたはずの胃液が再び喉を焼く。
その様子を気に掛けることもなく、獣人は大剣についた血脂をマントで拭った。
「道具は揃ったな。一度、オレの連れの所へ戻る。それから研究所とやらに行くぞ」
反応しないニャースに、獣人がマントを打ち鳴らす。その音に弾かれたようにニャースは身を起こすと、首輪を拾った。
それを見ることもなく、獣人は踵を返して北の森へと入っていく。ニャースが付いてくるかどうか、確認する素振りすらない。
本当のところ、他者がどう動こうとあの男には関係がないのだ。意に沿わなければ殺すだけ。それを可能とするだけの力は持っている。今ニャースが逃走すれば、すぐさまあの大剣が飛んできて、ニャースの身体は簡単に打ち砕かれてしまうだろう。
それに対して、ニャースには獣人の言葉に従うより他に命を繋ぐ術がない。オカリナたちが人間を優先したように、自分もまた命のために結局楽俊らを見捨てるのだ。
ニャースは顔をしわくちゃにしながら獣人を追い出した。泣いているのか、篠突く雨のせいで自分でも分からない。
風に惑った雨は隔てなく、全てを洗い流そうとしている。
首輪が腕の中でぬちゃぬちゃと音を立てて揺れていた。
- : 雨迷風影 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/26(月) 00:25:57:OXhvS3PF
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【オカリナ@ハーメルンのバイオリン弾き】
【状態】魔力消費(中~大)
【装備】なし
【道具】支給品一式、ミニ八卦炉@東方project、世界の民話、治療用の薬各種、不明支給品0~2個(治療道具ではない)
【思考】
基本:ゲームには載らない。キュウビを倒す……だけどもし――。
1:C-4の学校に向かい重症の男を治療する。
2:そこでニャースとプックルを待つ。
3:オーボウと、ピカチュウの知り合いを探す。
4:できるならミニ八卦炉は使いたくない
※参戦時期は死亡後です。
※自分の制限について勘付きました。
※人間と関係ない参加者もいるのではと思っています。
※ケットシーを危険な獣と判断しました。
※治療用の薬の内訳は後の書き手にお任せします。
※オカリナの考察
・無意味に思えるアイテムを混ぜて、誰かが参加者に何かを知らせようとしているのではないか。
・キュウビ一味は一枚岩ではない。
・縁者を人質にとり、殺し合いを強制してくるのではないか。全員ではないにしても、部外者が拘束されている。
※プックルの反論
・呪法=殺し合いとは限らない
・殺し合いは目くらましかも
【ニャース@ポケットモンスター】
【状態】:健康、疲労(中)、びしょ濡れ
【装備】:キラーパンサーの首輪
【道具】:支給品一式、エルルゥの薬箱@うたわれるもの(1/2ほど消費)、野原ひろしの靴下@クレヨンしんちゃん、麦の入った皮袋@狼と香辛料、アマテラスの支給品一式(食料:ほねっこ)と不明支給品1?3個(確認済)
【思考】
基本:殺し合いからの脱出
1:クロコダインに従う
2:研究所で首輪の解析
3:アマテラスや楽俊、ついでにオカリナたちが心配
[備考]
※異世界の存在について、疑わしいと思いつつも認識しました。
※キュウビや他の参加者をポケモンだと考えていますが、疑い始めています。
※アマテラスが、ただの白いオオカミに見えています。
※ピカチュウたちと情報交換しました。
※楽俊の仮説を知りました。
※この会場にいる獣達は全員人間とかかわりをもつ者だと勘違いしています。
※首輪と死体がプックルのものだと気付いていません。
- : 代理投下:雨迷風影 ◇TPKO6O3QOM [sage] 2010/04/26(月) 01:02:34:KCkA00/8
- 【クロコダイン@ダイの大冒険】
【状態】:疲労(小)、多数の打撲(中。特に腹部)、右目失明(治療済)、多数の浅い裂傷(小。特に右腕)
【装備】:覇陣@うたわれるもの、王者のマント@ドラゴンクエスト5、クロコダインの鎧(腹部と左肩の装甲破損) 、眼帯(ただの布切れ@ドラゴンクエスト5、ビアンカのリボン@ドラゴンクエスト5)
【所持品】クロコダインの支給品一式、シルバーケープ@魔法少女リリカルなのはシリーズ
【思考】
基本:全参加者の殺害。許されるなら戦いを楽しみたい。でも首輪が解除されたのなら……
1:酒場に戻る
2:研究所へニャースを連れて行き、首輪を解除させる。
3:シエラが今のままならば契約は解消する? それとも悩みを聞いてやる?
4:イギーは今度こそ殺害する
5:シエラとラルクの実力が楽しみ
最終:キュウビの儀式を終わらせ、任務に戻る
【備考】
※クロコダインの参戦時期はハドラーの命を受けてダイを殺しに向かうところからです。
※参加者は全員獣型の魔物だと思っています。
※キュウビを、バーンとは別の勢力の大魔王だと考えています。
※身体能力の制限に気づきました。
※戦闘における距離感を大分取り戻しました。
※しばらくは右腕だけで覇陣を扱うのは難しそうです。
※シルバーケープは泥水で相当汚れていますが、使用に問題はありません。
※D-2の道付近に、三分割されたプックルの死体とデイバッグ{支給品一式×2、柿の葉っぱ@ペルソナ3、きのみセット@ポケットモンスター(クラボのみ、カゴのみ、モモンのみ、チーゴのみ、ナナシのみ、キーのみ)}が落ちています。
炎の爪@ドラゴクエスト5は前足に装着されています。
※D-2の地面は陥没したり丸太が突き刺さっていたりと荒れています。
【柿の葉っぱ@ペルソナ3】
巌戸台駅前商店街にある古本屋「本の虫」の北村老夫妻にとって息子との絆の証ともいえる柿の木の葉っぱ。柿の木は月光館学園の中庭に植えられている。
【キラーパンサー@ドラゴンクエスト5 死亡】
【残り26匹】
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/26(月) 19:33:16:J32HdGsk
- 投下乙です
序盤は世界観の違いの出た考察がよく出来ててよかったです
そのまま終わるかなと思ったらキラーさんが…
ニャースも死ぬかと思ったら何とか生きてるがみじめと言うか可哀そうと言うか… - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/27(火) 08:46:48:X2eAGTUH
- 投下乙
さすがにクロコダインは強いな。
これでまだ複数ある奥の手を使用していないんだよな
残念ながらキラーさんは思い出の品と主人のマントを取り返せず退場か - : GREN~誤解の手記と鍾乳洞~ ◇k3fZfnoU9U [sage] 2010/04/27(火) 13:03:19:poW3WNdc
- 「あの鳥は『ペット・ショップ』というのか。確かに危険な奴であっていたようだな」
俺は名簿を読みながら、書かれている性格や経歴をもとに危険かどうか見極めている。
赤カブトは討ち取ったものの名簿を見る限り危険な奴はまだ何人か残っている。
ペット・ショップという深夜頃俺達に襲いかかってきた鳥。
ミュウツーという全ての人間を憎しんでいるミュータントのようなポケモン。
バーンが率いる魔王軍の一員であり、六大軍団の一つ「百獣魔団」の団長であるクロコダイン。
クロという半分機械仕掛け(サイボーグと呼ばれるものらしい)の暴れん坊な猫。
とてつもなく陽気だが時として冷酷な一面を見せるケットシー。
邪竜ティアマットとの契約により他の竜を狩るドラグーン、ラルク。
人間ではなく兎だったようだが『う詐欺』と比喩されるほどの嘘付きである因幡てゐ。
こいつらは危険視ないし警戒しておくことにこしたことはないと判断する。
また他に気になったことは宇宙からきた侵略者と書かれている2人がいたことだろう。
読んだ時一瞬ラヴォスのことが頭をよぎるが、多分関係はないだろう。
手足の生えたダルマと星に巣食う寄生虫は外見だけでも違いすぎる。
しかしそのうち一人は見覚えがある。
俺たちに向かって銃を乱射してきた赤いダルマの宇宙人だ。
名簿によればギロロという名前らしい。
戦闘の知識は豊富なので敵に回すのは避けなければいけないな。
「これで全員か」
『マモナク、C-5ノ駅ニ着クンダベ! オ降リニナル方ハ危険ナノデ、足元ニ気ヲ付ケテ降リルンダベ』
俺や死者を含む全員分の内容を読み終える。
と同時に到着の合図が電車内に響き渡った。
電車を降りると、壁にメモらしきものが貼ってあるのが目に入る。
- : GREN~誤解の手記と鍾乳洞~ ◇k3fZfnoU9U [sage] 2010/04/27(火) 13:08:58:poW3WNdc
- 「何…だと…」
メモを読んだ俺は驚いた。
そこには剣を持っているカエル男と背の低い紫色のカエル、日本犬の3人組は危険人物かもしれないということが書かれていたからだ。
どう考えても俺や銀、グレッグルのことだとしか思えない。
「なぜこんな事が……まさかあの時のことが…」
考えられる原因はただ一つ、銀がいざこざを起こしたことだろう。
しかし、その直前銀はてゐと2人で何やら会話をしていた。
その時にてゐは銀を怒らせる嘘をついたのだろう。
その後、ギロロが銃で襲いかかってきた。
だから俺はウォータガを目眩ましにして、その隙に銀とグレッグルを連れて逃げだした。
となると、このメモはギロロが俺たちを危険視したまま残したものである可能性が高いということか。
となれば再びギロロに会うことが出来たら、しっかりと話をつけるべきだな。
誤解が解ければきっと心強い味方となってくれよう。
だが、誤解が解けなければ……その時はやるしかない。
このメモを読んだ誰かに誤解されるのを防ぐため、
俺はメモを剥がし駅の中を一通り調べるが、
闘いが起こった痕跡は見られず俺のほかには誰もいない。
ただ律儀にも同じ内容が書かれたメモが何か所かに貼られていたため、
それらのメモも剥がし駅を後にする。
- : GREN~誤解の手記と鍾乳洞~ ◇k3fZfnoU9U [sage] 2010/04/27(火) 13:12:42:poW3WNdc
- 「これは…地下か。少し調べたほうがよさそうだな」
放送までまだ時間があるので地下を調べるため、俺は縄が切れないように慎重に梯子を降りていく。
下まで降り周囲を見渡すと鍾乳洞になっている。
ひんやりとした空気が肌に触れる。
周囲は薄暗いので壁に手をつけ慎重に進んでいく。
下には水が流れているため歩くとジャブジャブ音がする。
「どんどん深くなってるみたいだな」
進めば進むほど少しずつ水位が上がっていく。
最初は靴底程度だったが、踵、足、ふくらはぎ、膝とどんどん水に浸かっていく。
腰が浸かるほどに深くなったところで開けた空間に出てきた。
通路と比べると天井は高くなっており、ヒカリゴケのおかげで周りも明るくなっている。
そのおかげなのか神秘的な雰囲気が漂っている。
「出入り口はここ以外に2つか」
周りを見渡すと通ってきた道以外にも2つの通路がある。
しかし、なぜ鍾乳洞がここに…?
考えられるのはここを逃げ道として使用するということぐらいだが…。
見張りが危険人物を見つけた時、ここからだと気づかれずに逃げることが出来る。
それに何らかの拍子にログハウスが火の海に覆われても、恐らくここまで火の手は追ってこない。
やはりここは抜け道と考えるべきだな。
問題は扉が重いということか。
例え気づいていたとしても力がなければ扉を開けることすらできない。
それに他の通路がどこに通じているかも気になるところだが…
「……一旦戻った方がいいな」
放送の時間が近いことを考えひとまず引き返す。
ログハウスに戻り柱時計をみると、間もなく放送の時を告げようとしていた。
- : GREN~誤解の手記と鍾乳洞~ ◇k3fZfnoU9U [sage] 2010/04/27(火) 13:24:43:poW3WNdc
- 【C-6 ログハウス内/一日目/正午(放送直前)】
【カエル@クロノトリガー】
【状態】:健康、多少の擦り傷、疲労(小)、魔力消費(小)、寂寞感、下半身びしょ濡れ
【装備】:なんでも切れる剣@サイボーグクロちゃん、マントなし
【所持品】:支給品一式、ひのきのぼう@ドラゴンクエスト5、マッスルドリンコ@真・女神転生、モンスターボール@ポケットモンスター、しらたま@ポケットモンスター 、銀の不明支給品(0~2、確認済)、
石火矢の弾丸と火薬の予備×9@もののけ姫 、マハラギストーン×3@真・女神転生if、風雲再起の不明支給品(0~2、確認済)、参加者詳細名簿、ペット・ショップの不明支給品(1~3、確認済)、
スピーダー@ポケットモンスター×6、グリンガムのムチ@ドラゴンクエスト5、ユーノのメモ
【思考】
基本:キュウビに対抗し、殺し合いと呪法を阻止する
1:放送を聞く。
2:アマテラス、ピカチュウ、ニャースの捜索。
3:ギロロにあったら話をつけて誤解を解く。
4:余裕があれば鍾乳洞内を調べる。
5:撃退手段を思いついた後に深夜に見かけた鳥を倒しに行く。
※グレッグルの様子から、ペット・ショップを危険生物と判断しました。
※銀がヒグマの大将を殺したというてゐの言葉を聞きました。
※ツネ次郎と情報交換をしました。
※異世界から参加者は集められたという説を知りました。
※参加者は同一世界の違う時間軸から集められたと考えています。
※天容の笛@忍ペンまん丸、しらたま@ポケットモンスターとパルキア@ポケットモンスターの存在を知りました。
※参加者名簿を読み、ペット・ショップ、ミュウツー、クロコダイン、クロ、ケットシー、因幡てゐ、ラルクを危険ないし要警戒と認識しました。
※ログハウスの下にある鍾乳洞は抜け道のようなものと推測しています。
※C-5駅に貼ってあったユーノのメモはカエルが全て回収しています。
※ログハウスは2階建てのようです。また地下に鍾乳洞があります。
※鍾乳洞内には開けた空間があり、そこに続く通路は3つあります。そのうち1つはログハウスに続いていますが、他の2つがどこに続いているのかは不明です。
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/27(火) 13:32:26:poW3WNdc
- 代理投下終了
投下乙です
こっちも地下道登場か
そしてWANTED状態に気付いたカエル
まったくギロロはロクなことしてないなあ
指摘としては、同じ名簿を見たはずのツネ次郎たちがチョッパーを来歴から危険な獣とみている節があるので、
彼に関しても危険と判断し得る解説がなさられているのではないかと思うのですが。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/27(火) 21:06:23:UxSZrUFF
- 代理投下乙です
尻に火が付いてることに気が付いたカエル
鎮火出来たらいいんだが… - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/27(火) 21:45:51:LBHhp3Tu
- 投下乙
周りにとりあえずだれもいないみたいだししばらく調査になりそうだな
ところで不明支給品の多さを見て思ったが、赤カブトの支給品は研究所放置だっけ
いまのところ全体でどのくらい不明支給品が残っているんだろ - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/04/27(火) 21:52:26:poW3WNdc
- 不明支給品まとめはwikiにあるよ
ttp://www6.atwiki.jp/animalrowa/pages/155.html - : 代理投下:白い兎は歌う ◇TPKO6O3QOM [sage] 2010/05/04(火) 23:21:01:8iot0gy+
- 静かに、しかし滑るように雲が上空を動いていく。蒼穹に溶け込むような白雲は千切れ飛び、黒く重たい雨雲が段々と勢力を広げようとしていた。
それを見上げながら、因幡てゐは苦々しげに口を曲げた。雨音というのは、聴力に長けた獣にとっては天敵だ。近づく捕食者の足音、息遣い、筋肉の躍動といった、生き残るために必要な情報が多少なりとも損なわれてしまう。
雨で役に立たないような耳を持っているわけではないが、少しでも自分が後手に回るような事態は避けたかった。
てゐは学校へと視線を移す。出来ることならキメラのつばさで行ける場所を増やしたかったのだが、この崩れようでは辿り着く前に降り始めることは十分にあり得る。
一度校舎に入って、雨をやり過ごすのが賢明だろうか。てゐは肩を竦めて、校庭の隅を通りながら昇降口へと近づいた。
夜に訪れた時と違い、昼の校舎は古ぼけた佇まいを弱まった日差しの中に曝している。流れる雲の陰が落ちた校庭を、風に煽られた砂煙が駆け抜けて行った。
昇降口には、彼女の知らない臭いが残っていた。そして、それは入って行ったきり出て来た様子はない。別の出入り口を用いたんでない限り、この臭いの主はまだ校舎の中にいることになる。
てゐは昇降口の陰に身を滑り込ませると、小さく頭を抱えた。
(どうしよう……)
てゐは今の所持品に思いを巡らせる。治療薬に毒キノコ、毒薬、離脱用具――そして赤い宝石。どれも身を守るには役に立たないし、攻撃にすら使えない。利便性があるのはキメラのつばさぐらいだ。それでも行くことが出来るのは、学校か町の二か所だけだ。
もうギロロたちはいないと思われるが、再会する危険は避けたい。ユーノはどうでも、ギロロは前以上に疑念を持っててゐを見る筈だ。格段に動きづらくなる。
かといって、彼女の妖術は虚仮脅しや目暗ましになっても、実質的な決め手にはならない。そもそも、それが出来るのならば、こんな面倒な行動は選択していない。
(ひとまず、実際に誰かいるのか確認しましょ。いないならそれが一番だし)
長い耳に手を当て、てゐは耳に神経を集中した。
風が窓枠を叩く音。それが廊下で反響する音。そして、段々と小さくなる残響。
あらゆる音の持つ情報は、てゐの頭の中で明確な形を持ち、三次元の空間に配置されていく。
その空間の中に、明らかに異質な音が存在していた。がちゃがちゃと騒がしく不協和音を奏でる音源が、廊下を移動して行く。
それ以外に、生物の音はない。音の主は給食室へと向かったようだ。少しだけ逡巡するも、てゐは給食室まで行ってみることにした。距離を保って行動する限り、自分に危険はない。そして、自分はそれが出来る。
(いざとなれば、キメラのつばさを使えばいいことだしね)
てゐはデイバッグをしっかり抱えると、柔らかく跳ねるような歩調で廊下を音もなく進んでいった。
移動しながらも、五感の大部分は耳に割いている。その甲斐あって、給食室の音を酷く明瞭に拾うことが出来た。それはまるですぐ隣で耳を欹てているような感覚である。
≪あ、あの、大丈夫でありますか?≫
少し癖のある男の声だ。その声は、明らかに第三者へと向けられていた。
他にも生物がいたのかと、呼吸が少し乱れる。しかし、鼓動の音どころか、息遣いすら拾えないのは変だ。一旦足を止めて、てゐは音に集中する。
- : 代理投下:白い兎は歌う ◇TPKO6O3QOM [sage] 2010/05/04(火) 23:21:50:8iot0gy+
- ≪あ、あの~、我輩の声が聞こえていないでありますk…え?≫
突然、男の呼吸が乱れた。変化を感じ取り、てゐは足を速める。給食室は、もう目と鼻の先だ。
給食室の少し手前に座り込み、てゐは目を閉じた。もう声どころか、心音すら聞きとれる。給食室に居るのは確実に一人だ。
男の鼓動は早鐘を打つように収縮を繰り返していた。獲物が追い詰められた時のような、緊張と恐怖に縛られた音色――。
(一体、何があったのよ……)
訝しげにてゐは眉をひそめた。あまりにも急な変化だ。男は、給食室に入り誰かに声を掛けていた。その誰かが本性を現して襲い掛かってきたか。そうだとしても、呼吸が一つなのはおかしい。筋肉や関節が立てる音の癖が一種類なのもおかしい。
これが聞きとれないようならば、自分はうさぎ失格だ。
すると、男が大きく息を吸い込んだ。
≪我輩は…我輩はなんて愚かな間違いを犯してしまったでありましょうかぁ!≫
大声が鼓膜を大きく揺さぶった。何十回と空間を跳ねまわった叫びは、てゐの脳を掻きまわしていく。集中し過ぎていたために、てゐは耳元で爆竹を鳴らされたようなショックを受けた。
もし立っていたのなら、今頃転倒していたかもしれない。どうにか意識を繋ぎ止め、てゐは呼吸を整えて行く。
その間も、男は独り言を口にしながら慌ただしく音を響かせていた。
≪こ、こういうときは慌てず騒がず忍び足、我輩にできることをするであります≫
物を盛大にひっくり返し、それを荒らし回るような音が生みだされていく。
≪これで我輩の責任が少しは軽くなるであります。さて、後は……≫
そう呟いた男の鼓動は、幾許か落ち着きを取り戻していた。そして男は何処か、狭い空間に入って行ったようだ。
(責、任……? どういうことよ)
脂汗を浮かべながら、てゐは思考を巡らせる。男は誰かに話しかけていた。しかし、誰かの反応はなく、てゐも聞きとれなかった。
しかし、その誰かが音を発することなく存在していたのなら――。そんな生き物は存在しない。生きているのであればの話だ。
その後、男の鼓動は急に落着きを失っていった。そして、先程の絶叫だ。
ここから推理できることを、順序立てて組みたてて行く。まず、男は給食室で誰かを発見した。その時点で、その誰かは生きていたのだろう。一旦そこで、男は誰かとは別行動をとった。そして戻って来た時には、その誰かは死んでいた。
健康な者がそう簡単に死ぬことは考えにくい。愚かな間違いという言葉も合致しなくなる。
別行動中に襲われたか。こう考えると、愚かな行動とは別行動を取ったことと解釈できなくもない。しかし、荒らし回る理由がない。
ショックで錯乱したか。だが、言動ははっきりしていた。それに、出来ることと荒らし回ることがイコールで結ばれない。
何より、責任という言葉が当てはまらない。
ふと、てゐの鼻が刺激臭を嗅ぎ取った。消毒液か何かのような、あまり気持ちのいい臭いではない。それに加えて、もっと別の薬品の香も混じっている。食品を置く場所にはそぐわない臭いだ。
これらの臭いは男が運び入れたのだ。ここから導き出されるのは、男が発見した誰かを治療しようとしていたということだ。男は何らかの治療を施した後で、席を外した。しかし治療は間違っていて――もしくは手遅れで、発見した誰かは息を引き取っていた。
助かると思っていた相手が死んでいたのだ。ショックも受けるだろう。
先程の荒らす音は、自棄を起こしての行動と推測できる。もしくは自分の無力さに腹でもたったか。
いや、責任という言葉が、この推理でも浮いてしまう。 - : 代理投下:白い兎は歌う ◇TPKO6O3QOM [sage] 2010/05/04(火) 23:22:32:8iot0gy+
- (為すべき治療を怠ったのかもね……。一連の行動で責任が軽くなるっていうのが分からないけれど。どうやって責任を軽くしたんだろ。ま、何かしら誤魔化したんでしょうね)
とはいえ、正直なところ、治療が間違っていたとかはどうでもよかった。
重要なのは、まず男が殺し合いに乗った存在ではないこと。そして、警戒すべき危険な人物でもなさそうなこと。あの慌てぶりから見るに、どちらかというと小心者だと推測できる。
これが一番重要なのだが、そんな小心者が誰かを殺してしまった。過失なのだろうが、その事実を隠蔽しようとしている。
ここから推察できる人物像は、小心者の文明人といったところか。
その隠したい事実が、第三者に知られてしまったとしたらどんな行動を取るだろう。まず、口封じはない。追いつめればそうなるかもしれないが、逃げ道を用意してやれば悦んでそっちを選択するだろう。
有利に取引できるかもしれないし、この事実自体が男の悪評を吹聴するのに大いに役に立つ。
(それじゃ接触してみようかしらね。出来るだけ偶然を装って、と)
てゐは静かに立ち上がると、給食室へと近づいた。開きっぱなしの扉から中を覗き込む。奥にある金属製の扉が開いており、その中から、騒がしい足音が響いて来ていた。
そして、床には引き締まった体つきの人間の男の死体が寝かされている。その周囲には治療薬と思わしき品々がぶちまけられていた。
てゐはにやけそうになる頬を噛みしめ、息を深く吸った。
「ねえ、誰かい――きゃ、きゃあああああああああ!?」
その大声に、扉の向こうの男が盛大にすっ転んだ音が響いた。
【C-4/学校・給食室内/1日目/午前】
【ケロロ軍曹@ケロロ軍曹】
【状態】健康、錯乱(小)、動揺
【装備】:ジムのガンプラ@サイボーグクロちゃん
【道具】ガンプラ作成用の道具
【思考】
0:ビックゥゥゥゥゥゥゥウウウウッ!!!!
1:次は何をするべきか…
2:とりあえずギロロと合流したい
3:安全な場所でガンプラを作る
※ピカチュウ、キラーパンサー、オカリナをゲームに乗ったと誤解しています(名前は知らない)
※ピカチュウ、キラーパンサーの言葉は通じないようです。他は不明。
※キュウビに宇宙人の協力者がいるか、キュウビ自身が宇宙人であると考えています。
※会場の施設は、全て人間が以前使用していた物と考えています。
※ぼのぼのと情報交換をしました。
※給食室に、加藤清澄@バキの死体があります。
※給食室の加藤清澄を重要人物と考えています。
【因幡てゐ@東方project】
[状態]:健康
[装備]:なし。
[道具]:支給品一式、きずぐすり×3@ポケットモンスター、ヒョウヘンダケ×3@ぼのぼの、キメラのつばさ×2@DQ5、
エルルゥの毒薬@うたわれるもの(テクヌプイの香煙×5、ネコンの香煙×5、紅皇バチの蜜蝋×5、ケスパゥの香煙×5)、伝説の剣のルビー@ハーメルンのバイオリン弾き、ニンジン×20
[思考]
基本:参加者の情報を集めて、それを利用して同士討ちさせる。殺し合いに乗っている参加者に対しては協力してもらうか、協力してもらえず、自分より実力が上なら逃げる
1:ケロロを脅して、交渉を有利に進める。
2:参加者に会ったらギロロたちの悪評を広める。
3:ぼのぼのと遭遇したらヒョウヘンダケを渡す。
【備考】
※銀、赤カブト、カエル、グレッグルの情報を得ました。
※銀、カエル、グレッグルは死んだと思っています。
【伝説の剣のルビー@ハーメルンのバイオリン弾き】
伝説の剣の鍔元に嵌めこむルビー。聖なる存在の魂を吸い込むことが出来る。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/05/04(火) 23:30:45:8iot0gy+
- 以上で代理投下終了です。
ケロロ、てゐに目を付けられたか…
それにしてもてゐはステルスに
使えそうな情報どんどん集めていくなあw
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/05/06(木) 00:08:38:ksRXWC6I
- 投下乙
てゐ怖いな。
あちこちに火種を撒くし危険動物過ぎる - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/05/07(金) 21:09:49:o3LR4eE7
- 投下乙です
神視点だから把握できるんだろうがケロロはこれでてゐに利用されたら…本当にいい所がないなw
誤解の火種とかも抱えてるし延焼したら… - : 代理投下:黒い牙 ◇TPKO6O3QOM [sage] 2010/05/24(月) 00:29:30:fXyA5zb0
- 「ふざけんなああぁぁぁ――」
己の喉から発せられているはずの声が、耳の奥から掻き消されていく。罵声は幾つにも分裂し、風が掠れたような音へと変じて行った。そして訪れたのはまったくの無音である。
己の息遣い、心音すらも響いてこない――完全なる静寂がアライグマの父を覆い包んだ。
しかし、アライグマの父から消え失せたのは音ばかりではない。視界を包む彩、地を踏みしめる感触、鼻を濡らす臭い、体毛を揺らす空気のうねり――そして、自分の身体の存在すら感じ取れなくなった。
何も見えず、何も聞こえず、何も感じられない。外と内を隔てていた壁が取り除かれ、全てが混ざり合っていくようだ。
剥き出しの意識が虚空に放り出されたような心許なさに、自身を押し潰されそうになる。加えて、その意識をも崩しさるような揺らぎが突如加わった。為す術もなく掻き乱されて、自己が摩耗していくような感覚に震えが奔る。
だが、それも一瞬のことだった。霧が晴れるようにして、光がアライグマの父の網膜を焼いた。同時に、己と世界を構築していた全ての要素が瞬く間に取り戻されていく。
五感を取り戻した時――アライグマの父の身体は宙を舞っていた。
「――ふんぬぅ!」
身を捩って体制を整え、どうにか四肢で床を掴むことに成功する。衝撃が尻尾にまで響き、しばし悶絶することになったが。
痛みが治まって、アライグマの父は漸く周囲を確認した。
「どこだ、ここ……」
先程と風景は一変していた。彼がいるのは、最初に集められた空間と似たような広い部屋だった。襖は開け放たれており、欄干の向こうには山々が連なっているのが見える。その反対側の襖はぴたりと閉じられていた。
天候も急変したようで、回廊から吹き込んでくる雨が床を濡らしている。
どこか、とてつもなく高い場所に来てしまったらしい。
茫然とするアライグマの父の髭を、湿った風が撫でて行った。
「何処ッテ、天守閣デスヨォ。旦那ァ」
憶えのある調子の良い声が耳元から聞こえた。跳び上がるようにして振り向けば、一枚の札がふわふわと燐光を放ちながら浮かんでいる。
「てめえ、なん――」
「イヤネ、アッシ ハ 旦那ヲ ドッカ他所 ニ 転移サセル ツモリ ダッタンデスゼ?」
「そんなら――」
「ダッタンデスガァ、転送途中 デ 横槍ガ 入ッチマッテ。早イ話ガ、アッシ ガ 怒ラレチマイヤシテネ。アヤウク 消サレッチマウ所デシタゼ。勝手ナ戯レデ 旦那ノ ヤル気ヲ殺イジマッタンダカラ、致シ方アリヤセンガネェ」
けらけらと笑うように、疾飛丸は捲し立てる。それを手で叩き落す様にして遮り、アライグマの父は声を荒げた。
「ンなこと、どうでもいいんだよ! オレは帰るっつったよな!? もうてめえと駆けっこなんざ、やらねえぞ!?」
口角泡を飛ばすアライグマの父に対し、疾飛丸は小首を傾げるように身体を傾けた。
「ワーッカッテマスヨォ。ダカラネ、旦那ニハ、モウ景品ヲ渡シチマオウッテ話デサァ。ソモソモ早駆ケハ、退屈シテタ アッシノ思イ付キ。コノ城ニ 辿リ着イタ時点デ、旦那ニハ 景品ヲ 手ニスル資格ガ 元々アッタンデスヨ」
- : 代理投下:黒い牙 ◇TPKO6O3QOM [sage] 2010/05/24(月) 00:30:22:fXyA5zb0
- 悪びれた様子もない口調に、アライグマの父のこめかみに青筋が立っていく。要するに、あの競争は無駄だったわけである。もっとごねていれば済んだという話だ。
もっとも、食べ物には有りつけなかっただろうが。
とはいえ、何かが貰えるという状況の変化に罵倒は腹の中でみるみると小さくなっていった。舌打ちし、アライグマの父は半眼で疾飛丸を睨む。
「……思い付きのわりにゃ、丸太とか周到に準備していたようだが」
「少シ前マデ 遊ビ場ニ ナッテヤシタカラネエ、此処」
「遊び場……?」
「サテサテ! 時ハ 金ナリ 烏兎怱怱、駟ノ隙ヲ過グルガ若シッテェ言イマスカラネ。トット ト 済マセチマイヤショウ」
アライグマの父の疑問の声を無視し、疾飛丸は声を張り上げた。先程と打って変わって、疾飛丸の態度には愛想がなくなっているようだ。早駆けに興じない輩には用はないと言わんばかりだ。
「旦那、ツイテ来テ クダセエ」
「いや、持ってこいよ……」
アライグマの父の言葉を無視し、疾飛丸は閉じられた襖の方へと飛んでいく。彼が近づくと、手も触れていないのに――もっとも、触れる手がないのだが――襖はすすと音を立てて開いた。
釈然としないまま、アライグマはその後を付いていく。言いなりになるのも腹立たしいが、下に降りる手段をこれから探すのもまた面倒くさい。
精巧な意匠の施された鴨居を潜ると、その先の部屋は畳の敷き詰められた大広間であった。天井も異常なほど高い。
その大広間の中央に、大きさの違う二つの葛篭が置かれていた。
「なんじゃこりゃあ……」
大きい方の葛篭を見上げ、アライグマの父は声を漏らした。高さも幅も三メートル以上あるだろう。ちょっとした岩なら包みこめそうな程だ。
小さい方の葛篭とて一抱えほどの大きさがあるのだが、もう片方の大きさが甚だしいために酷く小さく見える。
この葛篭が、キュウビの用意した“良いもの”なのか。訊くと、まさか。と疾飛丸は身体をゆすった。この中に入っているものだと笑う。
「――サテ、旦那。大キイ葛篭 ト 小サイ葛篭。ドチラ ニ 致シマス?」
二つの葛篭の中間で、疾飛丸がふわふわと浮きながら尋ねて来た。ぽかんと開けていた口を閉じ、アライグマの父はひとつ咳払いをした。夜叉猿たちの話が、より現実味を以て目の前に鎮座している。
それも二つもあるのだ。アライグマの父は鼻を鳴らした。
「そりゃ、両方に決まって――」
「ソイツァ、駄目デサァ。ドッチ カ シカ、選ベマセンゼ。葛藤ニ 打チ勝ッテ 手ニ入レタ モン ダカラコソ、 有難味 ガ アルッテ モンデス」
「………………。そんじゃ選ぶから、中身教えろよ」
「ソリャア、開ケテ ノ オ楽シミデ。ドッチモ“良イモノ”デスゼ。ソイツァ保証シマサァ」
「………………」
- : 代理投下:黒い牙 ◇TPKO6O3QOM [sage] 2010/05/24(月) 00:32:09:fXyA5zb0
- 顎を擦りながら、アライグマの父は荒々しく息を吐いた。中身が分からないのでは、選ぼうにも選ぶことはできない。疾飛丸の都合に付き合わされたというのに、この仕打ちかと苛立ちが募る。
視線に怒気を込めて疾飛丸を見やるが、本人は何処吹く風といった調子で、上下に無意味に揺れているだけだ。
睨みながら唸り、アライグマの父は大きい方の葛篭を選択した。手に入れた後で、すぐに小さい方も盗んでしまえばいい。疾飛丸には手も足もないのだから。
「コッチ デ 宜シインデ?」
念を押す様に疾飛丸が確認する。それに頷いた途端、小さい方の葛篭が靄に包まれるように掻き消えた。思わず唸るが、相手が普通でないことを失念していた自分が迂闊だった。
そんなアライグマの父の態度に、不思議そうに疾飛丸が身体を傾ける。アライグマの父は手を振って誤魔化した。
疾飛丸自身どうでもよかったのか、すぐに大きい方の葛篭に向き直った。
「ソレジャ、御高覧シテ モライヤショウ。コイツガ 旦那ヘノ 贈リ物デサァ!」
疾飛丸の声と共に蓋が動き、葛篭の四面はぱたぱたと音を立てて倒れ込んだ。
その中から現れた漆黒の巨人が、片膝をついたまま、その虚ろな眼窩をアライグマの父に向けていた。
【A-2/キュウビー城・天守閣/一日目/正午】
【アライグマの父@ぼのぼの】
【状態】:頭部に怪我、尻尾に切創(止血)、疲労(中)、軽度の貧血
【装備】:ディバック
【所持品】:地図、空飛ぶ靴@DQ5、魔除けの札@大神
【思考】
基本:積極的に誰かを襲うつもりはない……?
0:なんじゃ、こりゃあ!?
1:観覧車を自由に動かす方法を探す。
2:息子たちが心配。
【備考】
※札は少し湿っています。
※アイテムの説明は読んでいません。
※イギーと情報交換をしました。
※空飛ぶ靴は遊園地の入り口前が指定されていました。
※B-1からA-2の遊園地入り口までの間にアライグマの父の支給品が落ちている可能性があります。
※空を飛んだ時、月が地上よりも大きく見える気がしました。
※ボニーの考察は獣の卍参照。
※アライグマの父が選んだ大きい葛篭には【アヴ・カムゥ@うたわれるもの】が入っていました。しかし、別の参加者が大きい葛篭を選んだ場合、同一のものが入っているとは限りません。
※アヴ・カムゥの外見はクンネカムンの一般兵と同様のものです。機体の他に、一般兵装の長刀が一振り付いています。
【アヴ・カムゥ@うたわれるもの】
旧文明の技術がつぎ込まれた、全長5mほどの有人生体兵器。ほぼ全身を分厚い装甲に覆われており、正攻法で倒されることはまずない。
首の後ろの露出部から搭乗する。内部はゲル状の物質に包まれており、搭乗者はゲル状の物質を介して自身と機体を神経レベルで接続し、同化することで操縦できる。
故に機体のダメージは感覚的にではあるが、搭乗者にフィードバックしてしまう欠点がある。
早い話が、どこぞの汎用人型決戦兵器と似たようなもの。
アヴ・カムゥの存在が、最弱種族であるシャクコポル族の独立を成功させ、単一民族国家クンネカムンが三大国家の一つになるまでに勢力を広げさせた。
クンネカムンでは、先代皇の願いを聞き入れたオンヴィタイカヤンによって授けられたと伝えられている。
原作に登場する機体は、ウィツアルネミテアの「分身」との契約によって齎されたものであるためか、契約関係にあるシャクコポル族にしか動かせない。
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/05/24(月) 00:35:40:fXyA5zb0
- 以上で代理投下終了です
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2010/06/02(水) 19:33:19:3dzIWrYu
- 星
- : SPIRITs away ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/06/04(金) 20:16:17:GU/iAehy
- (一)
かたかたと戸板が乾いた音を立てる。
クロコダインが帰ってきたのかと、シエラは顔を上げた。そして、億劫そうに視線だけを板戸へと向ける。
小さな灯りに照らされたその目には光が無く、そこに溜まっていた憔悴の色は身体全身を覆っていた。今にも砕けてしまいそうに、彼女の瞳は儚く揺らいでいる。
これまでか。と、シエラは皮肉気に口を歪めた。
約束の刻限までに、己の気持ちに決着を付けることが出来なかった。それどころか、彼女の心は別れた時よりもそぞろで、あちこちがひび割れている。
獲物を仕留めるどころか、まともに剣を振るえるかどうかも怪しい。
“足手纏い”のまま、漫然と時間を過ごしてしまった。
これで、クロコダインとの契約は解消となるだろう。彼の隻眼は失望に歪むだろうか。それを見るのも悪くないように思えた。
しかし、扉はいつまで経っても開けられることはなかった。また戸板が音を立てる。今度は大きく軋みを上げた。
どうやら風の悪戯であったらしい。落胆とも安堵ともつかない吐息が、シエラの口から毀れる。
注意を向ければ、外から竜の咆哮のような音が響いてきていた。強い風が出て来たようで、小屋のあちこちで似たような音が奏でられている。ともすれば、それは亡者たちの糾弾の声にも聞こえた。
愁嘆と、憤怒と、怨嗟と、嘲弄と――幾重にも重なる弾劾の礫は、シエラの心を撃ち砕こうと、彼女を取り巻いている――。
シエラは首を振って、その幻影を払った。動作に合わせて菫色の髪が、さらさらと躍る。顔を伏せたまま、彼女は奥歯を噛みしめた。
自虐は心地よい。いくらでも己を、悲劇の登場人物に飾ることが出来る。可哀想な自分を演じれば、そこで思考を停止することが出来る。
しかし――いい加減にしろと、頭の隅で何者かが唸り声を上げた。
自分は――堕ちた。美しき白竜に仕えるドラグーン。弟の誇る姉。そのいずれにも、もう戻れない。光はもう、自分の掌から全て毀れ落ちてしまった。
だから――全てを諦めるのか。
ラルクを生き残らせることが方便だったとしても、それを方便のままで終わらせるのか。
自虐の愉悦に身を揺蕩わせ、全てに背を向けるのか――奪った命に報いることもなく、己の罪業に背を向け続けて。
それに甘んじるのならば、外道にすら劣る領分に足を踏み入れることになる。
何より、これでは己を相棒と呼んだ戦士への侮辱に他ならない。
シエラは勘定台の上に目を滑らせた。クロコダインが置いていった酒瓶に目を止める。その琥珀の肌は、灯りを照り返して艶めかしく輝いていた。
シエラは立ちあがると、ふらつきそうになる足に力込めながら、酒瓶へと近づいた。
クロコダインとはただの協力関係ではない。提案こそシエラからではなかったが、彼に誇りを差し出させて契約を交わしたのだ。
そして、クロコダインは戦士の矜持も捨てて、シエラとの契約を遂行しようとしている。それに応える努力もせずに、ただ自分の首を差し出して自己満足に浸るのか――。
己には、契約を遂行する義務がある。それにはまず、遂行できるまでに調子を戻さなくてはならない。
シエラは酒瓶を手に取ると、雫が胸毛を濡らすのも構わずに中身を喉へと流し込んだ。
- : SPIRITs away ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/06/04(金) 20:17:23:GU/iAehy
-
(二)
ニャースを出迎えたのは芳しい麹の香だった。小さな仄灯りに照らされる店内は、質量を持った影が犇めいているようで、必要以上に狭く感じさせる。
渦を巻く芳香の中心に、女が一人、勘定台に凭れかかっていた。乱れた頭髪の中から覗く女の相貌は犬のそれだ。表面に爬虫の皮膚を貼った簡素な鎧を着込んではいる。
しかし、肌が露出している部分の方が多く、実用性には乏しそうに思えた。露出部は柔らかそうな純白の体毛に覆われている。
この女が、オーダイルに酷似した獣人の同行者らしい。同じ世界出身なのかどうかは不明だが、この二人の故郷は酷く似通ったものであることは想像に難くない。彼らの前時代的な格好は、事実とてもよく似合っていた。
獣人の呼び掛けに、女がにゃむにゃむと反応をしているので、昏睡しているわけではないようだ。獣人を待つ間、酒を飲んでいたら、いつの間にか酔いつぶれてしまった――という具合だろう。
降りしきる雨は、ニャースの背中に音の飛沫を散らしていた。開けっ放しにされた戸口から、ひんやりとした風が忍び込んでくる。
獣人が担いでいた大剣は外に立て掛けられていることだし、今なら逃げられる気がするのだが、ニャースは実行しようとは思わなかった。どの途、首輪は外さないとならないのだ。それに、今のところは保証されている命を投げ出すのに見合う賭けにも思えなかった。
逃げることさえ考えなければ、この待ち時間は単に暇なだけである。
何度目かの身ぶるいをして雨水を飛ばし、ニャースは手近な椅子に腰かけた。勘定台に頬杖をつき、奥の二人を見やる。
巨体を窮屈そうにしながら、獣人が女を起こしに掛かっている様は何処か滑稽だ。
「アル中の女ゃかぁ」
なんともなしに呟く。
「まあ、こんなときに酒を呷ってたんにゃから肝が太い奴にゃんだろうけど」
言いながら、ニャースは腹をぼりぼりと掻いた。
「にゃけど、寝ちゃったら元も子もにゃいよにゃあ。なんちゅーか、緊張感に欠けているというか」
濡れた体毛が気持ち悪く、何度か身じろぎをする。
獣人は女に水を飲ませようとしているようだが、上手くいかないらしい。マントからはみ出た尻尾が、苛立たしげに床を叩く。
それを半眼で見つめながら――。
「女ゃを見る目がにゃいと苦労するにゃー」
「…………ううむ」
呟きへの応答か、獣人が疲れたように呻いた。そのまま独りごちる。
「確かに、酒を飲んで気を休めろとは言ったが……」
(まあ、リラックスはしてるにゃー。限りなく)
道中、獣人とはまったく会話を交わさなかったのだが、その分、ゆっくりと考えることが出来た。そのおかげが、自己嫌悪と恐怖に悲鳴を上げていた心は大分落ち着きを取り戻してきていた。
少なくとも、軽口らしきものを胸中で叩けるくらいには。
「ぬぅ……起きん」
- : SPIRITs away ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/06/04(金) 20:18:38:GU/iAehy
-
獣人は溜息をつき、困ったようにぼやいた。
女は一時的に瞼を上げるようだが、すぐに船を漕ぎ始めてしまう。余程酒に弱いのか、それとも酒が特殊なのか。どちらであっても、さして興味はないが。
それよりも、どう見ても足手纏いな女の世話を、この獣人が焼いている事実に驚いた。起きなかった時点で首を落すぐらいはやってのけそうなのにだ。任務を優先するために皆殺しを選択した男の行動として、似合うものではない。
要は、獣人は引っかかったということなのだろう。そう、勝手に納得する。
しばし逡巡し、ニャースは獣人に尋ねた。
「その女ゃが目を醒ますまで……待つのか?」
「そう悠長にもしてはおれん。オレも……こいつもな」
そう付け加えた獣人の表情は苦り切っていた。当人がぐーすか寝ているのだから、説得力は皆無に等しい。吹きつける雨に、店内は中々騒々しいのだが。
獣人は傍らのデイバッグからマントを取りだすと、それを女に着せた。ファーのついた襟を引き上げ、女の頭部を覆う。
雨避けのつもりだろうか。とはいえ、元が泥だらけのびしょ濡れなので、あまり意味はない。むしろ、余計に汚れるだけだと思うのだが、心底どうでもよかったので口には出さなかった。
女の所持品をデイバッグに突っ込み、獣人は立ちあがる。デイバッグを首にかけ、女を背負った。大格差が大きいので、背負うと言うよりも背中に乗せていると言った方が似合う格好だ。
その動きに女が小さく声を上げたが、すぐに静かな寝息に戻った。暗がりの中、獣人が半眼で天を仰ぐ。太陽の代わりに、天井に渡された梁が目の前にあるだけだが。
ニャースを外へと追い出し、獣人は左手だけで大剣を担いだ。
駅へと向かう道中も女は目を覚ます気配はなかった。獣人は何度か、雨でずり落ちる女を背負い直しているのだが、彼女を眠りの中から引きずり出すには至らないらしい。
弱まる気配のない雨音も、女にとっては子守唄にしか聞こえないようだ。
森へと入ったために、ニャースらに直接振りかかる雨量は少なくなっていた。天へと腕を広げる枝々から毀れた大きめの雫が、時たまニャースの小判の上で弾ける。
雨粒と風を受けた梢は擦れ合い、細やかな音を連ねている。
女の臀部を右腕で支える獣人の背中を見つめながら、ニャースは腕を組む。今は楽俊のことも、アマテラスのことも忘れる。目下、自分の命を優先することを己に納得させた。当初はそのつもりだったのだし、己の命を繋ぐことは、同時に楽俊らの助けになる――と。
差が開いたので少し足を速めながら、意識をデイバッグの中に放り込んだ首輪に向ける。
首輪が滞りなく外せるのならばいいが、もし外せなかった場合にどう行動するか。
獣人は首輪が解除できなければ殺すと言っていたし、実際にそれを躊躇なく実行してくるだろう。
分の悪い賭けだと、ニャースは頬を歪めた。
首輪は後から装着されたものだ。外せない理由はない。しかし、一度で外せる可能性は著しく低い。そもそも、分解できる工具が揃っているかも怪しいのだ。
大体、外されて困る代物なのだから、そのための器具がそのまま研究所等に残されていると考える方がおかしい。
しかし、それでも首輪は外さないとならない。外さなければ、遅かれ早かれ自分は死ぬ。
命を繋ぐため、獣人に予防線を張っておかなくてはならない。ニャースはペースを上げて、獣人の横に並んだ。大きく息を吸い、息吹と同時に切り出す。
「少し話しておきたい情報があるんにゃが、いいかにゃ?」
雨音に負けないよう、通常よりも強く喉を震わせる。獣人の返答を待ち――続ける。
「首輪にゃんだが、外したら問題があるかもしれんのにゃ」
「ほう?」
獣人にとっては、首輪のことなどどうでもいいのか、気のない合いの手が返る。ニャースは肩を竦め、楽俊の仮説を語る。
「あくまで、にゃあの連れの仮説にゃ。首輪を外した時、もしかしたら意志疎通が出来なくなるかもしれにゃいってにゃ」
「ふむ?」
「言葉が通じなくにゃるかもってことにゃ。一緒に行動してた、アマ公って奴の言葉が誰もわからにゃくて、そこから立てられた仮説にゃが。ほら、キュウビに飛び掛かった奴にゃ」
「ああ、あいつか……」
思い出したからか――単に雨粒が不快だったのか、獣人の尻尾が大きく横に振られた。
歩幅が大きく違うため、ニャースは半ば走るような状態だ。下草に足を取られないように注意しながら、ニャースは頷く。
- : SPIRITs away ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/06/04(金) 20:20:56:GU/iAehy
-
「連れ曰く、異世界ごとに言葉が違うらしくてにゃ。そこから考えるに、この首輪には翻訳機能が付いているはずにゃ。それも、おそらくは機械仕掛けの。アマ公がキュウビに叩きのめされた際に壊れたんだろうという推測に基づいているだけにゃけど」
「むぅ……」
「でもにゃあ。各種言語音声を識別・認識し、ほぼ同時に共通言語化する――それだけのことにゃが、途方もない技術の結晶だということは想像に難くにゃい。
加えて、音声認識は喉の震えから可能かもしれにゃいが、共通化された言語を何ゃんでにゃーたちが分かるのかって疑問もある。
いや、共通言語化なんかしてにゃくて、個々の言語に変換されてるってこともあるかもしれんのか」
「………………」
「しかも、こんにゃ小型で狭い首輪の内部にそれらが詰まっている。今まで挙げた点だけでも充分驚異にゃが、にゃーらの視覚にまで影響を与える技術とにゃると、ちょっと想像もできにゃいにゃあ」
「……………………………………」
「ただ、死体から簡単に外せたということは、直接、物理的に脳に作用しているわけではなさそうにゃ。もしかしたら、導線が脳髄に突き刺さっているとか心配していたんにゃが。
そうなると接地部位から一種の電気信号とかが発信されていて、脳に強制的に認識を強いているとか?
言ってて阿呆らしくにゃってきたが、それでも――」
滔々と考察と思い付きを並べ立て、ふと獣人が不服そうな空気を発していることに気付く。
一方的に喋りすぎ、獣人の機嫌を損ねたか。
「にゃんにか……不快にさせることでも、あった――にゃか?」
身を強張らせておずおずと訊くと、戸惑ったように獣人が唸った。首でも捻ったのか、マントがそれまでと違う音を立てる。
「ぐぅむ……いや、他愛もないことではあるんだが――」
「?」
「なんというか、その……悩んでしまってな」
「悩ゃんだ?」
「うむ。オレは一体どこで突っ込みを入れるべきだったのだ?」
「いや、これ掛け合いのフリとかそういうのと違うからにゃ!?」
しかし獣人はニャースを無視し、不満げに鼻を鳴らした。
「大体ポイントが分かりにくすぎるのだ。難解な言葉による婉曲な表現を省き、もっとシンプルにするべきだと思う」
「だから、誰もおみゃあと掛け合いなんぞしてにゃいって言ってるにゃろ!?」
思わず相手がどういう存在かを失念し、怒鳴りつける。ニャースの大声に、背中の女が、うーんとうめき声をあげた。目を覚ますのかと思ったが、首の位置を変えただけのようだ。
ニャースの言動を気にした風もなく、獣人は平然と、悟ったように告げる。
「ふむ……そうか。天然なのだな。……可哀相にな」
「うわ、にゃんかすげー腹立つ」
憐みの籠った眼差し――とはいえ、見上げた所で、マントの裾と大剣の影しか見えないのだが――の獣人に対し、ニャースは呻いた。首を振り、結論だけを口にする。
「要は、首輪の解除は一筋縄ではいかんかもってことにゃ」
「先程は、己にしか出来んと言わんばかりの口調だったが?」
「そりゃ、出来ると思わなきゃやらんにゃ。けど、仮令、成功確率予想が十割だったとしても、実際に成功するとは限らにゃい。結果は出来たか出来なかったかの二択にゃし」
「……で?」
獣人が促す。もっとも、どう続くのか、彼には既に想像がついていそうだが。
ニャースは一拍間を置き、獣人を仰ぎ見た。
「一回の失敗で短気を起こすのはよくにゃい。寛大な心持ちでいると、にゃにかと都合が――じゃなくて、色々と幸せになれるもんにゃ。まあ、失敗前提で挑むつもりはにゃいけど」
「とどのつまり、貴様を殺すのは最後の方にしてくれ、か? まあ、それは失敗したときに考えることにしよう。二秒ぐらい」
「わー寛大」
- : SPIRITs away ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/06/04(金) 20:22:46:GU/iAehy
-
自棄気味に呻き、ニャースは歩みを緩めた。獣人がニャースの脇を追い越していく。
やがて、雨のカーテンの向こうに、駅舎らしき影が見えてきた。一旦獣人が足を止め、身体を揺らして女の体勢を整える。女は身じろぎすらしない。
よくもまあいつまでも寝ていられるものだと、ニャースは口を曲げた。
「……全然起きにゃかったにゃ。自律も出来ず、酒に溺れるという意志の薄弱さをこれ以上なく発揮してる奴を間近で見ると、感慨深いというか、己が身を振り返るいい機会に――」
「こいつはそういう輩じゃないわい。それがここまで呑まれちまったのだ。それ相応の――いや、余程の理由があったに違いなかろう……」
ニャースの独り言を、獣人が遮る。憮然としつつも、どこか慙愧を含んだ彼の口調に、ニャースは眉をひそめた。なんというか、これもまた獣人のイメージではない。
ニャースは頭を掻きながら、歩みを再開した獣人の背を見つめていた。
【C-2/駅前/一日目/正午】
【チーム:契約者】
基本思考:ラルクを除く全参加者の殺害
1:研究所へ向かう。
【備考】
※契約内容
クロコダイン、シエラ、ラルクが最後の3人となるまで、クロコダインとシエラの協力関係は継続される。
それが満たされれば、契約は破棄され、互いの命を取り合って最後の一人を決める。
ただし、ラルクが死んでしまった場合、その場で契約は破棄される。
※互いが別世界の住人であることに気付いていません。
※支給品はまとめただけです。新たな不明支給品の中に目ぼしい武器等がないというわけではありません。
※タヌタローの不明支給品は、クロコダインには薬に見えるようです。シエラにも薬と見えなくはないようです。他の参加者には別の物に見えるかもしれません。
【シエラ@聖剣伝説Legend of Mana】
【状態】:肉体的な疲労(小)、精神的な疲労(中)、両腕と全身の所々に火傷(小)、脇腹に咬傷(中。治療済)、不安定、酩酊状態、睡眠中、クロコダインの背中
【装備】:シルバーケープ@魔法少女リリカルなのはシリーズ
【所持品】:なし
【思考】
基本:ラルクを最後まで生き残らせる
0:にゃむにゃむ
1:気持ちに整理を付ける
2:クロコダインと協力して他の参加者を殺す
3:ラルクには出来れば会いたくない
【備考】
※参戦時期はドラグーン編のシナリオ終了後です。
※電車を知りません。キュウビの用意したトラップだと思っています。
※イギーの情報を得ました。
※シルバーケープは泥水で相当汚れていますが、使用に問題はありません。
※八塩折之酒@大神で酔っ払っています。目が醒めた後、しばらくは行動に支障が出るかもしれません。
- : SPIRITs away ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/06/04(金) 20:28:00:GU/iAehy
-
【クロコダイン@ダイの大冒険】
【状態】:疲労(小)、多数の打撲(中。特に腹部)、右目失明(治療済)、多数の浅い裂傷(小。特に右腕) 、シエラをおんぶ
【装備】:覇陣@うたわれるもの、王者のマント@ドラゴンクエスト5、クロコダインの鎧(腹部と左肩の装甲破損) 、眼帯(ただの布切れ@ドラゴンクエスト5、ビアンカのリボン@ドラゴンクエスト5)
【所持品】
クロコダインの支給品一式
シエラの支給品一式(ドラグーンナイフ@聖剣伝説Legend of Mana、電光丸(倍率×1000)@大神、不明支給品0~2個。確認済)
ボニーの支給品一式(不明支給品×1。確認済)
コロマルの支給品一式
夜叉猿の支給品一式(傷薬@ペルソナ3×1、不明支給品0~1個。確認済)
【思考】
基本:全参加者の殺害。許されるなら戦いを楽しみたい。でも首輪が解除されたのなら……
1:研究所へニャースを連れて行き、首輪を解除させる。
2:シエラとの契約は解消する? それとも悩みを聞いてやる?
3:イギーは今度こそ殺害する
4:シエラとラルクの実力が楽しみ
最終:キュウビの儀式を終わらせ、任務に戻る
【備考】
※クロコダインの参戦時期はハドラーの命を受けてダイを殺しに向かうところからです。
※参加者は全員獣型の魔物だと思っています。
※キュウビを、バーンとは別の勢力の大魔王だと考えています。異世界だと気付いていません。
※身体能力の制限に気づきました。
※戦闘における距離感を大分取り戻しました。
※しばらくは右腕だけで覇陣を扱うのは難しそうです。
【ニャース@ポケットモンスター】
【状態】:健康、疲労(中)、びしょ濡れ
【装備】:なし
【道具】:支給品一式、エルルゥの薬箱@うたわれるもの(1/2ほど消費)、野原ひろしの靴下@クレヨンしんちゃん、麦の入った皮袋@狼と香辛料、キラーパンサーの首輪、アマテラスの支給品一式(食料:ほねっこ)と不明支給品1~3個(確認済)
【思考】
基本:殺し合いからの脱出
1:クロコダインに従う
2:研究所で首輪の解析
3:アマテラスや楽俊、ついでにオカリナたちが心配
[備考]
※異世界の存在について、疑わしいと思いつつも認識しました。
※アマテラスが、ただの白いオオカミに見えています。
※ピカチュウたちと情報交換しました。
※楽俊の仮説を知りました。
※この会場にいる獣達は全員人間とかかわりをもつ者だと勘違いしています。
※首輪がプックルのものだと気付いていません
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/04(金) 20:31:33:GU/iAehy
- 以上です。
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/14(月) 21:27:58:dJIoFIP4
- ∥
∥从从
〓▲ ▲フ
○ (・) ノミ
保守をするか否かで、英雄と凡人が分かれるのだ! - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/15(火) 18:44:48:PLEoD2jk
- 投下乙です
シエラも辛いんだよな
クロコダインとニャースの掛け合いも中々よかったです - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/16(水) 20:10:34:Csxx25O7
- /|
r':;-ヽ ._/|
l:::| イ | f-t;:、
_,;ト;L__」 |ロ |::l ,
(⌒`ヾ:::::i⌒ヽ. __.,l`L_」;イ/ |_ モウスグ オラ達 ノ 出番 ナンダ ギャ
ヽ. ~~⌒γ⌒| \ o !::::::::::! o`/
|言売/'^、 i ( ⌒γ⌒~ヽ/
| /:::::::|/ | j /^ー、 心|
レ':::::::::::::レ' |/|::::::::::\ |
i::::::::、:::::::,} /:::::::::::::::`i
/:::::::::;ヘ::::::::ヽ /::::::::入::::::::| - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/16(水) 20:12:08:Csxx25O7
- 、_》
/ ̄ | /| 、_》
| | r':;-ヽ / ̄ ̄| ._/| 《_,
| | l::| イ | 《_, | | f-t;:、 / ̄\
| _ノ,;ト;L__」 | ̄\ \ | |ロ |::l , / \
ヽ `ヾ::::::i⌒ヽ/ / '、_」_/L_」;イ/ |_/ ___」
\ |:::::::| 、__ / \ o !::::::::::! o`/ノ
レ'::::::::L.」 ヽ |::::::::::| / ̄
|::::::::::::/ `|:::::::::::l_/
 ̄ ̄´、,゛  ̄ ̄´ `. _'.
・ ‥…―――――――――――――――――――――――――一
__ ___._ ' ____,、´
|天| /:::::::::::::::( |:::::::::::::::l
|照| i::::::::、:::::::,} /:::::::::::::::`i
 ̄ /:::::::::;ヘ::::::::ヽ /::::::::入::::::::| - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/23(水) 19:27:51:rgWmNb5+
- 从从
¥ ▲ ▲ フ
⊂((・) ミ
/⌒ ~) そろそろ
( くノ | イ
ヽ_ァ |
ノヽ_λ_)
/ ノ| ノ
( -く |ー(
\ r-| 丿
/_ノ(_)
/⌒ヽ /⌒ヽ
|/ |从从フ/ヽ |
| |▲ ▲ ヒ/ |
| | (・)Vノ | 英雄による保守の時間だ!
ノヽ ノヽ 人 ノ
( ソ / \/
\ イ |
\ヽ\__八_ノ
ヽ 人丿
/⌒ / |
|ノ ヽ 人
/ || / ハ |
ヒ ノ ヽ_ノ ( \_ ハ
しリL_ノ しリリヘ_ノ
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/27(日) 22:12:00:dT4z4y1N
-
すごい遅レスだが、まん丸もかなりの上位クラスじゃないか?
(まだ戦闘してないから、能力にどの程度の制限があるのか分からんが)
現神の術(空気を固める)を使えばクロコダインクラスの相手も窒息死させられそうだし
(性格的に絶対にやりそうにないが)
他のスペックもかなり高い
(手印念は原作でドタ八サイズの敵なら上空高くまで吹っ飛ばしてたし
折り紙の術も、非常食量産したり、感染症を治せる生き物を生み出したりとかなり応用が効く
サトルさんも原作終盤になると、上空から人を探して飛び回れるぐらい素早く動けるようになってた)
問題は、「利口なのか間抜けなのか」と言われるぐらい頭と精神面が上下するところか - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2010/06/27(日) 23:27:44:Mrrc5Aoh
- 現神の術は禁止じゃなかったかな
ぼのぼのたちといい、実はチートが多いな
戦い方では皆あっさり死にそうでもあるが - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/28(月) 00:13:47:t+d04qZk
-
禁止だったのか
すまん
名簿、パッと見ではクロコダイン無双過ぎるだろという印象だが
(ジャンロワのフレイザードや初代アニロワのアーカードみたいな)
チョッパーみたいに一定の技術に特化したタイプとかグズリ父みたいに思わぬ方向で強さを発揮する奴とか
(正直グズリ父がこんなに頑張るとは思わなかった)
動物が多いだけに小器用なキャラが際立つな - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/28(月) 00:28:03:JzVX3g4H
- クロコダインは連戦続きだが奥の手はまだ使用していないんだっけ
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/28(月) 02:10:45:t+d04qZk
-
まとめWiki見てきたが
現神の術は負荷はかかるけど一応可能っぽいな - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/28(月) 14:31:30:m0qbVl6S
- あ、ほんとだ
威力と負荷がどの程度にされるかになるね
今は精神状態がやばいけど、まん丸って感情が高ぶるほど威力があがるんだっけ?
クズリもいるし、屋敷はマーダーほいほいだな - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/28(月) 15:11:34:t+d04qZk
-
というか現神の術が使えないなら、まん丸の戦闘能力ってツネ次郎とそんなに変わらないからな
(折り紙はそこまで戦闘向きじゃないし一応完璧な手印念が常に撃てる強みはあるが)
原作だと中盤以降は冷静な時でも使えるけど、動揺してる時の威力では
キレた時の現神>>困った時、命の危機の現神って描写だった
初期の描写だとパニクってる時にも無意識で発動するっぽい
(地面を凸らせてタヌ太郎&ツネ次郎を吹っ飛ばしたり)から不意打ちには強いと思う
逆にグズリ父は、問答無用で襲いかかってくる敵には弱そうだ - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/28(月) 16:07:59:t+d04qZk
- 自己レスした…orz
だ - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/28(月) 17:07:47:sw2RCUY5
-
まん丸はじわじわ系には弱いのかぁ
つまり、和ホラーはダメと……
まあ、キレる条件は揃いつつあるよね
話し変わるが、キレたというが、まん丸って負の感情を持ったりしたのかな?
憎悪とか憤怒とか、その類の
原作の終盤を知らなくて。本屋にないし
クズリは搦め手を好むしね
豪邸にゃヤマアラシデビルあるから、使えば攻撃力が一気にトップになりそうだ
ぼのぼの準拠だからあまり関係ないけど、動物としてのクズリはオオカミに勝つぐらい凶暴なんだよね
さすがウルヴァリンだ
黄色いタイツさんだ - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/29(火) 00:32:46:J1s+XExr
-
キレたことはあるけど(山を焼き尽くそうとするギオを一喝したり)
憎悪という感情を持ったことは一度もないと最終巻ではっきり言及された
終盤で白老に「こいつ誰でも(何度も命を狙った敵さえ)「さん」を付けて呼ぶ。ワシは今でも白老さんや」と言わせたレベル
終盤を知らない人に補足すると、終盤の現神の術はかなりチートになってる
空気を固めて閉じ込めて強敵を半永久的に封印したり
逆に自分や仲間たちの周りの空気を固めて土津波(土砂崩れ)から無傷で生還したり
あとギオの使った現神の術は空気をカッター状にして巨大かまいたちを起こしたり炎を利用して炎の蛇を作ったりしてた - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/29(火) 08:01:36:16ffgVd6
- 風雲再起やアマテラスがメじゃないぐらいにチートだな
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/29(火) 17:08:35:Tv7IXJox
- まん丸の最強クラスはやばい能力が多かったな
体内爆破攻撃とか空間移動っぽいのとか
まん丸もがんばれば師匠みたいにブラックホール的なものを作れるんだろうか - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/29(火) 18:56:59:kVGbYOyP
- 生存者における能力のやばさ上位(制限度外視)って
S:まん丸、アマテラス(空間支配、時間支配)
A:ザフィーラ、イギー、チョッパー(万能能力)
B:イカルゴ、オカリナ(遠距離・広範囲攻撃)
C:クロコダイン、パスカル、ケットシー、ピカチュウ(中距離攻撃)
D:シエラ、ラルク、クロ、カエル、ムックル、クズリ、アライグマの父(単純戦闘力、応用技能)
みたいな感じに。主観だし、能力が強くても生き死にには何の意味もないけど
誰でも心臓刺されれば死ぬし - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/29(火) 19:34:37:Snf66S5v
- 制限度外視だとクロコダインはもう1~2上だと思う
割と広範囲で高威力な遠距離攻撃+肉体強化+逃亡用+穴掘り+他者の気を読める程度の闘気技術持ちな上、
対生物一撃必殺な焼け付く息がある
あとまん丸はそこから2~3下がると思う
まだ未熟すぎてそこまで能力を使いこなしているわけでもないから - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/29(火) 20:39:13:J1s+XExr
-
クロコにはギガブレイクを耐える耐久力もあるしね
現神の術は後半になると自由自在だったぞ
念心戦では、相手を視認した瞬間に術発動させて封印してたし
(その回で「相手の姿が見えないと使えない」という弱点も発覚するんだが) - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/29(火) 20:47:21:J1s+XExr
-
連投すまんがギロロも入れてもいいと思う
まあギロロの強さは兵器あってのものだが
少なくとも西沢家の執事と張り合えるぐらいの身体能力はあるわけだし - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/29(火) 21:12:14:kVGbYOyP
- ごめん。ギロロは一回ランク修正した時に追加し忘れてた……
wikiのまん丸の項目に追加しようと思うんだが、挙げられた情報をまとめると
【現神の術】
主に空気を操る。
空気を圧縮し、防御壁にしたり、刃にすることができる。
閉じ込めて窒息させることや、炎を使って合成技にすることも可能。
ただし、まん丸は視認を経なければ発動しない。
でいいのかな?
ウィキペディアの方だと、命を生み出すって書かれててよく分からないんだが。
そうじゃない・他にもあるぜ等あるかな? - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/29(火) 21:13:31:kVGbYOyP
- 獣王痛恨撃って、そこまで遠距離射程だっけ?
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/29(火) 21:31:21:Snf66S5v
-
初めて使った際の描写的に200メートルくらいは最低でも射程がありそう
まぁ同僚のヒュンケルが遠くの山まで一瞬で到達する攻撃を使うような世界だし - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/29(火) 21:55:23:J1s+XExr
-
最近まん丸を漫喫で全巻読み返してきたので記憶は新しいと思う
現神の術は、要するに「物体の形を変える」チート技。
術の範囲はよく限定されていないけど
(一度、ゴジラサイズの敵を現神で封印できるか試そうとしたことがあるけど妨害されて試せなかった)
基本的に「イメージしたことは何でもできる」
(敵を閉じ込める時に視認する必要があるのもこの為)
作中で使えるのは、まん丸と、まん丸の師匠のネンガと、ラスボスのギオの三人だけ。
この内まん丸が使った現神は
・空気を固めて拳骨状の固まりを作り、敵を殴り倒す
・川の水を固形化して長いロープを作り、落下する敵を助ける
・地面を粘土細工のように変形させ土で巨大な彫像を造る
・自分の周囲の空気を固めて岩を作り、攻撃を防御する
(ただし空気を硬化させる為、発動中は息ができない)
・敵の周囲の空気を固めて閉じ込める
(発動中は敵も呼吸ができない。呼吸しなくても死なない敵のみ、
半永久的に固めて封印する手段を選んだ)
ギオによれば、応用すれば無生物を生物化させることもできるらしい
ギオはこれを応用して、粘土からたくさんの先兵を作ったり、岩や炎から蛇を作って攻撃した
ただしまん丸は、生き物を作り出す術を
「ギオさんが作った生き物はみんな可哀想だったから」
という理由で禁じている - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/29(火) 22:23:53:kVGbYOyP
- なるほど。ありがとう。
まんまコピって貼ってしまっていいかな? - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/29(火) 22:30:16:J1s+XExr
-
私なんかの文で良ければ使ってください
それと前のレスを訂正
「ギオが使ってた、空気をかまいたち状にする術」は「空の術」と言われてる別系統っぽい術でした
すみません - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/30(水) 02:05:57:krpVD+YY
- 了承ありがとうございます。
一部、構成部分で改変し、転載させていただきました。
訂正も、ありがとうです。
ネタとして訂正すると、こうか
S:アマテラス
A:ザフィーラ、イギー、チョッパー、クロコダイン
B:イカルゴ、オカリナ、まん丸
C:パスカル、ケットシー、ピカチュウ
D:シエラ、ラルク、ギロロ、カエル、クロ、ホロ、ムックル、クズリ、アライグマの父(単純戦闘力、応用技能) - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/30(水) 02:28:37:zRU50rMp
-
チョッパーがクロコと同ランクなのに違和感
クロコの制限とチョッパーの変化の使い分けにもよるけど
チョッパーの決め技って蹄と角による打撃しかなさそうだし - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/30(水) 02:35:17:XNwksqxm
- ランブル限界超えて巨大モンスター化するし、使い分けで弱点見抜けたりするぜ>チョッパー
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/30(水) 03:24:16:zRU50rMp
- 肝心な一言を書き忘れてた
さん 本当に乙です。そしてすんませんorz
モンスター化は無視してた
あれやると実質死にかけるから良くて相打ちだし、自分のデメリットの方が大きいってことで - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/06/30(水) 15:17:18:XNwksqxm
- 相打ちに持ち込めるなら同ランクじゃないかなあとも思うが、まあ、最強スレじゃないしね
不毛になるからやめる
強対主催が減ったと思っていたが、まだ相当数いるんだな - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/07/08(木) 18:20:38:I4aaULhj
-
しかも一見して非力な奴らばかりと勘違いしそうな罠>マーダーホイホイ - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/07/08(木) 21:37:34:5FOqu10S
- 兵は詭道なりを地でいくホイホイだなw
傍目からすりゃ、タコと鼬っぽいのと雛鳥。危険視しようがない。
でも、タコって予知できるんだよな。ドイツのタコ、凄いらしいし。 - : ◆EwVLYtcCbD23 [sage] 2010/07/09(金) 00:45:23:MyTEYHMv
- ケットシー、因幡てゐ、ケロロ軍曹を予約します。
- : 代理投下:でもそれは大きなミステイク ◇EwVLYtcCbD23 [sage] 2010/07/11(日) 00:35:33:jGIsbZtP
- 「ねえ、誰かい――きゃ、きゃあああああああああ!?」
「ぎぃいいいいやぁああああああああああ!!」
てゐが足を踏み入れたと同時に、男は大声を上げながら豪快にすっ転んだ。
そのシルエットはまさしく、先ほどまで一緒にいたギロロと同じ姿。
「いぃやぁああああああ!! 神様仏様ミジャグジ様マーラ様ぁあああ!! 我輩が悪かったでありますよぉおおお!!」
「ちょ、ちょっと待ってよ。何も獲って食べやしないって」
てゐの姿を目視すると同時にギロロと同じ姿のカエル男が暴れだす。
突然の事態にてゐの反応も僅かに遅れ、後手に回る形になってしまった。
「いーーやーー!! まだ死にたくないでありますぅ! 完成させてないガンプラとかー!! 冷蔵庫のおやつとかあるしーー!!」
「だからさ、ちょっとはこっちの話も聞いてくれてもよくない?」
ともかく、会話を成立させるためにカエル男を落ち着かせるのが最優先である。
歩み寄って会話を試みたが、カエル男はすごい勢いで飛び退きながら分けの分からないことを口にしている。
「うーーのーー!! そりゃ一番になるって言ったけどぉおおおおお!! ホットブロットファイバーでぇええええええ?!」
「いい加減にしろッ!」
一発。
ついにてゐの拳がカエル男の頭上に振り落とされた。
鈍い音を立て、同時にカエル男の頭が地へと沈む。
「……ッ痛うう」
「ちょっとは落ち着いた? ったく、そんなんじゃあこの先いくつ命があっても足りないわよ?」
頭を抱えながら、カエル男はゆっくりと起き上がってくる。
そしててゐを睨みながら、素早く人差し指を突きつけて訴える。
「何するでありますか! いきなり殴るなんて! ひどい! 人でなし!」
「何よ! あんたが勝手に一人で狂ってたのが悪いんでしょ?!」
それに、私は元々人じゃないけど?」
「へあ? いや、でも、どう見てもウサ耳をつけたコスプレの……」
分けの分からないことを言っているカエル男を適当にあしらいながら、てゐは心の中で微笑む。
思ったとおりの小心者だ、こちらが握っている情報がなくても簡単に転がせそうなタイプである。
こいつにどんな情報を仕込み、そしてどのように使ってやろうか?
「ってぇ?! 無視ィ?!」
未だに激昂しているカエル男の叫びにより、てゐの思考は中断される。
「お、おのれー! ムキィーッ!! このガマ星雲第58番惑星 宇宙侵攻軍特殊先行工作部隊隊長ことケロロ軍曹を無視するとはいい度胸でありますな!」
カエル男……ケロロの気は晴れないらしく、怒りの感情をてゐへとぶつけ続けている。
「大体ィ! 挨拶もなしにいきなり入ってきたと思えばいきなり我輩を殴りつけるしィ! 一体全体どういう神経のぉ!? チョーあり得ないって言うかー?!」
「あらそう? 人殺しに神経がおかしいだなんて言われたくないけどね」
氷柱の様に冷たく尖ったてゐの一言を受け、ケロロの表情が瞬間的に青ざめていくのが分かる。
当たりの感覚を確かめ、てゐは心の中で笑う。
- : 代理投下:でもそれは大きなミステイク ◇EwVLYtcCbD23 [sage] 2010/07/11(日) 00:36:36:jGIsbZtP
- 「入り口で男の人が倒れてるのを見たわ。どうせあなたがやったんでしょ?」
「ち、違うであります! た、ただ我輩は彼にその……」
予想通りの反応だ。
頭の中で構築していたシミュレーション通りのシナリオが今、目の前で描かれている。
「あら、違うの? ひょっとして果たすべき責任とやらのことかしら?」
どうしてそれを知っている。ケロロの顔はそう言わんばかりの表情で固められていた。
主導権を完全に我が物にしたてゐは、自分が描いたシナリオ通りに駒を進める。
「ま、それはともかく男に布がかぶせてあったところを見ると、彼が死んでいることをごまかそうとしたのかしら?
彼を治療するつもりが治療を間違えたか、もしくは既に死んでいたか。
あたりに散らばっている薬品からすると、そのどちらともとれるわね」
「そ、そうであります! 我輩は、彼を治療しようと思って……」
弁明を始めるケロロをよそに、てゐは一本のビンを拾い上げる。
「治療? ハナから殺すつもりだったんじゃないの?」
「な、何を!」
拾い上げた一本のビンをケロロへと突きつけ、てゐは冷たく言い放つ。
「この、毒薬を使ってね」
「そ、そんな。そんなハズがないであります! だって、このビンは以前夏実殿に……」
「ビンだけで判断したの?」
頷くケロロを相手に、小さく溜息をつく。
「これは毒薬よ」
勿論、ハッタリだ。
月の頭脳を持つ訳でもない彼女が、薬学などに精通しているわけもない。
傷薬と毒薬を見分ける術等持っているはずもないのだ。
だが、それでいい。今の状況はそれでいいのだ。
今は、とにかくケロロを揺さぶることが目的。
「傷薬と同じビンに入れておけばバレないとでも思った? このタイプの毒薬は無色透明だけど、僅かに臭いがするのよ。
それを傷だらけの人間にかければ、それこそひとたまりもないわよ」
ケロロは動かない。
ただ、自分がしていたことが正しかったのか、間違いだったのか。
それが分からず、口を閉じては開き、目を見開いていた。
「あなた、ビンの中身が毒だって知ってたんじゃないの?」
少し畳み掛けすぎたか、ケロロにはてゐの言葉は届かないようだ。
ケロロの今までの言動、そして今の状況からてゐはケロロの有用性を推測する。
まず、ギロロとは違い戦闘面では期待できそうには無い。
もし超絶な戦闘力を持っていたとしても、この様子では正面切って戦うということもしないだろう。
自分を守ってくれることも、誰かを潰してくれることも無いだろう。
ここで有用性の大半が失われる。
簡単に殺せそうなカエルのためにわざわざ労力を割く事も無い。
引き出せそうな情報を引き出し、貢がせるだけ貢がせてその場を去る。
そしてケロロという人物の悪評を撒き散らし、誰かに殺してもらう。
それが最善の手であると考え、てゐは次のカードを切る。
「ともかく、貴方は信用できない。そして貴方が人殺しである可能性も捨てきれない。
だから、ここは逃げることにするわ。貴方がどんな武器を隠し持っているのかも分からないし。
あの男みたいに死にたくもないしね」
- : 代理投下:でもそれは大きなミステイク ◇EwVLYtcCbD23 [sage] 2010/07/11(日) 00:39:09:jGIsbZtP
- 「ま、待つであります!」
ここで引き止められるのもてゐの計画通り。
相手は「自分が殺人者であることを広められたくない」のである。
誤解を抱いたまま自分が居なくなれば、それを広められるのは確実。
相手としては、それだけは食い止めたいはずだ。
「違う、違うであります。我輩は、我輩は人殺しなんて、やってないであります!!」
「じゃあ、どんな手段を使ってもいいから私を信用させてみてよ」
カードは切った。
もしケロロが何か有用な情報を持っていれば持っているほど、払い出しは大きい。
何も持っていなかったとしても、彼女の損失は少ない。
どちらにせよ、悪評をばら撒くことを止める気など毛頭ないのだから。
「そうね、まずはあなたの支給品が一体なんなのか見せてもらえる? 今持ってるものを含めて、全部、全部よ」
「そ……それは」
「出来ないの? 殺人の証拠でも入ってるのかしら?」
デイパックを貸すことを渋るケロロだったが、てゐの誤解を解くためにデイパックを差し出さざるを得なかった。
レア物のガンプラを取られてしまうかもしれない、そう考えただけでもケロロはゾッとする。
そして、てゐは差し出された道具とデイパックの中身を確認する。
一つ、思わず大きな溜息をこぼす。
ケロロが持っていた支給品は思っていたより遥かに下の内容だった。
価値の分かるものにとっては生唾物の物体だったとしても。
てゐにとってはただのガラクタの塊でしかなかった。
そして、てゐはガンプラの箱を。
叩きつけるように勢い良く投げ捨てた。
「あなた、ふざけてるの?
もうちょっとマシなものがあるでしょ? 隠し持ってるんじゃないの? ねえ?」
てゐは勢い良くケロロへと詰め寄る。
罵倒の言葉を浴びせ続けるが、ケロロは微動だにしない。
「ねえ、聞いてる? 返事ぐらいしたらどうなのよ!!」
「……せえ」
ついにてゐはケロロの異変に気がつく。
体から発せられる気迫、肌を焼くような威圧感、影を帯びた顔。
先ほどのケロロに存在しなかったものが瞬時に現れた。
しかし、その存在に気がついたときには既に遅く。
「うるせえバッキャロォォォオオオオオオオ!!」
想像もつかないほどの速度で振り抜かれたケロロの拳が、てゐを給食室の入り口まで吹き飛ばす。
突然の事態にてゐは受身を取ることすら間に合わず、コンクリートへと叩きつけられる。
「ぶっ飛ばす、テメーだけはぜってーにぶっ飛ばす!! っていうか許さん! 許さんぜよ!!
ジムを、いやガンプラを粗末に扱いやがってよォォォォ! 覚悟は出来てんだろうなァ?!」
- : 代理投下:でもそれは大きなミステイク ◇EwVLYtcCbD23 [sage] 2010/07/11(日) 00:40:50:jGIsbZtP
- 起き上がったてゐの目に映ったのは、悪魔。
憎悪、嫌悪、恨み、ありとあらゆる負の感情の濃い部分を掬っては混ぜ、掬っては混ぜ。
それを繰り返したカタマリが、目の前にいた。
声を上げることすら叶わず、逃げようにも体が言うことを利かず。
ただ、じっとするしか出来なかった。
「ワシのガンプラ壊してェ! タダですむと思ってたらあかんぜェ!? エェ?!」
防御体勢をとるよりも早く、ケロロの拳がてゐの腹部へとめり込む。
無防備な腹部に叩き込まれたその一撃は、瞬く間にてゐの内臓の内容物を逆流させる。
だがそれを吐き出すことすら叶わず、追撃の拳が横に振りぬかれる。
再び大きく吹き飛んだてゐは、叩きつけられた先で口に溜まった物を吐き出す。
給食室では出来るだけ見たくない吐瀉物が、地面にぶちまけられる。
耐え難い激痛がてゐの腹部に残り、彼女を苦しめる。
だが、ケロロはそんなことを歯牙にもかけずにてゐへと近づく。
痛みに悶えている時間は、ない。
激痛を引きずりながら、彼女の至高ははある場所へとたどり着く。
そう、この場所から脱出する手段が彼女にはあるのだ。
彼女が手を伸ばしたのは、大空を駆ける使い捨ての翼。
こんなに短い期間でもう一枚使うとは思ってはいなかったが、背に腹は変えられない。
この翼一枚で命が助かるのならば、使わない理由は無い。
てゐは勢い良く、翼を宙へと放り投げた。
早まった。
と、後悔するのに数秒と掛からなかった。
本来、キメラの翼は室内で使うものではない。
普段の彼女ならそこまで頭が回ったはずなのだが、恐怖が目の前に居る状況にそこまで思考するのは流石に無理だった。
急激に持ち上げられた彼女は、その速度を殺すことなく天井へと頭を打ちつけてしまう。
そしてそのまま、キメラの翼を握り締めたままもう一度地へと落ちていく。
腹部と頭、そして着地による全身へのダメージを抱えながらゆっくりと起き上がろうとする。
が、その時既にケロロは彼女に肉薄していた。
その小さな体からは考えられない力で、ケロロはてゐの襟元を掴む。
そして、そのまま彼女の体を軽々と持ち上げ。
「いっぺん頭冷やして来いやゴルァアアアアアアアアア!!」
そのまま、勢い良く窓の方へと放り投げた。
「こうなったらもう何もかもを許さんッ……!!
片っ端からシバキ倒したらァァァ!!」
彼が持っているのは、ただ一つ。
ガンプラを破壊された恨み、ただそれだけ。
それだけのことなのだが、彼にとっては何よりも大きい理由。
今までに様々な出来事が起こったが、それを優に上書きするほどのショックだった。
ある種の修羅と化した彼は、ゆっくりと学校の中を彷徨い続ける。
恨みを晴らす手段を探すべく、彼は彷徨い続ける。
「野郎共! ガンプラの恨みを思い知れェェイ!! ウルァァァァ!!」
獣が、蠢く。
- : 代理投下:でもそれは大きなミステイク ◇EwVLYtcCbD23 [sage] 2010/07/11(日) 00:42:41:jGIsbZtP
- 【ケロロ軍曹@ケロロ軍曹】
【状態】ガンプラ破壊によるマジギレモード
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
0:こんな世界、焦土にしてやらぁ……!!
※キレて暴れている所為で、いろいろなことを失念しています。
※ピカチュウ、キラーパンサー、オカリナをゲームに乗ったと誤解しています(名前は知らない)
※ピカチュウ、キラーパンサーの言葉は通じないようです。他は不明。
※キュウビに宇宙人の協力者がいるか、キュウビ自身が宇宙人であると考えています。
※会場の施設は、全て人間が以前使用していた物と考えています。
※ぼのぼのと情報交換をしました。
※給食室に、加藤清澄@バキの死体があります。
※給食室の加藤清澄を重要人物と考えています。
「さーて、死に損ないクンのグッド根性に答えてあげるタメにオイラは早く行かなくっちゃア」
楽俊から生体マグネタイトを抜き去り、颯爽と部屋を立ち去ったケットシーは次の目的地へと向かう。
傷ついた死にかけの男がいると言われた、学校を目指して歩いている。
生体マグネタイトを得られるのがほぼ確定的な状況が迫っていることを考え、思わず足取りが軽くなる。
「そういえば、オイラ学校って聞いたことあるゼー!」
そう、学校という施設の話はケットシー自身の目でも見たことがある。
魔神皇ハザマが魔界へと飲み込んだ施設、それが学校。
嘗ての主人はそこで「ベンキョウ」ということをしていたらしい。
他にも「ブカツドウ」だとか、「ウンドウカイ」とかいうこともやっていたらしい。
しかし、ケットシーの主人は「キタクブ」だったから「ブカツドウ」はやったことがなかったらしい。
そんな話を友達のジャックフロストがしているのを隣で聞いていたのをふと思い出す。
「ま、今そんなことやってるシュガーなやつなんてイナイだろうけどさ」
学校のことを喋る主人は、あまり楽しそうではなかった。
自分は主人と交渉する前も、それなりにイキイキした生活を過ごしていた。
特に不自由も無かったし、時々襲われることはあってもそこまでの不満は無かった。
しかし、主人は違った。
「学校」のことを話すときは、操られた人形のような目をしていたのだ。
口を開いても殆ど不満、愚痴、嫉妬ばかり。
ケットシーはその時に疑問に思っていたのだ。
なぜ、そこまで不満を抱えながらも「学校」という場所に行き続けたのか?
彼はどんな気持ちで、「学校」という場所で生きていたのか?
不満があるなら抜け出せばいい、欲しいものは奪えばいい。
それが当然だったケットシーには、主人の行動と気持ちが理解できずにいた。
結局、その答えを知ることは叶わなかったのだが。
「たった一度の人生、もっとハッピーにいかなきゃソンだぜー?
タダでさえシケてるんだから。ちょっとでも楽しい方が特に決まってるよーっ」
そうだ、形はどうあれ折角助かった命なのだ。
もう一度ぐらい一生を謳歌しても、誰にも文句を言われる筋合いなど無い。
自分のやりたいようにやり、楽しく過ごす。
ケットシーが考えているのは、たったそれだけのことだ。
「オイラのガラでもないねー。独り言なんて、さ」
- : 代理投下:でもそれは大きなミステイク ◇EwVLYtcCbD23 [sage] 2010/07/11(日) 00:43:24:jGIsbZtP
-
激痛。
彼女の体と精神を苦しめ続けるたった一つの要因。
ケロロの怒りの拳が叩き込まれた腹部。
窓を突き破るときに出来た全身の裂傷。
そして、着地に失敗した際に砕けた足の骨。
その全てが彼女を苦しめ続ける。
両腕に突き刺さったガラス片を、手で抜ける範囲一個ずつ抜いていく。
ガラス片が抜けるたびに、激痛と奇妙な感覚が彼女を襲う。
しかし、刺さったままではろくに動かすことも出来ない。
痛みを堪えながら、抜かざるを得ないのだ。
ガラス片一個にとても時間をかけながら、彼女は一個ずつ抜いていく。
平常心。
それを保つことで手一杯だった。
事を見誤れば死に直結するこの場だからこそ、平常心が重要である。
ガラス片を抜き終わった後に、傷口へと傷薬を塗っていく。
傷薬が染み渡る感覚にもう一度悶えそうになるが、必死で耐え抜く。
汗をたらしながら、傷薬を全身へと塗っていく。
少しずつ、痛みが引いていくのが分かる。
ガラス片が刺さっていたところから感じていた焼けるような感覚は次第に弱まっていく。
だが、折れた骨は戻らない。
腕、腰、足。失敗した着地が招いた骨折はほぼ全身に及んでいた。
これでは走るどころか歩くことすらままならない。
だが歩くことが出来なくとも、今の彼女には逃げる手段がある。
そう、キメラの翼だ。
先ほどは室内で使ったため、頭を打ちつけるだけで終わってしまった。
が、ケロロが態々室外まで投げ飛ばしてくれたお陰で使うことが出来る。
これでもう一度どこか適当な場所に逃げ、その先で助けを求めればいい。
チャンスはまだ二回ある。次使ってダメならもう一度使えばいい。
骨が治るまでは、どこかのお人よしに匿って貰うとしよう。
ここで、ぼうっとしていれば。またケロロに襲われるかもしれないのだから。
そうして、キメラの翼を取り出そうとしたとき。
彼女の耳に一つの声が入りこむ。
「うっひょー! アンタ! そう、そこのアンタ!」
声のする方角を向くと、靴を履いた小さな猫が立っていた。
見る限り危害はなさそうに思えるが、最大限の警戒を怠らずに行う。
「あれ、そういえば男って聞いてたけど……ま、いっか。じゃあ、早速頂いちゃうぜ~?」
頂く? 何を?
一瞬の思考が命取りであった。
即座に猫は、笑顔で筒状の物をてゐへと突きつける。
それに反応するようにてゐはキメラの翼を取り出し、空へと放り投げようとする。
- : 代理投下:でもそれは大きなミステイク ◇EwVLYtcCbD23 [sage] 2010/07/11(日) 00:44:21:jGIsbZtP
-
だが、間に合わない。
猫が突きつけた筒状の物が兎には大きすぎる音を立てたかと思うと、激痛の後に自分の体が一切言う事を聞かなくなったからだ。
小指一本として、ピクリとも動かない。
筒だ、筒から何か弾が発せられた。
てゐがそれを見抜いた頃には、もう一発の音が筒から発せられていた。
てゐの敗因は、選択ミスだった。
相手の弱点を握ったことを生かし、自分が有利に立とうと思うが故に道を踏み外した。
彼女自身は間違った行動をしたつもりはなかったのだが、結果としてそれは最悪の一手であった。
最初にてゐが名乗っていればこうはならなかった。
ケロロを脅すのではなく、最初から友好的に話しかけて自己紹介を済ませていれば。
安全、かつ確実に操れたというのに。
それを知ることも無く。
脳天に大きな穴を空け。
彼女は、因幡てゐは。
死んだ。
【因幡てゐ@東方project 死亡確認】
- : 名無しさん@そうだ選挙に行こう [sage] 2010/07/11(日) 00:44:58:bSvhheTm
- 支援
- : 代理投下:でもそれは大きなミステイク ◇EwVLYtcCbD23 [sage] 2010/07/11(日) 00:46:44:jGIsbZtP
-
「うーん、ラッキーラッキー。オイラはヒジョーに運がいい! すなわちグッドラック!」
たった今、ケットシーが銃殺したのは「妖怪」だ。
ただの動物であるシロや、楽俊とは違い、存在的には「悪魔」に近い。
向こう半日、長くて一日は過ごせそうなほどの大量の生体マグネタイトが、てゐの体から吸い取ることが出来た。
そしててゐが持っていたデイパックには大量の道具が詰められていた。
シロ、楽俊とハズレを引いてきたケットシーだったが。今回の収穫は十分過ぎた。
「ワザワザ歩いてきて、本当正解だったぜー。サンキューサンキュー」
そして、てゐの持っているアイテムの説明書を読み漁る。
「空が飛べる……翼?」
ケットシーが目をつけたのは、オキュペテーやケライノーの物のような一枚の翼。
それを空に放り投げるだけで、どこかへ飛ぶことが出来るらしい。
「ヤッホーゥ! これって超グッドなアイテムじゃん?! オイラってホントに運がいい!」
もし風雲再起のような参加者にまた襲われたとしても、これを使えば逃げられる。
ある程度の無茶を行っても、確実に逃げられる手段という彼にとって大きな保険が出来た。
てゐから得たマグネタイトで最後まで生き残るのは厳しいだろう。
更にマグネタイトを集めに行くのも良い、ここらで何か別のことをしてみるのもいい。
ケットシーは次の一手をどうするか、思考し始めた。
折角のもう一度貰った命だ。
もっと楽しんで行こうじゃないか。
自由に行こうぜ? 自由に。
「ヒーホーッ!! オイラ、サイッコーにハッピーッ!!」
【ケットシー@真女神転生if...】
【状態】:疲労(小) 、帽子なし
【装備】:まぼろしのてぶくろ@MOTHER3 、デザートイーグル@真女神転生if...(コロナショット@真女神転生if...(12発))
【所持品】:支給品一式、和道一文字@ワンピース、雷の石@ポケットモンスター、拡声器、折れたシャムシール@真女神転生if...、
巨大キノコ@スーパーマリオシリーズ、グリードアイランドカード(追跡)@HUNTER×HUNTER 、
ケットシーの帽子@真女神転生if...、フィジカルミラー@ペルソナ3、カマンベールチーズ@現実
ヒョウヘンダケ×3@ぼのぼの、キメラのつばさ*2@DQ5、伝説の剣のルビー@ハーメルンのバイオリン弾き
エルルゥの毒薬@うたわれるもの(テクヌプイの香煙×5、ネコンの香煙×5、紅皇バチの蜜蝋×5、ケスパゥの香煙×5)
【思考】
基本:生き残る。ゲームに乗るかキュウビに逆らうかは他の参加者をよく確かめてからにする
1:とりあえず、適当にうろつく。
2:余裕があれば首輪の解除をする。
【備考】
※雷の石をマハジオストーン@真女神転生if...と勘違いしています
※まぼろしのてぶくろを防具と勘違いしています。拡声器を攻撃アイテムと勘違いしています。
※魔法の制限の可能性に気づきました
※グリードアイランドカードの使用法を聞きました
※オカリナ、ヒグマの大将、グレッグル、ミュウツーの情報を聞きました
※帽子をかぶった猫のことを自分のこととは思っていません。
※カマンベールチーズは楽俊に支給された食料です。
※学校を中心に、ケットシーの声が響き渡りました。
※ニンジン×20がてゐの死体のデイパックに入っています。
- : 名無しさん@そうだ選挙に行こう [sage] 2010/07/11(日) 00:53:12:jGIsbZtP
- 終了です。
支援ありがとうございます。
投下乙でした。
ヲタは怒らせるとおっかない……。
てゐはヲタを甘く見たのが敗因ですねえ。 - : 名無しさん@そうだ選挙に行こう [sage] 2010/07/11(日) 11:54:19:1Xm1dhEp
- 投下乙です。
ケロロwwwwwwwwwwwwwww
兎は自業自得としか言いようがない - : 名無しさん@そうだ選挙に行こう [sage] 2010/07/11(日) 12:52:42:jGIsbZtP
- 状態表に位置と時系列が抜けているんですが、
ケロロは【C-4/学校内/1日目/正午】
ケットシーは【C-4/学校舎前/1日目/正午】
でよろしいでしょうか? - : 名無しさん@そうだ選挙に行こう [sage] 2010/07/11(日) 20:51:12:NgB8LTdx
- 乙
ここまで行動が裏目にでまくったステルスマーダーの退場があっただろうか - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2010/07/11(日) 23:53:59:KL/s9alT
- すげえメガテンのキャラまで参戦してるんだ
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2010/07/16(金) 12:39:36:I/kBU/61
- イルカはいるか
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/07/17(土) 08:26:46:D7hMp7g4
- 猫はねっころんでいるか?
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/07/18(日) 05:42:03:Tv3bLe2x
- ∥
∥从从
〓▲ ▲フ 鯨が吼える!
○ (・) ノミ やはり、英雄は駄洒落も一味違うのだ - : ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/07/21(水) 21:35:40:q2bR6YSn
- ザフィーラ、ホロ、イギー、クロ、投下します。
- : 驟り雨 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/07/21(水) 21:36:39:q2bR6YSn
-
「すっかり濡れちまったなァ」
「まったくだぜ。駅は無駄足だったしよー」
「………………」
ホロは雄二匹のぼやきに耳を翻しながら、彼らと同様に空を見上げていた。垂れさがるような暗い雲から大粒の雨が絶え間なく降り注いでいる。その勢いは中々のもので、サッカー場の軒先から地面へと落ちていく水の流れは、まるで小さな滝のようだ。
「まあ、そう責めてやるな。地下鉄を使わねば、もっと酷い有様になったかもしれぬからの」
沈黙しているザフィーラを悪戯っぽく見やり、己の頭をぽんと叩いた。髪の中のイッスンが小さく声を上げたが、それは無視する。
風に煽られた草木は狂ったように揺れ動き、振り落とされた木の葉が小鳥のように地面を飛んでいる。
吹き付ける雨風にマントと髪を煽られながら、ホロはサッカー場の入口を見た。彼女にとっては二度目の来訪だ。懐かしさなどは微塵も感じないが、自然とまん丸とメレオロンのことが思い出された。同時に、悔しさと怒りが胸内に染みのように広がる。
ほんの半日前だが、状況は大きく変わってしまった。ホロの中にあった物見遊山のような気持ちは消え、出会った二匹の内の一匹はもう居ない。
F-5駅であの男の死体を降ろしてやりたかったが、巡りあわせが悪いらしい。やってきた電車は別のものであった。
ずっと待っていれば見つけられただろうが、それを許してくれる暇はない。
事態は刻々と変わっていく。変化しない物など憂世にはなく、気付くか否かに関わらず、時間の川は全てを押し流していってしまう。
このサッカー場とて、最初のときは夜闇の中で薄明るく耀いていた外壁も、今は雨によって黒ずんで色褪せた様相を見せていた。
被っていたマントを鞄に掛け、ホロは煩わしげに袖の雫を払った。
マントのおかげで濡れ鼠にこそならなかったが、水気を帯びた衣服は肌にぴたりと纏わりついてきて気持ち悪い。左腕は籠手に覆われているものの、雨はその中にも沁み込んでしまっていた。
着替えは鞄の中に入っているが、一度身体を拭かねばならないだろう。
「……ホロ。おまえの鼻は何か感じるか?」
尻尾の雫を払っていた所に、ザフィーラの声が掛かる。二匹の糾弾に堪えていたのかと思っていれば、ずっと気配を探っていたらしい。
訪れた時に一度やってはいたが、もう一度鼻に神経を集中させる。ホロはかぶりを振った。
「……駄目じゃな。この雨じゃ。臭いなぞ、とうに流されてしまっておる」
「やはり、そうか。ここも直接調べるしかないな」
そうしてサッカー場の調査が始まった。まずは地上の外縁をぐるりと調べて行く。
横風に乗った雨粒は、礫か何かのように容赦なく体中を叩きつけていく。もう一度纏ったマントはもう雨除けの役目を果たしておらず、だらしなく肩から垂れさがるだけだ。
幾つか、何者かの痕跡はあったものの、吹き込む雨風のせいで乱され、明確に嗅ぎ取ることはできない。
ホロは嘆息した。
幾重にも張られた雨音の幕は、周囲の物音を覆い隠していた。音が拙かろうと靴を脱いだのだが、あまり意味はなかったかもしれない。
そうこうする内に、グラウンドへと続く通路にはっきりとした臭いの片鱗を見つけた。それはサッカー場の奥から漂って来ている。薄荷のような香りの中に、確かに獣の臭いが混じっていた。
情報を集めようと更に注意深く嗅ぎ取り――ホロは顔を顰めた。心をざわつかせる、不快な情報が鼻腔に膨らんでいく。森を捨て、人に隷属した獣たちの体臭――。
これは犬の臭いだ。
トナカイの子ではない。
それを告げるとザフィーラは、
「……接触してみよう。あの子供の行方を知っているかも知れないからな。嫌ならば、おまえはここで待っていてくれて構わないが」
と、真っすぐに通路の先を睨みつけた。ホロは、ふぅと肩を竦めた。
- : 驟り雨 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/07/21(水) 21:37:39:q2bR6YSn
-
「何を言っておるのかや? 賢狼が犬コロ如きで二の足を踏むなど、あると思うのかえ?」
ホロの返答に、ザフィーラは表情を変えず、しかし、尻尾を一度大きく振った。そして、屋内に足を踏み入れる。少し間をおいて、ホロも彼に続いた。
「オイラとしちゃ、殺し合いに乗ってくれてると嬉しいんだがなあ」
後ろで、クロがそうぼやいたのが聞こえた。
天井に嵌めこまれた照明は点灯しておらず、屋内は地下道のような雰囲気を醸し出していた。さすがにここまでは雨は吹き込んではこないが、雨音は地鳴りのように屋内の空気を揺らしている。
やがて、彼女らは一枚の扉の前に行き当たった。扉の下部には穴が空いていて、そこから外の明かりが漏れ出ている。臭いもそこから流れてきていた。
けれども、扉の向こうの気配を読み取ることはできない。すでに出て行った後か。それがついさっきか、それよりも前なのかは分からないが。それとも――。
「そこに誰かいるかや? わっちらは殺し合いには乗ってはおらぬ――」
穏やかな口調で呼びかけるも、返答はない。息を潜めているのかもしれないが、これほど近づいているにも関わらず、何の気配も扉から滲み出てこない。怯えているわけでも、害意を抱いているわけでもなさそうだ。
しかし、そうであるならば、返事を寄越さない理由がなくなってしまう。
本当に誰もいないのかもしれない。鼓動や呼吸は雨音にまぎれてしまうため、ここからでは確かめようがないが。
ザフィーラが振り返り、ホロを見た。それに頷いていやると、視線はホロの後ろへと向けられた。すぐに扉に視線を戻した様子から、どうやらクロも了承したようだ。
「今から入るぞ」
そう断りを入れて、ザフィーラは扉を開けた。
強風が身体を押し返そうとするのに逆らい、足を送る。扉の向こうは低い天井に覆われた空間で、グラウンドよりも少し低い位置にある。吹き込んだ雨が床の上に水たまりを作っていた。
臭いの残滓はあるものの、その主の姿は無い――。
「犬コロ如きに後ろを取られるってのは、どんな気分だ?」
「――!?」
声が聞こえて来たのと同時に、背後でたんと床を叩く音が聞こえた。跳び退りながら振り向くと、そこには珍妙な顔をした、小さな犬がいた。
イッスンが頭上で跳びはねた。
「てンめえ、どこから来やがったァ!?」
「……鼻くそみてぇな虫までいやがんのか。あのキツネ、手当たり次第だな」
「は、鼻くそだとォ!?」
この空間には隠れられるような物陰はない。壁か天井にでも張り付いていたのだろうか。
クロに銃口を向けられているにも関わらず、犬はふてぶてしい表情を浮かべている。犬は吟味するようにホロ達を眺めて行き、最後に小馬鹿にするように鼻を鳴らした。
「クロ、銃を下ろせ。さっきも言ったが、俺たちは殺し合いに乗っていない。おまえも、そうなのだろう?」
「おまえらが血みどろの肉片になってねえんだから、そうだろうよ。分かり切ったことを一々訊くんじゃねえよ」
犬の言葉に、クロが下ろし掛けていた銃をまた突きつける。クロは獰猛な笑みを刻んでいた。引き金にかかった指が小刻みに震えている。
「言うじゃねーか、犬っころ。チンケな身体の風通し、良くしてやってもいいんだぜー?」
「クロ、やっちまいなァ。この無礼めた態度は一度がつんとやらなきゃ、治らねェ!」
血の気が多い二匹が騒ぎ立てる。しかし、それらを丸っきり無視し、犬はホロとザフィーラに目を向けた。
犬に対し、ホロらは肩をすくめて見せた。一先ず、頭上のイッスンは叩いて黙らせる。
二匹の気持は分からないでもないが、この犬には訊かなくてはならないことがある。根性を叩き直すのは、その後でいい。
さて、最初の接触はまずまずだ。クロたちのときに比べれば、ずっと穏やかな邂逅だと言える。
何にしろ、切り出さねば始まらないと、ホロは息を吸った。
と――。
- : 驟り雨 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/07/21(水) 21:38:37:q2bR6YSn
-
「ま、丁度いいや。おまえらに訊きたいことが――」
「わっちらは、ある子供を探しているのじゃが――」
問いが重なり、互いの声は萎んでしまった。呼吸を掴みかねるこちらを見て、犬が小さくため息をついた。
「……先に言いな。おれのは別に急ぎじゃねえ」
犬は疲れたように床に腹這いになった。横柄な態度とは裏腹に、大分疲れているらしい。治療の跡もあり、これまでに苛烈な経験をしてきたようだ。
ホロは短く礼を告げ、ザフィーラを肘で小突いた。何処となくばつが悪くて、自分が続けるのは嫌だったのだ。
ザフィーラは犬の前で片膝をついてから、ホロが言いかけた質問を繰り返した。
「トナカイの子供を探している。小さな達磨のような体型で、桃色の帽子を被っているのだが、知らないか?」
その問いに、犬は少し嫌そうに顔をしかめた。
「……あいつか。知ってるぜ。此処から、ピカチュウって黄色いネズミと一緒にホテルへ向かったよ」
「それはいつぐらいだ!?」
「天気が崩れ出す少し前だ」
ザフィーラが僅かに表情を緩めたのが分かった。まだ、それほど時間が経っているわけではない。
「そうか――。感謝する。それでは、おまえの――」
「ザフィーラ。こやつからは、わっちが話を聞いておこう。ぬしは先に行くがよい」
少しそわそわした調子のザフィーラに、ホロはそう言ってやった。きょとんと見上げてくる赤い瞳に微笑を返す。
「せっかく足取りが掴めたのじゃ。幸福の尻尾はいつも足早でありんす。鹿の子のためにも、早く行っておあげ」
気を使い過ぎる雄のことだ。逸る気持を抑えつけ、こちらを気遣いながら進むことになるだろう。それ自体は好ましい気質だが、ホロにとっては歓迎すべきことではない。足手纏いと宣告されることと同義だからだ。
しかし、ザフィーラ自身がどう思っているかは別として、戦力としての己は力不足なのは事実だ。仮令彼女が本来の姿に戻った所で、ザフィーラの実力には遠く及ばないだろう。
一緒に行けば、彼はホロらを意識して立ち回らなくてはならなくなる。それを想像するだけで苦痛だった。嫌でもメレオロンの最期が脳裏に蘇ってきてしまう。
痛みを伴うほどの悔恨と無力感――。
あのときの記憶は、ホロの中で容易に嚥下し難い塊のようなものになりつつあった。
一人ならば、何かあっても、ザフィーラは自分のためだけに力を揮える。上手く合流出来れば、鹿の子のためだけに力を集中できる。
それに、ザフィーラ自身は寡黙なだけで口下手ではないし、相手を自然と安心させられるだけの頼もしさを纏っている。
ホロは実の所――必要ないのだ。
「……すまんな」
こちらの意図を必要以上に読み取ったか、ザフィーラは恥じるように目を伏せた。彼の尻尾が力なく垂れる。
「そんじゃ、行こうぜ。ザフィーラ」
と、クロの嬉しそうな声が上がる。彼はとうに一行から離れ、近くの壁に背中を預けていた。指を鳴らし、凶悪な笑みを浮かべている。
しかし、ザフィーラは首を横に振った。
「いや、クロはこっちに居てくれ。他にも雨宿りにくる奴がいるかもしれないからな」
ザフィーラの制止に、クロが目を剥いた。
- : 驟り雨 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/07/21(水) 21:40:18:q2bR6YSn
-
「オイラに留守番しろってか!?」
「ホロは戦に慣れているわけではないし、彼は手負いだ。招かれざる客に対して、おまえしか対抗できる奴がいない」
「おい、おっさん。オイラが勘定に入ってねェような気がするんだが……」
「クロ、頼む」
「お、無視するってかァ。よォし、根競べだぜェ。音を上げるまで、耳元でオイラの歌声を響かせてやがむぷっ――」
「ったく、しゃーねーな! 頼まれてやるよ。ひとつ貸しだ」
「悪いな」
クロが口の端を上げて、ザフィーラに銃を掲げて見せた。と、犬が意地の悪い笑みを浮かべる。
「せいぜい、しっかり護ってくれよ。にゃんこ先生」
「………………。流れ弾にゃ気を付けろよ、コノヤロー」
何かを蹴る仕草をしたクロは扉の方まで動くと、むすとした表情で荒々しく座った。気絶したイッスンを手の中で弄びながら、ホロはその様子に頬を緩ませる。
不服に思いつつも、他者の頼みを無視するほど剛愎ではない。挑発に乗っていい場かどうか、彼自身で基準をしっかりと持っているようだ。
なんだかんだ言って、この黒猫も見どころのある雄だ。
「おい、青いの。言い忘れてた。鎧着たワニと犬女のコンビ、それとでかい猿。この三匹は殺し合いに乗ってるぜ。あとは帽子被った猫ってのも要注意らしい」
グラウンドに出たザフィーラに、犬が言葉を掛ける。ザフィーラが眉を寄せて振り返った。
ホロは犬の情報を胸中で繰り返してみた。
帽子を被った猫とは、クズリらが遭遇したという参加者だろうか。E-4駅には、彼女らと白い獣以外の、真新しい臭いが残っていた。件の猫のものと断定してよいだろう。立地から見て、これからその猫と遭遇する可能性は高い。
しかし、ザフィーラが口にしたのは別の事柄だった。
「犬女というのは、シエラという名か?」
「名前までは知らねえよ……あー、でもそんな風に呼ばれてたような気もするな。前の三匹が居たのは北の方だから、まず遭わねえと思うけどよ」
「……ありがとう」
ザフィーラの様子に、犬が訝しげに尻尾を揺らしたが、彼は答えなかった。そして、今度こそ、ザフィーラは雨の中に飛び出して行った。
空を滑走していく大男の姿に、犬がぽかんと口を開けている。その様はどこか痛快であったが、それを面には出さず、ホロは犬に呼び掛けた。
「して、ぬしの訊きたいこととは何なのかや?」
訊きながら、濡れたマントを隅に放り、上着も脱ぎ捨てる。二つはびちゃりと音を立てて、床に広がった。下裾着にも手を掛ける。復活したイッスンが歓声を上げるが、無視した。
「まずは、ツネジローとマンマルって奴の居場所だ。タヌタローって奴から伝言頼まれててな」
ホロは手を止めた。
「まん丸ならば、つい先程まで一緒に行動をしておった。しかし、タヌ太郎とやらはもう――」
「死んだよ。知ってるさ。ついでに言やあ、その伝言も期限切れだ。急ぎじゃねえと言ったろ? で、何処にいるんだ?」
「……ならば、もう伝える必要はあるまい? どうして、未だに拘っておる? 釈然とせぬの。それが分からねば、あの子の所在を教えるわけにはいかぬわや」
疑問をそのまま口にすると、犬は苦々しく口を歪めてホロを睨んだ。それを真正面から受け止めると、犬はついと視線を外した。そして独り言のように言った。
- : 驟り雨 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/07/21(水) 21:44:21:q2bR6YSn
-
「……借りがあんだよ。命のな」
怒ったように外を睨みつけている犬に、ホロは破顔した。少しだけ、この生意気な犬が可愛らしく思えて来た。
「左様か。うん、よかろ。納得がいった」
笑いを含んだ声音に、犬が小さく唸り声を立てる。それを受け流し、ホロは下裾着を脱いだ。濡れた人の身体は、少しばかり肌寒い。尻尾をふぁさと揺らして、身体に巻きつける。
「まん丸は、ここより南の大きな屋敷におる。海岸沿いを東に行けば、自然と目に付く建物じゃ」
犬は不貞腐れたように黙ったままだ。先程の自分の言葉に、後悔しているようにも見える。
ホロは脱ぎ捨てた着衣を長椅子の背に引っ掛けた。犬は大きく欠伸をしている。
「行かんのかや?」
「……雨が止んだらな」
「なるほど。賢明じゃな」
「………………」
「ならば、雨があがるまで、しばし話をしよう。お互いのな。まだ、ぬしも訊きたいがあるのじゃろう?」
「……まあ、な」
嘆くように犬が呻いた。じろりと、視線だけをホロに向けてくる。
「ふふ。それでは、まずは自己紹介から始めるとしようかの」
犬の隣に座り、ホロは空を見上げた。驟雨はまだ、続きそうであった。
【E-4 /1日目/正午】
【ザフィーラ@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
【状態】:人間形態、左前足に裂傷(包帯で止血)、ホテルに向かって飛行中
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、ランブルボール@ワンピース×3、ブロンズハチェット@聖剣伝説Legend of Mana
【思考】
基本:キュウビの打倒。殺し合いからの脱出
1:ホテルへチョッパーに会いに行く。
2:合流出来たらサッカー場に戻る。
3:ユーノ、アマテラス、ツネ次郎の捜索。
4:殺し合いに乗っていない動物の保護。
5:シエラを警戒。可能なら説得する?
【備考】
※参戦時期はAs本編終了後、エピローグ前です。
※変身の際の制限に気付きました。変身する時の魔力消費は休憩しなければ3~4回程度と考えています。
- : 驟り雨 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/07/21(水) 21:45:20:q2bR6YSn
- 【E-4/サッカー場/1日目/正午】
【イギー@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】:全身打撲(小・治療済)、疲労(中)、精神的疲労(中)
【装備】:腕時計
【道具】:支給品一式(食糧:ドライフード)、犬笛
【思考】
基本:面倒なので殺し合いには乗らない。
1:サッカー場でしばらく休んでいく。
2:雨が止んだら、まん丸に会いに行く?
3:ツネジローを探し、タヌタローのことを伝える……?
【備考】
※イギーの参戦時期はペット・ショップとの戦闘で、下水道に逃げ込む前後です。
※スタンドの制限に気づきました。
※タヌ太郎に少し心を許しました。
※コロマル、アライグマの父と情報交換をしました。
※ピカチュウたちと情報交換しました。異世界という情報を得ています。
※オーボウ、グレッグル、ミュウツーへの伝言を預かりました。
【ホロ@狼と香辛料】
【状態】右腕に切創(小。止血済み)、すっぽんぽん、びしょ濡れ
【装備】:イッスン@大神
【所持品】:支給品一式、身かわしの服@DQ5、まんまるドロップ@聖剣伝説Legend of Mana(四個)、
ラスタキャンディ@真女神転生if...(二個)、アギラオジェム×3@ペルソナ3
【思考】
基本:ゲームに乗る気はない。ただし、向かってくる者には容赦しない
0:身体を拭きたいの。
1:犬と情報交換して、ザフィーラの帰りを待つ。
2:どうにかして血を手にいれたいの。
3:わっちの麦はどこにあるのじゃ?
【備考】:参加時期は6話「狼と無言の別れ」の後です。
※生き血を飲んで変身できる事は話していません。
【クロ@サイボーグクロちゃん】
【状態】:良好、欲求不満、びしょ濡れ
【装備】:メガブラスター@クロノトリガー 、ヴァルセーレの剣@金色のガッシュ
【所持品】:支給品一式、アームターミナル@真女神転生if...、伝説の剣@ハーメルン
【思考】
基本:積極的に優勝する気は無いが大暴れする。キュウビも気に入らないからぶっとばす
1:ホロたちを護ることに託けて暴れる。どさくさに紛れて犬もぶっとばす?
2:とにかくゲームに乗った相手を捜し、戦う(暴れる為)
3:首輪が気に入らない。いずれ外したい。
【備考】
※クロの首輪は身体部分に溶接されています。
※首輪が爆発した場合、体が全て吹っ飛ぶと考えています。
※内蔵武器が全て没収されていることに気付いています。
※ウォームアップスペースの扉の隅に穴が開いています。
※近くの椅子に、魔甲拳@ダイの大冒険、ホロが着ていた衣服一式が掛けられています。
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/07/21(水) 21:46:33:q2bR6YSn
- 以上です。
ミスなどの指摘がありましたら、お願いいたします。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/07/23(金) 21:25:50:KnIcP2cn
- 投下乙です!
イギーとクロはもうちょい仲良くしろwwwwwwwwww
さてホテルに向かうクロは大暴れできるのか……
今後に期待です。 - : ◆EwVLYtcCbD23 [sage] 2010/07/26(月) 22:53:14:l4Je0tVi
- チョッパー、ピカチュウ予約します。
- : 代理:背なの上のぼの ◇1eZNmJGbgM [sage] 2010/07/29(木) 18:28:04:2hoIlgAv
-
「あー、オオカミさん!」
道の脇の草むらから、ぼのぼのはそう言ながらアマテラスの方へ走りだす。
この殺し合いに巻き込まれて半日が経とうとしているなか、最初に出会った時と同じ
白い体毛に紅の隈取りがよく映える雄々しい姿に、ぼのぼのは安堵する。
本人は気づかないかも知れないが、ヒグマの大将と死に別れてゐを見失っているのでなおのこと嬉しいのだろう。
「ワンッ」
アマテラスもぼのぼのが近づいてくると、相槌を打つかのようなタイミングで吠える。
彼の本心は伺い知れないが、恐らくはそうなのだろう。
「オオカミさんそのお腹の怪我どうしたの!?」
再開した時には見えなかったのか、胴の片側にできた傷口を目ざとく見つけたぼのぼのが慌てだす。
傷自体はカスリ傷よりは少し深い程度のものだったが、なにせヒグマの大将の死因を誤解している彼としては大問題である。
「大変だよー、オオカミさんも死んじゃう」
そう言うものの、自分では傷の手当等出来はしないぼのぼのはただただアマテラスの周りをアタフタと走りまわるばかり。
アマテラスからしてみれば、その大げさなリアクションを見ているうちに、自分の小さな相棒を思い出したかも知れない。
だが、そんな微笑ましい時間にも終止符が打たれる時が来た。
ちょうど空から雨粒が落ちてくるのと同時に、二人は南からやってくる白虎の存在に気がつく。
いや、アマテラスに関してはもっと早く察知していたかも知れない。
何故もっと早い段階で距離を取らなかったのかと言われれば、それはぼのぼのがいたからだろう。
アマテラスの中に彼を見捨てていくという選択肢は存在しない。
しかし今の混乱しているぼのぼのをいきなり連れて行っては拍車を掛けるばかりだ。
ならばぼのぼのに更に衝撃を与え、一旦頭の中が真っ白になった状態で連れていけば良い。
そこまでアマテラスが考えたかは疑問であるが、その試みは成功した。
ぼのぼのの首の辺りを軽く噛み、上へ放り投げ自分の背に落とす。そして相手の方へと振り向く。
敵は森の主=ムティカパ。鋼の如き強固な体毛をもつ白き虎。その名をムックルと言う。 - : 代理:背なの上のぼの ◇1eZNmJGbgM [sage] 2010/07/29(木) 18:28:47:2hoIlgAv
-
この勝負は先程の小競り合いとは違い、アマテラスに有利な点が殆ど無い。理由は言うまでもなく彼の背に乗っているぼのぼのである。
ぼのぼのの体重がどれほどのものであろうが、何かを背に乗せて俊敏さが上がる道理はない。
仮にアマテラスの身体能力がその重さを苦にしない程であっても、心理的なブレーキがどうしてもかかる。
イッスンどころか、下手をすればクシナダよりも肝が座っていなそうなぼのぼのと共に戦うなどは論外。
よってアマテラスが取れる行動は、ぼのぼのと共にこの場から撤退するしか残されていないのだ。
一方、ムックルの立場になって考えれば先程の借りを返す絶好の機会である。
今回はあの白い獣の背に奇妙な獣が乗っており、それだけでも互いの素早さの差を埋めてくれる上に
あの奇妙な法術の事を既に知っているアドバンテージがこちらにある。
ならば無理をせず、白い獣の体力が落ちるのを待つか、あの隈取りが消えた時に勝負を決めにかかれば良い。
狩りの仕方はモロに習ったが、戦いの仕方ならそう遅れをとるものでもない。
「うわぁ」
雨脚が強くなってきたせいか、ぼのぼのの目に雨が入りつい声が漏れる。
それが開始の合図だった。
ムックルがアマテラスの周囲を反時計回りに走り距離を測る。
目的は逃走できる隙を減らし、あの突然消える法術を使わせること。
アマテラスはその円の中に取り込まれないように同じように回りだす。
一旦足を止めムックルのフットワークに取り込まれれば霧隠を使わざるを得なくなってしまう。
ムックルは時折前足で威嚇し、騎上のぼのぼのにもプレッシャーを与えながら更に速度を上げる。
あの獣がどれほど辛抱強くとも、同行者がそれに耐え切れなくなれば自ずと取る手段は決まるものだ。
アマテラスも更に走る速度を上げるが、それに比例してぼのぼのから伝わってくる震えも大きくなってくる。
やはりムックルの牽制が効いているのだろう、「オオカミさん、怖いよー」と声を漏らしている。
そして忍耐の限界だったのだろう、それまでしがみついていたぼのぼのが不意に体を起こし、アマテラスのバランスが崩れる。
その瞬間遂にアマテラスの尾が揺れ動いた。
アマテラスは霧隠を使ってすぐに飛び跳ね、一回転をする。別にムックルを飛び越えたわけではない。
まずはぼのぼのに再びしっかりと掴まってもらうのが大事だったのだ。
人馬一体とは違うが、重心が安定していた方が良いに決まっている。
狙いは功を奏し、振り落とされまいとぼのぼのはしっかりと掴まってきた。首に手を回しかねない勢いで。
ムックルは前回と同じ不可思議な幻陽を感じた瞬間、動きを止め、周囲の変化に神経を集中させる。
あの獣がどの方角へ逃げても瞬時に追いかけられるように対応しておく。
そして霧が晴れると同時にあの獣の鳴き声が東の方角から聞こえてきた。
瞬間、ムックルの体が弾かれたように加速する。
筆しらべの効力が切れると同時に、アマテラスは背上のぼのぼのへ視線を向け、一吠えする。
その咆哮は一時的とは言えぼのぼのを落ち着かせ、安心させるには十分だったようだ。
しかしこのひと手間のせいでムックルとの距離を思いのほか広げられない。
それでも走り続けるしかアマテラスに手段はないのだ。
雨も本降りになり始めたのか、ムックルの足跡にも先を走るアマテラスの足跡にも水溜りが出来る。
ムックルにとって唯一とも言える見込み違いはこの天候だ。ムックルの毛皮は水に濡れると不味い。
さすがに通り雨程度でどうにかなるものでもないが、全く影響がないと言い切れる程でもない。
早めにケリを付けるべく、ムックルはギアを更に一段階上げて疾走する。
その努力が実り、遂にアマテラスの後ろ足をムックルの爪が捕らえた。
- : 代理:背なの上のぼの ◇1eZNmJGbgM [sage] 2010/07/29(木) 18:32:59:2hoIlgAv
- キャインとアマテラスが悲鳴を挙げた場所はC-5、崖の下。
なだらかではあるが傾斜が付いているのだろう、少し離れた崖の上から集まった雨水が
まるで排水口のように勢い良く流れ落ちている。
ぼのぼのが心配そうに傷を確かめようとしているが、アマテラスから降りようとはしない。
ぼのぼのでも理解できたのだ、ここで二人が距離を取ればどちらかが確実に殺されると。
アマテラスもそれが分かっているからこそ、傷が痛んでもぼのぼのを降ろそうとはしない。
ムックルからしてみれば、遂に獲物を己の射程距離内に追い詰めた。
また法術を使われる可能性はあるが、いくら怪我をした足で距離を稼いでも高が知れる。
あの隈取りが消えたが最後、目の前の二人に生き残るすべはない。
両足で地面の土を少しずつ掴み、ジワジワと距離を縮めてゆく。
その光景は正しく森の主=ムティカパと呼ばれるに相応しい風格を伴った仕草であった。
もっとも、狩りの仕方を手ほどきしたモロが草葉の陰でどの様な表情をしているのかは、別の話である。
そしてムックルの前足がアマテラスに届く半歩前、再び筆しらべ『霧隠』が発動した。
霧隠の効果が終わると同時にムックルが周囲は見渡す。
右見て、いない。
左見て、いない。
下は、省略。
ならば上見て……いない?
まさか本当に姿を消す法術があるのかとムックルは考えるが、ならば最初に遭遇した時点で使用しているだろうと考え否定する。
その時、人間だったら「おい、こっちだ」とでも言いたげな一吠えと共に、背後から足音が聞こえた。
ムックルが瞬時に体を反転させると、そこには自分の後ろへと回りこみ、こちら目掛けて突進してくるアマテラス達の姿があった。
率直に言えば、ムックルは多少落胆していたのかも知れない。
体格差は勿論、足に傷を負った今のアマテラスでは俊敏さもムックルにとって驚異にもならない。
恐らくは助走をつけて自分を飛び越し上の崖へ登り着きたいのだろうが、そう安々と成功させる筈はない。
そこでムックルが取った行動は、自分もアマテラス目掛け突進し相対的に助走の距離を縮める事だった。
ムックルとアマテラスの間合いがどんどん狭くなり、ムックルの前足がアマテラスの頭蓋を捉えようとしたその瞬間、
ムックルの『背後』から、大量の水が叩きつけられた。
当然、ムックルの動きは停止する。
この場には自分と白い獣とその背に乗っている奇妙な獣しかいないはず。そして相手は二人とも自分の目の前にいる。
ならば一体誰がこの水を浴びせたのだろうと考え、思考も肉体も数秒固まる。
ムックルが我に帰り相手の事を思い出したとき、アマテラスは自分の頭上にいた。
これも法術の一つなのだろうか、白い獣は宙に浮きながらさも当然と言わんばかりに虚空を蹴り、更に跳躍する。
更に助走の勢いが無くなり、崖の上までわずかに届かなくなった所で再び宙を蹴り
見えない敵に体当たりをするかの如き動きで崖の上までたどり着いたのだ。
崖の上にたどり着いたアマテラスは勝ち鬨の代わりに「ワフッ」と一声。
そのまま崖下のムックルが見えなくなる所まで走り去ると、ムックルもようやく獲物を逃がしてしまったことに気付いてしまった。
直後、周囲の水溜りや降り続く雨粒までも震えるほどの「グワアアアァッ」という猛烈な咆哮を上げ
やり場のない怒りをどうにか発散しようとする。
幸か不幸か、その叫び声の正体が「ばかーー!」と言っている事に気づく者はこの場にはいなかったのだが。
- : 代理:背なの上のぼの ◇1eZNmJGbgM [sage] 2010/07/29(木) 18:34:25:2hoIlgAv
- 【C-5/崖下/一日目/正午】
【ムックル@うたわれるもの】
【状態】:全身にダメージ(小)、精神的疲労(小)、母への強い思慕、興奮(大)、びしょびしょ
【装備】:鋼鉄の牙@ドラゴンクエスト5
【道具】:なし
【思考】
基本:殺し合いに乗る。
1:もうなんなのー!
【備考】
※ムックルの参戦時期はアニメ第5話で、食料庫に盗み食いに入る直前です。
※ツネ次郎に懐きました。缶詰をツネ次郎がくれたものだと勘違いしたため。
※風雲再起に苦手意識を持っています。
※モロから一連の狩りの仕方(気配の殺し方等)を教わっています。
※アマテラスの本当の姿が見えています。
※筆しらべ『水郷』を浴びたため、血は大分洗い流されました。
【C-5/崖上/一日目/正午】
【ぼのぼの@ぼのぼの】
[状態]:健康、不安
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ベンズナイフ@HUNTER×HUNTER、貝割り用の石@ぼのぼの、貝×5、
[思考]
基本:殺し合いはしない。
0:オオカミさん、もっと怪我しちゃったよー!
1:てゐを探す。学校に戻る?
2:悪いオオカミさんは悪いオオカミさんじゃないのかなー?
3:てゐについていきシマリスとヒグマの大将が生き返る者の所まで案内してもらう
4:殺し合いに乗っている者がいたら、このナイフを使ってとめる
[備考]
※アニメ最終話48話後からの参戦です
※支給品の説明書は読んでいません。
※銀に不信感を持ちましたが悩んでいます。
※ケロロ軍曹と情報交換をしました。
※体を洗ったので、血の臭いは殆ど落ちました。
※第一回放送を聞きましたが、あまり理解していません。
※ムックルを危険人物と認識しました。
【アマテラス@大神】
【状態】:全身打撲(中・治療済) 、胴に裂傷(小・出血中)、後ろ足に裂傷(中)、墨切れ
【装備】:所々に布が巻かれている。
【道具】:なし。
【思考】
基本:打倒キュウビ。絶対に参加者を傷つけるつもりはない。
0:??????
【備考】
※アマテラスの参戦時期は鬼ヶ島突入直前です。そのため、筆しらべの吹雪、迅雷の力は取り戻していません。
※筆しらべの制限に気付いているかもしれません。
※キュウビの目的について、何か勘付いているかもしれません。
※筆しらべ「光明」と「月光」で昼夜を変えることはできないようです。
※筆しらべ「桜花」で花は咲かせられるようです。
※筆しらべは短期間に三回使うと、しばし使えなくなるようです。爆炎などの大技だと、また変わってくるかもしれません。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/07/29(木) 18:39:58:2hoIlgAv
- 代理終了。
投下乙でした。
ムックルはまたずぶ濡れになって、男が上がりましたね。
とはいえ、この子も一旦殺し合いの螺旋からは離脱かな。
筆調べを巧みに交えた戦闘描写が素敵です。
崖の上に逃げたぼのぼのは、これからどこ行くつもりかな。
指摘というかなんというか……タイトルはこれで正しいんですかね? - : 代理:荒れ狂う稲光の―― ◇EwVLYtcCbD23 [sage] 2010/07/30(金) 19:56:18:Dg8eUMBC
-
クソッタレ。
チョッパーが立ち止まる。
ピカチュウが手を掴み、チョッパーを引きずる。
チョッパーが手を振り払い、立ち止まる。
再びピカチュウが手を掴み、チョッパーを引きずる。
そしてまたチョッパーが手を振り払い、立ち止まる。
一連の動作を繰り返しながら少しずつ進んでいる。
「チョッパー、行こう」
ピカチュウは、チョッパーを連れて行くことを諦めない。
「立ち止まったって、何も変わらない。
過去に縛られてちゃ、何にも出来ないよ」
どれだけ振り払われようと。
どれだけ拒否されようと。
どれだけ立ち止まろうと。
絶対に、諦めない。
「君の行動次第じゃないのかい? 少なくとも、ぼくは君のことを信じてる。
過去のチョッパーがどういうことをしてきたのか、そんなことはどうでもいいよ。
それが本当なのかどうか知ることは僕には出来ないから」
チョッパーを引きずりながら、ピカチュウは言葉を続ける。
俯いたまま、前を見ようともしないチョッパーを。
その目にの中心に、見据えながら。
「大事なのは、これからのチョッパーなんじゃないかな。
イギーみたいな意地悪な奴はそれでも信じてくれないかもしれない。
でも僕はそうじゃない、さっきも言ったけど僕はチョッパーのことを信じてる。
僕みたいにチョッパーのことを信じてくれる人も、絶対居る」
ピカチュウの目は、揺らぐことはない。
真っ直ぐすぎる視線が、チョッパーへと突き刺さる。
「だから、行こう。
イギーが言ってたことを、違うってことを証明しなくちゃ」
再び、ピカチュウは手を差し伸べる。
弾かれてもいい、もう一度差し出すだけだ。
- : 代理:荒れ狂う稲光の―― ◇EwVLYtcCbD23 [sage] 2010/07/30(金) 19:57:13:Dg8eUMBC
-
チョッパーは医者だ。
傷ついた人を治し、その後も癒しを与える役目の存在だ。
だが、彼がこの場に来てから取った行動は違う。
その気は無かったとはいえ、人を傷つけ、その命を奪った。
「医者」の名が聞いて呆れる行動だ。
これではただの「人殺し」と変わりないではないか。
今、ピカチュウが差し出してくれているのは逃げ道だ。
「人殺し」という事実が消えるわけではない。
イギーの言うとおり、これからどんなことをしようと。それだけは消えることはない。
これからどれだけ善人ぶろうが、絶対に消えることはない。
どうだ、それでも自分は。
「人殺し」を「医者」という皮で隠していくのか?
「……分かったよ」
チョッパーは、ピカチュウの小さな手を握り締めた。
ピカチュウの言葉に同意したわけではない。
ハッキリさせたかったのだ。
自分が人殺しなのか、医者なのかを。
本当のことを見極めるために、チョッパーは前へと進むことを選んだ。
- : 代理:荒れ狂う稲光の―― ◇EwVLYtcCbD23 [sage] 2010/07/30(金) 19:58:37:Dg8eUMBC
-
チョッパーが前を向き自力で足を進めるようになってから、すっかり忘れていた自己紹介を両者は済ませることにした。
お互いのこと、お互いの仲間、お互いの世界。
チョッパーが話したのは全てではなかった。
人殺しと医者の中間に居る今の自分が、ルフィたちのことを喋る資格などない。
そう思い、自分の過去を掻い摘んで話し、あとは悪魔のみの説明だけに押さえた。
チョッパーが知っている全ての情報ではなかったが、それでもピカチュウが「違う」と認識するには十分のことだった。
「D-4のホテルは……あれかな?」
チョッパーが話し終え、ピカチュウの話も終わりに近づいた頃。
一件の建物が二匹の視界へと入る。
地図の位置から察するに、そこが目当てのホテルと見て間違いないだろう。
「ラクシュンさんを探さなくっちゃ」
ピカチュウはホテルの入り口へと駆けていく、チョッパーも遅れながらピカチュウの後を追う。
入り口のドアをゆっくりと開け、中へと入る。
当然だが、人などいない。
フロントマンを初めとした勤務者はおろか、宿泊客など居るはずもない。
突如、轟音が鳴り響く。
その後、壁が崩れるような音がホテルへと鳴り響く。
楽俊以外、ピカチュウたちはこの建物に居る人物を知らない。
それらの情報から結びつく結論は一つ。
「行こう、チョッパー!」
ここで、戦闘が起こっている。
だとすれば楽俊が巻き込まれているという可能性がかなり高い。
助けなければいけない、その気持ちだけを抱えてピカチュウたちは階段を駆け上る。
根本を覆す、大きなミスにも気がつかないまま。
ほぼ一定周期で鳴り響く音が一段、また一段と駆け上るごとに近づいていく。
加えて地面の揺れまでがピカチュウたちに伝えられていく。
その二つがかみ合った三階にたどり着いた彼等は、意識を集中させる。
鳴り響いく音、伝わる振動、それらからその正体を掴んだとき。
「ピカチュウ、左だ!!」
チョッパーの声と共に、ピカチュウの左の壁が弾け飛ぶ。
「大丈夫かい?!」
「なんとか、ね」
弾けとんだ無数の壁の破片は、ピカチュウを傷つけることはなかった。
チョッパーの声に即座に反応したピカチュウが瞬時にその場を離れたからだ。
電光石火。常人では捕らえきれない速度を瞬間的に出すことができるピカチュウだからこその芸当である。
大きく空いた穴から、一つの影が現れる。
「そんな!!」
その姿を見たピカチュウは、驚きの表情を隠すことが出来ない。
二本足で立つ、大きなネズミの姿。電話で聞いた楽俊の外見そのものだ。
では襲撃主が楽俊だったとすれば、先ほど電話に出たのは誰だったのか?
いや、それとも楽俊の巧妙な罠だったのだろうか?
一瞬の間に、幾つかの思考を走らせる。
- : 代理:荒れ狂う稲光の―― ◇EwVLYtcCbD23 [sage] 2010/07/30(金) 20:00:08:Dg8eUMBC
-
しかし、それは襲撃者にとって十分すぎる一瞬だった。
「ぐぃっしゅりぃぃぃやあああああるぁぁぁぁういぃぃぃ!!」
襲い掛かってきた楽俊は、先ほどのピカチュウをも上回りかねない速度で拳を振るった。
しっかりと楽俊を見据えていたチョッパーはそれに反応することが出来たが、思考に気を取られていたピカチュウはその拳に直撃した。
黄色い線が一本、真横に描かれる。
「ピカチュウ!!」
線の行き着いた先には大きな穴があるだけで、ピカチュウの姿は見えない。
すぐにでも助けに行きたかったが楽俊がそれをさせない。
襲い掛かってきた彼に対し、人型変形で応対する。
「がッ……なんて力だ!!」
襲い掛かる楽俊の両腕を掴むが、予想以上の力に圧倒されそうになる。
即座に腕を振り解き、体をすれ違わせるように回避するのがやっとのことだった。
「真っ向勝負じゃ勝てない……」
腕力でぶつかったところで、あの圧倒的な力を前にやられてしまうのがオチだ。
ランブルボールでもあれば、話は別なのだが。無いものに頼っても仕方がない。
一刻も早く決着をつけてこの場から逃げるしかない。
ピカチュウを探すためにも、急がなければいけない。
回避しやすい人獣型へと変形し、楽俊の一撃一撃を確実に避けていく。
パワーとスピードはあるが、技の精度が伴っていない一撃を避けることは難しくはない。
数回にわたり避けた後、楽俊に大きな隙が生まれる。
その隙を逃さずチョッパーは人型へと変形し、渾身の一撃を叩き込む。
一撃を受けてよろめく楽俊に対し、立て続けに大振りの一撃を叩き込んでいく。
この間、楽俊は一切の回避行動を取らなかったのだが。チョッパーにそれを気に留めるだけの余裕などあるはずもない。
数撃目で、楽俊の体がとても大きくよろめき。その無防備な体へと全力の一撃を叩き込む。
初撃の力からは考えられないほど楽俊の体は軽く、全力の一撃を受けて大きく吹き飛んだ。
が、トドメにはなっていない。
吹き飛んだ先の楽俊が起き上がり始めていることを確認し、距離を詰めていく。
そして、拳が届く距離になり。起き上がって間もない楽俊の頬へとその拳を一気に振り抜いた。
- : 代理:荒れ狂う稲光の―― ◇EwVLYtcCbD23 [sage] 2010/07/30(金) 20:01:38:Dg8eUMBC
-
「はっきり言ってやる。てめえは絶対に赦されることはねえ」
フラッシュバック。
「他人の命を助けたからって、どうして赦せるんだよ?」
先ほどのイギーの声がチョッパーの脳内へと響く。
「てめえが殺したって言う事実は変えられねえ」
そしてイギーは先ほどとは違う言葉を放ち続ける。
「もう一度言う、てめえはな」
無慈悲に、そこに居るはずのないイギーは。
「殺し屋だよ」
最悪の一言を放った。
ああ、そうだ。
彼がどういう理由で自分達に襲い掛かってきているのかは分からない。
だが、襲い掛かられたからといって。
それに反撃すればどうだ、結果として襲撃者の命を奪うことになればどうだ。
やっぱり立派な「人殺し」じゃないか。
オレは医者だ。
人の命を救わなきゃいけないのに。
「人殺し」じゃいけないのに。
その思考が、進み行く拳を止める。
あの無防備な頭に拳を振りぬけば楽俊とて無事ではいられないだろう。
最悪のケース、楽俊は死ぬ。「人殺し」の完成だ。
そこまで考えたところで、チョッパーの体が大きく吹き飛んだ。
- : 代理:荒れ狂う稲光の―― ◇EwVLYtcCbD23 [sage] 2010/07/30(金) 20:02:40:Dg8eUMBC
-
壁を数枚突き破り、チョッパーの体が止まる。
傷だらけになりながらも意識だけはなんとか手放さずに居た。
吹き飛ばされてたどり着いた所には、見覚えのある一匹の姿が。
「ピカ、チュウ! ぶじだ、ったのか!」
「……なんとかね」
一息ついてから、ピカチュウはチョッパーの方へと振向く。
「チョッパー、お願いがあるんだ」
ゆっくりと起き上がったチョッパーに、ピカチュウは立て続けに話しかける。
「僕が聞いたラクシュンさんの外見と、今闘ってるあいつの外見がぴったり一致してるんだ。
もし、あれがラクシュンさんなら、こんなくだらないことをやめてもらわなきゃいけない」
ピカチュウの目は、襲撃者のほうを向いている。
どこか、物悲しさを漂わせながら。
「ぼくに考えがあるんだ、チョッパー。ほんの少しでいい。隙を作ってくれないかな?」
「ピカチュウ……?」
「……あの人がラクシュンさんなら、ぼくはあの人をそのままにしておけない。だから、お願いだ」
ピカチュウが、真っ直ぐにチョッパーを見つめる。
ルフィのようなその真っ直ぐな目に見られては、チョッパーも断ることが出来なかった。
「わかった」
重く、ゆっくりと返事をする。
ありがとう、と小さく呟きピカチュウはチョッパーの後を追うように駆け出した。
再び、楽俊の前に立ちはだかるチョッパー。
標的を見つけた楽俊は、獣のような咆哮を撒き散らしながらチョッパーへと襲い掛かる。
ダメージの所為か、自分自身の動きにキレが無くなっているのが分かる。
ギリギリで避け続けていられるものの、そう長くは続かないだろう。
だが、それでいい。
攻撃を避け続けることで大きな隙が生まれるのは知っている。
一撃、一撃とギリギリで避けるうちに。先ほどと同じように楽俊は大きく耐性を崩す。
はっきりと見える隙が生まれたときだった。
ピカチュウが硬化した尾により神速の一撃を楽俊の脳天に叩き込む。
もちろん、それで気絶するわけではない。
「ありがとう、チョッパー」
ピカチュウの全身から、電気が迸る。
「それと、ごめん」
青白い光と一体となったピカチュウは、チョッパーを穴へ弾き飛ばした後に一直線に楽俊へと駆ける。
「ビィィィィィィ」
弾き飛ばされたチョッパーは思う。
何故ピカチュウは謝ったのか?
そのことを考える時間すら与えてくれず。
「カァァァァァァ」
楽俊へ肉薄したピカチュウは、その胸部を掴み。
力の限りを振り絞る。
「ジュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!」
天雷が、ピカチュウの元へと降り注ぐ。
- : 代理:荒れ狂う稲光の―― ◇EwVLYtcCbD23 [sage] 2010/07/30(金) 20:05:35:Dg8eUMBC
-
チョッパーの視界が、白一色に染まる。
最後に聞こえたのは雷の轟音と、獣の咆哮だった。
しばらくしてから、目が覚めた。
ホテルはその姿をとどめておらず、天井に大きな穴を開けて半壊していた。
崩壊の中心地、そうピカチュウが雷を呼んだ場所には。
黒焦げの肉塊が、三つ転がっていた。
なぜ? 三つなのか?
ボルテッカーによる電気を帯びた体当たりにより、楽俊の体には強烈な電流が流れ込んだ。
たまらず、楽俊はピカチュウを引き剥がそうとした。
しかし、それこそがピカチュウの狙い。
しがみついたと同時に呼び寄せていた雷を当てることが彼の目的だったのだ。
でんきプレートによって増幅された天の雷はいとも容易く楽俊を黒焦げの肉塊へと変えた。
同時に、二つに引き裂かれたピカチュウの体も黒焦げの肉塊へと変えた。
作戦は成功した。
彼の願いである、楽俊を止めるということは成功したのだ。
彼の、命と引き換えに。
「なんでだよ」
物言わぬ肉塊となったピカチュウを見つめながら、チョッパーは吐き捨てる。
「何で皆そうやって平気で殺せるんだよ!!」
結果はどうあれ、襲撃者はピカチュウの命を奪い。
ピカチュウは襲撃者の命を奪った。
故意でもなんでもない、ある種明確な殺意を持ってやったことだ。
イギーの話に当てはめるなら、二人ともが「人殺し」だ。
「……もうイヤだ」
結局ここに居るのは人殺しだらけだ。
積極的に誰かを殺そうとするもの。
殺されたくないから刃向かい、殺すもの。
どちらに立ったとしても、結局は人殺しじゃないか。
「……誰かを殺す奴が現れるなら、オレが代わりに殺してやる」
だったら、もうこれ以上誰かがそんなコトを背負うぐらいなら。
その全てを、「殺し屋」という汚名を自分ひとりで背負おうじゃないか。
「もう、オレは医者なんかじゃない」
赦される事がないなら、堕ちてやる。
片道切符じゃ、もう戻れない。
だったら、一人でも多く幸せになるために。
オレが、殺す。
死者を告げる放送と共に。
己の手を血に染めることを覚悟したトナカイは。
一本の道を進む。
それは修羅か、道化か。
殺し屋は、自分ひとりでいい。
- : 代理:荒れ狂う稲光の―― ◇EwVLYtcCbD23 [sage] 2010/07/30(金) 20:09:21:Dg8eUMBC
- 【ピカチュウ@ポケットモンスター 死亡確認】
※支給品は消し炭になりました。
【D-4/ホテル跡/1日目/正午(放送直前)】
【トニートニー・チョッパー@ONE PIECE】
【状態】重傷(自前の応急処置済み)、自己嫌悪
【装備】なし
【所持品】支給品一式*2 、応急処置用の医療品、担架
【思考】
基本:人殺しを殺す、そうでない人からは逃げる。
1:人殺しを探す。誰かに会えばまずそれから聞く。
2:最終的には――――?
※参戦時期は少なくともフランキーを仲間にしてからです。
※ザフィーラ(名前は知らない)を動物系悪魔の実の能力者と誤解しています。また、自分のせいで海に落ちてしまったと思っています。
※イッスンには気づいていません。剣(グランドリオン)が喋ると思っています。
※第二放送の禁止エリアを聞き逃しました。
チョッパーは気がついていない。
彼が立ち去った後。
瓦礫の一つが音を立てて転げ落ちたことを。
チップは、生きている。
【D-4/ホテル跡、瓦礫下/1日目/正午(放送直前)】
【楽俊@十二国記】
【状態】:自我崩壊、全身黒こげ、重傷、再生中、動けない
【装備】:なし
【道具】:なし
【思考】
基本:見カケタ奴、殺ス
0:再生中
1:誰かを見つけたら問答無用で殺す
【備考】
※一度死んだあとDG細胞に浸食されたため、自我が崩壊しています。
※DG細胞により戦闘力と再生力が強化されています。強化の程度に関しては次回以降の書き手にお任せします。
※楽俊の基本支給品(食料除く)が部屋中に散らかっています。
※D-4ホテルに向け、大きな雷が落ちました。影響を受けホテルは半壊しています。
放送直前に周囲に大きな音が響いたと思われます。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/07/30(金) 20:15:23:Dg8eUMBC
- 代理投下終了です。
投下乙でした。
チョッパーが……チョッパーが……シスコン並みに迷走始めてしもうた!
ポケモンの技の凄まじさが表れてますな。10万ボルトとか喰らってピンピンしているサトシは惑星ベジータ出身だと思います。
第一回放送をみんな無事に通り抜けたかと思えば、ポケモン勢は一気に残り一匹。
各時間帯で一匹ずつ退場しているんですねえ。 - : ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/07/30(金) 20:19:08:Dg8eUMBC
- 驟り雨なのですが、F-5駅と書きながらもF-4駅と思い込んで描写していました。
それで、
・本文中のF-5駅を、F-4駅に変更
・天候悪化を理由にF-5駅へ行かずにE-4駅に行ったことを追記
という風に修正したいと思うのですが、宜しいでしょうか? - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/07/31(土) 16:39:01:ZGwU3dIV
- したらばに禁止区域と犠牲者名を加えた第二回放送を投下しましたので、ご確認お願いいたします。
- : 第二回放送 ◆TPKO6O3QOM [] 2010/08/01(日) 21:58:23:IUzkEDLi
-
定刻だ。生憎の雨に見舞われてしまったが、畜生どもよ、息災であろうか?
雨に震えていたとしても、誰も手など差し伸べてはくれぬぞ。
呪法を始めて、半日が過ぎた。貴様たちも、段々と己が牙を取り戻してきたのではないかな。
さて、我は非常に悦んでいる。やっと貴様らが、獣らしい野性と残虐性を発揮してくれるようになったのでな。いやはや、先刻、奮起を促した甲斐があったというものだ。
クカカカカ……やれば出来るではないか。
すぐにでも貴様たちの成果を読み上げたいところではあるが、まずはお前たちの命に直結する禁止区域から報せよう。耳を……――ソバダて、よく聞くのだぞ。
B-5
D-1
E-7
F-4
だ。
雨の中、確と聞きとれたか? ふむ。我は今、実に気分がいい。もう一度だけ教えてやろう。
B-5
D-1
E-7
F-4
……三度目はないぞ。
さて、貴様たちも待ちかねているであろう、明け六ツから昼九ツまでに死したものどもの報告と参ろうか。
風雲再起
ペットショップ
モロ
ミュウツー
アライグマ
ツネ次郎
銀
赤カブト
グレッグル
ウマゴン
オーボウ
楽俊
キラーパンサー
因幡てゐ
ピカチュウ
以上だ。功労者には我が直々に尻尾で頭を撫でてやりたい所だが、そうもいかぬのが実に口惜しい。
では、日没後。また――……マミえるときを楽しみにしておるぞ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
- : 第二回放送 ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/08/01(日) 21:59:20:IUzkEDLi
-
サルに化生したキツネが上機嫌に――たまに舌が硬くなるようだが、そして事前に復唱していた内容と一部表現が違っていたり加えられていたりするのだが、まあどうでもいいことだ――原稿を読み上げている。
耳に障るその声に、アザーラは暗闇の中で忌々しく頬を歪めた。
(……まったく、サルどもと同じだな)
星に住まうあらゆる生き物の根幹には大地の掟がある。それは生命の原点であり、生命の輪廻を繋いでいくために守らねばならぬ理だ。
それは、高度な文明を持つ彼女ら――恐竜人も例外ではない。そしてまた、かつて彼女らと覇権を争った、あのサルたちも同じく掟の中に在ったのだ。
掟を侵せば、生命は星と共に歩むことはできず、どちらか片方の、一方的な支配と搾取を甘受せねばならなくなる。そして、それは遅かれ早かれ、滅びへと繋がっていく。
すべてのものは、在るがままに有るだけ――。
今ある中で、最善を為すより他に道は無い。
無いものは“無い”のだ。
これを捻じ曲げて、“無”を“有”に変えようとすれば必ず反発を受ける。不自然なものは永くは存在できない。存在してはいけない。
故に、生命は大地と共に歩む。歩まねば生きて行けぬ。
しかし――。
苛立たしげに身じろぎをしたために、纏ったマントがさらと衣擦れの音を奏でた。口を歪めたまま、目を閉じる。
赤い星――キツネは空亡と呼んでいたか。
天より飛来し、大地の奥深くで星を喰らい成長する。そして、最後には星そのものを灼きつくす災厄の権化。
そもそも、自分が先祖たちの指導者となったのも、将来起こる赤い星による滅びを回避するためだ。そのためのティラン城であり、ブラック・ティラノであった。
そうした努力の結果、赤い星による大災害は阻止された――はずだった。
しかし、未来はまた書き換えられた。サルたちの愚行のために。
異なる歴史の――彼女ら恐竜人のいない世界で繁栄したサルたちは大地の掟に背くことを選択したのだという。
奴らは赤い星の力に手を出し、その結果、身を滅ぼした。
それだけなら、特にどうでもよいことだ。サルたちの大地が滅びようと何ら興味は無い。
サルたちの大地“だけ”が滅びるのであれば――。
サルたちが引き起こした滅亡の波紋は、ありとあらゆる次元の大地にまで広がりつつある。つまり、彼女らが――同時に彼女の子らでもある――が紡いできた未来も消え去るということだ。
赤い星は、次元ごとに姿を変えて、あらゆる未来を喰らわんとしている。
確約された終焉に対抗する。
新たな赤い星を滅ぼす力を作り出す。
大地の理の中に居る者達の手で、未来を奪り還す。
そういう話であった。
それなのに――結局、奴らは赤い星の力を使ってしまっている。
このままでは、滅びへの道程は変わらない。いや、むしろ、より加速したと言っていいだろう。
アザーラは鎧の隙間に隠した装置を、そっと指でなぞった。先端が赤い角のようなものが生えた黒い球体。ケロボールというらしい、奴らが集めて来た、異なる大地の品の一つ。
呪法が始まる直前、これを通して接触してきた存在があった。殺し合いに巻き込んだ連中の身内ということだが。
今からでも――未来の修正は効くのか。
アザーラがマントの下で装置を強く握りしめた時、キツネが妙に満足げな様子で放送を終えた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ナント……キュウビ様ガ あどりぶ ニ 挑戦 シタ ダギャ」
「笑イ声トカ モ キュウビ様ナリ ニ あれんじ シテイタッペ」
「コノ短期間ニ 目覚マシイ 進歩 ダニ。キュウビ様、恐ロシイ子! ダニ」
「デモ あどりぶ ヲ 意識シ過ギテ、幾ツカ ノ 漢字ノ読ミ ヲ ど忘レ シタンダナ。ふぉろー ガ 大変 ダッタンダナ!」 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/08/01(日) 22:00:35:IUzkEDLi
- 以上です
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/08/02(月) 20:58:15:csT4GmkB
- 第二回放送を収録しました。
動物ロワ午後の部、開始ということで。 - : 代理:RAINLIT DUST/――に捧ぐ ◇k3fZfnoU9U [sage] 2010/08/08(日) 16:14:52:4lzrNeEo
- 地下から正面ホールに戻ってきた時、その悲報は届いた。
そして知った。
もう一人の友達、知り合いの子供の死を…
「うっ…うっ…ツネ次郎さんまで」
「まん丸君…」
放送を聞いたまん丸は再び泣いていた。
クズリの父はそんなまん丸を抱きしめている。
「ク、クズリさんは悲しくないの?」
「何がだい?」
「クズリさんも……知り合いが…呼ば…れたんでしょう。それなのに……悲しんでいる様子が全然ないんだもん」
まん丸は泣きじゃくりながらもクズリに詰め寄るように尋ねた。
「確かに悲しいけれど、私自身既に受け入れてしまっているんだ」
「受け……入れてるの?」
「ああ、時に大人は残酷なものだ。どんなに悲しくてもどこかで納得してしまっているものなんだ」
「そんな……大人って……ずるいよ」
「まん丸君…」
それきり会話が止まってしまった。
まん丸は泣くのをやめたもののまだぐずっていた。
(しかし、アライグマのオヤジがどう動くか不安だな。ああ見えて息子思いだからな。それにぼのぼのくんもどこかで暴走しているかもしれないし…)
それに対しクズリは降り続ける雨を窓越しに眺めながら、どこかにいるであろう知り合いの様子を心配している。
「クズリさん」
「何だね?」
数分の沈黙後、まん丸が口を開く。
- : 代理:RAINLIT DUST/――に捧ぐ ◇k3fZfnoU9U [sage] 2010/08/08(日) 16:15:46:4lzrNeEo
- 「ボクも大人になったらずるくなるのかな?」
「まん丸君…」
「クズリさん、どうなの?」
「まん丸君、君は良くも悪くも純粋だからね。きっとずるくなろうとしてもうまくいかないのではないかな?」
「それってどういうこと?」
「それはだな、自分の心に嘘をつくことはできないと言ったところだ。だからな、まん丸君はまん丸君らしく生きていけばいいんだ」
「クズリさん……ありがとうござ…」
まん丸がお礼を言おうとすると大きい音と共に突然扉が勢い良く開かれる。
それと同時に何者が飛び込んでくる。
「え、な、何?」
「まん丸君、落ち着きなさい」
2人の前に現れた影、それは傷だらけの白い犬だった。
雨の中走ってきた為、全身がびしょ濡れになっている。
「い、犬さん?あっ、怪我してる」
「……まん丸君、逃げるぞ!」
クズリの父はまん丸の手を引っ張りながら地下室に向かって行く。
それを見た白い影も2人を追いかける。
地下室にたどり着くや否やクズリは自分で作った兵器、ヤマアラシデビルを展開し始める。
「クズリさん、クズリさん。一体どうしたの?あの怖い犬さんが何かしたの?」
「とにかく落ち着きなさい。まん丸君、あの犬の目はな、私たちを殺そうとする捕食者の目をしていた。怖い犬というまん丸君の言葉はあながち間違ってはいない」
突然地下まで連れて行かれたためパニック状態になったまん丸にクズリは、
侵入者は自分たちを殺すためにこの屋敷に来たことを説明した。
「で、でも話せば分かってくれるんじゃ…」
「話そうとするだけ無駄だろう。あの犬の目は話を聞こうという感じではなかった」
「クズリさん……あっ」
顔をあげるとあの白い犬が地下室に侵入していた。
「でも、あの犬さん。たくさん怪我してるよ」
「あの犬自身何回も戦ってきたのだろう」
「でも……やっぱりあの犬さんかわいそう」
「まん丸君、よしなさい」
怪我を心配して白い犬に駆け寄ろうとしたまん丸の手を掴み引き寄せる。
と、同時に白い犬は獲物を捕えんとばかりに飛びかかる。
その爪と牙はクズリへと襲いかかる。
- : 代理:RAINLIT DUST/――に捧ぐ ◇k3fZfnoU9U [sage] 2010/08/08(日) 16:16:29:4lzrNeEo
- ◇
ボクには何が何だか分からなかった。
怖い犬さんがボクの目の前でクズリさんを食べようとしている。
きっと次はボクを食べる気だ。
逃げたいけれど足が震えて動けない…
犬さんは怪我をしているけれど……
あの犬さんがものすごく怖い
犬さんがボクの方に向き狙いを定めている。
間違いなくボクに噛みつこうとしている。
あの犬さん、ボクとクズリさんを一緒に食べる気だ。
いやだ、まだ死にたくない…
だけど犬さんはそんなことお構いなしに片足を何度も蹴っている。
そして……
「やめてえええぇぇぇ、こっちに来ないでえええぇぇぇ!」
犬が飛びかかるのと同時にまん丸は声の限り叫んだ。
その叫びに反応したかのようにクズリが仕掛けたヤマアラシデビルから大量の棘が飛び出し、まん丸に飛びかかろうとした犬に襲い掛かる。
飛び出した棘は飛びかかろうとした犬にあたり
犬はそのまままん丸の頭上を通り過ぎて壁に叩きつけられた。
そしてそのままずるずると落下する。
あれ?
現心の術ってこんなに疲れる術だったっけ?
ものすごく……眠くなって…………き…………た
でもあの犬さん…動こうとしないけど……もしかして……もう死んでる?
だとしたら……もしかして、ボクが……殺したの?
ボクが…あの犬さんを…殺した?
ボク、殺したくなかったのに……
怪我して…可哀相だと思っていたのに……殺してしまった
すでに動かなくなっている犬を見ながら、まん丸は疲れ眠る。
- : 代理:RAINLIT DUST/――に捧ぐ ◇k3fZfnoU9U [sage] 2010/08/08(日) 16:18:16:4lzrNeEo
- ◇ ◇ ◇
屋敷の中から泣き声が聞こえてくる。
子供っぽい声から察するにまん丸だろう。
(俺も泣きたいのによ…)
イカルゴは誰に言うともなく心の中で呟いた。
激しい雨は彼自身の涙を表したものだろうか?
(ん、あいつは……)
再び顔をあげた彼は正面から屋敷に近くに影を見つける。
彼は威嚇として蚤弾(フリーダム)を影に向けて撃つ。
放たれた弾は近づいてくる白い四足歩行の獣の目の前に着弾する。
白い獣は一瞬足を止め上の方を見たが、ふと後ろを振り向いた後、扉を突き破り中に侵入した。
(あいつ、躊躇なく……まさか殺し合いに乗って…まん丸とクズリが危ない)
イカルゴは足早にホールへと向かっていく。
そこには……
「なっ、お前は……」
2人のデイバッグは置きっぱなしになっていたが、まん丸もクズリもいなくなってる。
その代わりにいたのは……あの時の赤毛の狼じゃねえか。
雨のため全身が濡れており、けばけばしいマントで身を包んでいるがあいつに間違いない。
「お前か、また会ったな」
赤毛の狼はそう言いながらマントを投げ捨てナイフを構えた。
狼の体はボロボロだった。
まあ、あの時雪原で気絶させたはずだから、凍傷でも発症したのだろう。
しかし、どんなに傷を負っていても危険であることに変わりはない。
一瞬でも気を抜けばあっという間に殺される可能性だってある。
実際俺の本能がそう警告している。
俺は狼を睨みつけて牽制をする。
まあ、宿主の『のほほん』とした顔からして凄みはないだろうが…。
すると赤毛の狼も睨みかえしてきた。
- : 代理:RAINLIT DUST/――に捧ぐ ◇k3fZfnoU9U [sage] 2010/08/08(日) 16:19:21:4lzrNeEo
- 俺も赤毛の狼も牽制している。
傍から見れば一瞬時が止まっていると勘違いするかもしれないな。
少しでも目を逸らせば命はない。
ずっと続くと思われたこの硬直状態を打ち破ったもの、それは…
「なっ!」
「ぐっ!」
地下からの轟音と震動だった。
あいつら地下に行ったのか。
まさかあの犬から逃げようとして…。
しかし、今は目の前にいる赤毛の狼をどうにかしないと…
「今のはお前の仲間の仕業なのか?」
赤毛の狼が質問を投げ掛ける。
まずい…これに答えるわけにはいかない。
今そうだと答えたらあいつは問答無用で殺しに行くに違いない。
俺では食い止めることすらできない。
「やはりお前の仲間の仕業か」
な、勘付かれた。
「俺が聞いたときずいぶん動揺してたからな」
「……そうだ。俺の仲間がやった」
くっ、もはや詰んだも同然だ。
俺もクズリもまん丸も狼の手に掛ってしまう。
結局ここは戦場であることに変わりはない。
一瞬の動揺ですら命取りだ。
「……まさか、お前の仲間は強いのか?」
俺は答えなかった。
否、答えることが出来なかったというべきだ。
俺自身あいつらの強さは把握してないしな。
だが、あいつは弱者ですら容赦なく狩る、そんな目をしている。
そんな奴に分からないと答えようものなら…
「答えないということは分からないということか」
しまった、迂闊だった。
ここは考えを巡らせずに『ああ』と答えるべきだったか。
- : 代理:RAINLIT DUST/――に捧ぐ ◇k3fZfnoU9U [sage] 2010/08/08(日) 16:21:19:4lzrNeEo
- 「もう一つ聞く。お前らは殺し合いには乗ってないな?」
え?どういうことだ?
俺が見た限りでは間違いなく殺し合いに乗っているはず…。
それとも、こいつは殺し合いに乗った奴だけを狙っているとでもいうのか…。
「………ああ、乗ってない」
「だろうな」
間違いない、こいつは殺し合いに乗っている奴だけを狙っている。
だとするとこいつは信用できるということか?
いや、まだ分からない。
こいつをあいつらのところへ連れて行っても安全だという保証はまだ……
「お前の仲間のところまで俺を案内しろ」
くっ、早速きやがった。
しかし、断ったところで俺を殺しあいつらを探し当て、手をかける可能性だってある。
それよりはそのまま案内して、いざという時には3人でこの狼と戦った方が生き残れる可能性は高いはずだ。
そう考えた俺は何も言わずに狼と共に2人がいるであろう地下室へと向かう。
- : 代理:RAINLIT DUST/――に捧ぐ ◇k3fZfnoU9U [sage] 2010/08/08(日) 16:34:15:4lzrNeEo
- ◇
まさか、あれほどの振動を出せる奴がここにいたとは…。
もしかするとオーボウの目は間違っていなかったのかもしれない。
だが、オーボウと彼についてきた子供は俺自身が手をかけた。
…まあ、それは過ぎたこと、気にすることの程でもない。
俺は地下室に入り周りを見渡す。
……俺は期待しすぎていたのかもしれない。
死骸が二体、そのうち一体は俺が追いかけていた白い生き物だな。
そして海賊ペンギンとは似ても似つかぬペンギンの子供。
このペンギンだけは生きている。
一瞬死んでいるようにも見えたが、寝息を立てているだけだ。
俺はナイフを構えペンギンの喉笛を切り刻もうとする。
「お前、何をする気だ!」
「ペンギンの子供を殺すだけだ」
ぱっくんトカゲが俺の腕を掴んで邪魔をしてくる。
俺はぱっくんトカゲの腕を振りほどき、簡素に答える。
「お前、子供と言うだけで話を聞かずに殺すのか?」
「ふん、ぬるいな。子供が生きていたところで姉さんの邪魔になるだけだ」
「!?…まさかお前は見た目だけで全てを決めつけるのか?」
「当然だ。戦場で子供は単なる足手まといにしかならない。そんな奴を生かし続けていれば、姉さんはそいつを庇って死ぬかもしれない」
「見た目だけが全てじゃないということを分かろうとはしないのか」
「確かに強い子供もいるかもしれんな。だがこいつが強いとは思えん」
「そういう奴に限ってものすごい能力を持ってるものだ」
このぱっくんトカゲはどれだけ食い下がるつもりなのだろうか?
それ程この役立たずが大切だというのか?
……だが、確かに一理はあるかもしれない。
この子供ペンギンが振動を起こした可能性もほんの僅かだがないともいえない。
もしあの振動を起こしたのがこの子供ペンギンであれば協力するのも悪くない。
いざという時には囮に使うこともできるしな。
「……気が変わった、少しだけ猶予をやる。それでもし俺が役に立たないようだと判断したなら、………問答無用で切り捨てる」
ぱっくんトカゲは何も答えなかった。
- : 代理:RAINLIT DUST/――に捧ぐ ◇k3fZfnoU9U [sage] 2010/08/08(日) 16:35:38:4lzrNeEo
- 【G-4/豪邸/一日目/日中】
【ラルク@聖剣伝説Legend of Mana】
【状態】軽度の凍傷、左腕に銃創(小)、低温状態(大分回復)、全身濡れている
【装備】スティンガー@魔法少女リリカルなのはシリーズ×1、手榴弾(3/3)@ケロロ軍曹、ユーノのメモ
【道具】支給品一式、不明支給品0~2(確認、武器は無し) 、オーボウの支給品(食料、水を除いた支給品一式、不明支給品0~1(確認、武器は無し))、ウマゴンの支給品一式、巨大キノコ@スーパーマリオシリーズ
【思考】
基本:キュウビの打倒に対し、シエラの障害になる者は殺す。役に立ちそうな相手なら、場合によっては多少協力する。
0:シエラが無事であってほしい
1:子供ペンギンが目覚めるのを待つ
2:子供ペンギンが役立たずなら問答無用で殺す
3:武器が欲しい。出来れば斧
4:シエラとは戦いたくない。そうなる可能性があるので、会うのも避けたい
※参戦時期はドラグーン編の「群青の守護神」開始より後、「真紅なる竜帝」より前です。
※ここが自分の世界(ファ・ディール)ではないと気付いていません。
※また、死ねば奈落に落ち、自分は元あった状態に戻るだけだと考えています。
※伝説の剣@ハーメルン が武器として使い物にならないことを知りました
※第1放送を完全に聞き逃しました。禁止エリアの場所について知りません。
※メモはギロロたちが駅に貼っているものと同種です。
※第2放送は一応聞きましたが、自分の目的に集中していたため一部内容を忘れている可能性があります。
【イカルゴ@HUNTER×HUNTER】
【状態】健康、ヨッシーに寄生中
【装備】蚤弾(フリーダム)、キルアのヨーヨー@HUNTER×HUNTER
【道具】デイバッグ(支給品一式(食糧なし)×2、幸せの四葉@聖剣伝説Legend of Mana、シュバルツの覆面@機動武勇伝Gガンダム、ハンティングボウ@銀牙
【思考】
基本:殺し合いから脱出、可能ならキュウビ打倒
1:まん丸が目覚めるのを待つ
2:まん丸と豪邸でザフィーラ達の帰りを待つ
【備考】
※原作25巻、宮殿突入直前からの参戦です。
※イカルゴの考察
? イッスンはキュウビの想定外?
? キュウビには異世界の協力者がいる?
? キュウビ側の統制は取れていないかもしれない
【まん丸@忍ペンまん丸】
【状態】:頭に打撲(小)、決意 、全身にすり傷(小)、気絶、混乱、不安
【装備】:忍刀@忍ペンまん丸 、折り紙×10枚@忍ペンまん丸、サトルさん@忍ペンまん丸
【道具】:なし
【思考】
基本:念雅山に帰りたい、殺し合いには乗らない
0:……
1:ボクが…犬さんを殺した?
2:イカルゴと豪邸でザフィーラ達の帰りを待つ
【備考】
※原作終了後からの参戦です。
【クズリの父@ぼのぼの 死亡】
【パスカル@真女神転生 死亡】
【残り 21匹】
※クズリの父、まん丸のデイバッグはホールに置きっぱなしになっています。
※入口のドアが壊れそこから雨が吹き込んでいます。
※正面ホールに派手な外套@うたわれるものが投げ捨ててあります。また、派手な外套はびしょびしょに濡れています。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/08/09(月) 08:18:37:hvidq3u1
- 乙
最近一気に死んでいくな…
それにしてもシスコン狼はいい加減自重しろ!
この調子だと対主催全滅しちゃうぞ - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/08/09(月) 21:56:59:7E/bXtq5
- 死んでいくねえ
ぼのぼのとポケモンとまん丸は全滅しそうな勢い - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/08/15(日) 18:00:53:DJmPySF9
- おいおいクロノクロスなんてライターがサラタンハアハアしたいだけのオナニーゲーじゃないか
そんなのの設定使うなよ
もう如何でも良いやこの企画 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/08/19(木) 02:34:35:4welr1aY
-
でも意外にもリリカルカワイソスの法則は
アルフ以外にはまだ発動してないんだよなw - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/08/19(木) 09:48:32:tpEdWVa0
- 戦闘にまったくと言っていいぐらい関わってないからね、なのは勢
マーダーに遭遇したのも、ザフィーラがシエラと序盤に会ってたぐらいで
あ、パスカルがいたか - : ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/08/25(水) 20:59:50:KRpzKDKT
- カエル、ぼのぼの、アマテラス、投下します
- : 雨の降る昼、いったいどうする ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/08/25(水) 21:02:14:KRpzKDKT
- キュウビの忌々しい声が聞こえなくなったのを確認して、カエルは横線の引かれた名簿に目を落とした。十五の命が新たに散り、丁度半分の者が命を落としたことになる。あと二十ニの命が消えれば、このふざけた呪法は終わる。
それを面白がっているキュウビの首を討ち落としたい衝動を、カエルは深い吐息と共に抑え込んだ。とはいえ、この地での知り合いの全てを目の前で失った彼にとっては、今回の放送は単なる事実確認以上の意味合いは無かった。他者から比べれば、大分楽な身の上だろう。
死者の読み上げが死亡した順番らしいことに気づけたのも、己が精神的に余裕があったためだ。
雨はまだまだ続きそうであった。ただ、雷を伴うような代物ではないらしい。放送の直前、大地を揺るがすような雷音が轟いたが、それ以降は静かなものである。
しかし、だからといって、目的もないのに外出するのは自殺行為でしかない。地下の鍾乳洞の探索も保留せねばならないだろう。水没の危険は勿論のこと、自分の位置が地図で確認できない以上、闇雲に進むことはできない。近くに禁止区域が設けられたのだから尚更だ。
一先ず、カエルは腹ごしらえをすることにした。とはいえ、事前に確認した食料はあまり食が進むような代物ではなかった。しかしながら、贅沢を言っていられる状況でもない。
カエルは数個の硬いパンと共に、蛙の腿肉を香草と一緒に焼いたものを取りだした。今の姿の己にこんなものを与えてくるとは、やはり、あのキュウビの根性は修復不可能なほどにねじくれているようだ。
冷えた油が白く固まっているそれを摘み、食い千切る。
それらとパンを水で流しこんだ時、小屋の扉が音を立てた。軋みと共に扉が引かれ、外の雨音と冷気が小屋の中に入り込んでくる。
骨を投げ捨て、剣の柄に手を掛けたカエルの眼に入ってきたのは、柔らかそうな体毛を雨に濡らした子供の獣だった。毛の脂のせいだろうか。雨に濡れても、獣の体毛は膨らみを保っている。
「こんにちはー。カエルさんはひとりなの?」
子供はカエルの存在に気付くと、円らな瞳を一、二回瞬かせてから、唇毛をふぁさと揺らし、のんびりとした口調で挨拶をしてきた。
子供に続いて入ってきたのは、白い狼だ。幾つか戦闘を繰り広げて来たのか、所々に巻かれた布は泥水に汚れ、後ろ足を引きずっている。
最初の場所でキュウビに躍りかかって行った、アマテラスという狼だろう。詳細名簿とやらには白い狼が他にも認められたが、大きさからみて間違いないはずだ。
しかし、だからといって、こちらに無害とは限らない。探していた相手ではあるが、それがこちらに友好的である必然は無い。脳裏に浮かぶのはギロロたちの姿だ。カエルは気付かれないよう重心を僅かに移動させる。
と、アマテラスはその大きな体躯に似合わない、人懐こい動作で尻尾を振って見せた。敵ではないと、安心しろとでも言うように。その間の抜けた表情に気勢を殺がれ、カエルは構えを解いた。
こちらの返事がないことを不思議に思ったのか、子供が首を捻りながら、少し大きな声で同じ言葉を繰り返してきた。
聞こえなかったとでも思ったのだろう。こちらが警戒していたことにも気付いていない様子だ。これまで生き残ってきたのが不思議なほどに警戒心がない。よく言えば純真無垢、悪く言えば盆暗だ。
胸中で苦みを掻き消し、カエルは肩を竦めた。
「見ての通りさ。俺は……名前もカエルだ。そっちは?」
「ぼくはぼのぼの。こっちはオオカミさん」
ぼのぼのの言葉にアマテラスが一声咆えた。ぼのぼのはアマテラスの名を言わなかった。アマテラスに言うなとでも釘を刺されているのだろうか。
そのアマテラスはというと、後ろ足の痛々しい傷をぺろぺろと舐めている。
見かねて、カエルは支給品にあったマッスルドリンコなるものを皿に注いでやった。気休めに近いが、怪我の回復に一番必要なのは体力だ。
液体の臭いに鼻を動かしているアマテラスから目を逸らし、カエルはぼのぼのに向き合った。
「よし、じゃあ、ぼのぼの。休む暇なくて申し訳ないが、幾つか話をしよう。まず、ここまでどうしてきたか、教えてくれ」
- : 雨の降る昼、いったいどうする ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/08/25(水) 21:04:31:KRpzKDKT
-
ぼのぼのは、いいよ。と頷いた。
「あのね。ぼく、ガッコウに戻ろうとしたんだけど、そうしたら、このオオカミさんと、大きなスナドリネコさんみたいな子がね、喧嘩してたの。それで色々あって、気付いたら崖の上だったんだ。まだ大きなスナドリネコさんは居たから、オオカミさんとここに逃げて来たの」
ぼのぼのは茫洋とした口調で、滔々と喋った。カエルが聞きたかったのはこれまでの経緯なのだが、そうは受け取ってもらえなかったらしい。
今の言葉から分かったのは、ぼのぼのとアマテラスが出会って間もないということのみだ。名前を言わなかったのは、単にまだ知らなかっただけのようだ。
質問の仕方を変えるか。しかし、ぼのぼのの様子から、こちらの意図する情報を引き出すのは困難に思えた。簡単な質問から先に片づけて行った方がいいだろう。カエルはデイバッグから詳細名簿を取り出し、床に座ったぼのぼのの前に広げた。
「知り合いや、見たことがある奴はいるか?」
ぼのぼのの告げた者達の中にアライグマが居た。直接は知らないが、ツネ次郎の仲間だった参加者だ。仲の良い友達であったらしく、研究所に墓を作ったことを教えると、ぼのぼのは僅かに表情を曇らせた。変化に乏しいが、それが多分彼なりの哀しみなのだろう。
また、警戒していた因幡てゐという女は、彼に良くしてくれたらしい。意外とここに書かれていることは当てにならないのかもしれない。仮に事実であっても、その者の本質ではない可能性が高いと見た方がいい。
ムックルの項目に警戒とだけ付け加え、カエルはぼのぼのとの情報交換を切り上げた。知り合いを絡めれば、カエルが欲しい情報を引き出せるだろう。
ただし、彼は今回の放送で、親しい知り合いを二人失っている。そして、訊き出そうとすれば、否が応にも、その二人に触れることになる。死を知って間もない子供にはきついだろう。
カエルはアマテラスに視線を移した。横になっていたアマテラスは、視線に気づいたか、ぱっと顔を上げた。その深い色の瞳を見つめるが、それでオオカミの思考が伝わってくるわけではない。
神様と書かれていたのでひょっとしたらと思ったのだが、そういった便利な能力はないらしい。
貝を石で割り出したぼのぼのに声をかける。
「……ぼのぼの。悪いが、通訳してくれないか? 俺には狼の言葉が分からなくてな」
ぼのぼのは貝を食べるの止め、しばし中空を見つめた後で応えた。
「ぼくもわかんないよ」
「な、なんだと?」
思わぬ返答に、カエルの声は高くなった。ぼのぼのは、ツネ次郎と同じように獣と人の両方の言葉が分かる存在とカエルは考えていたのだが、違うのだろうか。ぼのぼのは続ける。
「初めて会ったときにもアマテラスさんとお話しできなくて、おかしいなあって思ったの。他の皆とはお話できるのに、どうしてなんだろう……?」
彼自身、不思議に思っているようだ。カエルは問いを重ねた。
「……他の、その、なんだ。獣たちとは会話できるものなのか? 熊とか、猪とか」
「できるよー。今だって、カエルさんとお話してるじゃない」
「いや、まあ、それはそうだが……それでも、こいつの言葉は分からんと?」
「うん。……ごはん、食べていい?」
「……ああ。食べるといい。ゆっくりとな」
嘆息を溢し、カエルはアマテラスの前にしゃがみ込んだ。アマテラスは瞳を輝かせている。犬が何か面白いことを期待しているときの、あの瞳だ。
通訳もないとなると、複雑な意思疎通は不可能だし、得られる情報も限られてくる。キュウビが何者であるかなど、最も知りたかった情報をアマテラスから聞くことは出来ないということだ。
可能なのは、知り合いの確認だけか。カエルは詳細名簿を広げ、アマテラスに知り合いが居たら教えてくれ。と伝えた。アマテラスは、最初の頁にあるぼのぼのに対し、一つ吼えた。これが返事らしい。グレッグル同様、こちらの言葉は理解してくれているようだ。
アマテラスの知り合いは、ぼのぼの、アライグマ、ニャース、楽俊、シロ、ムックルだけだった。内、手を組めそうなのはニャースのみだ。
知り合いの確認だけで済んでしまった情報交換に肩を落とし、カエルは名簿を仕舞った。貝を食べ終わって満足げなぼのぼのにアライグマのことを伝えてやる。
- : 雨の降る昼、いったいどうする ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/08/25(水) 21:05:42:KRpzKDKT
-
「ぼのぼの。アマテラスはアライグマと会ったそうだぞ」
「そうだよ。アマテラスさんと初めて会ったとき、アライグマくんと一緒だったんだよ」
「ん? おまえ、アライグマとは再会できなかったと言っていなかったか?」
「言ったよ。最初の真っ暗い所で別れたあと、アライグマくんとは会えなかったんだよ」
「……そういうことか」
キュウビのデモンストレーションの場で、既にぼのぼのはアマテラスと逢っていたということらしい。もしかすると殺された栗鼠も、ぼのぼのの知り合いだったのかもしれない。それを訊く気にはなれないが。
他にすることはあるだろうか。少々多すぎる荷物を、彼らに譲るくらいであろうか。こちらの情報を明かした所で、彼らには話のタネになる以上の意味はなさそうだ。首を振って、頭を掻く。
ふと、ぼのぼのがアマテラスに語りかけている言葉が耳に入る。
「――ラスさん。ぼく、ガッコウに戻らなくちゃ。多分、あの大きなスナドリネコさんはいないよ。ケロロさん待ってるし、ニンゲンさんが死んじゃうかもしれないし。アマテラスさんも一緒に行こうよ」
ニンゲン――ぼのぼのはそう言った。そのことを考える前にカエルは訊き返していた。
「ぼのぼの! ニンゲンが死ぬってのは、どういうことだ?」
ぼのぼのはきょとんとしながら、ゆったりと答えて来た。
「ガッコウにね、ニンゲンさんがいたんだよ。いたそうな傷がいっぱいあって、ケロロさんがてゐさんを呼んでこいってぼくに言ったの。てゐさんはコヒグマくんのおとうさんの傷も診てくれたんだよ。でも……てゐさん、キツネさんに名前を呼ばれちゃった」
俯いたぼのぼのに、アマテラスが気遣うように鼻を鳴らした。
それを横目に、カエルは思案する。ニンゲンという参加者は居ない。ニンゲンとは、すなわち人間と見て間違いないだろう。この地に、"人間"がいる。それも、名簿にも載っていない存在がだ。
ここから脱出する鍵になるか。それとも、キュウビの罠か。
しかし、足を踏み入れねば両者を判別することすら出来ない。
「ぼのぼの、俺も一緒に行こう。その人間に俺も会ってみたい」
カエルの申し出に、ぼのぼのは二三首を捻った。
「カエルさんは、ケガとか分かるの?」
「まあ、多少はな」
「それじゃあ、カエルさんも一緒に行こう」
言うが早いか、ぼのぼのはアマテラスの背に乗った。アマテラスはカエルへ顔を向けると、一つ吼えた。そして、誘うように尻尾を揺り動かす。
「……乗れっていうのか?」
もう一度、アマテラスが吼える。カエルはデイバッグを抱え、アマテラスの背に跨った。二人の重みに砕けることなく、アマテラスは雨の中に踏み出していった。 - : 雨の降る昼、いったいどうする ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/08/25(水) 21:06:36:KRpzKDKT
-
【C-6/一日目/昼】
【カエル@クロノトリガー】
【状態】:健康、多少の擦り傷、疲労(小)、魔力消費(小)、寂寞感、びしょ濡れ、アマテラスの背の上
【装備】:なんでも切れる剣@サイボーグクロちゃん、マントなし
【所持品】:支給品一式(食料:パンと蛙の腿肉料理)、ひのきのぼう@ドラゴンクエスト5、モンスターボール@ポケットモンスター、しらたま@ポケットモンスター 、銀の不明支給品(0~2、確認済)、石火矢の弾丸と火薬の予備×9@もののけ姫 、
マハラギストーン×3@真・女神転生if、風雲再起の不明支給品(0~2、確認済)、参加者詳細名簿、ペット・ショップの不明支給品(1~3、確認済)、スピーダー@ポケットモンスター×6、グリンガムのムチ@ドラゴンクエスト5、ユーノのメモ
【思考】
基本:キュウビに対抗し、殺し合いと呪法を阻止する
1:学校へ行く。
2:ニャースの捜索。
3:ギロロにあったら話をつけて誤解を解く。
4:余裕があれば鍾乳洞内を調べる。
※ツネ次郎と情報交換をしました。ぼのぼのとアマテラスの知り合いを把握しています。
※異世界から参加者は集められたという説を知りました。
※参加者は同一世界の違う時間軸から集められたと考えています。
※天容の笛@忍ペンまん丸、しらたま@ポケットモンスターとパルキア@ポケットモンスターの存在を知りました。
※ペット・ショップ、ミュウツー、クロコダイン、クロ、チョッパー、ケットシー、因幡てゐ、ラルク、ムックルを危険ないし要警戒と認識しました。
※ログハウスの下にある鍾乳洞は抜け道のようなものと推測しています。
※死者の読み上げが、死亡した順番であることに気付きました。
※アマテラスがオープニングの時点で意思疎通が出来なかったことを知っています。
【ぼのぼの@ぼのぼの】
[状態]:健康、戸惑い、アマテラスの背の上
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ベンズナイフ@HUNTER×HUNTER、貝割り用の石@ぼのぼの、貝×4
[思考]
基本:殺し合いはしない。
1:学校に戻る。
2:てゐについていきシマリスとヒグマの大将が生き返る者の所まで案内してもらうはずだったのに。
3:殺し合いに乗っている者がいたら、このナイフを使ってとめる
[備考]
※アニメ最終話48話後からの参戦です
※支給品の説明書は読んでいません。
※銀に不信感を持ちましたが悩んでいます。
※ケロロ軍曹と情報交換をしました。
※体を洗ったので、血の臭いは殆ど落ちました。
※第一回放送、第二回放送を聞きましたが、あまり理解していません。
※ムックルを危険人物と認識しました。
【アマテラス@大神】
【状態】:全身打撲(中・治療済) 、胴に裂傷(小)、後ろ足に裂傷(中)、体力回復・治癒促進中
【装備】:所々に布が巻かれている。ぼのぼの、カエル
【道具】:なし。
【思考】
基本:打倒キュウビ。絶対に参加者を傷つけるつもりはない。
0:??????
【備考】
※アマテラスの参戦時期は鬼ヶ島突入直前です。そのため、筆しらべの吹雪、迅雷の力は取り戻していません。
※筆しらべの制限に気付いているかもしれません。
※キュウビの目的について、何か勘付いているかもしれません。
※筆しらべ「光明」と「月光」で昼夜を変えることはできないようです。
※筆しらべ「桜花」で花は咲かせられるようです。
※筆しらべは短期間に三回使うと、しばし使えなくなるようです。爆炎などの大技だと、また変わってくるかもしれません。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/08/25(水) 21:07:39:KRpzKDKT
- 以上です。
指摘等、お願いいたします。 - : 修正 [sage] 2010/08/25(水) 23:20:25:KRpzKDKT
- キュウビの忌々しい声が聞こえなくなったのを確認して、カエルは横線の引かれた名簿に目を落とした。十五の命が新たに散り、丁度半分の者が命を落としたことになる。あと二十ニの命が消えれば、このふざけた呪法は終わる。
それを面白がっているキュウビの首を討ち落としたい衝動を、カエルは深い吐息と共に抑え込んだ。とはいえ、この地での知り合いの全てを目の前で失った彼にとっては、今回の放送は単なる事実確認以上の意味合いは無かった。
他者から比べれば、大分楽な身の上だろう。死者の読み上げが死亡した順番らしいことに気づけたのも、己が精神的に余裕があったためだ。
雨はまだまだ続きそうであった。ただ、雷を伴うような代物ではないらしい。放送の直前、大地を揺るがすような雷音が轟いたが、それ以降は静かなものである。
しかし、だからといって、目的もないのに外出するのは自殺行為でしかない。地下の鍾乳洞の探索も保留せねばならないだろう。水没の危険は勿論のこと、自分の位置が地図で確認できない以上、闇雲に進むことはできない。近くに禁止区域が設けられたのだから尚更だ。
一先ず、カエルは腹ごしらえをすることにした。とはいえ、事前に確認した食料はあまり食が進むような代物ではなかった。しかしながら、贅沢を言っていられる状況でもない。
カエルは数個の硬いパンと共に、蛙の腿肉を香草と一緒に焼いたものを取りだした。今の姿の己にこんなものを与えてくるとは、やはり、あのキュウビの根性は修復不可能なほどにねじくれているようだ。
冷えた油が白く固まっているそれを摘み、食い千切る。
それらとパンを水で流しこんだ時、小屋の扉が音を立てた。軋みと共に扉が引かれ、外の雨音と冷気が小屋の中に入り込んでくる。
骨を投げ捨て、剣の柄に手を掛けたカエルの眼に入ってきたのは、柔らかそうな体毛を雨に濡らした子供の獣だった。毛の脂のせいだろうか。雨に濡れても、獣の体毛は膨らみを保っている。
「こんにちはー。カエルさんはひとりなの?」
子供はカエルの存在に気付くと、円らな瞳を一、二回瞬かせてから、唇毛をふぁさと揺らし、のんびりとした口調で挨拶をしてきた。
子供に続いて入ってきたのは、白い狼だ。幾つか戦闘を繰り広げて来たのか、所々に巻かれた布は泥水に汚れ、後ろ足を引きずっている。
最初の場所でキュウビに躍りかかって行った、アマテラスという狼だろう。詳細名簿とやらには白い狼が他にも認められたが、大きさからみて間違いないはずだ。
しかし、だからといって、こちらに無害とは限らない。探していた相手ではあるが、それがこちらに友好的である必然は無い。脳裏に浮かぶのはギロロたちの姿だ。カエルは気付かれないよう重心を僅かに移動させる。
と、アマテラスはその大きな体躯に似合わない、人懐こい動作で尻尾を振って見せた。敵ではないと、安心しろとでも言うように。その間の抜けた表情に気勢を殺がれ、カエルは構えを解いた。
こちらの返事がないことを不思議に思ったのか、子供が首を捻りながら、少し大きな声で同じ言葉を繰り返してきた。
聞こえなかったとでも思ったのだろう。こちらが警戒していたことにも気付いていない様子だ。これまで生き残ってきたのが不思議なほどに警戒心がない。よく言えば純真無垢、悪く言えば盆暗だ。
胸中で苦みを掻き消し、カエルは肩を竦めた。
「見ての通りさ。俺は……名前もカエルだ。そっちは?」
「ぼくはぼのぼの。こっちはオオカミさん」
ぼのぼのの言葉にアマテラスが一声咆えた。ぼのぼのはアマテラスの名を言わなかった。アマテラスに言うなとでも釘を刺されているのだろうか。
そのアマテラスはというと、後ろ足の痛々しい傷をぺろぺろと舐めている。
見かねて、カエルはアマテラスにケアルガを掛けた。柔らかい光が身体を包む。
しかし、その身に刻まれた傷は全く治った様子はなかった。一方で、カエルは常よりも重い疲労を感じていた。思えば、ウォータガを使ったときにも同様の違和感はあったのだ。
どうやら、今の身体は、理由は分からないが、本調子とはいえないようだ。もっとも、魔法の効能がないのは、相手にも問題があるのかもしれないが。
仕方なく、カエルは支給品にあった栄養剤を皿に注いで、アマテラスの前に置いた。気休めではあるが、回復魔法の効果が見込めない以上、体力を回復させるより他に法がない。
液体の臭いに鼻を動かしているアマテラスから目を逸らし、カエルはぼのぼのに向き合った。
「よし、じゃあ、ぼのぼの。休む暇なくて申し訳ないが、幾つか話をしよう。まず、ここまでどうしてきたか、教えてくれ」 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/08/25(水) 23:22:06:KRpzKDKT
- また、カエルの状態票に
※魔法の制限に気付いたこと
※回復魔法の効果の発現がとてもゆっくりになっていること
を加えておきます。 - : ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/08/27(金) 23:28:43:Q5F87Dqb
- 投下します。
- : とても優しい瞳をしてたあなたが歌う―― ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/08/27(金) 23:30:17:Q5F87Dqb
- 滑走するザフィーラの顔面を雨粒が容赦なく叩きつけていく。勢いに乗った水滴は石つぶての如く露出した肌を穿ち、腕で保護していなければ目も開けていられない。
地上を見下ろせば、風に煽られた草木による緑の大波が広げられていた。キュウビの放送はそろそろのはずだが、この雨音の中、それを聞きとれるか、些か不安になる。
雨にけぶった視界の向こうに、ホテルらしき建物の影が見えてきた。それと同時に、肌がちりつくような違和感をザフィーラは覚えた。
見上げると、ホテルの上空に重く暗い雲が幾重にも立ち込め、それ自体が一個の生き物のように蠢いている。その姿は、まるで雲が意思を持ってホテルに集っているようだ。
ザフィーラは高度を下げ、地面を這うような軌道へと変えた。視界は狭まるが、空に居て雷に打たれては堪らない。
ホテルの輪郭がはっきりと見えて来た時、上空が眩く耀いた。耳を劈くような轟音と共に、純白の光刃がホテルを斬り裂いた。その衝撃はザフィーラの臓腑にまで響き、視界が一瞬にして白一色に染まる。
しばしして、ザフィーラは己が声を上げながら地面を転がっていることに気付いた。ほんの数瞬、気絶していたのかもしれない。泥を払いながら彼はホテルを確認し――思わず声を漏らした。
ホテルの形が変わっていた。雨のために延焼することはないようだが、白煙をあげる建物の上半分が崩れてしまっている。一体どれほどの衝撃がホテルを襲ったのだろうか。先程のは、ただの雷ではなかったのかもしれない。
近づくと、ホテルの壁には黒々とした雷の爪痕が刻まれていた。周囲には、雨で流しきれない焦げた臭いが漂っている。
未だ雷の影が残る目を擦りながら辺りを見渡すと、ホテルからふらふらとした足取りで離れていく人影を見つけた。落雷の際、ホテルに居たのかもしれない。目の端で、不自然に瓦礫が動いたような気がしたが、一旦無視して人影に接触することを選んだ。
トナカイの子のときの経験を踏まえて、空は飛ばず、徒歩で距離を縮めていく。ある程度近づいた所で、ザフィーラは声を張り上げて呼び掛けた。
雨の帳の中、人影がびくりと震えて立ち止まるのが分かった。その反応を多少訝しく思うものの、ザフィーラは名前を告げながら歩みを進めた。
相手を確認し、ザフィーラは己の頬が緩むのを止められなかった。全身の毛をしとどに濡らしているものの、人影はあのトナカイの子供であったのだ。
トナカイの子供も、こちらの姿を認めたらしい。厳しかった表情が崩れ、愛らしい円らな瞳を大きく見開き――、
「うきゃあ!」
と悲鳴を上げた。そのまま駆けだそうとするのを、寸での所で腕を掴み、引きとめる。トナカイの子供は余計にパニック状態になり、腕や足をぶんぶんと振り回し始めた。蹄がザフィーラの腕や足を掠めて行く。
「お、おい、落ち着け!」
「おばけ! ゆーれい! 助けてー祟られるー皿数えてくるーあくりょーたいさーん!」
「あ、暴れるな!」
「おれが悪かったよぉーちゃんといくから今は――」
腰に手をまわして抱き上げながら、子供がどうやら己を幽霊か何かと勘違いしているらしいことに気付く。 - : とても優しい瞳をしてたあなたが歌う―― ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/08/27(金) 23:32:20:Q5F87Dqb
-
「待て待て! 俺は生きてる。生きてるぞ! おばけじゃない!」
「おばけは皆そう言うんだー! ビームに当たって海に落ちたの、知ってんだぞー! びしょ濡れなのが証拠だー!」
どうやら、トナカイの子供は、ザフィーラが海に落ちて死んだと思い込んでいるらしい。難儀しながら身体の位置を変えて、ザフィーラは子供と向き合った。その目を、できるだけ穏やかに見つめながら諭すように言葉を紡ぐ。
「俺は海に落ちてない。あのとき、鉄橋の下からおまえの同行を窺ってたんだ。俺が空を飛べるのは知っているだろう?」
「……落ちて、ない?」
「そうだ。落ちちゃいない」
トナカイの子供が、瞳に怯えを浮かべながらも平静を取り戻しつつあるのを見て取り、ザフィーラは彼を地上に下ろした。腰をかがめ、視線を合わせる。
「お、おれ、あんたが海に落ちて……おれ、あんたを殺したとおもって……」
子供はくしゃりと顔を歪め、俯いた。安堵とも取れるし、どこか怒っているようにも見える。ただ、その様子から、子供が余程思いつめていたことは伝わって来た。あれから大変な目にもあって来たのだろう。小さな身体の至る所に包帯が巻かれ、血が滲んでいる。
「すまなかった。あのときは、おまえのことを警戒していたんだ。すぐに出て行けば良かったな」
詫びると、子供が口の中で何事か呟いた。しかし、雨音に紛れてザフィーラには聞きとれなかった。それを聞き返そうとしたとき、子供がきっと顔を上げた。表情は、先程の厳しいものに変わっている。
「ザフィーラは、この殺し合いに乗ってんのか?」
問いの口調も、子供らしからぬ、とても緊張を帯びた物になっている。眼光も酷く鋭く、それは断罪者のように、一片の不義も見逃すまいとしているように見える。
「いいや。乗っていない」
「……誰かを殺したのか?」
「それも否だ」
二つ目の答えに、子供の顔は歳相応のものへと戻った。
「そっかー……良かったあ。おれ、トニートニー・チョッパーっていうんだ。チョッパーでいいや」
「宜しくな、チョッパー」
差し出された蹄を握ろうとしたそのとき――視界の外から飛び込んできた影がチョッパーを弾き飛ばした。雨音で、接近に気付けなかったようだ。地面に転がったチョッパーは目を回したのか、起き上がってこない。
チョッパーに追撃しようとする襲撃者の前に、ザフィーラは半身を滑り込ませた。裂帛の気合と共に地面を踏みしめ、反対の足を蹴り上げる。
それを襲撃者は毬のように跳んでかわし、四足で着地した。そこから一呼吸も置かずに、襲撃者は飛沫を飛ばしながらザフィーラに襲いかかって来た。
そのあまりに速い挙動に目を見張りながら、ザフィーラは動きに合わせて拳を振り降ろした。拳は襲撃者の顔面に突き刺さる。地面に叩きつけられた襲撃者は、しかし、怯むことなく上半身を跳ね上げ、関節を無視した動きで抜き手を繰り出した。
ザフィーラは身を捩ってその軌道から逃れるも、手刀は背負っていたデイバッグを切り裂いた。中身が地面に散らばる。
それを無視し、ザフィーラは流れそうになる身体を踏みとどめ、更に小さく地面を蹴った。背筋だけで宙に躍った襲撃者に肉薄し、そこから半歩奥に踏み込んだ。それと同時に繰り出した掌底は胸板へと吸い込まれ、骨を砕いた感触が右腕を奔っていく。
襲撃者は受け身も取れずに地面を転がった。何処からかキュウビの声が聞こえて来たが、それに構っている暇はない。案の定、襲撃者は身を起こしてきた。間合いと共に稼げたのはほんの一呼吸の時間――しかし、それで充分だった。
ザフィーラは力ある言葉を高らかに叫び、魔力を展開した。
「縛れ! 鋼の軛!」
- : とても優しい瞳をしてたあなたが歌う―― ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/08/27(金) 23:36:52:Q5F87Dqb
- 魔力によって生成された光の拘束条が大地より飛び出し、襲撃者の四肢を貫き、その動きを止めた。襲撃者は口から泡を飛ばしながら身を捩っている。
改めて、襲撃者の姿を確認する。
おそらくはネズミか何かなのだろう。しかし、その身体を覆っているのは柔らかい毛皮ではなく、焼け焦げた皮膚の黒い残骸だ。その所々に、肉の朱が覗いている。右目は血だまりになっており、もう片方の瞳は白く澱んでいた。生物として、死んでいなくてはおかしい状態だ。
襲撃者が大きく雄叫びを上げた――と、同時に襲撃者はザフィーラの目の前に立っていた。
「く――ッ!」
相手の凄惨な姿に集中を乱したか。しかし、どうやって拘束を逃れたのかという疑問を思考の外に追いやり、ザフィーラは後ろへ跳んだ。しかし、すでに襲撃者は攻撃の体勢に入っている。ザフィーラの後退よりも、襲撃者が前進する方が――早い。
襲撃者が左腕を打ち出した。拳ではない。腕の先に手はなかった。断面から、尖った骨が覗いている。襲撃者は四肢を引き千切って、拘束を解いたのだ。
骨の槍はザフィーラの脇腹を深く抉った。同様に、右腕も腹に差し込まれる。ザフィーラの喉から苦鳴が漏れた。襲撃者は“両目”でザフィーラを見、嗤うように眦を蠢かした。
ザフィーラの苦鳴が、絶叫へと変わる。刺された痛みからではない。傷口から異物が侵入し、根を張るようにして肉を裂き、身体を作り変えられていくような感触。
彼は叫びながら、力いっぱい襲撃者を蹴り飛ばした。肉を裂く音と共に、激痛が全身を駆け廻った。思わず片膝をついたザフィーラの周りには、瞬く間に血だまりが出来ていく。
弾け飛んだ襲撃者の両腕には、ザフィーラの血と肉がごっそりと纏わりついていた。その下から表れたのは、青い毛に覆われたオオカミの前足だ。いつの間にか、襲撃者の両足も元に戻っている。それどころか、黒焦げだった身体にうっすらと毛が生え始めていた。
著しい速さで再生しているらしい。それに加えて、他者の肉体を侵食し、吸収する力もあるようだ。拘束するなど、甘い対処法では意味のない相手だったのだ。
ザフィーラは乱れる呼吸を無理やり整えた。
もし、ここで獲り逃せば、大事に至ることは火を見るより明らかだ。あの吸収能力が、肉体の再構成だけでなく、個々の持つ能力までも吸収できるのだとしたら――。既に、ザフィーラの魔法をも奪われているのだとしたら――。
ザフィーラは掠れた声で――叫ぶ。
「縛れ、鋼の、軛――!」
生成された幾本もの光の槍は、襲撃者の頭部や胸部を貫いた。しかし、襲撃者は止まらない。肉体を引き裂きながら、そして再生しながら、拘束を解こうとする。一本や二本では、致命傷にも至らないらしい。
ならば、再生する部位がなくなるほどの傷を与えるより他に法はない。
ザフィーラは込みあげる血塊を吐き捨て、力ある言葉を重ねた。魔法陣が構成され、光の奔流が襲撃者に襲い掛かる。奔流の正体は、無数の槍だ。それが襲撃者の全身を貫いていく。襲撃者の絶叫が響く。
光が消え去ったとき、襲撃者の姿は何処にもなかった。一片の肉片も残さず、光の刃によって刺し貫かれたのだ。千切れていた四肢が泥の中に転がっているが、それが動く様子はない。
ザフィーラは荒くため息を吐いた。脇腹を両腕で抑えながら、チョッパーが倒れていた方に首を巡らせる。
彼は既に意識を取り戻し、立ち上がってこちらを凝視していた。一先ず、大した怪我もないらしい。そのことに、ザフィーラは小さく笑みを刻む。
ゆっくりとした足取りで、チョッパーが近寄ってくる。と、デイバッグを投げ捨てながら、彼が何事か呟いたのが聞こえた。
「何、だ? 雨でよく、聞こえな――」
チョッパーの上半身が膨れ上がり――。
「――い」
叫びと共に、チョッパーのの蹄がザフィーラに叩き込まれた。
- : とても優しい瞳をしてたあなたが歌う―― ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/08/27(金) 23:38:00:Q5F87Dqb
-
蹄を振り下ろす。その度に朱色の飛沫が辺りに散った。
「やっぱりおまえもヒト殺しなんじゃないか!」
蹄が肉を叩く。
「おまえもヒトを殺すんじゃないか!」
蹄が骨を砕く。
「おまえも、あいつらと同じなんじゃないか!」
蹄が地面を叩く。
「おまえが、早く出てきてくれてたら――!」
イギーに意地悪をされることもなかったのに――。
楽俊とやらと戦うことにならなかったかもしれないのに。
ザフィーラがすぐ出てきてくれていれば、ピカチュウは死ななかったかもしれないのに――。
チョッパーは腕を止めた。それと同時に、身体が元の大きさに戻る。ランブルボールの効果が切れたのだ。
彼の眼前には赤い池が広がっていた。そこに倒れ伏す男には胸から上がなかった。ただ、骨と肉片が泥の中に散らばっている。
このヒト殺しに出会わなかったら、もっと違ったはずだ。己は万能薬でいられたはずだ。
チョッパーは頬をぬぐった。それに沿って紅い線が引かれるも、すぐに雨が流れ落としていく。
これで正真正銘、自分はヒト殺しだ。万能薬では完全になくなった。
チョッパーは込み上げてくる笑いの衝動に任せて、肺を震わせた。泣くように、チョッパーは嗤った。その衝動が漸くおさまり、チョッパーはぽつりと呟いた。
「行こう……」
南は嫌だった。イギーがいる。会えば、覚悟が鈍る気がした。そうなったら、ただ惨めな自分が残るだけだ。向かうなら北がいい。
一先ず荷物を拾おうと、チョッパーは振り返った。
目の前に深紅が広がっていた。
ムックルは桃色の被り物を吐きだした。キママウよりも小さい獣が身に着けていたものだ。朱に染まったそれは雨に打たれ、更に汚い色へと変じていく。
ムックルの後方には、喰い千切った残りの半身が落ちていた。更に、その傍には人間の男の死体があるのだが、堅そうで食べる気にはなれなかった。
ちらりと、彼は焼け焦げた城を見た。その臭いに、ムックルは口吻を歪めた。火は嫌な臭いだ。雷も同じだ。
あそこは駄目だ。
安全に雨宿りのできる場所を探し、ムックルは南への移動を再開した。
- : とても優しい瞳をしてたあなたが歌う―― ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/08/27(金) 23:39:01:Q5F87Dqb
-
【ザフィーラ@魔法少女リリカルなのはシリーズ 死亡】
【トニートニー・チョッパー@ワンピース 死亡】
【残り 19匹】
【D-4/ホテル跡/一日目/日中】
【ムックル@うたわれるもの】
【状態】:全身にダメージ(小)、精神的疲労(小)、母への強い思慕、興奮(大)、びしょびしょ、南に移動中
【装備】:鋼鉄の牙@ドラゴンクエスト5
【道具】:なし
【思考】
基本:殺し合いに乗る。
1:雨宿りできる場所を探す。
【備考】
※ムックルの参戦時期はアニメ第5話で、食料庫に盗み食いに入る直前です。
※ツネ次郎に懐きました。缶詰をツネ次郎がくれたものだと勘違いしたため。
※風雲再起に苦手意識を持っています。
※モロから一連の狩りの仕方(気配の殺し方等)を教わっています。
※アマテラスの本当の姿が見えています。
※筆しらべ『水郷』を浴びたため、血は大分洗い流されました。
※放送を聞きましたがあまり理解していません。特に禁止エリアの部分。
※ザフィーラの支給品一式、ランブルボール@ワンピース×2、ブロンズハチェット@聖剣伝説Legend of Manaがホテル付近に散らばっています。
※チョッパーのデイバッグ(支給品一式*2 、応急処置用の医療品、担架)がホテル付近に放置されています。
※DG細胞は完全に消滅しました。
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/08/27(金) 23:39:55:Q5F87Dqb
- 以上です。
指摘等、お待ちしております。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/08/27(金) 23:56:36:/UdFF5Gs
- 乙
ああ…ザフィーラ…行動が裏目にでまくりだったな…
しかしこれでついに20匹以下か
一日で終わりそうな勢いだ
>>TPKO6O3QOM氏
こちらも乙
学校に今行くとか危険すぎる… - : 代理:蛙人乱れし修羅となりて ◇k3fZfnoU9U [sage] 2010/08/31(火) 20:48:51:3n/HJWr2
- 放送で禁止エリアを聞いた後、ケットシーは校内を適当にうろついていた。
死者の名前は風雲再起と楽俊が呼ばれたこと以外軽く聞き流している。
放送直前にもの凄い稲光と轟音がしたことすら彼にはどうでもいいことだった。
自分が生き残れば誰が死のうと関係ないと考えていたのだから…。
「ラクシュンの言っていた男ってコイツのことかな?結局グッド根性君ってわけじゃなかったのかよー、だらしなさすぎるぜー」
給食室にて男の死体を目の前にしてケットシーはほんの少しだけがっかりした。
楽俊が言っていた死にかけそうな男に関してもあわよくばと狙っていたのだ。
しかし彼には弱肉強食の理がある。
それに放送前、大量のマグネタイトを吸収できたことにより余裕がある。
死体を蹴りでこづいた後ケットシーは給食室を後にする。
大量の食糧や治療用の道具には目もくれずに…
「ヒーホー、みんな人生エンジョイしてるー?って無視かーい。誰の声も聞けないなんてオイラ寂し過ぎるぜー」
適当に散策してたどり着いた放送室にてケットシーは適当に機械盤をいじったりマイクに向かって意味もなく喋ったりと子供っぽくマイペースに行動を起こす。
ただ、彼は放送のスイッチをONにした状態でマイクに向かってしゃべっていることに
気づいてない。
放送室というものは役割の都合上一方通行でしか言葉を送れない。
それゆえ本人にそのつもりがなくても現在位置を教えているのと同じことである。
「反応なくてツマンネーし、そろそろココも飽きてきたぜー。さっさと別のとこいこーっと」
そんなことを叫びながら放送室を出て下り階段に向かおうとする彼の耳に『ドドドドド』という足音が入る。
先程の校内放送を聞き向かってきた人物なのだが、ケットシーはそれを知る由などないだろう。
ケットシーは足を止めて音のする方を見る。
足音の主は建物内なのに砂埃を撒き上がらせながら確実にこちらに近づいてきていた。 - : 代理:蛙人乱れし修羅となりて ◇k3fZfnoU9U [sage] 2010/08/31(火) 20:50:28:3n/HJWr2
- 「こーんな時に正義の味方、さんじょーいって生意気な奴が現れるのっていわゆるお約束な展開?ってことは、オイラ悪役?」
余裕を見せながら独り言を呟くケットシーだったが、砂埃は彼の方にホーミングしてくる。
そして砂埃の主、ケロロに首を掴まれそのまま絞められる形となる。
「てめえも我輩のジムを狙う不届き者かぁー!」
「ジ、ジム?そ、そんな知り合い…オイラには…存在しないぜ」
「てめぇ、我輩にそんな嘘つくんじゃねえええぇぇ」
「ホントに…オイラ、ジムなんて…初耳……!!」
さすがのケットシーも首を絞められているせいか、いつもの他人をからかうような口調で無くなっていた。
ケットシーは絞り出すような声で知らないと訴える。
しかし、ケロロは聞く耳を持たずに理不尽に怒鳴りつけた挙句さらにケットシーの首を絞める手に力を入れる。
それと同時にケットシーは今自分の首を絞めている目の前の奴のオーラに気づく。
それは彼の世界で言う魔王や魔神、邪神に近いものであった。
「問答無用、ジムの敵は我輩の敵であることを思い知るであります。うおおおおおおお、ろっしょおおおおおい!!」
気合いの雄叫びと共にケロロはケットシーの首を持ち上げ、窓ガラスの方へと全力投球を放つ。
ケットシーは首を持ち上げられ抵抗できないまま窓をぶち破り外に放り出される。
舞い散る硝子と共にケットシーの身体は自由落下をしていく。
先刻、彼が手をかけた女の人生を辿るかのごとく…
そして残されたケロロは…
「我輩のジムを狙っておいてこれで済むと思うなよ。その首をへし折ってやるであります」
窓から声高らかに宣言しケットシーの元へと向かって行った。
……階段で確実に。
修羅化したとはいえ甘さが残っているのは、ケロロ小隊故か。 - : 代理:蛙人乱れし修羅となりて ◇k3fZfnoU9U [sage] 2010/08/31(火) 20:51:13:3n/HJWr2
- ◇
「ゲホゲホッ、まーたまたアンラッキーな出会いをしてしまったぜ。もしかして今日の出会い運サイアクー?」
そう呟きながらケットシーは起きあがろうとするが、全身に痛みが走る。
「オイラただマグネタイトが欲しくて甘い奴をKILLしてきただけなのに、こーんな目に遭うなんて世の中嫌なこと多すぎるぜー」
ケットシーは強い雨に打たれながら大の字に倒れ愚痴をこぼす。
彼が手をかけた兎に比べると骨折していない分だけましではあるが、彼自身は知らぬ存ぜぬという感じであった。
「ん?ヤッベー、まさかアイツがここに来る?しつこすぎてアイツ嫌われ者確定―、だけどオイラはこのグッドアイテムでさっさとエスケープできんだぜー」
雨音によりほとんどはかき消されているもののほんの僅かにドドドドドという音が再び彼の耳に届く。
ケットシーは全身の痛みに耐えながらキメラの翼を取り出す。
と同時に緑の鬼神が姿を見せる。
「今更そんな羽なんて飾りなんだよおおおぉぉ!」
ケロロはケットシーを見るや否や止めを刺さんとするが如く、叫びながら恐ろしい早さで突進を繰り出してきた。
その勢いはどこからか『何とかトリニティアターック』とか聞こえてきそうなものである。
突進の勢いによる渾身の右ストレートがケットシーを襲おうとする刹那…
「できるだけ……ここから遠くにエスケープだぜー!」
その言葉と共にケットシーの身体は空高く舞い上がる。
その一方ケロロの拳は虚しくも空を切る。
「ヒャッハー、アイキャンフラーイ!」
そのままケットシーは『遠く逃げれるところ』へとワープする。
一方再び取り残された蛙修羅ケロロは…
「ちっくしょおおお、しかし我輩のジムを狙うものを生かしたままにしておけるものかあああ!」
ジムを狙う刺客を追い学校を発つ。
刺客であるケットシーが飛んで行った方角へと… - : 代理:蛙人乱れし修羅となりて ◇k3fZfnoU9U [sage] 2010/08/31(火) 20:51:56:3n/HJWr2
- 【C-4/校庭/1日目/日中】
【ケロロ軍曹@ケロロ軍曹】
【状態】ガンプラ破壊によるマジギレモード
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
0:こんな世界、焦土にしてやらぁ……!!
1:ジムを狙うものは皆殺しじゃあ!!
※キレて暴れている所為で、いろいろなことを失念しています。
※ピカチュウ、キラーパンサー、オカリナをゲームに乗ったと誤解しています(名前は知らない)
※ピカチュウ、キラーパンサーの言葉は通じないようです。他は不明。
※キュウビに宇宙人の協力者がいるか、キュウビ自身が宇宙人であると考えています。
※会場の施設は、全て人間が以前使用していた物と考えています。
※ぼのぼのと情報交換をしました。
※給食室に、加藤清澄@バキの死体があります。
※給食室の加藤清澄を重要人物と考えています。
※第2放送は耳に入っていません。
【C-4/ワープ中/1日目/日中】
【ケットシー@真女神転生if...】
【状態】:疲労(中) 、帽子なし 、全身にガラス片が刺さっている
【装備】:まぼろしのてぶくろ@MOTHER3 、デザートイーグル@真女神転生if...(コロナショット@真女神転生if...(12発))
【所持品】:支給品一式、和道一文字@ワンピース、雷の石@ポケットモンスター、拡声器、折れたシャムシール@真女神転生if...、
巨大キノコ@スーパーマリオシリーズ、グリードアイランドカード(追跡)@HUNTER×HUNTER 、
ケットシーの帽子@真女神転生if...、フィジカルミラー@ペルソナ3、カマンベールチーズ@現実
ヒョウヘンダケ×3@ぼのぼの、キメラのつばさ*1@DQ5、伝説の剣のルビー@ハーメルンのバイオリン弾き
エルルゥの毒薬@うたわれるもの(テクヌプイの香煙×5、ネコンの香煙×5、紅皇バチの蜜蝋×5、ケスパゥの香煙×5)
【思考】
基本:生き残る。ゲームに乗るかキュウビに逆らうかは他の参加者をよく確かめてからにする
1:ワープした先で休憩する。
2:余裕があれば首輪の解除をする。
【備考】
※雷の石をマハジオストーン@真女神転生if...と勘違いしています
※まぼろしのてぶくろを防具と勘違いしています。拡声器を攻撃アイテムと勘違いしています。
※魔法の制限の可能性に気づきました
※グリードアイランドカードの使用法を聞きました
※オカリナ、ヒグマの大将、グレッグル、ミュウツーの情報を聞きました
※帽子をかぶった猫のことを自分のこととは思っていません。
※カマンベールチーズは楽俊に支給された食料です。
※第2放送は禁止エリアの場所以外適当に聞き流しています。
※キメラの翼の移動先はケットシーが行った中で小学校から一番遠い場所であるF-5駅のようです。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/08/31(火) 21:12:03:3n/HJWr2
- 代理終了。
投下乙でした。
ケロロ、暴走継続中かい。
動機がプラモ壊れたからというのは、コナンでありそうだから困りものですな。
あのネコは何も悪いことしてないのに!!
指摘ですが、キメラのつばさはDQ5では、たしか最後に立ち寄った町や施設に行く能力だった気がします。
そうなると、行き先はホテルになってしまうのですが。
続いてアライグマの父、投下します。 - : 俺の背丈追い越して、いつかはあいつも―― ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/08/31(火) 21:13:03:3n/HJWr2
- 周囲を弾力性のある幕が覆い包んでいる。空気が入り込むような隙間は無いのに、不思議と呼吸は苦しくない。仄かに湿り気のある空間は、温泉に浸かっているような心地よさすら感じられる。
と、真っ暗闇であった視界が段々と色を帯びて来た。視界一面に、雨に濡れた大通りが広がっていた。雨粒が全身を叩き、耳障りな音を奏でている。いつの間にか、疾飛丸によって外に追い出されたらしい。
首を巡らせると、背後に城が聳え立っていた。しかし、最初に目にしたときほどの迫力は感じない。
彼は己の両腕を見下ろした。黒い装甲に覆われた、頑強で無骨な二本の腕(かいな)。その先についている掌を何度か握ったり開いたりしてみる。節くれ立った指は、その見た目に反して滑らかに動いた。手首を返し、何度かそれを繰り返す。
一度大きく息を吐き、彼はゆっくりと立ち上がった。見えていた風景が大きく変わる。地面は遙か下となり、そのあまりの変化に彼は立ちくらみを覚えた。景色がぐるりと回り、踏鞴を踏む。どうにか左足を素早く少し引いて踏ん張り、重心を落として体勢を整えた。
転倒しなかったことに安堵し、彼は大きく肩を竦めた。視界には、遊園地の敷地の大部分が広がっている。目を付けていた観覧車は今も、雨の中でゆっくりと回転を続けていた。
しかし、あの輪っかを使うのは今でも難しそうだ。この場所からでも見上げるしかない代物をどう扱えばいいのか、見当がつかない。
落胆に首を振ってから、足元に落ちていた長刀を拾う。これも一緒に放り出されてきたらしい。連れの首を落とした刀の輝きには大きく劣るものの、雨水に濡れた刀身は不気味な剣呑さを湛えていた。
刀を右手から左手へと移しながら、彼は首を捻った。遊びで作ったことはあっても、実際に使用したことはない。
蘇るのは、連れが殺された時の光景だ。あの女のように肉を両断するにはどのようにすればよいのか。ただ振り回すだけでいいのか。何度か振ってみるものの、使いあぐねて、彼は刀を一旦地面に突き刺した。
と、雨音に混じって、あの狐の声が流れ始めた。それを無視して思案していると、彼の息子の名前が読み上げられた。
彼は顔を上げた。呼吸が荒くなり、鼓動が痛いほどに速くなる。
狐はまだ何事か告げていた。されど、その内容はまったく頭に入ってこなかった。
本当に息子の名は呼ばれたのか――。
彼が確かめたいのはそのことだけだ。やがて、狐の声は聞こえなくなった。狐は、彼が一番聞きたいことを繰り返しはしなかった。雨音だけの静謐が戻る。
聞き間違い。
そうだと思いたかった。しかし、己の耳がそんな粗末な代物でないことを、他ならぬ彼自身が知っている。
この地にて、彼の関心事は己と息子、その知り合いの命だけだ。それ以外で、彼の意思を中断させるものはない。
つまり己の耳は、確かに聞いたということだ。息子の名が呼ばれるのを。
彼の息子は――死んだのだ。
雨音がやけに大きく、身体の奥底まで響いていた。
息子――。
生まれた時、弱々しく、触れれば崩れてしまいそうだったことを覚えている。妻の乳を吸い、彼にさえ無邪気に甘えて来た。それがこそばがゆく、邪見に扱いもした。
狩り場、木の実の生る土地、生きるための術と知恵――色々と教えた。しかし、息子は馬鹿だった。控え目に言っても、出来はよくはなかった。早く一人前にならないものかと、苛立ちもした。
けれども、それでいいのだ。手がかかり、煩わしい――それが子供なのだ。
それに、息子が居る日々は退屈しなかった。必ず何かをしでかした。殴りつけたこともあったが、何も変わらぬ日々に鮮やかな彩を加えてくれていた。
ただ――生きてくれているだけで充分だった。
自慢の、とは言わない。だが、妻と己の宝であったことには変わりない。好いた女と一緒になり、そして――生まれた我が子だ。
たった一人の、ただ一人の、彼の息子だ。
- : 俺の背丈追い越して、いつかはあいつも―― ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/08/31(火) 21:14:04:3n/HJWr2
-
いずれは大きくなり、好いた女と共に巣立っていくはずだった。事と次第では、己が巣を出て行ってもいい。孫の顔など見る必要はない。そんなことは面倒だ。己は只、息子が立派に独り立ちするのを見届けられれば、それでいい。
旅から無事に帰って来た時、誇らしさと共に、幾許かの寂しさがあったことを思い出す。息子が自分の手から離れつつあることを、あのとき悟ったものだ。
己を追い越して、少しずつ離れていく息子の背中を見送る。それが父親の役割だ。時が来れば、もうそれしか出来なくなるのだ。
だけれども――もう、見届けるべき背中は何処にも見えない。息子は独りで、あまりにも速く先へ行ってしまった。父親に、見送る暇すら与えずに。
己が立ち入れぬ未来へと、足を踏み入れていく息子の姿を見たかった。毒づきながらも、門出を祝ってやりたかった。悔しさが、煮え立つ澱みとなって腹の内に蓄積されていく。
誰もが死ぬ。いつでも死ぬ。いつかは死ぬ。子が親より先に死ぬこともある。
それは知っていた。だが、分かってはいなかった。
呼吸をするのが困難なほどの苦しみが身を包むのか。身を引き裂かれた方がましなほどの痛みを覚えるのか。何も分かってはいなかった。
息子を失ったことなどなかったのだから――。
彼は徐に刺してあった刀を引っ掴むと、衝動のままにそれで周囲を薙ぎ払った。傍に在った施設から破片が鮮血のように舞い散り、大きな傷跡が刻まれる。
彼は大きく肩で息をしながら、先の施設に対し、もう一度刀を振るった。悲鳴を上げながら、施設はゆっくりと崩れて行った。
その光景を視界に納め、彼は刀を肩に担いだ。何を悩んでいたのか。何も、斬る必要はないのだ。ただ、これで殴りつければ事足りる。殴りつけるだけで、生き物は死ぬ。
もう、己を縛りつけるものは何もない。己の命以外に気に掛けるものは何もないのだ。ならば、これからすることは一つだった。
何が何でも生き残り、妻に詫びねばならない。信用して息子を託してくれた、あの心優しい女を支えてやらねばならない。同時に、親として息子の仇も討ってやりたい。
そのために彼は――全員を殺すことした。
【A-2/遊園地/一日目/日中】
【アライグマの父@ぼのぼの】
【状態】:頭部に怪我、尻尾に切創(止血)、疲労(中)、軽度の貧血、アヴ・カムゥ内
【装備】:アヴ・カムゥ@うたわれるもの、アヴ・カムゥ専用の長刀@うたわれるもの、デイバッグ
【所持品】:地図、空飛ぶ靴@DQ5、魔除けの札@大神
【思考】
基本:全員を始末する。
1:参加者を探す。
【備考】
※札は少し湿っています。
※アイテムの説明は読んでいません。
※イギーと情報交換をしました。
※空飛ぶ靴は遊園地の入り口前が指定されていました。
※B-1からA-2の遊園地入り口までの間にアライグマの父の支給品が落ちている可能性があります。
※空を飛んだ時、月が地上よりも大きく見える気がしました。
※ボニーの考察は獣の卍参照。
※デイバッグは、コクピット内のアライグマの父が背負っています。
※第二回放送の内容を、アライグマが死んだこと以外聞いていません。
※遊園地の城付近の施設が倒壊しています。
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/08/31(火) 21:16:13:3n/HJWr2
- 以上です。
指摘等、お願いいたします。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/10/03(日) 13:31:52:p0WatyFW
- 投下乙です
オヤジ…口は悪いが本当は皆殺しとか考えるキャラじゃないのに…
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/10/13(水) 23:33:36:PHQJNlBr
- 投下ないなぁ
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/10/16(土) 15:43:15:Fuu4P/+P
- ないねえ。
秋だからねえ・・・
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/10/22(金) 08:03:34:Z5EENcx3
- みんな大神伝で忙しいのかなとか考えてみる
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/10/22(金) 09:12:55:9jgO8yjP
- ソラトロボ早く来ないかな…
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2010/10/22(金) 11:17:35:qcV60HXG
- 大神伝ってゲームボーイじゃできないのがなあ
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/10/27(水) 19:40:00:uA/YvMFN
- 大神伝は前作レイプのクソゲーという噂が
- : ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/10/30(土) 11:15:27:9GJLZZI4
- オカリナ、アライグマの父、投下します。
- : 空が別れを告げている ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/10/30(土) 11:16:20:9GJLZZI4
-
叩きつけるような雨の中を、一羽の白い鳥影が舞っていた。いや、舞っているというのは語弊があるかもしれない。
その羽ばたきに力強さはなく、風が吹く度に大きく身体を傾がせる。崩された体勢を立て直す余裕もなく、その小さな姿は大きく北に流されていく。
轟く様な強風と、石礫のような雨粒が吹き乱れ、地上の木々は大きく揺れていた。弾き飛ばされた枝葉が幾枚も宙を飛んで行く。
傍目から見ても、この天候の中を飛ぶのは無謀というものだろう。ましてや、鳥は疲弊しきっていた。どこぞの木で翼を休めるのが一番の選択だ。
しかし、それでもその鳥は懸命に東へと向かっていた。向かおうとしていた。風に戻され流され、それでも少しずつ東へと進んでいく。
風のせいで視界もままならぬ中、鳥は命を削るように両翼を羽ばたかせた。
休んでいる暇などないと、小さな身体は語っている。
実の所、この鳥は一度羽を休ませていたのだ。小さな公園で、鳥はしばしの休憩を取っていた。
そのときに鳥は、己が知る獣たちの死を知った。
尊敬する父。この地で共に行動してきた仲間たち。そして、これから探すはずであった者たち――。
その殆どが死んだ。少なくとも、この地で己を直接知る者は、もう誰もいない。
この鳥がもっと違う選択をしていれば、その幾つかの命は助かったかもしれない。
しかし、それを後悔しても詮無いことだと鳥は知っていた。鳥を駆り立てているのは後悔ではない。仲間の死は覚悟していたことだ。決死の覚悟を決めた仲間の背中は、まだ鳥の脳裏に焼き付いている。
身体に纏わりついた雨水は、風の圧力も加わって鉛のように重くなっていた。
しかし、それ以上に重い枷が、鳥の背に課せられていた。死んでいった者たちの遺志が、切迫した衝動となって鳥の全身を駆け廻っていた。それは時として、息苦しく鳥の身体を苛んだ。
されど、この枷は翼を休めることを許さなかった。
伝えなくてはならない。見届けなくてはならない。散り散りになった想いを、繋いでいかなければならない。
それが残された者の使命だ。生かされたということは、つまり託されたということだ。鳥は一度、託す側であった。今度は違う。此度は、己が背負う番なのだ。
風が奔る。雨が爆ぜる。
その中を、小さな白影が飛んで行く――。
低空を横切っていく小さな鳥を、彼は目に留めた。弱っているのか、鳥は覚束ない羽ばたきで東へと進んでいく。目立つであろう、今の彼に気付く様子はない。
彼が立っている橋の袂だ。そこから一気に橋を渡り、右手にある大刀を振るい――仕留める。
狩りとも言えぬ行動だが、それは簡単に成功するように思えた。手頃な獲物だ。
しかし、ここに居る獣たちは普通ではない。甘く見れば、こちらが考えもつかないような手段を用いてくることが大いにあり得るのだ。
まずは様子を見た方がいい。追跡し、確信を持った上で仕留めるのだ。
彼は、鳥を東に行く鳥の姿を視界に留めながら、橋を渡りだした。 - : 空が別れを告げている ◆TPKO6O3QOM [sage] 2010/10/30(土) 11:17:34:9GJLZZI4
-
【B-2/一日目/日中】
【オカリナ@ハーメルンのバイオリン弾き】
【状態】魔力消費(中~大)、疲労(大)
【装備】なし
【道具】支給品一式、ミニ八卦炉@東方project、世界の民話、治療用の薬各種、不明支給品0~2個(治療道具ではない)
【思考】
基本:ゲームには載らない。キュウビを倒す……だけどもし――。
1:C-4の学校に向かい重症の男を治療する。
2:そこでニャースを待つ。
3:できるならミニ八卦炉は使いたくない
※参戦時期は死亡後です。
※自分の制限について勘付きました。
※人間と関係ない参加者もいるのではと思っています。
※ケットシーを危険な獣と判断しました。
※治療用の薬の内訳は後の書き手にお任せします。
※オカリナの考察
・無意味に思えるアイテムを混ぜて、誰かが参加者に何かを知らせようとしているのではないか。
・キュウビ一味は一枚岩ではない。
縁者を人質にとり、殺し合いを強制してくるのではないか。全員ではないにしても、部外者が拘束されている。
※プックルの反論
・呪法=殺し合いとは限らない
・殺し合いは目くらましかも
【B-2/橋/一日目/日中】
【アライグマの父@ぼのぼの】
【状態】:頭部に怪我、尻尾に切創(止血)、疲労(中)、軽度の貧血、アヴ・カムゥ内
【装備】:アヴ・カムゥ@うたわれるもの、アヴ・カムゥ専用の長刀@うたわれるもの、デイバッグ
【所持品】:地図、空飛ぶ靴@DQ5、魔除けの札@大神
【思考】
基本:全員を始末して、仇を取る。
1:オカリナを追跡する。
【備考】
※札は少し湿っています。
※アイテムの説明は読んでいません。
※イギーと情報交換をしました。
※空飛ぶ靴は遊園地の入り口前が指定されていました。
※B-1からA-2の遊園地入り口までの間にアライグマの父の支給品が落ちている可能性があります。
※空を飛んだ時、月が地上よりも大きく見える気がしました。
※ボニーの考察は獣の卍参照。
※デイバッグは、コクピット内のアライグマの父が背負っています。
※第二回放送の内容を、アライグマが死んだこと以外聞いていません。
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/10/30(土) 11:19:44:9GJLZZI4
- 以上です。
指摘等ございましたら、お願いいたします。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/11/03(水) 14:24:53:YXe/8kqi
- 乙
オカリナ逃げてー
ただ位置はB-3とC-3じゃないだろうか - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/11/03(水) 21:59:20:wHhx35kB
- あ、ミスですねえ……
どうもです - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/11/04(木) 23:27:00:7RU+oQdp
- 遅くなりましたが投下乙です!
オカリナ逃げてー! ……でも所持品見たらミニ八卦炉が。で、追っ手の兵装がアヴ・カムゥ……
親父追わないでー! な事にならない事を願っておりますw - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/12/08(水) 04:23:50:NvC/JMSZ
- わたしには彼氏がいます。
彼とわたしはデートの時、どちらかの家に行き、
だれもいないとき、部屋で横になって裸でだきあいます。
それがだんだんエスカレートしていって、学校の体育倉庫で服をぬがされ、まだ3年生ですが、
学年で1番大きいおっぱいをつかむように触られたり、しゃぶったりされます。
最初は苦手だったんだけど、だんだん気持ちよくなりサイコーです。
しかも、わたしは学年1美人でもてます。
彼も同じで、美男美女でよくみんなにうらやましく思われます。
: : このカキコ見たあなたは4日後に不幸が訪れ44日後に死にます。
それがイヤなら、コレをコピペして5ケ所にカキコして下さい。
わたしの友達はこれを信じず4日後に親が死にました。
44日後友達は行方不明・・・・。
いまだに手がかりもなく、わたしはこのコピペを5ケ所に貼り付けました。
すると7日後に彼氏ができ、10日後に大嫌いな人が事故で入院しました。
: : 信じる信じないは勝手です。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2010/12/21(火) 20:28:57:5KJ7PSPw
- 保守
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2010/12/28(火) 20:52:38:UsEmGivU
- ほしゅ
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2011/01/04(火) 10:12:06:j1Kj/9UZ
- 保守
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2011/01/16(日) 13:45:05:FPqBrEa6
- 保守
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2011/01/16(日) 19:44:28:KmBkjFf7
- 保守
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2011/01/25(火) 10:35:34:ygcSFWlZ
- ほしゅ!
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2011/01/27(木) 14:44:45:E4XAC8UE
- 補修冬虫夏草
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2011/02/03(木) 19:33:07:ZMB2zox3
- 保守してみる
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2011/02/06(日) 18:15:46:6qApeCSq
- 次の予約こないねえ
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2011/02/14(月) 11:24:17:vm3DAH0V
- ギロロ入ったの半年前だっけ
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2011/02/19(土) 14:12:05:ugczwrdV
- 保守
- : 名無しさん@お腹いっぱい [] 2011/02/27(日) 18:58:19.64:Pauti/JZ
- 保守
- : 名無しさん@お腹いっぱい [] 2011/03/07(月) 21:58:39.09:xuXDeC6Z
- 保守
- : 名無しさん@お腹いっぱい [] 2011/03/12(土) 08:16:53.31:rEAFkP6y
- 皆さんご無事でしょうか…
保守
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2011/03/18(金) 15:19:29.76:j2mw1v/O
- 保守
- : 名無しさん@お腹いっぱい [] 2011/03/27(日) 08:46:28.45:JBSb7tvF
- 保守ー
- : 名無しさん@お腹いっぱい [] 2011/04/02(土) 22:57:38.67:RO/aSQeO
- 保守
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2011/04/09(土) 17:06:23.68:Gm5vbEQS
- ほしゅられほしゅう?
- : 名無しさん@お腹いっぱい [] 2011/04/16(土) 12:32:42.31:GqCCjfZW
- 保守!
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2011/04/19(火) 20:05:16.37:zL/QaLB8
- 保守保守
- : ◆TPKO6O3QOM [] 2011/04/23(土) 12:59:02.61:zlJJsYUL
- カエル、アマテラス、ぼのぼの、オカリナ、アライグマの父、ケロロ軍曹投下します
- : ◆TPKO6O3QOM [sage] 2011/04/23(土) 13:02:37.93:zlJJsYUL
-
と思ったのですが、仕様変わったのか、ほとんど文章が書き込めないようなので、したらばに投下しておきます。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2011/04/23(土) 16:42:54.85:1+Fx5C/4
- 乙
ここで一気に退場者がでたな
もうアライグマの父は戻れないところまでいったな… - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2011/04/24(日) 23:32:42.30:NhXmoyVT
- てす
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2011/04/24(日) 23:36:08.09:NhXmoyVT
- 代理投下します
- : ◇SO3BDqFnYo [sage] 2011/04/24(日) 23:37:11.88:NhXmoyVT
-
(一)
風が体の自由を奪っていく。その唸りは、悪意に満ち満ちた哄笑のようにオカリナには聞こえていた。
四肢から垂れ下がるような倦怠感は、もう己を騙せる範疇をとうに過ぎていた。
しかし、オカリナは魔族だ。殺されることはあっても、魔力の消費以外で死ぬことは無い。
そのことは、己に託された想いを実行することに幾許かの希望を与える。
だが同時に、この痛苦から解放されることもないことを示してもいた。諦めぬ限り、この体は苛まれ続ける。
もう、体は地面すれすれを飛行していた。仲間の一人が持っていた、浮遊して移動する板――それと大体同じ高度だろうか。
それを操っていた、愛らしい黄色い仲間はもういない。その板にぶら下がっていた愉快で剛毅な仲間も、もういない。
一人ぼっちだ。虚ろな穴が心に穿たれ、感情がそこから砂のように零れ落ちていく。そのとどまることの無い喪失感は、降り注ぐ雨よりも冷たく体を貫いた。
この苦しみを、あの娘に与えてしまっていたのか。二重の苦しみが胸を締め付ける。
横風に、大きく体が煽られた。
「――てっめえはぁー! 最初に我輩のジムを奪おうとした不届き者その一ィィィィィィィッ!」
怒号が雨音を突き破った。緑色の物体がオカリナの嘴の先を掠めていく。
それは泥水を跳ね飛ばしながら急停止すると、跳ねるようにしてオカリナに向き直った。
緑色の表皮。不恰好な赤ん坊のような体系。黄色い帽子――電波塔で出会った、あの緑色の獣人だ。
疲労のためか、雨風による騒音と視界の悪さのためか。オカリナは彼の接近に気づけなかった。
楽俊との対話の中で、彼との軋轢は誤解であるのではないかとオカリナは考えていた。話せば分かり合える。その可能性は十分あるようにも思えた。
しかし、この雨風では如何なる言葉も彼の耳まで届くまい。そこまで声を張り上げる体力そのものがない。また、彼自体、正気を失っているようだ。全身から怒りと殺気が湯気のように昇りたっている。
時期が悪いのであれば、また出直せばいいだけだ。ただ、そのためには逃げなくてはならない。問題は、それが一番の無理難題であるということだ。
既に翼は鉛の塊のように重い。自分の意思では自由に操ることなど、もう不可能に近いだろう。初撃こそ運よく避けられた形となったが、次からはそうもいくまい。例え凌げたとしても、近い内に必ず捉まる。
捉まれば、そこで終わりだ。
それでも、ここから離れなければ――。
だが、想いとは裏腹に羽ばたきは力を失い、オカリナの小さな体は泥の中に落下した。
緑色の獣人は歓喜とも絶叫とも取れる声を上げた。と、それとは別に微かな振動をオカリナは感じた。
朧気な視界の中で、旋風のごとく疾走してくる影が映る。獣人とオカリナの間に滑り込んだ陰は影は、不安定な足場にも関わらず力強く踏み込むと流れるように脇に構えた棒を振りぬいた。
すぱぁんと小気味良い音を立てて、獣人が打ち倒された。半ばから折れた棒切れが宙を舞う。
「ケロロさーん」
のんびりとした声とワンと言う吼え声が聞こえた。
- : ◇SO3BDqFnYo 代理投下 [sage] 2011/04/24(日) 23:39:04.78:NhXmoyVT
- (二)
大雨の音は、ガッコウの中に入ると余計に大きく感じられた。
カエルさんは、さっきケロロさんとケンカしていた白いカラスさんとお話している。白いカラスさんはオカリナさんというらしい。
オカリナさんはすごく疲れているようで、オオカミさんの額の上にちょこんと蹲ったまま、ほとんど身動きしない。息もどこか苦しそうで、ぼのぼのは不安になる。
カエルさんとオカリナさんはとても難しい話を、難しい顔をして話していた。
「――アマテラスさんの言葉は、最初のときから通じていなかった?」
「そうぼのぼのは言っていたな。楽俊の言う翻訳装置なんてものがあるにしても、少なくともこいつには作用していなかったことになる。始めからな」
「……そうしますと、異世界間で言葉が通じないという事態も可能性は低くなりそうですね」
「そいつは分からんよ。まあ、さっきも言ったが、まず"異世界"という部分が疑問なんだが」
「頑固ですね」
「前にも言われたよ」
「でも、なぜ言葉が通じないんでしょう? 翻訳装置がなかったとしたら」
「こいつが"神"だから……かな。人と獣の言葉が通じないんだ。神なんて更に次元が違うだろう?」
「……魔族と人は言葉が通じますよ」
「それは多分、お互いが思っている程には大きな違いはないんじゃないか? 俺はそう思えるようになってきたよ」
カエルさんは穏やかに言った。今のカエルさんは、一緒にいて安心する。
だけど――と、ぼのぼのはオオカミさんの背に体を預けながら髭をしゅんと垂らした。
カエルさんは、かつてぼのぼのがてゐさんに教えてもらった方法と似たやり方で二人のケンカを止めた。
手早く袋から木の棒を取り出してからのカエルさんの動きは、迅速で無駄がなく、見蕩れてしまうほどだった。
だけど、のびてしまったケロロさんを見下ろすカエルさんは、何故かとても怖かった。
そのカエルさんを止めたのは、オオカミさんの声だった。何を言っているかは分からないけれど、何を言いたいかは分かる。そんな吼え声だった。
今、ケロロさんは、カエルさんの持っていた細長い紐を何本も束ねた物で一本棒みたいに縛られている。
「確かに、人も魔族も変わらないでありますなー。いたいけな我が輩をムチで縛り上げるなどというマニアック――いや、暴虐非道な仕打ちをするし。
というか、そんな我が輩を放置して何を気だるい午後的な雰囲気を醸し出しているでありますか!? そんなわけで教育委員会に訴えられたくなければ、この縄を解いてくれなさい」
「どんなわけにしても、殺しにかかってきたものに自由を与えるわけにもいかんだろ」
「その誤解は解けたはずであります!」
「それとは別に、因幡てゐの殺害の疑いも完全に晴れたわけじゃない」
「それは……我が輩自身も確信を持って否定できない痛い所を……」
ケロロさんとオカリナさんのケンカの理由は、オカリナさんの友達の言葉が分からなかったことらしい。それに加えて、オカリナさんの友達の一人はとても怖い顔をしていたんだそうだ。
気絶したケロロさんをオカリナさんが庇った事で、カエルさんも納得した。
だけど、その後ガッコウまで戻ったとき、ぼのぼのは変わり果てたてゐさんと再会した。てゐさんにはコヒグマくんのおとうさんと同じような穴が頭や胴に開いていた。
死んでしまったてゐさんを見て、カエルさんは又怖いカエルさんに戻ってしまった。気絶していたケロロさんを叩き起こし、真偽を問い質した。
目を覚ましたケロロさんは戸惑っていて、てゐさんの死体を確認すると、もごもごと口ごもってしまった。そんなケロロさんに、カエルさんはより怖いカエルさんになった。
ケンカになってしまうのかとぼのぼのは心配したが、ケロロさんが口にした猫と言う言葉にオカリナさんが反応した。ケットシーさんという、危ないネコさんがいると聞いていたらしい。
ケロロさんが口にした特徴は、カエルさんの持っているショウサイメイボにあるケットシーさんのものと一致した。スナドリネコさんをもっと軽薄にした雰囲気のネコさんだ。
ぼのぼのと出会った時にケロロさんがジュウを持っていなかったことと、ケットシーさんがラクシュンさんをジュウで殺したらしいことを知って、カエルさんは少し怖くないカエルさんに戻った。
ガッコウに入り、ニンゲンさんの居た部屋にケロロさんの案内で戻った。ニンゲンさんは死んでしまっていた。今度は穴が開いていなかった。
ニンゲンさんが誰なのか、カエルさんもオカリナさんも知らなかったし、何も分からなかった。ニンゲンさんの死体は、すぐ隣の部屋にまだある。
カエルさんは、雨が止んだら埋めてやろうと言っていた。 - : ひとつ火の粉の雨の中 ◇TPKO6O3QOM 代理投下 [sage] 2011/04/24(日) 23:40:37.30:NhXmoyVT
-
「まあまあ。ケロロさんの言い分を信じてあげましょうよ。私は信じてもいいと思ってますよ」
「おお。さすがオカリナ殿。こんな素敵なカラス殿に襲い掛かるなど、後一歩のところでギロロに続いて我が輩まで犯罪行為に手を染めてしまうところでありました!」
「こんな風に縛っておけば一先ず何も出来ませんし」
「………………」
と、ズシンズシンとガッコウが揺れた。地震かとぼのぼのは思った。揺れは段々と大きくなっていく。
ただ、ずっと下から突き上げてくるような揺れではなかった。何か近づいてきたとカエルさんが言った。森を大きなウシさんが通ったときのことを、ぼのぼのは思い出した。
カエルさんと、引きずられたケロロさんが部屋を出て行った。オカリナさんが不安そうに目をしばたたかせた。
「まさか! あれは……ザクⅠ――!?」
ケロロさんの何処か嬉しそうな叫びの直後、周囲が大きな音を立てて崩れた――。
顔に叩きつけられる雨で、ぼのぼのは目を覚ました。
起き上がると、辺りは一変していた。周りには大小様々な瓦礫が転がっている。ガッコウは両端だけ建っていて、真ん中が無くなっていた。
そのガレキの中で、真っ黒い巨人の周りを白い影が躍る様に動き回っていた。火花が雨の中で散る。
オオカミさんだ。オオカミさんの尻尾が振るわれた。巨人の左腕が肘の辺りから斬り飛ばされ、噴き出した血が雨を赤に変える。
絶叫が周囲の空気を振るわせた。
その声には聞き覚えがあった。アライグマくんのお父さんの声だ。姿が全然違ってしまっているが、あの巨人はアライグマくんのお父さんなのだ。
今度は、オオカミさんとアライグマくんのお父さんがケンカをしているのだ。ぼのぼのは周囲を見渡した。ケロロさんもカエルさんもオカリナさんも誰も居ない。ケンカを止められるのは、自分しかいない。
ぼのぼのは傍に落ちていた袋から、変わった石を取り出した。これを刺せば、ケンカを止められるとてゐさんが言っていたのだ。
ぼのぼのはオオカミさんたちに歩き出した。瓦礫の間を通り抜けながら、ぼのぼのは一歩一歩近づいていく。
ぼのぼのに気づいたオオカミさんが駆け寄ってきた。そのすぐ後ろではアライグマくんのお父さんが苦しそうにのたうち回っていた。
オオカミさんは、ぼのぼのを守るようにパッとアライグマくんのお父さんに向き直った。
そのオオカミさんの背中に、ぼのぼのは石を突き立てた。
甲高い声が雨音を切り裂いた。オオカミさんはばたりと倒れて痙攣すると、すぐに動かなくなった。その肢体は見る間にねずみ色に変わり、石のように変わっていく。
「……オオカミさん――?」
ぼのぼのは戸惑いの声を上げた。ふいに周囲が暗くなったようにぼのぼのは感じた。
空を見上げたぼのぼのを、アライグマくんのお父さんの右腕が押しつぶした。
- : ひとつ火の粉の雨の中 ◇TPKO6O3QOM 代理投下 [sage] 2011/04/24(日) 23:42:00.92:NhXmoyVT
-
(三)
瓦礫を押しのけて、カエルは立ち上がった。体の節々に痛みが走るが、これでも幸運だったと言うべきだろう。
廊下の窓から見えたのは、こちらに向けて大刀を構えた黒い巨人だった。あんな姿の参加者は載っていなかった為、おそらくはあれが支給品の一つなのだろう。
とっさに身を投げ出した直後に、光芒が校舎を両断した。
立ち上がったカエルは、よろめきながら離れていく巨人の後姿だった。巨人には左腕がない。追い討ちを掛ける好機だが、それをなせるだけの準備も余力もカエルには残っていなかった。
まずは他の四匹の安否の確認だ。一匹はすぐに見つかった。
自分に似た緑色の足が投げ出されている。その上半身には大きな瓦礫がめり込み、周囲に大きな血だまりを作っていた。確認するまでもない。死んでいる。
赤いダルマとはやはり知り合いだったらしいが、結局彼がどういった人物なのか、ほとんど知ることは出来なかった。ただ、少なくとも、手当たり次第に襲い掛かるような愚か者ではないらしいが。
やがて、血にまみれた毛皮と肉の塊を見つけた。青い毛皮の一部がかろうじて見て取れる。ぼのぼのだ。奥歯をかみ締める。ぼのぼのの遺体の傍には、粉々砕かれた石のような物が散らばっていた。
追悼の祈りを後回しにし、カエルはオカリナとアマテラスの名を呼んだ。
しばしして、瓦礫の上に丁寧に横たえられたオカリナを見つけた。そっと抱き上げると、しっかりと呼吸しているのが見て取れた。自然と安堵の吐息が漏れる。
ふと、カエルは周囲が今まで以上に暗いことに気づいた。太陽の姿が見えないのは相変わらずだが、それにしても暗すぎる。まだ昼過ぎだというのに、黄昏時のような按配だ。
カエルはオカリナを抱きかかえると、アマテラスを探して移動を開始した。
【ケロロ軍曹@ケロロ軍曹 死亡】
【アマテラス@大神 死亡】
【ぼのぼの@ぼのぼの 死亡】
【残り 16匹】
【C-4/一日目/午後】
【オカリナ@ハーメルンのバイオリン弾き】
【状態】魔力消費(中~大)、疲労(大)、気絶中
【装備】なし
【道具】支給品一式、ミニ八卦炉@東方project、世界の民話、治療用の薬各種、不明支給品0~2個(治療道具ではない)
【思考】
基本:ゲームには載らない。キュウビを倒す……だけどもし――。
1:????????????
2:できるならミニ八卦炉は使いたくない
※参戦時期は死亡後です。
※自分の制限について勘付きました。
※人間と関係ない参加者もいるのではと思っています。
※ケットシーを危険な獣と判断しました。
※治療用の薬の内訳は後の書き手にお任せします。
※オカリナの考察
無意味に思えるアイテムを混ぜて、誰かが参加者に何かを知らせようとしているのではないか。
キュウビ一味は一枚岩ではない。
縁者を人質にとり、殺し合いを強制してくるのではないか。全員ではないにしても、部外者が拘束されている。
※プックルの反論
呪法=殺し合いとは限らない
殺し合いは目くらましかも
※カエル、ケロロとある程度情報交換しました。
※それぞれが違う世界から呼ばれたと気付きました。
※ディアルガ、パルキア、セレビィ等のポケモンや、妖精等の次元や時空を操る存在がキュウビによって捕らえられているかもしれないと考えています。
※この会場にいる獣達は全員人間とかかわりをもつ者だと勘違いしています。
※その間違えた前提を元にキュウビの呪法が人間に対してつかわれるものだと推測しています。
※『世界の民話』に書かれている物語が異世界で実際に起きた出来事なのではと疑っています。ハクオロ@うたわれるもの、ラヴォス@クロノトリガー、野原一家@クレヨンしんちゃん、主人公@ドラゴンクエスト5について書かれていたようです。
- : ひとつ火の粉の雨の中 ◇TPKO6O3QOM 代理投下 [sage] 2011/04/24(日) 23:44:47.27:NhXmoyVT
-
【カエル@クロノトリガー】
【状態】:複数の擦り傷・打撲、疲労(小)、魔力消費(小~中)、びしょ濡れ
【装備】:なんでも切れる剣@サイボーグクロちゃん、マントなし
【所持品】:支給品一式(食料:パンと蛙の腿肉料理)、モンスターボール@ポケットモンスター、しらたま@ポケットモンスター 、銀の不明支給品(0~2、確認済)、石火矢の弾丸と火薬の予備×9@もののけ姫 、
マハラギストーン×3@真・女神転生if、風雲再起の不明支給品(0~2、確認済)、参加者詳細名簿、ペット・ショップの不明支給品(1~3、確認済)、スピーダー@ポケットモンスター×6、ユーノのメモ
【思考】
基本:キュウビに対抗し、殺し合いと呪法を阻止する
1:アマテラスを探す。
2:ニャースの捜索。
3:ギロロにあったら話をつけて誤解を解く。
4:余裕があれば鍾乳洞内を調べる。
※オカリナ、ケロロとある程度情報交換しました。
※異世界から参加者は集められたという説を知りました。
※参加者は同一世界の違う時間軸から集められたと考えています。
※天容の笛@忍ペンまん丸、しらたま@ポケットモンスターとパルキア@ポケットモンスターの存在を知りました。
※ペット・ショップ、ミュウツー、クロコダイン、クロ、チョッパー、ケットシー、因幡てゐ、ラルク、ムックルを危険ないし要警戒と認識しました。
※ログハウスの下にある鍾乳洞は抜け道のようなものと推測しています。
※死者の読み上げが、死亡した順番であることに気付きました。
※アマテラスがオープニングの時点で意思疎通が出来なかったことを知っています。
※制限に気が付きました。
※回復魔法の効果の発現が遅くなっています。しかし、本人は回復魔法の効果がなくなっているかもと思っています。
※アマテラスが死んだことに気づいていません。
【アライグマの父@ぼのぼの】
【状態】:頭部に怪我、尻尾に切創(止血)、疲労(中)、軽度の貧血、激痛による錯乱、アヴ・カムゥ内
【装備】:アヴ・カムゥ@うたわれるもの、アヴ・カムゥ専用の長刀@うたわれるもの、デイバッグ
【所持品】:地図、空飛ぶ靴@DQ5、魔除けの札@大神
【思考】
基本:全員を始末して、仇を取る。
1:??????????
【備考】
※札は少し湿っています。
※アイテムの説明は読んでいません。
※イギーと情報交換をしました。
※空飛ぶ靴は遊園地の入り口前が指定されていました。
※B-1からA-2の遊園地入り口までの間にアライグマの父の支給品が落ちている可能性があります。
※空を飛んだ時、月が地上よりも大きく見える気がしました。
※ボニーの考察は獣の卍参照。
※デイバッグは、コクピット内のアライグマの父が背負っています。
※第二回放送の内容を、アライグマが死んだこと以外聞いていません。
※アヴ・カムゥの左腕がなくなっています。
- : ひとつ火の粉の雨の中 ◇TPKO6O3QOM 代理投下 [sage] 2011/04/24(日) 23:46:53.18:NhXmoyVT
- 以上で代理投下を終了します。
、
にて長すぎる行があるため書き込めなかったので、勝手ながら適当な箇所で改行しました。
書き手氏の意向では無い箇所での改行かと思われますので、wiki収録時に修正して置いてください。
- : ◆TPKO6O3QOM [] 2011/04/24(日) 23:58:37.61:/tOdnhNY
- 代理投下ありがとうございます。
お手数かけてしまい、申し訳ありません - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2011/05/03(火) 08:13:01.57:1m85voIa
- 保守
- : 名無しさん@お腹いっぱい [] 2011/05/08(日) 08:27:35.05:qKCb3xXT
- 保守
- : 名無しさん@お腹いっぱい [] 2011/05/19(木) 21:19:52.24:COJRV4Eu
- 保守
- : 名無しさん@お腹いっぱい [] 2011/05/23(月) 22:48:07.93:mId2lqnw
- 保守
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2011/05/26(木) 20:49:27.01:aCenevy6
- ザフィーラの項目、乙です
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2011/06/04(土) 09:25:16.43:uqMu/xOE
- 保守
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2011/06/27(月) 12:22:24.42:lJndkKJR
- 不明支給品ってまだかなり残ってるんだね。カエルが支給品次第で相当強化されそうだ。
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2011/07/05(火) 21:59:13.76:yLDtksTy
-
ttp://0w0.tv/3VZt
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2011/08/02(火) 17:30:35.82:ZPx/WUZs
- 保守
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2011/09/02(金) 12:56:06.72:ziHiJAfA
- 保守する
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2011/10/31(月) 09:32:44.38:VIZDLTKr
- 保守
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2011/11/17(木) 00:07:48.09:NjuVUqOp
- 新作まだかなあ
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2011/12/15(木) 21:37:56.23:sOjdqKA4
- WIKIの本スレリンク変更しといたよー!
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2012/02/18(土) 09:48:31.06:dL/V2fr8
- 予約期間って今でものでいいんだよね?
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2012/02/18(土) 12:19:11.58:s4aFRtN9
- 個人的な意見だけど、企画自体をやり直した方がいいような気がする。
一日目で残り16匹はきついかと。このまま完結出来るならそれに越した事は無いけど、停滞してる以上やり直しも考えた方がいいかな、と - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2012/02/18(土) 12:56:47.22:NGA79XCP
-
大丈夫。ゲリラも可だよ。
やり直すってのは、参加者自体はそのまんまでってこと?
初期から携わってた身から言わせてもらうと、それは無意味だと思うよ。
人なんて最初からほとんどいなかったんだから。
新規参加者で舞台も全部ひっくるめてやり直しってのなら、リスタートなんて言わず、
新ロワとして始めた方がずっといい。
それも俺ロワみたいな形態のが、テーマも参加者も統一出来ていいと思うよ。 - : 284 [sage] 2012/02/18(土) 13:33:02.79:dL/V2fr8
-
氏と同意見ですかね。
停滞は確かですが、ここはここで残して別途で新しい企画を立ち上げるという形の方が、色々と都合は良さそうに思えます。
やり直し(リスタートの意味だと思いますが)をしまうとなると、ここまで書かれた作品が全て無かった事になるわけで。
WIKIは残るとしても、未完を確定させてしまう事になりますし、それはちょっと勿体無いかなあと思うので。
返答どうもです。 - : 285 [sage] 2012/02/18(土) 14:01:38.42:s4aFRtN9
-
ご意見ありがとうございます。
>>ここまで書かれた作品が全て無かった事に
確かにそうですね。これまでの書き手氏の努力を考えると、リスタートというのは少し浅はかでした。私としてもここのSSは質が高いものが多いのでこのまま続けていきたいとは思うのですが…
>>新ロワとして始めた方がずっといい。
現在テストしたらばで議論中のギャルゲロワ2ndの様に投票段階からの復活orやり直しということでしょうか?
いずれにしても新ロワとして再開した方が良いかどうか皆様のご返答をいただきたいと思います。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2012/02/18(土) 18:21:11.20:NGA79XCP
-
もし投下をして頂けるなら、これ以上嬉しいことはないですよ。
一人だけで投下って状況に気持ちが萎えてしまっていることが大きいですから。
だけど、新ロワで始めるというのであれば、競合するって訳じゃあございませんし(人いないし)、
止める気はありませんよ。
ただ、パロロワ系掲示板で呼びかけるより、モフモフ系好きのコミュニティで提案する方が
内容も参加作品も意に沿ったものになると思います。pixivとかの繋がりとかで。
285氏の好みによるものではありますけどね。 - : 287 [sage] 2012/02/18(土) 22:27:30.85:dL/V2fr8
-
上での書き込みと同じ様な内容になってしまいますが、
立ち上げるのは、こことは無関係の新ロワ、と割り切って考えた方がよろしいかと思います。
その方法では、ここの停滞を解決出来るわけではありませんが、それはリスタートでも然程変わらないと思いますし。
であれば、リスタートよりは新ロワを立ち上げるという形の方が、ローリスクハイリターンかと。 - : 285 [sage] 2012/02/19(日) 16:49:00.89:1T+Em+y2
- そうですね…やはり新ロワを立ち上げるというのは時期尚早だったような気がしまします。
リスタートというのもこのロワを停滞させたままにしたくないと自分なりに考えた打開策ですので。
現状では完結出来るかどうか分かりませんが、出来るところまで投下していきたいというのが私なりの結論です。
先走ってしまい申し訳ありませんでした。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2012/02/19(日) 17:52:05.60:YhZNdW6Y
-
了解ですー。
ご参加のほど、鬼瓦のごとく堅ぁくお待ちしております。
こちらも書いていくつもりはありますので。 - : ◆ZFT/mmE33. [sage] 2012/04/26(木) 22:48:28.48:pJyc8Otd
- ゲリラ投下します。
- : 未完成の自画像 ◆ZFT/mmE33. [sage] 2012/04/26(木) 22:49:29.76:pJyc8Otd
- 階段側から差し込む非常灯の僅かな灯りが、今の地下室内を照らす唯一の光源だった。
壁一面。天井一面。室内は床を除き、辺り一面に満遍なく杭が突き刺さっていた。
天井に備え付けられていた筈の蛍光灯は、全てが割れ落ちてしまっている。それも杭が原因なのは一目瞭然だ。
そんな荒れ果てた室内の中で、ラルクはゆっくりと首を巡らせた。
この部屋の出入り口は、二つ。
階段側の入り口の扉は、変形して床に投げ出されていた。その様はこの屋敷の玄関の扉と同様。ラルクが追跡していた犬に破られたのだろうか。
奥側の扉は室外へと弾き飛ばされていたが、こちらは天井や壁と同じく杭により破壊された痕跡が見られた。
そう言えば、あの犬も杭にやられたようだ。それは、犬の側の壁に突き刺さっていた杭に肉片の一部が付着していた事から窺える。
床に撒き散らかされている蛍光灯の破片を踏み砕きながら、ラルクはぱっくんトカゲの仲間らしき者の死骸まで歩を進めた。
状態を確認すれば、この獣人は身体に幾らかの裂傷があるものの、致命傷は喉元の傷だと一目で分かる。
推察するに、まずこの獣人がある程度の抵抗の末に犬に咬み殺され、次に襲われたペンギンが杭を操り犬を始末した、といったところか。
あの振動は、部屋中に杭が突き刺さった際の衝撃という訳だ。
側に落ちているバイオリンを拾い上げ、ラルクはぱっくんトカゲに抱きかかえられているペンギンを観察するように伺い見る。
杭を操る。というよりは、ジンの力、或いはドリアードの力。どちらかの属性の魔法で杭を吹き飛ばしたと考える方が妥当か。
なるほど、これ程の物量を纏めて吹き飛ばせる魔力を持つのだとしたら、確かに侮れない存在だ。使い方次第では相当強力な戦力になりそうだ。
しかしこのペンギンは、ラルクが見つけた時には気を失っていた。犬に負わされたと思える程の外傷はどこにも見られなかったのにも関わらず、だ。
理由として考えられるのは――――力の使い過ぎというセンが濃厚だろうか。
もしそうだとすればペンギンは、力の加減も出来ない未熟者となる。更に言えば、仲間の危機に何の手助けもしなかった臆病者だ。
つまり現時点ではこの子供は、強力な戦力にも成り得るかもしれないが、足手纏いとなる可能性の方が遥かに高い、という事。ならば、生かすべきか。殺すべきか――――。
警戒した表情でこちらを睨むぱっくんトカゲと、目が合った。
(……とりあえず、保留にするか)
無難な結論を出し、ラルクは奥の出口に視線を向けた。
流石に階段からの薄明かりではそちらまでは殆ど届かず、奥は暗闇に包まれている。
狼系の獣人で夜目がそれなりに効くラルクの眼を持ってしても見通す事は出来ない。それ程の漆黒の闇だ。
出口の前まで身体を運ぶと、空気の流れを全身に感じた。
犬がこの地下室までの扉を破壊した為、上階からの空気が階段を通って地下室内に流れ込み、この出口から抜けているのだろう。
空気の通り道となっている。それはつまり、この闇の先が外に通じている事の証明。
ラルクは闇に一歩、足を踏み入れた。
と、同時に、幾つもの小さな炎が周囲に灯り、辺りの様相が鮮明に浮かび上がった。
壁に設置されていた松明が点灯したのだ。人間が入り込んだ際に反応する仕掛けという事か。
そこは、洞穴のようだった。とは言え、大自然の創り上げた天然ものではなく、人の手が加えられた形跡がある。
洞穴の内部は先の様子が窺い知れない程に、広く、長い。
非常事態に備えた抜け道として作られたのだとすれば、屋敷の主は、どうやら敵の多い人物のようだ。
この先が何処に通じているのかは興味を惹かれるが、これも今は保留で良い。
地下室内から、パラパラと破片が落ちてくる音が耳に届いた。
身体を翻し、ラルクは室内に戻る。それに合わせて、洞穴の松明は自動的に消灯した。
灯りに慣れた眼が闇に順応するまで、数瞬。やがて闇の中に陰が浮かび上がると、ラルクは天井を見上げた。
視認までは出来ないが、再び、破片が舞い落ちる音が鳴る。
杭だらけの天井。ともすれば、ここは崩れ落ちる危険性もある。
この場で何が起こったのかは大体の推測が出来た。これ以上の長居は、無用だ。
未だに睨みつけてくるぱっくんトカゲに向き直し、ラルクは口を開いた。
「お前には幾つか聞きたい事がある」
「……俺の方もだ。お前、一体――――」
「話は上に戻ってからだ。崩落で奈落に逆戻りなどという、くだらん死に方は御免だからな」
言葉を遮り移動を促すが、ぱっくんトカゲは動こうとしない。
フン、と一つ鼻を鳴らし、ラルクは先に階段へと戻る。
後ろから、ぱっくんトカゲのついて来る気配が漸く聞こえた。 - : 未完成の自画像 ◆ZFT/mmE33. [sage] 2012/04/26(木) 22:50:45.75:pJyc8Otd
- ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
通り雨であって欲しい。
ムックルのその切実な願いも虚しく、雨脚は時間と共に強くなる一方だった。
北から吹く強風に乗った、横殴りの大雨は、駆ける躯体を激しく打ちつけ続けていた。
幾度と無く立ち止まり、水滴を飛ばそうと身体を震わせるものの、この暴風雨の中でそれは一時凌ぎにもならない。
足を動かし始めればすぐに身体は重くなった。
限界まで雨水を吸った白毛が肌にへばり付いた。水の重みが全身にのしかかり、体力の消耗が激しさを増していった。
濡れた身体に吹きつける風が、体温を奪い続けた。走っても走っても、身体は温まらなかった。
こんなの、つまらない。
たまらなく不快な感触が重なる中で、ムックルはとにかく走った。雨宿りの出来る場所を求めて走り続けた。
そうして彼が足を止めたのが、切り立った崖の下だった。
高くそびえ立つ崖は北からの雨風を遮ってくれる。細かな雨粒はともかく、豪雨を凌ぐならばうってつけの場所だ。
ポタポタと身体中から垂れ落ちる水滴を、ムックルはもう一度身を震わせて辺りに飛ばす。
とりあえずこの崖下ならば、風向きが変わらぬ限りは再び濡れ鼠に戻る心配はない。しばらくはこの辺りで身を休めていても良いかもしれない。
ムックルはその場にしゃがみ込み、後ろ脚をピンと伸ばすと、丹念にそれを舐め始めた。
みすぼらしく変わり果ててしまった外見を整えようと、ザリザリと音を立てながら顔と舌を動かしていく。
乱れた毛並みをある程度まで繕い終えれば、次の部位だ。
大腿の内側。外側。前脚。脇腹。お腹。お尻や尻尾も忘れない。しばらくの間一心不乱に舐め回し、とにかく毛並みを整える。
そして全身を気の済むまで取り繕ったところで、消耗した体力が胃袋に訴えかけてきた。
最後に食べたのは小さな獣の半身だけだった事を思い出す。育ち盛りの小虎の胃がそれで満足出来る筈もない。
立ち上がり、辺りの様子を窺うムックルだったが、しかし、何の気配も捉えられない。
見える範囲に獲物の姿は無く、物音も臭いも完全に雨風に掻き消されてしまっている。
已む無く、ムックルは獲物を求めてその場から動き始めた。もう一度雨の中に入る気は起こらない故、移動するのは崖沿いだ。
雨に打たれぬよう、崖下をまっすぐと進む事しばし。やがてムックルが見つけたのは、崖に開いた一つの横穴だった。
獲物がいるかもしれない。中に向けて通常の虎の倍以上もある鼻を動かせば、極僅かながらも嗅ぎ取れたのは血の臭い。
ご飯の臭いだ――――本能に導かれるままに洞窟内へと入り込む。
と、同時に、幾つもの小さな炎が周囲に灯り、辺りの様相が鮮明に浮かび上がった。
唐突に点灯した炎に驚きの色を浮かべるも、ムックルはすぐに気を取り直す。
驚いている場合ではない。今優先すべきは獲物の方だ。
火の臭いは嫌いだが、しかし、空腹と、雨に打たれる程ではない。
獲物の探しにくい土砂降りの外へ出るよりは、獲物の臭いのする火の側の方がまだマシだ。
それにこの火の温もりは、彼の冷えた身体にはむしろ心地良さすら覚えさせてくれていた。湿り臭さが、薄まっていく。
一歩進むに連れ、仄かにだが濃さを増す血の臭いに、胃袋が刺激される。
鼻をひくつかせ、ムックルは洞窟の奥へ奥へと入り込んでいった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ - : 未完成の自画像 ◆ZFT/mmE33. [sage] 2012/04/26(木) 22:53:00.33:pJyc8Otd
- 何かの前兆か。それとも、既に何かが起きてしまっているのかもしれない。
エントランスホールの中央で二つの荷物――――自分とクズリの物だ――――を広げ、一つにまとめる作業の途中。
無意識の内に幾度となく、窓の外を気にして顔を向けてしまうイカルゴの目に映る景色は、何度見直してもやはり薄闇だった。
前触れは何も無かった。時間帯としてはまだ昼間。それなのに、辺りは突然に、陽が沈んでしまったかのような暗さに包まれた。
天候が荒れ始めた訳でも、暗雲が湧き出した訳でもない。ホールの窓ガラスを喧しく叩く強風と雨脚は、変化の前後でもその勢いを増してはいない。
ならば、何が起きた。この殺し合いの舞台の中で、何が変わった。
キュウビはこの殺し合いを呪法と言っていた。
イカルゴにその手の知識は無いが、言葉のイメージは何となくだが想像出来る。例えば一回目の放送時にこの空の変化も呪法に因るものだとしたら、キュウビの目的は順調に段階を進めているという事になるのだろう。
では、このまま呪法とやらが完成してしまえば、一体何が起こってしまうのか――――。
不安を掻き立てる演出としては、この暗闇は最適だった。まるで、空を包む闇が胸中に侵食してきたかのように、イカルゴの中には漠然とした感情が広がっていたが、それを拭い落とす術は無く。
イカルゴはトカゲに覆わせた蓑の中で諦めの息を吐き出すと、窓のすぐ側で外の様子を眺めている狼男に目を移した。
ラルク。腕を組んだ体勢で壁にもたれ掛かっている狼男は、そう名乗った。オーボウから聞いていた通りの名だ。
外の変化も気にはなるが、当座の問題は寧ろこちらの狼男の方だ。イカルゴは今、この狼男の扱いをどうするべきか、決めあぐねているのだ。
地下室から上がってきた後の二人の情報交換は、互いに対する警戒心から来る緊張感とは裏腹に終始淡々と行われた。
ラルクはイカルゴの質問には全て澱みなく答えた。
殺し合いに乗っているのかと問えば、人を選んでいるだけだと返し。
これまでに出会ったに参加者を聞けば、一人一人思い返すように名前を紡ぎ。
彼自身にとっては不利益にしかならない行動――――オーボウやウマゴンを殺した事も、躊躇わずに答えた。イカルゴを彼らの仲間だと確認した上でだ。
それらの態度には、とても嘘偽りがあるとは思えなかった。
もしもラルクにイカルゴを騙す気があるのならば、最低限オーボウ達を殺した事は伏せる筈だろう。
先程まん丸を殺害しようとした時もそうだ。強行しようと思えば、出来た筈なのだ。
それらをしなかったという事は、ラルクは、単純に殺し合いに乗っている訳ではない、との理屈にはなる。
少なくとも、相手の裏をかくような駆け引きや騙し合い等の頭脳戦で戦うタイプには見えない。言ってみればゴンやナックル達と近いだろうか。あの二人と同じく、不器用で、愚直な性格。
だとすると、彼も最終的には打倒キュウビを目指している一人だ。ザフィーラの知り合いであるユーノという人物とは共闘もしたというのだから、協力は出来る。その筈なのだが――――。
後ろで横たわっているまん丸は、あれから意識が戻らないままだ。
ラルクが不器用で愚直な性格だというのなら。足手纏いは切り捨てる。その言葉も本意からのものなのだろう。
イカルゴもこれまでは、情などまず持ち合わせていないキメラアント達と仲間として行動を共にしてきた。
最優先にすべきは自分の命であり、自分や他の誰かの身を危険に晒す弱者や足手纏いは必要ない、との理屈は、決して彼の好むところではないが、身に沁みて理解している。
いや、別にそれはキメラアントに限った事では無い。意味合いこそ違えど、状況によっては人間達でも同じような選択をする。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2012/04/26(木) 22:53:04.61:FLxAt/3t
- sien
- : 未完成の自画像 ◆ZFT/mmE33. [sage] 2012/04/26(木) 22:54:07.22:pJyc8Otd
- 例えば、キルア達王討伐隊でもそう。
任務の遂行中で誰かが動けなくなる程の怪我を負ったとしたら。
オーラを使い果たして立ち上がる事も出来なくなったら。
仲間達だけでなく、催眠をかけられている人民の行列に何かしらの危険が及びかけたとしたら。
見捨てろと明言した者は誰一人いなかったが、個々の役割を忠実に守る事は何度も念を押され、約束させられた。
つまりは、誰かを助ける事で己の役割を果たせなくなってしまうのならば。誰かが足手纏いと成り果ててしまったのならば。迷わず見捨てろという事だ。
無論それは王討伐=人類の未来という大義の為の話であり、訳も分からず殺し合いの場に放り込まれた者に適用出来る理屈では無いのかもしれないが、大を生かす為に小を殺すという点ではあちらもこちらも状況は然程変わらない。
終わりは唐突に、理不尽に訪れるものだという事は、NGLでキメラアントの大群に襲われた時に思い知らされた。力の無い弱者はただ死ぬしか無いという事も。
生物の本能としても、キュウビ討伐の戦いとしても、自然界のルールとしても、大局を見れば他者を切り捨てる事を否定しきるだけの理由は有る筈がないのだ。
故に、イカルゴにはラルクの言い分は否定出来ない。説得の自信も、交渉の材料も無い。
だが――――イカルゴのプライドと信念がそれを認めたくないのもまた事実。理屈と感情の板挟み、物語ではありふれた話だ。
せめてラルクが殺し合いに乗っていてくれていたのならば、例え殺される事になろうとも全力で戦えるのだが、生憎とそうではない。
結局のところ、協力か。それとも敵対か。どちらを選べば良いのか分からずに今に至る。
(キルアならこんな時どうすんだろーな……)
葛藤の中、イカルゴは作業の手を止めていた事に気付き、億劫そうにそれを再開した――――その時だった。
ラルクが弾かれたように振り返る気配が目の端に入った。
反射的にイカルゴが動いてしまうその直前――――突然に現れた何者かの気配を後方に感じた。
敵襲。
気付いた瞬間、すかさずイカルゴは後ろのまん丸に向け、トカゲの身体を操っていた。
振り返りがてら、侵入者の姿を視認する。そいつは、これまで見た事も無い程に巨大な白虎だった。
位置から察するに、あの地下への通路から飛び出してきたらしい。抜け道から入り込んできたか。迂闊さを呪うも、あの道を塞ぐ手立ても監視する人手も無かったのも事実。ミスと断ずる事は出来ないし、引きずっている場合ではない。
白虎は恐ろしい早さでイカルゴに迫っていた。
まん丸までの距離はたったの数歩。そこまでは確実に自分が早い。
問題は、まん丸を抱え上げてから、次のリアクションが取れるかどうか。それもギリギリだが、自分の方が早い――――。
その計算は、白虎の次の動作に完全に狂わされた。白虎は後ろ脚で一際強く床を蹴り、地面を滑るかのように躍りかかって来たのだ。
咄嗟にイカルゴはまん丸を抱え上げる事を中断し、まん丸に舌を伸ばしながら横に跳んだ。
メレオロン並の長く器用な舌は、脚力同様にこのトカゲの長所。
長々と伸ばされた舌が小柄なペンギンを絡め取り、引き戻す。それは僅かな差ではあったが、白虎が左前肢を叩きつけるよりも先を取った。
だが、白虎は着地すると同時に軽やかに身を捻り、巨体に似合わぬ機敏な動作でまっすぐにイカルゴを追尾する。
その、顔面――――イカルゴは横に跳びながら、既にトカゲの右腕から突き出した照準を敵に合わせ、己の頭を膨らませていた。
(蚤弾(フリーダム)!)
育て上げた蚤が空気圧に押され、銃口から勢い良く射出された。
この至近距離。そして、巨大であろうが所詮は虎だ。いくら俊敏であろうとも、彼の蚤弾より速くは動けない。
エントランスホール内に硬い岩盤にでもぶち当たったかのような激突音が響いた。
蚤弾は狙い通り、白虎の眉間に着弾した。仰け反りを見せ、巨体はその場に崩れ落ちる――――筈だったのだが。
「っ!?」
白虎の顔は確かに弾かれはしたが、それはほんの僅かな時間の事。瞳に怒りを宿し、すぐに体勢を立て直して三度目の突進を見せた。
イカルゴの顔が、焦りで歪んだ。
蚤弾には、マガジンは無い。一発撃つ毎にリロードを繰り返さなくてならないのだ。その暇が、今は無い。
離した距離は、瞬き一つの間で呆気無く詰められた。
次の瞬間に奮われた巨大な豪腕を、イカルゴの目が捉える事は無かった。
トカゲの身体は身動き一つ取る事も無く、叩き潰されていた――――。 - : 未完成の自画像 ◆ZFT/mmE33. [sage] 2012/04/26(木) 22:55:11.60:pJyc8Otd
- ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
結局何の役にも立たなかったか。
ぱっくんトカゲの力を試す意味合いも含めて、事の顛末を冷えた目で眺めていたラルクがその感想を抱くのと、ぱっくんトカゲの陰からタコのような軟体動物が飛び出したのは、ほぼ同時だった。
数瞬して、ラルクは気付く。あれがオーボウの言っていた、殺した筈のヨッシーの「動いた理由」なのだと。
教会で言葉を交わした時とはまるで別人と変わっていたヨッシーは、自身に都合の悪い質問になると答えを濁すだけだった。
何故生きているのか。その問いにもヨッシーは沈黙を返したのみ。
その為、動いている訳については幾つかの推測は立てたものの確信までは至らなかったが、これで得心がいった。単純といえば単純な話だ。あのタコが死体に取り憑いて操っていたのだ。
魔術の類での遠隔操作ではなく、直接死体に取り憑いて操る能力を持つタコ。――――となれば、多少話は変わってくる。
タコはペンギンの子供を頭の上に掲げ、襲撃者の白虎から距離を取ろうと必死に数本の触腕を足替わりに動かしていた。
ぱっくんトカゲの身体を一撃で肉塊へと戻した白虎もまたその存在に気付き、不可思議そうな顔でトカゲとタコを見比べていた。が、すぐに一層目を輝かせてタコへの追撃に移った。
先程触腕の一本から撃ち出した技――雪原で頭部を撃ち抜いたのはあれか――も白虎には効いた様子は見られない。あのペンギンを囮にでも使わぬ限り、今度こそタコは逃げ切れはしないだろう。
ラルクの予想通り、間もなくタコは壁際に追い詰められた。それは、ラルクにとってはチャンスでもある。
逃げ場の無いタコに、白虎は容赦無く爪を振るわんとする。
極力敵意を殺し、白虎の視界に入らぬよう位置取りを意識していたラルクは、そのギリギリのタイミングを見計らい、身体を瞬発させていた。
犬の荷物に入っていた二つのまんまるドロップのおかげで、身体は今までよりも大分軽い。右手の中の短剣をくるりと回し、逆手に構える。
白虎がこちらの気配に気付いたが、遅い。タコにその爪が届くよりも早く。白虎が回避するよりも早く。ラルクは白虎の背中に飛び乗っていた。
勢いのついたラルクの全体重がぶつかり流石の巨体もよろめくが、白虎は踏ん張りを効かせ、何とか倒れまいとする。
その、躯体の硬直した一瞬の隙。タコが触腕から何かを撃ち出し――恐らくは空気――上方へと飛ぶのを尻目に、ラルクは構えたナイフを躊躇わずに襟首に振り下ろした。
だがその一振りが奏でたものは、ラルクの望んだ音ではなかった。
響いたのは、まるで石畳にナイフを突き立てたかのような低く鈍い音。掌に、強烈な痺れが走った。
刃は肉を貫いてはいない。この白虎、単純にタフだというだけではない。体毛の下に何か鎧でも仕込んでいるのか、掠り傷一つ負わせる事すら叶わなかった。
(まさかこいつもゴーレムじゃあるまいな!?)
しかし、虎型のゴーレムなど聞いた事も無い。尤も、それを言うならば猫も同じだが。
ラルクの下で、白虎が大きく躯体を揺るがせた。振り落とす気だ。
「チッ!」
刃が通らぬ以上、乗り続ける事は無意味。完全にバランスを崩されるより先に、ラルクは白虎から飛び退いた。
数メートル程離れた場所に着地するラルクへとその躯体を向けた白虎は、歪めた口元から銀色の牙を覗かせ、鋭い眼光をぶつけてきた。今ので完全に標的を変更したようだ。
元の標的は――白虎の姿を常に意識しつつ素早く辺りに視線を回すと――天井だ。
タコはペンギンを抱えたまま、その吸盤で天井に張り付いていた。
ペンギンも漸く目覚めたらしく、タコと何やら言葉をかわしているが、どちらも手助けに来る気配は無い。
ペンギンが未だ身体を動かす事までは出来ないのか。或いは、今度はこちらが囮に使われる番か。 - : 未完成の自画像 ◆ZFT/mmE33. [sage] 2012/04/26(木) 22:55:56.44:pJyc8Otd
- (……まあ、どちらでも良い)
こうなれば、実力の分からぬ者に下手に動かれるよりは、一人の方が戦い易い。少なくとも、敵の行動が読み易くなるのは確かだ。
この白虎が、ラルクだけに向かって来ると言うならば――――。
今にも飛びかからんとする獣の眼光を、ラルクは真正面から受け止めた。
獣の一挙一動、見逃すまいと、集中力を高めていく。
表から吹き込む暴風の鳴き声も、震え止まぬ窓の音も、睨み合いの中から存在を消して行く。
残るものは、対峙する獣の姿と唸り声。ただ、それだけ。
先に動きを見せたのは白虎の方だった。
瞬間で身を伏せるその構えは、猫科動物の狩りの予備動作。
白虎の構えに合わせて、ラルクは――――身体を、翻していた。完全に白虎に背中を向け、走り出したのだ。
見据えるは、ドアが壊れっぱなしの玄関口。
白虎が反射的に駆け出したのが、後ろを振り向かずとも分かった。
向かい風の強風に煽られ、脚が鈍る。その間にも白虎が距離を詰めてくる。二足歩行と四足獣。空気抵抗の差が、如実に現れる。
それでもラルクは一切後ろを見る事無く、ただ外へ向かって身体を運んだ。
玄関口を抜け、廂の下に出れば、降り注ぐ大雨がラルクの身体を撃ち付ける。白虎の気配はすぐ側にまで迫っていた。
次の一歩で、追いつかれる。
そう確信を抱いていながら、ラルクはその一歩を踏み出した。
咆哮と共に、背後の殺気が増した。
ラルクの身体は確実に白虎の射程内に在った。そして、白い前脚が一筋の閃光を作った。
その一閃は、確かにラルクの紅い鎧ごと、背中を切り裂いていた。
ぱっくんトカゲ同様、狼男の身体も叩き潰した――――恐らく白虎はそう思った筈だ。
だが、その思考はすぐに驚愕へと擦り変わっただろう。それは、白虎の表情にありありと浮かび上がっていた。
白虎が確かに捉えた筈のラルクの身体は、今もそこにあった。白虎と重なって、今もその場所に存在していた。
すり抜ける肉体。その謎を、白虎が解き明かす事は無い。いや、身を持って解き明かしたとも言えるのかもしれないが。
直後、豪邸の前に爆音が鳴り響いた。
白虎と重なるラルクの身体が唐突に火柱と成り変わり、その巨体を高々と打ち上げたのだ。
地閃殺――――創り出した分身より立ち昇る爆発で敵を攻撃する、ラルク独自の奥義。
屋敷の玄関前に大量の砂埃が一瞬にして広がった。その中から、白虎の巨体が数メートル上空に舞い上がった。
とは言え、ラルクもこれで終わるとは思っていない。
白虎の身体能力は尋常では無い。ラルクが一撃で失神させられた程の技に耐え、かつ、刃を通さぬ硬さを誇る。これだけで死ぬとは到底思えない。
――――地閃殺は、前奏曲に過ぎない。 - : 未完成の自画像 ◆ZFT/mmE33. [sage] 2012/04/26(木) 22:56:27.61:pJyc8Otd
- 分身の爆発が上がった時、少しばかり離れた位置で、既にラルクは次の行動に移っていた。
口に入れたのは、馬の仔の持っていた支給品。数秒の間だけ、身に着けているもの全てを含めて巨大化出来るという不思議なきのこ。
その効力はすぐに現れた。
ラルクの身体は膨張する。舞い上がった白虎の巨体を追い抜き、屋敷の高さを追い抜き、瞬間的に、そこには20m程の一人の巨人が生まれた。
宙に浮いている白虎は、自らを覆う巨大な影に気付いたのか、それとも気付けていないのか。
どちらにしても、白虎は自由に動ける状況下にはいない。取れる選択肢は、何もない。
豪雨すら霧雨程度に感じられる肉体で、ラルクは右腕を無造作に振るった。
こうなれば子猫程度にしか見えない白虎の躯体を掴むと、思い切り握りしめながら、腕を掲げ上げる。
白虎の身体中の骨がへし折れる感触が伝わった。その骨が凶器と代わり、内側から全身を突き破る。掌の中に、鮮血が溢れた。
そして――――その手の位置は、地上から30m近くとなるだろうか。ラルクは、渾身の力を込めて、右腕を振り下ろした。
腕の勢いに押された空気が屋敷の窓という窓を叩き、震わせる中。地面から、バン、と案外鈍い音が響き、赤い染みが広がり始めた。ある意味では美しくもあった白い毛並みも、今は汚い朱に染まっていた。
念の為に踏み潰すか。
そう思うも、始まりが瞬間的ならば、終わりもまた同じに。きのこの効力が切れ、ラルクの身体は元に戻る。
僅かに逡巡するが、ラルクはゆっくりと広がり続ける血溜まりに歩み寄った。その中心にあるものは、身動き一つ取らない。おとなしく絶命してくれたようだ。
これで、シエラへの危険はまた一つ消えた――――。
屋敷に引き返し、エントランスホールに入ったラルクを出迎えたのは、タコとペンギンだった。
タコは、やはり警戒した様子で。ペンギンは、びくついてはいるものの、何かを言いたげな様子で。 - : 未完成の自画像 ◆ZFT/mmE33. [sage] 2012/04/26(木) 22:56:51.42:pJyc8Otd
- ともすれば倒れ込んでしまいそうな程に覚束ない足取りで、ペンギンの子はこちらへと向かってきた。
それは、元々の身体能力なのか。それとも疲労が抜けていない故か。
「あ、あの、狼さんが……助けてくれた、んですよね?」
辿々しく紡がれる言葉は、頭の回転の問題か。それともやはり疲労のせいか。
どちらも、どうとでも取れる。ならば――――手っ取り早く、済ませるか。
「助けてくれて、ありがとうござ――――」
それ以上、ペンギンが礼を続ける事は、無かった。
彼からすれば、唐突に心臓に生えたナイフ。
ラルクの手は、投擲を終えていた。
「バカなっ!? お前、何でだ!? まだ足手纏いだって決まったわけじゃねーだろ!?」
「……いや、今決まった。あの程度の攻撃も避けられないなら、こいつは足手纏いだ。それに――――」
崩れ落ちるペンギンに唖然とした目を向けながら、タコが非難めいた声を上げるが、ラルクは冷めた答えを返した。
そう。ラルクは力を試しただけだ。力が足りなければ、死ぬ。それだけの事。
この120年もの間、ティアマットの計画に乗り、使える人間かどうかを試す為に全くの無関係の者を奈落へ落とし続けてきたのだ。ナイフを投げたのは、それと何ら変わらない。
「――――死んだところで問題あるまい? こいつに物凄い力があると言うのなら、お前が使えば良い。操れるんだろう?」
ペンギンの死体からナイフを引き抜くと、ラルクは先刻までと同じ位置に戻り、腕を組んで壁にもたれかかった。
見上げる空は、今も暗く澱んでいる。落ちる雨は、未だ止みそうにない。
「死体は痛みも感じない。疲れもしない。俺と違ってな」
自嘲気味に、ラルクは口元を吊り上げた。
タコは、今度も何も答えなかった。 - : 未完成の自画像 ◆ZFT/mmE33. [sage] 2012/04/26(木) 22:57:15.31:pJyc8Otd
- 【G-4/豪邸/一日目/午後】
【ラルク@聖剣伝説Legend of Mana】
【状態】極軽度の凍傷、左腕に銃創(極小)
【装備】スティンガー@魔法少女リリカルなのはシリーズ×1、手榴弾(3/3)@ケロロ軍曹、ユーノのメモ(ギロロたちが駅に貼っているものと同種)
【道具】支給品一式×4(ラルク、ウマゴン、オーボウ、パスカルの分。その内オーボウの分には食料、水は無し)、不明支給品0~3(確認、武器は無し) 、ハーメルのバイオリン@ハーメルンのバイオリン弾き、ラスタキャンディ@真女神転生if...
【思考】
基本:キュウビの打倒に対し、シエラの障害になる者は殺す。役に立ちそうな相手なら、場合によっては多少協力する。
0:シエラが無事であってほしい
1:武器が欲しい。出来れば斧
2:シエラとは戦いたくない。そうなる可能性があるので、会うのも避けたい
※参戦時期はドラグーン編の「群青の守護神」開始より後、「真紅なる竜帝」より前です。
※ここが自分の世界(ファ・ディール)ではないと気付いていません。
※また、死ねば奈落に落ち、自分は元あった状態に戻るだけだと考えています。
※伝説の剣@ハーメルン が武器として使い物にならないことを知りました。
【イカルゴ@HUNTER×HUNTER】
【状態】健康、葛藤(?)
【装備】蚤弾(フリーダム)×?、キルアのヨーヨー@HUNTER×HUNTER
【道具】無し
【思考】
基本:殺し合いから脱出、可能ならキュウビ打倒
1:…………
2:豪邸でザフィーラ達の帰りを待つ(?)
【備考】
※原作25巻、宮殿突入直前からの参戦です。
※イカルゴの考察
・イッスンはキュウビの想定外?
・キュウビには異世界の協力者がいる?
・キュウビ側の統制は取れていないかもしれない
&color(red){【ムックル@うたわれるもの 死亡】}
&color(red){【まん丸@忍ペンまん丸 死亡】}
&color(red){【残り 14匹】}
※放送の事も含め、ラルクとイカルゴが本編に書かれている以外にどれだけの情報を共有したかは後続の方に一任します。
※イカルゴの支給品、クズリの支給品、まん丸の支給品は豪邸エントランスホールに置かれています。
・イカルゴの支給品:デイバッグ(支給品一式(食糧なし)×2、幸せの四葉@聖剣伝説Legend of Mana、シュバルツの覆面@機動武勇伝Gガンダム、ハンティングボウ@銀牙
・クズリの支給品:支給品一式、グリードアイランドカード(初心、神眼)@HUNTER×HUNTER、グリードアイランドカード(複製)@HUNTER×HUNTER×3、カベホチ@MOTHER3、ダムダム草@ぼのぼの、打岩@グラップラー刃牙
・まん丸の支給品:支給品一式、チョコビ(残り4箱)@クレヨンしんちゃん
※まん丸の死体には、忍刀@忍ペンまん丸 、折り紙×10枚@忍ペンまん丸、サトルさん@忍ペンまん丸 が残されています。
※ムックルの死体には、鋼鉄の牙@ドラゴンクエスト5 が残されています。
※豪邸地下室にあるクズリとパスカルの死体がムックルに食われているかどうかは不明とします。
※D-6の洞窟は豪邸の地下室の抜け道と繋がっています。この地下通路に他の場所への道があるかどうかは後続の方に一任します。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2012/04/26(木) 23:00:08.48:FLxAt/3t
- 紫煙
- : ◆ZFT/mmE33. [sage] 2012/04/26(木) 23:00:37.06:pJyc8Otd
- 以上で投下終了です。
矛盾点、問題点等ありましたらご指摘下さい。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2012/04/27(金) 17:21:19.55:8vammYpx
- 投下乙
ここでまん丸落ちたか~
相変わらずシスコン狼は駄目な子だ・・・ - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2012/04/27(金) 23:10:46.09:bQpiAJ/L
- 投下乙でした。
尽く強キャラキラーですな、シスコンは。
ムックルまでも……。
イカルゴはどうするんだろう。 - : ◆ZFT/mmE33. [sage] 2012/04/28(土) 10:20:20.00:Tfd65Adw
- 感想ありがとうございます。
WIKIへの収録も完了しました。何か抜けがありましたらご指摘願います。 - : 陰の天、宙の風 ◆TPKO6O3QOM [] 2012/08/14(火) 18:50:09.36:qYp1p9xc
- 中嶋陽子は自分の置かれた状況に酷く困惑していた。
もっとも、ケイキ――いや、景麒にこの世界に連れてこられてから困惑しない時などなかったが。
目の前に立つ二人の男性――精悍な面持ちの武人然とした男が雁国王、金髪の小柄な少年が雁国宰輔だという。
一方、自分は囚われてもおらず、それどころか上等な絹の衣装を着せられて彼らと同席している。此処は上空を覆う雲海の上、関弓山の頂にある王宮だ。
そして、何より頭を悩ませているのが――己が慶国の新たな王である、ということだ。
どうしてこうなってしまったのか。自分にも解りかねていた。
楽俊を見捨てて、だけれども呵責に耐えかねて午寮の街へと戻った。しかし、楽俊の姿はどこにもなかった。
見てきてくれた行商の話から少なくとも楽俊が死んではいないらしいことを知った。それだけで十分だった。楽俊は、家に帰ったのだろう。自分は楽俊を見捨てたのだ。それどころか、戻って殺そうかとすら考えたのだ。
そんな女を、彼が待っている道理はない。
これでいいのだ。ただ、楽俊に心からの礼を一度も告げていないことだけが心残りではあった。
二月をかけて阿岸に辿り着き、そこから雁国の烏号へと渡った。
雁は海客に心易い国だ。三年間だけではあるが、手厚い援助を授けてくれる。その間に身の振り方を考えろということだ。
街で働く内に、芳陵という郷城に壁落人という海客がいると知った。
彼を訪ね、これまでの顛末を話した際、陽子を連れてきたのが慶国の麒麟であると告げられたのだ。加えて、麒麟が頭を下げるのは自らの国王だけであると。
呑み込めない陽子を他所に、壁が宰輔の許に手紙を送り、そして迎えが来た――。
「まだ、信じられないか?」
雁国王・延に話しかけられ、陽子は目を瞬かせた。
「え、ええ。他人事のような気がしています。御伽噺みたいで」
「まあ、無理もないがな。だが、おまえの持つ水禺刀が何よりの証拠だ。この地で言葉が通じることも併せてな」
「――慶の状況は良くない。景麒を捕えて以降、偽王軍の勢いは大きく増した。麦州が落ちるのも時間の問題だな」
少々苛立ったように宰輔――延麒が口を挟んだ。
慶国は先代の王が崩御し、偽王が立っている。しかし、この世界では王を麒麟が選ぶ。王が立たねば、大地は荒れ、妖魔が増え、病が蔓延する。
覆しようのない封建制に縛られ、管理されているのがこの世界の現状だという。
しかし――。
感情が顔に出ていたのだろう。延麒が小さく笑った。
- : 陰の天、宙の風 ◆TPKO6O3QOM [] 2012/08/14(火) 18:51:15.21:qYp1p9xc
-
「陽子が家に帰りたいだけってのは分かる。王になりたいわけでもないってこともな。俺は尚隆と違って、陽子に王を強制するつもりはない」
「だが、戴と芳が瓦解し、柳と巧が怪しい今、せめて慶には立ち直って貰いたいことは俺もこいつも変わらん。これ以上、荒民が流れ込めば、我が国も立ち行かなくなる。そうなれば、荒民に対し、無慈悲な決断をしなくてはならん。俺は俺の国の民を守らねばならんからな」
「だから逃げ道を塞ごうとすんなっての。責任を追う覚悟さえあれば、王は何をしたっていいんだ」
陽子は言葉を発することができなかった。
自分の肩に全国民の命がかかっている。実感は湧かなかった。あまりに大きすぎて、想像が追いつかない。
今までは自分の命の心配だけだった。惜しむのは自分のためであった。しかし、そうではない。
見ず知らずの数多くの命が、己の動向ひとつで失われる。そして、それはそれらの命の贖いなしでは放り出すことすら出来ない。
「ただ、俺の願望を言わせてもらえば、景麒だけは助けてやってほしい。あんな姿はあんまりだ。あいつだけでも、国のために残してやってほしい」
「……そのことは異存ありません」
「今はその返事で充分だ」
延麒が安堵したような笑みを浮かべた。
「一つ、陽子に伝えておくことがある。これは現存する王と麒麟、全員が知っていることだ。この二月の間、蝕が異様とも言える頻度で起こっている」
陽子は眉を潜ませた。蝕は海客が起こす。そう詰られ、幾度も命の危険に見舞われてきた。楽俊によると、順番が逆とのことだが。
蓬莱や崑崙と呼ばれる日本や中国と、この世界が繋がる災害――。
延麒が延の後を続けた。
「本来交じり合わない二つの世界が強制的に重なって引き起こされるのが蝕だ。有り得ないことだから大きな反発を生み、場合によっては大災害になる。蝕には二通りあるんだ。麒麟が故意に起こすものと、自然災害としての偶発的なものだ。
現在、あらゆる場所で蝕が頻発している。王がいない土地は元より、奏や範といった安定した国でもだ。勿論、雁でも。麒麟の仕業じゃない。あまりに多すぎる。同時に三つも起こったことだってある。
そして、流れてくるものも常とは違うものが混じってきている。見たこともない獣や呪具とかな。俺はよく蓬莱に行くから分かるけど、あれは蓬莱や崑崙にあるような代物じゃない。どっちかいえば、こっち寄りのもんだ」
「それは……どういうことなんでしょうか?」
「果たして、常世はこの世界だけではなかった……ということらしいな。この世界、蓬莱や崑崙がある世界、そしてそれ以外の世界があるようだ」
「はあ……」
延を見るが、彼は皮肉気に頬を歪めた。
- : 陰の天、宙の風 ◆TPKO6O3QOM [] 2012/08/14(火) 18:52:28.85:qYp1p9xc
- 「それも多数だ。言ってみれば、この世界と向こう側は"近い"世界だったんだろう。だから時折交った。他は、"遠い"から交わることがなかった。だが今、それらが全て"近く"なっている。だから、交わる回数が増え、蝕が頻発する。
どうもそういうことらしい。このまま放置すれば融合するのか、ぶつかりあって壊れるのか……どちらだろうな」
「知らせてくれたのは向こう側の人間だ。昔の蓬莱っぽい恰好だったけど、多分違う常世だと思う。半獣というか、達磨というか、珍妙な連中も混じっていたし。
この状況に乗じて、どうも妙なことをやってる奴がいるんだとさ。他の世界と組んで、原因究明と事態解決に動いているらしい」
「そちらにも協力するんですか?」
陽子の言葉に、延は首を横に振った。
「することはするが、積極的なものは無理だ。向こうも軍を出してほしかったらしいが、覿面の罪に符合するかもしれない以上、下手には動かせん。連中も落胆してたな。
うちは冬器や騎獣を貸すぐらいだ。漣は、宝重の呉剛環蛇と共に廉麟を渡らせたな。麒麟だけなら、蝕もそこまでの被害は出ない」
「……綱渡りみたいですね」
「偽王討伐も含めてな。ま、こっちはこっちでやらなきゃならないことをやるしかない。陽子、今日はここまでにしよう」
促され、陽子は席を立った。
己のこと、国のこと、王のこと、蝕のこと――考えることが多すぎて、寝られそうにはなかった。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2012/09/15(土) 09:39:10.22:owsWIzBO
- 今期の月報です。
前期と比べると3話分進んでいるように見えますが、
その内の2話は以前に投下された番外編を本編に移しただけですので、実質は+1話です。
話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
動物 106話(+ 1) 14/47 (- 0) 29.8 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2012/11/22(木) 11:26:28.81:z00h5ODl
- 乙~
- : R-0109 ◆eVB8arcato [sage] 2013/01/08(火) 22:40:29.20:SXb9baKz
- 初めまして、そうでない人はお久しぶりです。
現在、投票で決めた各パロロワ企画をラジオして回る「ロワラジオツアー3rd」というものを進行しています。
そこで来る1/14(月)の21:00から、ここを題材にラジオをさせて頂きたいのですが宜しいでしょうか?
ラジオのアドレスと実況スレッドのアドレスは当日にこのスレに貼らせて頂きます。
詳しくは
ttp://www11.atwiki.jp/row/pages/49.html
をご参照ください。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2013/01/09(水) 19:16:23.17:pcWT7iCB
- 待ってます。
- : R-0109 ◆eVB8arcato [sage] 2013/01/14(月) 20:52:14.66:+zc95J66
- ロワラジオツアー3rd 開始の時間が近づいてきました。
実況スレッド:
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5008/1358164245/
ラジオアドレス:
ttp://ustre.am/Oq2M
概要ページ:
ttp://www11.atwiki.jp/row/pages/49.html
よろしくおねがいします - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2013/01/15(火) 01:22:59.16:hlKqDFbG
- お疲れ様でありました!
こちらに書き込みされてたんですなw - : ◆EwVLYtcCbD23 [sage] 2013/06/09(日) 22:36:34.16:EAJg7Nwc
- クロ、ホロ、イギー、ケットシー予約
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2013/06/09(日) 23:35:07.52:6bt2+oWu
- 久しぶりの予約!
期待しております! - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2013/06/10(月) 19:24:10.14:0sqa8Je6
- 予約だー!
ケットシーが乱入だー! - : ◆EwVLYtcCbD23 [sage] 2013/06/12(水) 21:39:50.70:M+usc5S0
- 投下します
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2013/06/12(水) 21:40:45.93:mU8Cfsga
-
- : 彼にしか出来ないぶち抜き ◆EwVLYtcCbD23 [sage] 2013/06/12(水) 21:41:31.22:M+usc5S0
- 「ヒーッ! ホーッ!! こりゃいいや!!」
空を飛ぶという初めての感覚に、猫の機嫌は鰻登り。
今まで地に足を着けて歩くことしか知らなかった彼は、大空の旅を満喫していた。
とはいえ、そこまで自由なものではないのだが。
飛ぶ方向は決まっているし、速度も一定。
自分の思い通りに動かすことは、出来ない。
けれども、初めてというのはやはり気持ちがいいもので。
全身を使って風を切る、ということを思う存分楽しんでいた。
「ふぅ、もーいっかいと行きたいけど、ここは温存しとくべきだよね~」
初めてとは思えない完璧な着地をこなし、上機嫌の猫はあたりを見渡していく。
あたりに広がっているのは、瓦礫の山。
すこし歩きにくい地面を、よたよたとケットシーは歩く。
「おっ、マグネタイトじゃん? ラッキーラッキー」
転がっていたいくつかの死体から、生体マグネタイトを吸い取っていく。
死んでから間もないからか、その量はケットシーの予想以上に多かった。
「これでしばらく安心だね! うーんオイラってほんとにラッキーボーイ!」
丸々二日は生き延びられると見ても良いほどの、大量のマグネタイトを手に、ウキウキで探索を続ける。
その他にも、死体が持っていた道具を次々と拾得し、自分のものにしていく。
見事逃げ仰せた上に、マグネタイトと道具も手に入った。
なんて幸運なのだろうと、自分でも思う。
そう、確かに幸運だった。
「ん……これって」
光輝く「それ」さえ見つけなければ。
かつて投げ捨てた、一つの金属片。
それを、傷ついた手で触ってしまった。
さっきは手袋越し、しかも傷の付いていない手で触ったから良かったのだ。
もし、あのとき傷口が「それ」に触れていたら、話はまた変わったかもしれない。
まあ、今こうして。
「傷口」で「それ」に触れてしまったから、どうしようもないが。
ぶつん、という音と共にブラックアウトする意識。
自分のモノが、自分だけのモノが何かに塗り変えられていく。
手放しちゃいけない、誰にも渡してはいけないと分かっているのに。
体はとっくのとうに言うことが利かなくて。
染まる、染まる、染めあげられる。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2013/06/12(水) 21:42:16.45:mU8Cfsga
-
- : 彼にしか出来ないぶち抜き ◆EwVLYtcCbD23 [sage] 2013/06/12(水) 21:42:16.91:M+usc5S0
-
……肉は確かに細切れになっていた。
だが、あの時一つだけ確認しなかったことがある。
なぜ、楽俊はザフィーラ達を襲ったのか。
その大本を突き詰めることをせず、"再起不能"の烙印を押した。
元凶は、元気に生きていたというのに。
こうして、再び"肉"を得た「それ」は、再びこの地に蘇った。
さらに、面倒なことは続く。
悪魔が実体化するために必要なエネルギー、生体マグネタイト。
ケットシーは、大型悪魔でも一日は暮らせる量を持っていた。
生体マグネタイトは、用途に応じて姿を変える。
故に、どんな悪魔にも適合し、その力となることが出来る。
いわば、何にでもなれる"秘宝"といってもいい。
それが、デビルガンダム細胞と組み合わさった。
自在に変形することができるデビルガンダム細胞と、どんな姿にも適合する生体マグネタイト。
もちろん、反応が起きないわけではない。
生体マグネタイトが何であるかを理解し、即座に情報を組み替えていく。
ケットシーの体すらも生体マグネタイトに変換し終えた細胞は、次々に変形をこなしていく。
その途中、あたりの瓦礫を巻き込み、あたりの死体を巻き込み。
有象無象と化した一本の塔が、天高くそびえ立つ。
まるで、悪魔合体が行われているかのように。
やがて、ぼろぼろと肉片や瓦礫がこぼれ落ち、塔が崩れさっていく。
表面がはげ落ちるようにボロボロと、休む間もなく崩れていく。
そしてしばらくして、削げ落ちる物がなくなったとき。
「我は――――」
無数の翼、光輝くような髪、天を突かんとする白い角。
「――――魔王」
漆黒を纏いし存在が、そこに立っていた。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2013/06/12(水) 21:43:22.49:PnxVe9Es
- sien
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2013/06/12(水) 21:43:27.85:aTN7VLbR
- 支援
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2013/06/12(水) 21:43:31.71:mU8Cfsga
-
- : 彼にしか出来ないぶち抜き ◆EwVLYtcCbD23 [sage] 2013/06/12(水) 21:43:42.91:M+usc5S0
-
沈黙。
ナメた口調の放送が流れてから、三者共に口を開かずに居た。
目的を失ってしまったイギーは押し黙り。
最初はベラベラと自己紹介に花を咲かせていたホロですらも口を閉ざしている。
そしてクロも例外ではなく、放送に言葉を失う。
「あー、ったく、待ちっぱなしってのはガラじゃねぇなぁ」
しばらく沈黙が続いた後、クロがおもむろに口を開く。
我慢が出来なかったのか、それともこの空気を壊そうとしたのか。
「だったら雨でも浴びて来いよ」
「機械の体じゃ雨は楽しめねぇよ」
「だろうな」
それに乗るようにイギーも口を開く。
軽口を飛ばしあうくらいには、待ちというものは辛い。
しかも、今は放送の所為で妙に重苦しい空気が流れている。
イギーとしても、気を紛らわせたかったのだろう。
何より行動派のクロにとっては、そんじょそこらの攻撃より辛いかもしれない。
イギーにナメられるわけにもいかないし、かといってここをほっぽりだして大暴れするわけにもいかない。
まだ口を開こうとしないホロの行動も見守りつつ、ただただ待つ。
ストレスの限界と戦いながらも、クロはただひたすらに待ち続けていた。
そして、念願のストレスフリーを、クロは手にすることとなる。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2013/06/12(水) 21:44:11.01:mU8Cfsga
-
- : 彼にしか出来ないぶち抜き ◆EwVLYtcCbD23 [sage] 2013/06/12(水) 21:44:32.03:M+usc5S0
-
「……ッ!!」
その場にいる三者全員が、息を飲む。
いや、息を飲まざるを得ない。
むしろ、飲まない者がいたとしたら、よっぽどの脳天気野郎か自信過剰のキチガイくらいだ。
踵から尻の穴、背筋を通ってうなじまで、ぴったりと離れることなく舐められる感覚。
ゾゾゾッ、とした悪寒が止まらない。
現に、そこまで場慣れしていないであろうホロの足は震え、歯を慣らして怯えはじめている。
イッスンに至っては言葉を失うあまり、白目を剥いているほどだ。
場慣れしているイギーやクロでさえ、冷や汗が止まらないのだから無理もない。
「仲良くそろって大脱走、ってのを許してくれそうも無ぇな」
「あの図体相手じゃ逃げ場もねぇだろ」
ようやく言葉を出すことができたイギーに、クロは冷静に突っ込んでいく。
目の前にはサッカー場を覆わんとする巨体、隠れ場所は一時しのぎでしかないし、逃げ場は無いと言って良い。
あの巨体の目の位置から見えないところまで逃げるのは、相当骨が折れることだろう。
……それも、相当な脚力があっての話だが。
「つーか、逃げんのか? 臆病なんだな、お前」
「君子危うきに近寄らずってヤツだ、オメーみたいな脳味噌筋肉のキチガイ野郎と一緒にすんな」
クロの問いかけに、イギーはとてもめんどくさそうに答える。
もとより、面倒臭いことはとことん嫌う性格だ。
ヤバいと分かっていながら突っ込むなんて、大馬鹿のする事だ。
「ハッ、大口叩いといてイザって時は逃げ腰か。
しゃーねぇなぁ、バブちゃんの為にいっちょ大暴れすっか!」
「何とでも言えこの野郎、誰も好き好んで死にに行きたくはねーよ」
「ケッ、これだから温室育ちは……」
クロの皮肉たっぷりの言葉にも耳を貸さず、イギーはスタンドを発現させ、早々に逃げる準備を整える。
そんなイギーを横目に、クロはすっかり怯えきったホロへと視線を向ける。
「ま、っつーことで。ここは俺に任せて、おめーは全速力で走って逃げろ」
「し、しかしぬしは――――」
「三人そろって逃げ出す余裕なんざ無えっつってんだよ!!」
自分がそこまで死にそうな顔をしているのに、まだ他人を心配するというのか。
そういうヤツから死んでいく、というのはクロは良く知っている。
だから、あえてキツい言葉で突き放す。
こんな場所に安全なところはないとしても、ここに留まるよりかは幾分かマシなはずだから。
お守りから逃れたいとかそういう気持ちもあったが、先に思ったのは「無駄に死なれたくない」という事だ。
「ザフィーラが戻ってきたらちゃんと伝えっから、今はあれから逃げることだけ考えろ!!
あと犬公! テメーはホロを守るくらいしやがれチキン野郎」
「あァ?!」
突然言葉を向けられたイギーが、思わず怒りを露わにした反応をしてしまう。
なぜ先ほどであったばかりの話が長いだけの女を守らなければいけないのか。
そんな義理はないというのに。
「チッ、わーったよ脳味噌筋肉」
けれども、イギーはそれを受けた。
なぜか、というとシンプルな理由しか思いつかない。
目の前の猫に、ナメられたくないからだ。
「正直てめーでホロが守れるかは不安だがな」
「んだと……!?」
「キレてる暇があったら早く逃げろ!」
最後の最後の皮肉に思わず反応してしまったと同時に、クロは剣を片手に漆黒へと飛びかかっていった。
チッ、と軽く舌打ちをしながら、まだ怯えた顔をしているホロを見る。
これを助ける義理はない、分かっているけれどあの猫には舐められたくない。
どちらも"意味のないこと"だとは、分かっているが。
「おい、行くぞ」
心に残る何かに唆されるまま、イギーはホロと共にサッカー場を全速力で後にした。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2013/06/12(水) 21:44:49.88:mU8Cfsga
-
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2013/06/12(水) 21:45:43.24:mU8Cfsga
-
- : 彼にしか出来ないぶち抜き ◆EwVLYtcCbD23 [sage] 2013/06/12(水) 21:46:04.44:M+usc5S0
-
サッカー場をぼんやりとした目で見つめながら、魔王は立ち尽くしていた。
と、いうのも、実はまだ"魔王"としての意識が目覚めきっていないというのが正直なところなのだ。
魔獣、ケットシーを媒介として行われた疑似的な悪魔合体。
正規の手段ならば生まれた先の意識のみとなるのだが、今回はそうではない。
生体マグネタイトと、獣たちの肉、そしてDG細胞による変形能力を用いて行われた今回の合体は、イレギュラー中のイレギュラーな手段と言っても良い。
その上さらに、通常の悪魔合体でも起こるマグネタイトの異常反応――――俗に言う"合体事故"も起きた。
あり得ないことにあり得ないことが上塗りされた結果、あり得ない者が生まれた、と言うべきか。
ともかく、今ここにいる魔王に自我はない。
あるのはDG細胞の支配と、それに抗おうとするケットシーを初めとした肉体たちの意志。
そして途中で取り込んだヒョウヘンダケのこともある。
魔王の意識がその中にあるのかどうかは、分からない。
様々な要素が重なりあって生まれた、不安定な存在。
それが、この"魔王"だ。
「ゴアアオッ!!」
本来、その姿を象っているべき存在ならば、絶対に出さないであろう醜い声と共に腕を振るう。
見る者を包み込んでしまいそうな巨体から放たれた一撃が、豆腐を砕くかのようにいともたやすくサッカー場の一部を砕いていく。
「ガアッグアアアオッ!」
続けて放たれた一撃が、さらにサッカー場を抉っていく。
たった二撃でこの惨状、サッカー場、いやこの世界全体が崩れさるまでに、そう時間はかからないだろう。
もう、この場にいるもの達には絶望しか残されていない。
誰もが、そう思うだろう。
「どぉおおおおりゃああああああああ!!!」
そんな絶望に正面から突っ込んでいく、たった一つの"黒い希望"が居た。
巨体の脚部から駆け上り、顔へとまっすぐに駆け抜けていく。
それに気がついたのか、たまたまなのかは分からないが魔王は腕を振るう。
駆け上るクロを振り払うように、剛腕をうならせていく。
「うおぁっ!」
地面に対して直角に走り出していたクロは、それをなんとかよけるものの、重力に従って落ちはじめてしまう。
これではまた登り直しだ。
「にゃろっ!!」
だから、手をのばす。
魔王の体に向けて、手に持つ剣をのばしていく。
ほんの一瞬だけ、魔王の体に剣の先端が刺さる。
その一瞬を利用し、全身の力を込めて魔王の体へと戻っていく。
すたっ、と着地した場所は、地面からほぼ直角の場所。
立ち止まっている暇など、もちろん無い。
足に渾身の力を込めて、そのまま駆け上る。
魔王はそこでようやくクロの姿を認識したようで、その瞳に姿を映していく。
グォオ、と低く唸る魔王に希望は銃を構える。
ただし、それは攻め手ではなくあくまで道を造るためのもの。
軽い音を立てながら放たれる無形の銃弾たちは、魔王の体に突き刺さることはない。
「うおっ!?」
それどころか、まっすぐに希望の元へと跳ね返ってきていた。
軌道が真っ直ぐだったので避けることは苦ではなかったが、銃が足止めに使えないと言うのは大きな痛手だ。
先ほどの剣の突き刺さる感覚からして、心臓を一突きという訳にもいかない。
「ゲッ!」
だったらどうする、と考えていた矢先。
クロの小さな体を簡単に飲み込んでしまいそうなほど大きな火の玉が、彼の目の前に鎮座している。
大きく避けなければ、直撃は必至。
「クソッ!!」
せっかく稼いだ前進距離を少し犠牲にしつつ、希望は大きく横に避ける。
チリッとしっぽが火球を掠め、焦げ臭いにおいが広がっていく。
舌打ちをしながら前を見る、そこには同サイズの火球がもう一発待ちかまえていた。
「マジか……」
ぽつりとつぶやいた一言と共に、クロの小さな体が飲み込まれていった。 - : 彼にしか出来ないぶち抜き ◆EwVLYtcCbD23 [sage] 2013/06/12(水) 21:46:35.27:M+usc5S0
-
「あー!! くそ! 熱い熱い熱い!!」
火球が落下し、サッカー場の瓦礫を溶かすと同時に、一つの銀色の影が火球から飛び出す。
纏っていた皮を抜け出し、本来の姿へと戻っていく。
いや、本来の姿であり、仮初めの姿と言うべきか。
彼は動物達が集うこの場所で、ほぼ唯一と言っても良い機械の体の持ち主。
剥き出しになった金属面が、それを物語っている。
「体はデケぇし硬ぇし、銃は跳ね返ってくる上に、お手手からは炎が出ると来た」
魔王の死角に潜り込み、"銀色の希望"は状況を整理する。
とはいっても、絶望的な今を噛みしめれば噛みしめるほど、彼に抵抗の手段など残されていないというのが分かる。
自分の攻め手は無いに等しく、相手の攻め手は強烈なモノばかり。
いわば"詰んで"いる、分かりきったことなのに。
「……おっもしれえ」
彼は笑う、それも狂気をたっぷりと含んだ笑顔で。
こうでなければ、こうでなければいけない。
今まで散々我慢してきたのだから、これぐらい"狂わせて"くれないと、話にならない。
使いモノにならない銃を捨て、剣を腹の中に仕舞い、もう一本の剣を携えていく。
なぜ、武器を切り替えたのか?
初めに持っていた剣の方が、切れ味は上だというのに。
「おおおおおおおおおっっ!!」
一直線に走り抜ける。
使えないナマクラを手に、魔王へと向かっていく。
間を置かずに、クロの前進に気がついた魔王が炎を放つ。
先ほどとほぼ同サイズ、それでいて広範囲の火球が四方八方縦横無尽に飛び回る。
そのままクロへと牙を剥き、それぞれが炎の渦を巻き起こす。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2013/06/12(水) 21:46:36.01:mU8Cfsga
-
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2013/06/12(水) 21:47:30.99:mU8Cfsga
-
- : 彼にしか出来ないぶち抜き ◆EwVLYtcCbD23 [sage] 2013/06/12(水) 21:47:43.14:M+usc5S0
-
筈だった。
炎が向かった先、そこには剣を構えるクロの姿。
そして、真逆の方向へと跳ね返っていく火球達。
一体、何故?
答えは、彼の持つ剣にある。
ある地方、ある王国に代々伝えられた伝説の剣。
主に桃缶を開けるために使われる……のではなく、万物を切り裂き道を造るとされている伝説の剣だ。
しかし、それは伝説の宝石と聖なる者の魂があってのこと。
それがなければ、この剣は"何も斬ることが"できない。
この世でもっとも使えない、ナマクラ剣と言っても良いだろう。
少なくとも、"斬ることに関しては"。
伝説の剣が本来の力を手にしていないときの特徴が、もう一つある。
それは、"どうやっても砕かれない"ということ。
来るべき覚醒の日まで、砕けるわけにはいかない。
故に、この剣はその日まで"絶対に砕けないよう"作られた。
そう、来るべき伝説の日まで。
万物に対して干渉しないし、されないように作られていた。
故に斬ることもできない、代わりに斬られることもない。
何も破壊できないが、何にも破壊されることはないのだ。
それを――――クロは理解していた。
飛び交う極大の火球、それをかわす手段。
そう、避けれないなら"弾け"ばいいのだ。
時には剣のように、時にはバットのように、時には槍のように。
伝説の剣をうねらせ、無形である炎を弾き飛ばしていく。
クロは、剣ではなく"盾"としてそれを使うことで、活路を見いだした。
「おぅ……らァッ!」
そして、最後の一発。
それを弾き返すと同時に、弾き返した炎の上に"乗る"。
伝説の剣をまるでサーフボードのように操り、魔王へと真っ直ぐ戻っていく炎に乗って、一直線に眼前へと近づいていく。
超高速で近づくクロに、魔王は反応が遅れる。
ほんの一瞬、されど一瞬。
クロが懐から取り出したヴァルセーレの剣を投げつけるには十分すぎる隙だった。
弾丸のように飛び出した剣が、魔王の眼に突き刺さる。
ぐらり、とすこしだけよろけると同時に、クロが飛び出していく。
そして、再び伝説の剣を振りかぶり。
突き刺さったヴァルセーレの剣の"ちょうど中心"を、真っ直ぐに叩く。
何も斬れない、砕けない、破壊できない、干渉できないナマクラ刀。
けれども力を伝える事はできる。
絶対に何も斬れず、絶対に何にも砕かれないからこそ、一直線に力を伝えることができる!
まるでトンカチのようの振りおろしたそれが、魔王の眼に突き刺さったヴァルセーレの剣を縦へ進めていく。
「うおおおおっ!!!」
当然、魔王は暴れる。
剛腕はうなり、火球は乱れ飛ぶ。
けれども、クロは止まらない。
「おおおおおおおおっ!!」
加速、重力、自分が使えるありとあらゆる力を乗せ、振りおろしていく。
止まらない、止まらない、暴走列車のように。
縦に真っ直ぐ線が入り、魔王の体が斬り裂かれていく。
瞬時に再生を始めようとするが、それは遅すぎた。
断面、つまり外皮に覆われていない内蔵が見えているという事。
それさえ見えれば、十分だ。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2013/06/12(水) 21:48:21.18:mU8Cfsga
-
- : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2013/06/12(水) 21:48:23.43:j0e8lH5O
- しえん
- : 彼にしか出来ないぶち抜き ◆EwVLYtcCbD23 [sage] 2013/06/12(水) 21:48:43.83:M+usc5S0
- 「うっ……るァァァァァッ!!!」
瞬時にヴァルセーレの剣へと持ち換え、一薙ぎ、二薙ぎと攻撃を重ねていく。
断面を境にぶちり、ぶちりと斬り飛ばされていく肉体、その攻撃は再生速度を優に上回っていた。
吹き飛ばされた肉は、瞬時に形を失っていく。
魔王の体は純粋な肉体とは違い、元々死骸だったものと生体マグネタイトで無理矢理構成されたものだ。
細胞の力がなければ生きていられるわけもない。
それを知ってか知らずか、クロは大きく振りかぶって魔王を"ブツ切り"にしていく。
弾け飛んだ部位から、溶けだしていく。
足、足、胴、胸、肩、肩、次々に吹き飛ばされていく。
そして、最後に残った頭。
未だに抵抗をやめようとしない魔王に、クロは最後の一撃を叩き込んで行く。
「おっ……らっ」
始めに突き刺さった部位を基準に、顔が両断されていく。
「よぉっ!!」
吹き飛ばされる、顔の半分。
断末魔の叫びも空しく、空に溶けていった。
どろりと融けた肉塊に包まれ、その中心でクロは倒れこむ。
初撃で浴びてしまった炎が思っていたよりも体を蝕んでいたようで、あちこちで金属の軋む音が聞こえる。
というか、軋むどころではなく半身もっていかれている。
どろりと融け始めていた金属を押し通してあんな無茶をしたのだから、無理も無い。
だが、クロは止まらない。
「手前が本体か」
残った片腕を伸ばして掴み取るのは、光り輝く一枚のチップ。
先ほどまで、魔王を形成していた"悪魔"の本体だ。
クロが手に取ったことを察知し、チップは何時もどおりにクロの意識を乗っ取ろうとする、が。
「悪ぃな、テメーも一緒に死んでもらうぜ」
クロは生体ではない、寧ろチップと同じ"金属"と"半導体"で出来ている。
自分で思考し自分で行動できる、天才科学者、剛万太郎の自信作(サイボーグ)。
そんじょそこらの人間の肉体を乗っ取る程度のチップに、遅れを取る訳が無いッ!!
「ぬぅぅぅうりゃああ!!!」
クロの自我を食い荒らそうと侵略を始めるチップに、全身全霊全プログラムを賭けて対抗する。
傍から見れば、チップを手にクロが叫んでいるだけ。
けれど、そこで起こっている事はここにいる誰もが出来ないこと。
この場所で彼にしか、彼だけしか出来ないこと。
ばちん、と雷が弾ける。
先ほどと同じ、いやそれより激しい戦い。
動きは無く、仲間も無く、音は弾けた雷だけ。
けれど、けれど、彼にしか出来ない戦い。
「ああ……」
戦いを終え、遠くを見つめる。
身体を動かすどころか、もう思考すらままならないけれど。
「やっぱ……こうじゃなきゃな」
この上ない満足感に包まれながら、ゆっくりと眠る。
目は、覚まさない。
【クロ@サイボーグクロちゃん 死亡】
【ケットシー@真・女神転生if... 死亡】
【デビルガンダム細胞@機動武闘伝Gガンダム 機能停止】
※放置支給品(E-4):メガブラスター@クロノトリガー 、ヴァルセーレの剣@金色のガッシュ
アームターミナル@真女神転生if...、伝説の剣@ハーメルン
※放置支給品(D-4):まぼろしのてぶくろ@MOTHER3 、デザートイーグル@真女神転生if...(コロナショット@真女神転生if...(12発))
和道一文字@ワンピース、雷の石@ポケットモンスター、拡声器、折れたシャムシール@真女神転生if...、
グリードアイランドカード(追跡)@HUNTER×HUNTER 、ケットシーの帽子@真女神転生if...、
フィジカルミラー@ペルソナ3、カマンベールチーズ@現実、キメラのつばさ*1@DQ5、
伝説の剣のルビー@ハーメルンのバイオリン弾き
エルルゥの毒薬@うたわれるもの(テクヌプイの香煙×5、ネコンの香煙×5、紅皇バチの蜜蝋×5、ケスパゥの香煙×5) - : 彼にしか出来ないぶち抜き ◆EwVLYtcCbD23 [sage] 2013/06/12(水) 21:49:18.70:M+usc5S0
- 【E-4/南部/1日目/日中】
【イギー@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】:全身打撲(小・治療済)、疲労(中)、精神的疲労(中)
【装備】:腕時計
【道具】:支給品一式(食糧:ドライフード)、犬笛
【思考】
基本:面倒なので殺し合いには乗らない。
1:とりあえず逃げる
【備考】
※イギーの参戦時期はペット・ショップとの戦闘で、下水道に逃げ込む前後です。
※スタンドの制限に気づきました。
※タヌ太郎に少し心を許しました。
※コロマル、アライグマの父と情報交換をしました。
※ピカチュウたちと情報交換しました。異世界という情報を得ています。
※オーボウ、グレッグル、ミュウツーへの伝言を預かりました。
【ホロ@狼と香辛料】
【状態】右腕に切創(小。止血済み)
【装備】:イッスン@大神、魔甲拳@ダイの大冒険
【所持品】:支給品一式、身かわしの服@DQ5、まんまるドロップ@聖剣伝説Legend of Mana(四個)、
ラスタキャンディ@真女神転生if...(二個)、アギラオジェム×3@ペルソナ3
【思考】
基本:ゲームに乗る気はない。ただし、向かってくる者には容赦しない
1:逃げる。
2:どうにかして血を手にいれたいの。
3:わっちの麦はどこにあるのじゃ?
【備考】:参加時期は6話「狼と無言の別れ」の後です。
※生き血を飲んで変身できる事は話していません。
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以上で投下終了です。
何かありましたら、お気軽にどうぞ。 - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2013/06/15(土) 08:35:17.27:T3Rdx2LJ
- 乙
ケットシーとクロちゃんはここで退場か…
放置支給品は誰に拾われるのか - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [] 2013/06/15(土) 09:27:35.80:5GVMw2tS
- 投下乙でした!
クロちゃんの熱血バトルですね!
本人が望みつつも敵わなかった要素がついに成った!
DG細胞は消滅か。
ケットシーが合体事故ってなったのって閣下? - : 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 2013/06/15(土) 20:13:11.05:Ky+bxLSf
- 投下乙でした!
クロ死んだー! こいつは生還出来ない運命にあるのだろうか。
魔王は何かエスターク思い出したw
イギーとホロの逃走先も気になるなあ。北に行けばアブカムゥ、南に行けばシスコン……どっちも楽じゃないだろうがw - : (名無しさん) [] 2017/01/23(月) 00:55:15.28:Jyx56wDX
- (中古ディ-ガは田中みな実アナを人名検索出来ないという噂は本当?)
凡例:
レス番
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