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【真っ二つ】あのナイフとの別れ【紛失】


名前なカッター(ノ∀`) [] 2005/07/30(土) 03:48:33:URd9KLjj
そんな、ちょっと切ない話を聞かせてください・・・
名前なカッター(ノ∀`) [] 2009/05/09(土) 21:06:51:dc/JtexB
名前なカッター(ノ∀`) [] 2009/05/27(水) 13:24:30:7O27fe3F
ガーバーFS2が出てくる話が委員で内科医。
今度はお話に若いねーちゃんが出てくるストーリーを希望。
名前なカッター(ノ∀`) [] 2009/08/07(金) 07:50:03:DH1SHlZ1
あつあげ
名前なカッター(ノ∀`) [] 2009/08/07(金) 10:45:11:I+E8A/yV
せっかく上がってるし俺の刃物紛失・崩壊歴を。

その1
厨房の頃、中二病まっ盛りで無駄にナイフを持ち歩いてた。
この頃は半ば「ナイフ=武器」的なヤバい発想でナイフを扱ってた。
夏休みに川遊びをしてて、親が訪問販売に押し売りまがいで500円で買わされたナイフセットの波刃ナイフを持って行った。
刃渡り12pくらいのハンドルもブレードもペラペラな、フィレナイフを波刃にしたようなちゃっちいやつだったけど細かい波刃は切れ味が良く、シンプルなデザインが好きだった。
んで、何を思ったのか調子に乗ってそのナイフをくわえて高いところから飛び込み、着水の衝撃で紛失。
結構深いところに沈んだらしく探しても出てこない、探してたら日が暮れ帰りが遅くなり親からメタクソ怒られたw
この頃は今では違法な刃渡り15cmのダガー形状のナイフを1mmステン板で作って振り回したりしてた、今考えればとんだキチガチ小僧だ。

その2
色々あってナイフをちゃんと道具として見るようになった頃。
高校の修学旅行でニュージーランドに行ったとき町のホームセンターで売ってたマルチプライヤーとフォールディングナイフのセットを買って帰った。
日本円にして1500円くらいだったと思う。
フォールディングナイフは全然使わずに今も持ってるけど、マルチプライヤーは便利だったから普段持ち歩いて主にプライヤーだけ使ってた。
んで、どういう使い方したのかは覚えてないけどあるときプライヤーを使ってて力を思いっきりいれたらバキン!
接合部からプライヤーが真っ二つになった・・・。
made in chinaの安物だったけど修学旅行の土産だったから、ちと後悔してる。
名前なカッター(ノ∀`) [] 2009/08/07(金) 20:43:45:GiY+kM4q
紛失が粉末に見えた。
やっぱ粉末鋼は折れやすいのかなあとか思ったよ
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2009/09/03(木) 22:43:06:cw+CTvxy
消防の時、近所の文房具屋で買った肥後守を大事にしてたがどこかに行ってしまった。
数年後、厨房の頃に洗濯機の裏から錆びた肥後守が出てきた。
真っ赤になった肥後守をみてたら消防の頃の自分がちっぽけに思えて、なんだか可笑しかった。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2009/09/24(木) 18:37:10:sRwq/QoG
静岡県富士市から三重県鈴鹿市まで わざわざ引越しの手伝いに来た友人に レザーマンのウェーブと菊水ランボー2のWノコ刃をプレゼントしました
奴とは10年以上の付き合いになります
彼にジャイアントククリをプレゼントしようと思いましたが 奴は受け取りを拒否しました
名前なカッター(ノ∀`) [] 2009/11/08(日) 09:13:04:OAojWol1
なぜか、半年以上、書き込みできない状態。携帯からなら出来るのね。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2009/11/19(木) 18:40:28:SqGM2pxQ

最近は書き込み規制が頻発・長期化しているからな。
2ch運営に言わせると
「書き込みたいなら●を買え」
ということらしい。
名前なカッター(ノ∀`) [] 2009/11/28(土) 11:45:07:A+Mdhc8N
うんこおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2009/12/31(木) 08:20:59:7az9sIDo
昨晩、蜘蛛の直刃Naitiveを落としたです....
他に注文したナイフ(蝶930 Kulgera)が届くかなって時に入れ違いになるみたいに失くしてしまった。

カヤックでキャンプに行った、といっても湖も川も凍ってるので
舟に道具一式を積んで氷上を延々歩いてたんだけど、何度もスッ転ぶうちに
紛失したかも。

ゴッツいツナギを着てたんだけど、ポケットの生地が厚すぎてクリップが
上手く掴んでなかったのかな。
 ここんとこ一番気に入ってたナイフなので喪失感はデカイ。思い入れもあるので同じの買えば済むってもんじゃないのがツライです。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2010/01/29(金) 23:31:44:RX65o5ky
長文の人言葉の誤用が多い
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2010/02/11(木) 18:50:33:N1eSy7vW
いつもウェンガーのソルジャーがポケットに入っていた。
スタジオ勤務のときも、日本一周のバイク旅の時も。
沖縄でマグロ船乗ったときも持って行ったっけな。
最近始めた狩猟で、半矢の鳥を締める時にも使ってた。
手負いの状態で暴れている鳥を早く楽にするために、後頭部にリーマーを刺していたんだ。
ある時、鳥を締めたあとにポケットにしまったつもりで落としてしまった。
猟場を1時間以上うろうろ探し回ったけど、結局見つからず。
あのときの喪失感といったらなかったなぁ。
10年近く使っていたので、愛着というか執着心がついていたのかも。
なくした事はつらかったが、ソルジャーとの呪縛も解けて気が楽になったような気がしたな。
10年も毎日持ち歩いてるものってないだろ?
20代から30代にかけての濃密な時間を共に過ごした相棒のようなものだったから。
なくした翌日に、新しいソルジャーを買った。
このナイフと一緒にどんな人生を送れるだろう?

187 [sage] 2010/02/18(木) 19:32:27:HsuRB2Ai
やっと規制解除になったようです。

さん

>長文の人言葉の誤用が多い

お久しぶりです。多分、私の事ですね。仰るとおり、文法的に、また慣用句的に、突っ込みどころ満載の駄文です。
不快にさせてしまい、申し訳ありませんでした。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2010/02/22(月) 04:42:37:BRizPW8G

それでも、書き込んでもらえるだけでありがたいデス。
ご苦労さま。
名前なカッター(ノ∀`) [] 2010/06/07(月) 19:24:29:2WVXjJdu
あげ
名前なカッター(ノ∀`) [] 2010/06/27(日) 23:04:12:zXLV6hCh

くたばっちまえ。水差し小僧
名前なカッター(ノ∀`) [] 2010/06/27(日) 23:11:48:KRN+gq3p

無益な殺生するなボケ
名前なカッター(ノ∀`) [] 2010/08/04(水) 19:50:44:Lod+DPXJ
殺生の結果、その意義を活かす事(例えばきちんと食べる)で、命の連鎖がある。
貴方自身も、貴方の周りにも、きっと営まれている事。

なのかも、知れないよ。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2010/08/08(日) 16:22:32:XagoNNl3
離島のハナレ磯に置いてきてしまった。

拾われる事無く海に帰ってくれ。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2010/08/22(日) 01:12:03:x21+STfM
厨房のとき親に見つかって捨てられた
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2010/11/01(月) 22:24:38:GvpkUfSB
カヌーで川下りしながら、野宿と釣りを楽しんでいた時期があった。
相棒は、ガーバーのM475だった。M2ハイスピードスチールは、よく切れ、研ぎやすく、実用的なナイフだった。

カナダのある川で出合った珍しくも同じ日本人同士。その彼は、ガーバーを見たとたん、「フン」と軽蔑した。
彼が言うには、携行するナイフは、北欧製でなければお洒落ではない、とのことだった。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2010/11/01(月) 23:25:36:GvpkUfSB
さて、多少不躾な印象を受けた彼だが、数ヶ月遭っていなかった日本人ということもあり、彼と数日だけ川での生活を共にすることにした。
自分はドライフライやストリーマーという毛鉤で鱒を釣った。彼は、スプーンやプラグといったルアーを駆使して、同じように川から
鱒を引きずり出した。もちろん、その日の糧の為だった。

自分よりもかなり大型の鱒を捕らえた彼は、やはり「フン」と大きく鼻で笑って、魚の〆にかかった。

あっという小さな声が、彼の口元から発せられるのに気がつき振り向くと、彼の親指から鮮血がほとばしっていた。
彼の自慢のナイフが、鱒の急激な動きに捉えられ、却って彼の手を傷つけてしまったのだ。

彼の顔が赤黒く変色し、口元が歪んだ。
「こんちくしょう!!」
彼はそう日本語で叫ぶと、自慢のナイフを逆手に持ち、鱒の鰓蓋にポイントを叩きつけた。

キーン…

夏空の水田を通る風が、軒先に吹いて鳴らす風鈴の涼しげな音、を連想させるような響きが、異国の渓流に響いた。
彼の自慢の北欧ナイフ、ハックマンのタピオは、垂直に振り下ろされた挙句鱒の鰓を容易く貫通、結果鱒の体重を
支えていた岩にポイントから強打、中ほどから折損してしまった。
鱒は、確かに事切れていたが、彼はそれ以上の作業が出来なくなっていた。

どうしよう。見て見ぬ振りをすべきかここで我がナイフを供するべきか…

目を合わせないまま気まずい時間が続く。しかし、彼のほうから、新たな音が聞こえた。
「カチカチカチ・・・」
彼は、何食わぬ顔で、オルファカッターで続きを再開した。異国の川原では、ガーバーもハックマンも、故岡田社長には
かなわなかったという事なのか。

過去に魚を〆る際に切り裂いてしまった手の古傷を眺めながら、彼の変わり身の速さと、相変わらず日本の工業製品の
素晴らしさに、何だか変な感情がむくむくと沸きあがった一幕だった。
手製クロスボウ ◆CsXup0Xqp90r [sage ] 2011/01/23(日) 16:17:32:yzcrFLdw
モラナイフ 買って一年もたってないのに失くした 家の中を探したが見つからなかった
手製クロスボウ ◆CsXup0Xqp90r [sage ] 2011/01/26(水) 15:43:11:/S9Kj+EB
モラナイフはさっき発見しました
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2011/07/19(火) 23:04:53.77:BkHKSEE/
ハックマンのタピオとはまた珍しい 8,90年代かなあ?
ステン刃でそう硬くないけど2つに折れるんだねえ
名前なカッター(ノ∀`) [] 2012/04/01(日) 14:52:34.17:+7efwy0O
ttp://http://vippers.jp/archives/6055677.html

このスレがコピペされてたw
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2012/04/02(月) 22:01:25.63:L9FPJ6h1
半年か1年に一回のレスでよくこのスレ続いているな。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2012/04/03(火) 22:39:09.38:4vSnz+Xw
150年以上前からあるのか?
きゃりーぱみゅぱみゅ [] 2012/04/06(金) 01:38:32.80:JbGl9Vk9
このスレは150光年の彼方からやって来たのだ

2chよりも古くからあるよ
名前なカッター(ノ∀`) [] 2012/10/20(土) 12:33:13.52:GWab3DdF
あげ
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2012/10/21(日) 15:06:41.02:QeXaE+IT
何この過疎地
名前なカッター(ノ∀`) [] 2013/03/17(日) 22:50:28.06:2fNR+6Ng
過疎ってるけど、大切なナイフと悲しい別れをした可哀そうな子がいなくて何よりだ
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2013/09/06(金) 22:02:08.16:huCuFM2v
台風の時期になると、思い出すナイフがある。
ナイフといっても、クッキングナイフと言うべきものかも知れない。カーショーのエクスチェンジブレード。牛刀状の包丁とか、のこぎり、カービングナイフ、パン切ナイフなど、
一つのハンドルで、複数のブレードを交換しながら使う、キャンプ用のナイフセットだ。

東京湾は、特に木更津方面では海苔の養殖が盛んなのは、ご存知の方も多いだろう。海苔の養殖には、養殖棚と呼ばれる、網を海中に張り巡らせ、そこに海苔のタネを
付着させ、あとは大自然の力に任せて成長させ、最後に網ごと回収して収穫する。冬の回収作業を見学していると、船上で巻き上げた海苔網に、冷たい海水を噴射しながら
水圧で網から海苔を分離させる作業が、とても冷たそうで、大変な作業に思える。

真夏日と呼べる日もだんだんと少なくなり、既に南の国には台風が次々と騒ぎをもたらしているころ、自分は仲間と、カワハギ釣りの計画を立てていた。ちょっと一昔前の、
今頃の話だった。
322 [sage] 2013/09/06(金) 22:18:49.03:huCuFM2v
東京湾は、実はカワハギがよく釣れる。刺身でも、熱を通してもおいしい魚で、調理も簡単と、良いことづくめだが、一方で「エサ取り名人」とも呼ばれ、針を飲み込まずに
餌だけを取ってしまう技に、実に長けている。このため、釣り人は道具や餌のつけ方に工夫を凝らし、海中にひとたび糸を放てばその竿先にじっと、熱い視線を注ぎ続ける。
利き手は常に臨戦状態。針を飲み込んだ感触をわずかにでも感じ取ったら、すかさず利き手を跳ね上げて、好敵手を針にかけなくてはならない。

さて、東京湾でプレジャーボートを維持しようとすると、駐艇料金だけで年間80万円は下らない。だから、普通カワハギ釣りといえば、職業漁師の操船する船に乗船料金を
支払って乗り込み、上記のごとく釣りに熱中するのが、釣り人の常なのだ。しかし、この場合には数人の仲間で誘い合っても、大半の知らない人たちと、同じ船の上の人と
ならねばならない。料金をはずんで「仕立て船」という貸切状態にする手もあるが、それでも船長の決めたルールは、客が遵守することが必然となる。

仕事の絡みで懇意になったある素封家が、大の釣り好きで、かつ大の人間嫌いだった。だから彼は、大枚はたいても己のプレジャーボートを、所有していた。
今回は、この素封家である彼からのお誘いで、人嫌いの彼の持つ、わずかな人数の、気の置けない友人たちでの釣行であった。
322 [sage] 2013/09/06(金) 22:41:31.33:huCuFM2v
数年に一度ぶりくらいの台風関東上陸が、釣行予定日に重なりそうではらはらしていたが、思ったよりも早く温帯低気圧に変わって北上してくれたおかげで、関東地方に台風は多少の被害を与えたものの、大きな爪痕を残さず、さらには台風一過の秋晴れをもたらしてくれた。
どちらかと言えば魚は、浮き袋など身体の構造上、高気圧よりは低気圧を好むので、晴天はあまり好ましくないのだが、人間としては雨合羽を着ないでボートデッキに居られるのはありがたい。当日早朝、集まったメンバーたちは、遠足の子供よ
ろしく声高々に、マリーナからランチング(陸上保管のボートを海水まで降ろして、運転できる状態にしておくこと)されたボートに乗り込み、彼の操船により、いざ出航。
彼の艇には初めて乗ったが、たいそう立派な船体だった。魚群探知機、GPSプロッタなどは当然のこと、クルーズコントロールなど豪華な装備も備えており、キャビンにはシャワールーム、トイレ、簡単なキッチン、保冷庫まで備え付けてあった。
322 [sage] 2013/09/06(金) 22:47:10.85:huCuFM2v
彼によれば、釣り以外にもよく、家族とクルージングに出かけ、洋上でサンドイッチなどを作って楽しんでいるそうな。
それで、保冷庫の上には、普段パンでも入れるのであろう、藤の蔓で編んだ籠があり、その中に、黒くて四角い、フェイクレザー様のファスナーケースがあったのだ。
彼に了解を求めて中を改めると、ゴム製の黒いハンドルが一本、あとは個別包装された各種ブレード。

カーショーのエクスチェンジブレードとの出会いだった。

神奈川のマリーナを出港してから、実績のある釣り場のポイントまでは、結構な距離を移動した。仲間たちは、思い思いに
釣り具の再点検と準備をしたり、操船や帰りの車の心配を持たない人は、早くも保冷庫のアルコールに手を出したりと、
リラックスしたムードが流れていた。
322 [sage] 2013/09/06(金) 23:07:29.28:huCuFM2v
自分はというと、根っからの刃物ヲタ、こういう刃物を見てしまえば、弄りたいという欲求に逆らえず、「ほう」、「へぇ」などと呟き
ながら、いろいろなブレードの交換、着脱作業を楽しみつつ、そっとエッジに親指の腹を当てて、砥ぎ具合チェックも欠かさない。
どうやら購入から一度も砥石に当てていないようで、ナイフ類の切れ味はご想像の通り。
ただ、のこぎりとパン切りナイフのエッジだけが、使っていないのか、ぞくっとするほどの迫力を保っていたのが、印象的だった。

彼のボートは、結構大型のプレジャーボートには珍しく、船外機船のツインエンジンだった。スズキ製の船がよくやるテだ。
200馬力越えの直噴2ストロークエンジンが2基、スターンプレートに固定され、エンジンが直接方向を変えることで、船の
向きも変える。船内機船に比べて、小回りが効く。しかも、ものすごくスピードが出る。
小一時間ほどのクルージングで、タンカーなども通る大型航路を横断し、千葉県側のポイントに到着した。
322 [sage] 2013/09/06(金) 23:21:59.28:huCuFM2v
彼は魚群探知機で、丹念に海底の地形をさらってから、スターンデッキのスパンカ(船の後ろについている、飛行機の尾翼の
ような役割のもの。これを張ると、潮に流されている船が、風の影響を受けてしょっちゅう向きを変えてしまう現象が、防げる)を
張って、いざ釣り開始宣言。
各人、一斉に針に取り付けたアサリを海中に投入した。魚群探知機により、魚は海底から数メートルほど浮いていることが
分かるので、その位置に針を持ってくる。あとは、魚が食いつくのを、今か今かと待ち構える。

ほどなくして、「よし!」とか、「やった!」なんて声が、聞こえ始める。自分の針も、どうやらカワハギがつついているようだ。
一呼吸おいて、ヒュッと竿をしゃくり、ずしっとした魚の重みを感じ取る。この感じが、釣り人の至福の瞬間だ。
船長の彼も、既に暴れる魚の針外しを行っていた。今日はなかなか調子が良い。船は、エンジンを切った状態で、しかし
いつでも動き出せるようにした状態のまま、潮と風に少しずつ流されていた。ここは、航路からも外れているし、一応
周囲の警戒を各人で行ってもらっているので、座礁や船体衝突の危険はないはずだ。
322 [sage] 2013/09/06(金) 23:29:58.73:huCuFM2v
一通り釣って、このポイントの魚が、だんだんと警戒し始めたのか、釣れなくなってきた。こんな時には、一か所で粘らず、
大きく場所移動をするべきだ。彼もそう感じたようで、いったん仕掛けを引き上げるように全員に宣言し、船のイグニッションを
ONにした。
軽快なエンジン音が船体に響き渡り、船が270度ほどターンしながら、加速を始めた。
その時、船体に妙な振動が走った。「ゴゴゴ、グッググ…」みたいな音がして、加速中だった船は一気に速度を失い、
船体ごとゆっくりと前につんのめるような形で減速し、すぐに止まった。操舵室からは、何かの異常を知らせる、
「ピー」というような警告音が、かすかに聞こえた。
322 [sage] 2013/09/07(土) 16:11:47.92:inC7xsNk
 彼以外の人物は、次なるポイントに向けての準備として、針にアサリを付け直してい
るところだった。だから、船の停止にすら気づかず、せいぜい高波を乗り越えたくらいに
感じている人もいた。
 船は、再び潮と風に、ゆっくりと流され始めた。彼は、操作パネルを睨み付け、首を
かしげている。自分は、昔から船舶航行経験があるので、この事態には何やら、容易
ならざるものを感じ取り、彼に声をかけて様子を訊いた。どうも、電源、燃料ともに供
給系統と排気系統ともに異常無しではあるが、スクリューが異常停止したため、セン
サーが自動的にクラッチを切り、スロットルを中立状態にしたらしい。

 魚群探知機を見る限りでは、水深は充分にあるし、現に潮と風で少しずつ移動して
いることから、座礁ではなさそうだ。となると、200馬力超のツインエンジンの回転を
急降下させるような、とても厄介な何かがスクリューに絡んだ、という結論に進まざる
を得ない。
 
322 [sage] 2013/09/07(土) 16:15:02.20:inC7xsNk
 ツインエンジンの場合、スクリューも同じ大きさのものが二個ついているが、
船体の直進性維持のため、左右のスクリューはそれぞれピッチ(ペラの傾き)が逆の
ものをつけており、そもそもスクリューの回転もそれぞれが右回転と左回転に分か
れるようになっていることが多い。この船も例外ではない。
 この二つのスクリューに、もしも何かが跨いで絡んでしまったとしたら、相反する
回転に巻き込んでしまっただけに強烈な力で絡んでいることになり、とても厄介だ。
何かが絡んでいたとしても、片方だけである事を祈りつつ、しかし一方で、この船が
船外機船形式である事への、幸運を感謝した。船底にスクリューが、シャフトを
通して固定されている船内機船であれば、スクリューの様子を見るだけでも
ダイバーの力を借りなくてはならない。船外機船は、小型モーターボートと同様、
エンジンそのものの角度を上げる、所謂ティルトアップが可能なので、水面に
スクリューを出して見る事ができる。
322 [sage] 2013/09/07(土) 16:17:12.77:inC7xsNk
 彼に、これ以上流されないように投錨する旨を伝えながら、全員に対して、マシントラブ
ルがあったので、いったんデッキの上の釣り具を片付けるように伝えた。投錨して、
セオリー通りに水深の三倍ほどのアンカーロープを繰り出して固定すると、既に彼が
エンジンを停止させてティルトアップを行った模様で、スターンデッキに人が集まっていた。
肩の間から様子をうかがうと、最初、海藻のようなものが、スクリューに絡まっているよう
に見えたが、何本かの枯れ竹もくっ付いていることから、網が絡んでいるのだと分かった。
しかも、漁網ではなく、海苔の養殖網だ。嫌な予感は当たるもので、ツインスクリューを
またぐように絡まり、しかも強烈なエンジンのパワーで半ばまで裂かれ、しっかりとスク
リュー根元のキャビテーションプレートまでぐるぐる巻きにしている状態だった。
322 [sage] 2013/09/07(土) 16:21:23.91:inC7xsNk
 今更ながら、原因について色々と頭をめぐらす。この辺りには、海苔の養殖棚は
無かったはずだ。  ―いやしかし、先日の台風で、流されたものなのだろう。
網が、海中に沈まずに海面付近を漂っていたのは、漁網ではなく海苔網だったため、
支柱代わりの枯れ竹が、浮力材になってしまったのだろう。
 もしこれがルアー釣りなら、メンバーは海面を凝視していたはずなので、水面付近を
漂う網の接近に、いち早く気付けただろうが、今回は座って竿先を眺めるタイプの釣り
だったから、バウデッキ側に立って海面を凝視しているメンバーは、皆無だった。
 交通事故もそうだが、いろいろと、起こるべく条件が重なった時に、それは起こるも
のなんだよなぁ。学生時代、ツーリング先でたまたま知り合った男性が、ブーツを
きちんと履かずに圧縮比の高いエンジンのキックスタートを試みた時、ケッチンを食
らって骨折した思い出が、不意に蘇った。
322 [sage] 2013/09/07(土) 16:26:42.28:inC7xsNk
 チャプン・・・チャプン・・・スターンを打つ波音に、追憶から覚まされる。
誰かが「118に…」と言いかけた時、彼の表情が見るからに強張り、さっと手のひらを
広げてそれを遮った。この際気にしていても仕方ないとは思うが、極端な人間嫌いの
彼にとっては、本日の釣行を中止にして招待メンバーに対して恰好がつかない結果と
なったうえ、海上保安庁のお出でを願ったあげく、後に起こるであろうマリーナでの
噂話やら海難審判庁への事情聴取やらと、いろいろ我が身に降りかかる、最も嫌いな
「見知らぬ他人との厄介ごと」が、身の毛もよだつほどに嫌な様子だった。
 「プシュッ!」誰かが長期戦を覚悟したらしく、ビールの缶を開ける音が聞こえた。
そうだ、ここはひとまず落ち着こう。彼を促し、全員でキャビンに移り、少し早い
昼食を摂ることにした。
322 [sage] 2013/09/07(土) 16:29:09.53:inC7xsNk
 食事をしながらも、必然的にこれからどうするか、という話題に行き着く。他のメンバーは
船舶免許を待たないので、結局彼と自分の二人が、話題の中心で話を進めることとなった。
彼が、思い出したように錨泊中の船舶が行わなくてはならない、形象物掲揚(黒球一個)を
行いに、フライングブリッジに登る。
 それを視線で追いながら、『今の状況だったら、一個じゃなくて二個掲揚なんじゃないの
(二個掲揚は、運転不自由船)…』などと考えながら、視線を戻す。そこで、ふと、それまで
彼の体で見えなかった、保冷庫の上に鎮座する、藤の蔓で編んだ籠が、目に入る。


 やっぱり、絡みついたアレを、切り解いてゆくしか、方法はなさそうだ。
322 [] 2013/09/07(土) 16:39:53.21:VZ8IdGDN
携帯電話から連投規制避けカキコ
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2013/09/07(土) 19:13:38.61:inC7xsNk
―なぜ自分は、たすき掛けに命綱代わりのロープを渡して、海面に頭から突っ込むような
態勢を保ちながら、エンジンの上に跨り、じりじりとスクリューに向かって進んでいるの
だろう。
 簡単だ。他のメンバーは、裕福だがメタボだったのだ。揺れる海上で、海面に
突き出した上に急傾斜の下り勾配。そんなエンジンに取りすがって作業するには、
運動神経だけが自慢の自分であると、役割を決める際に全員の目が、そう言っていた。
この船が、陸上保管であったことに、せめて感謝をしなければならない。
洋上保管であったらば、今頃エンジンに付着したフジツボと藻の攻撃に、作業の続行を
阻まれているに違いない。
 右手には、しっかりとゴム(エラストマーだったかも)のグリップの感触を味わいつつ、
鈍く光るパン切りブレードに視線を落とす。

       頼むぞ、カーショー。
322 [sage] 2013/09/07(土) 19:16:10.99:inC7xsNk
 経験上、水で濡れたロープは、非常に切断しにくい。まして、今回は中途半端に成長した
海苔が、びっしりと付着しており、おまけにぬるぬると滑りやすい海水が滴っている。
更には、これでもかと緊縛された状態である。プレーンエッジは、端から役に立たないと
踏んでいた。エンジンは二基ある。どちらか作業しただけでエッジがダメになってしまっ
たら、砥ぎ直す道具もない中、お手上げとなる。そういうわけで、ブレードの根本半分は、
わざと二基目のエンジンに残しておくため、ガムテープを巻いて使用不能にしておいた。
慎重に、先端付近のエッジを使い、それこそ一本ずつ、切断を開始した。幸運にも、
網が麻のような天然素材だったようで、ナイロンの網と違い、刃の入りが良好だった。
そこそこ順調に作業は進む。しかし、九月とはいえ台風一過の炎天下。頭に血が上るよう
な態勢で、揺れる波に対抗しているのは太腿でエンジンを挟んでいる自分の体力だけが
頼み。先ほど昼食を摂ってエンジンのクールダウンをしていなければ、この部分も排気
ガスの通り道だから、とても熱くて挟んではいられなかっただろう。
322 [sage] 2013/09/07(土) 19:19:44.79:inC7xsNk
一基目の作業半ばまで来たとき、視界がぼやけてナイフを取り落しそうになる。ひとまず
限界を感じて命綱を引っ張ってもらい、一度デッキに帰る。保冷庫からスポーツドリンクを
取り出して、ラッパ飲み。自分でも驚いたが、まさか一気に二リットルの液体を飲み干す
とは、思わなかった。軽い熱中症手前状態だったのかもしれない。よく見たら、まるで
落水でもしたかのように、全身びっしょりと汗で濡れていた。短パンのベルトに500CCの
飲料ボトルを挟み、再度作業開始。体が芯から冷やされた為か、はたまた水分補給が
効いたのか、幾分作業も捗った。ぎっちり網の巻かれた部分は、丸太に鋸を入れるかの
ごとく切り進めると、ザクザクと切れてくれたのは助かった。これまで手砥ぎにこだわって、
この手のウェーブエッジを敬遠していたのだが、改めて適材適所という言葉を、思い
知らされた。無事帰宅したら、スパイダルコを買おう、と心に誓った。カーショー、
君じゃなくてゴメン。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2013/09/07(土) 19:23:20.24:inC7xsNk
 やはりといえばやはり、一基目の作業を終了したところで、エッジ
前半部分はご臨終状態だった。網には海砂がめり込んでいたし、むしろよくここまで
持ってくれたと思う。たぶんAUS−6あたりの鋼材だと思うが、狭い間隙への抉るような
作業にも、よく折れずに堪えてくれたものと思う。折れる可能性も恐れて、最初に先端部
から使用したのだが、これは取り越し苦労だった。
 二基目に取り掛かる前に、腹が鳴った。二時間ほど作業にかかったが、それにしても
さっき昼食を摂ったばかりなのに、相当体力を消耗しているようだった。メンバーの
持ってきた、バナナやらオヤツのお菓子を腹に詰め込む。妙に気分がハイになってくる。
「俺、この作業が終わって、無事に帰宅したら、今度こそ彼女に結婚を申し込むんだ。」
などと、ついデッキのメンバーに宣言してしまう。野次と口笛を背に、二基目の作業を
開始する。例によって不自由な態勢になりつつ、エッジ保護のガムテープをぐるぐると
取り外す。その時、予期せぬことが起こった。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2013/09/07(土) 19:54:54.23:inC7xsNk
 このナイフ、ボルスター部分がタングのカバーとして機能しており、一本のピンで支えられた
ボルスターを、ピン中心に回転させることで、ブレードのタングが露出して、グリップから
ブレードを取り外し、交換できる仕組みになっている。今回の作業に備えてエッジ根本
半分に巻いたガムテープが、ボルスター部分にもかかっていた。これをナチュラルハイな
気持ちのまま、勢いよくぐるぐると外しにかかったものだから、ボルスターがガムテープに
引っ張られて回転、海上でグリップとブレードが別れてしまったのだ…ポチャン。

   開いた口がふさがらないとは、将にこの事だと、今ながら思う。
322 [sage] 2013/09/07(土) 19:58:21.07:inC7xsNk
 大切なものを落とした際にとっさに手を出してしまうのは致し方ないことだろうが、ここは
不安定な場所だと心得るべきだった。本能的に出した右手にバランスを崩し、あわてて
態勢を立て直す。その瞬間、左手にチクリと痛みが走った。
 とっさのことで、握り込んでしまったのだろう。そっと視線を送ると、今しがた露出した、
後半部分のブレードと、消耗した前半部分のブレードを握り、うっすらと血を滲ませている
己の左手が、辛うじて体重を支えていた。

 実に、不幸中の幸いというべきか。落としたのがハンドル部分の方だったのは。
右手にまだ持っていた、ガムテープを慎重に、今度は消耗した前半部分のブレードに
巻きつけ、これをグリップとして使うこととする。
322 [sage] 2013/09/07(土) 20:00:25.37:inC7xsNk
 グリップを失って力が入れにくくなったこと、タングが先端に来てしまい、所々作業に
邪魔になってしまうこと、そこにやはり疲れが襲ってきて、中々作業が捗らない。
 休憩を挟み、握りをハンカチで補強するなど工夫しながら、やっと三時間で二基目の
作業が終了したころには、既に日差しは西の雲を紅く染めていた。
 もうキャビンに寝転がり、周囲の労いの声に応えるのも辛いような状況で、船は軽快に
マリーナへと進んでいくのを振動で感じながら、ボロ雑巾のようになって眠ってしまった。
藤の蔓で編んだ籠の中には、相変わらずのフェイクレザー様のケースと、全体にわたって
ご臨終となった、傷だらけのパン切りブレード。

既にグリップを失ったそのセットは、再び彼の家族のクルージングにて活用されることは、
二度とないだろう。
322 [sage] 2013/09/07(土) 20:02:26.72:inC7xsNk
 なぜなら、後日、御徒町のマルゴーにて、彼と偶然再会したのだが、その際に彼が
購入していたナイフが、G・SAKAIのキャンプ用包丁セットだったのだ。

 そして、「やはり、あれからウェーブエッジの必要性を、感じたよ」と、スパイダルコを
レジに追加していた。かく言う自分も、スパイダルコを買いに来たのだが。

カーショー、いやKERSHAW、頑張ってくれたのに、本当になんだか、ゴメン。
 
 でも、この季節には毎年、あの時の出来事を思い出す。あのナイフと共に。

      以上、長ったらしい乱文長文、失礼いたしました。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2013/09/08(日) 00:59:59.07:0uKfPc0N
お疲れ様
面白かったです
322 [] 2013/09/08(日) 06:55:10.94:mjrX/Pei
主人公として登場するナイフの名前を、間違って記憶しておりましたorz

カーショーのエクスチェンジブレード
         ↓
カーショウのブレードトレーダー

と、読み替えてくださると幸いです。書き込む前に商品名確認のためにググればよかった。
KEASHAW、本当にごめんなさい。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2013/09/08(日) 13:03:36.45:7GMT7oqR
激しく乙
面白かった

俺もセレーションのナイフ買おうかなぁ・・・
名前なカッター(ノ∀`) [] 2013/09/10(火) 22:02:28.01:L4tXQ7HL
確かに一緒にポケットに入れたはずなのに。
なぜガムは無事でビクトリノックスのクラシックがなくなってしまっているんだ。
名前なカッター(ノ∀`) [] 2013/09/13(金) 08:30:18.15:TGX1AEIe
飛び出しナイフ 二振り盗られた。
一度目は多分 スタンドの奴
洗車の時に盗ったにちがいない

二度目は 引越しの後
実家の倉庫の修理した業者と思う
証拠がないと厳しいな
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2013/09/13(金) 08:46:28.34:2f0Dvnok
人目につくとこに置いといちゃダメでしょー
名前なカッター(ノ∀`) [] 2013/09/17(火) 09:05:46.92:J9Jg1b9T

スタンドの奴て、そっちのスタンドか。
にしても、飛び出しナイフは違法じゃなかったっけ?


クルーザーのエンジン2基がけって、たとえばこんなんか。
ttp://www.yamaha-motor.co.jp/marine/lineup/boat/cruisingboat/luxair/
船体めっちゃ高価。船体も、人命も無事で何より。カーショウの犠牲は、決して無駄ではなかったのだ。
名前なカッター(ノ∀`) [] 2013/10/14(月) 10:03:37.83:V69D8tX+
氏って、4年前の氏なのか。今やっと気づいた。
それにしても、新しい話、カーショウの立ち位置が微妙すぎてワラタ。
名前なカッター(ノ∀`) [] 2013/10/17(木) 13:40:22.23:fBYlOrnd
船上ネタ

食う分は十分に釣ったので、入り江にアンカーいれてひとやすみ(レンタル船ですけど)。
早めに道具を片付けて、魚の処理も終わった。
帰港のためにエンジンをかけて(暖機)掃除開始
いつもなら、バケツに汲んだ海水でナイフなどの血を洗う→デッキを流すのだが
その時はなぜか先にデッキを流して、ナイフ洗い忘れ。バケツを仕舞ってしまった。
横着して船べりから身を乗り出し、海中でバシャバシャやっていた。

魚の脂でヌメル手からナイフはすっぽ抜けて海中へ。
一瞬キラリと陽光を反射させ、すべる様に海中へ消えていくナイフ
しばし固まる私

安価なナイフだったけどお気に入りだった。
なにより自分の不注意で海の藻屑にしてしまったナイフに申し訳なかった。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2013/10/17(木) 14:06:11.41:OSelEWLC
なかなか詩的でいいですな
いや、悲しい話だけど。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2013/10/18(金) 03:01:50.92:rU90JhLT
実際その時の船上では
「アワワワワ・・・」→ボーゼン
かなりブザマだったと思いますよ。
心に残ってるのはこの一件ぐらいです。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2013/10/29(火) 23:47:31.35:7RNH91Ge
もう大学卒業になる長男が小学校中学年の頃かな、俺のレザーマンPSTが無くなった。


レザーマンが雑誌で紹介されたころ俺は飛び付いた。正規輸入だと本当に初期のだった。
仕事に生活に、バイクや車のトラブルに乱暴に扱ったが、タフで使いでがあった。一度ネジがどこかにいってしまって修理にだしたりしたが、それなりに愛着のある一本だった。
でもそのうちWAVEを購入して、そっちがメインになってPSTはバイクのハンドルポーチに入れっぱなしにしていた。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2013/10/29(火) 23:48:15.41:7RNH91Ge
長男の友人で当時よく遊びにきていた、小学生にしては体格のいい「彼」は寡黙な印象で、いつも黙って長男とゲームをしていた記憶がある。

彼が我が家に来るようになってから、俺の趣味品が無くなっていった。
最初は「またどこかに仕舞って、場所を思い出せないだけだ」と思っていたが、そうこうするうち彼の母親が我が家に現れた。


彼の母親が言うには彼は病的なまでの盗癖の持主で児童相談所だかにも行ってるらしく、最近遊びに来ていた我が家で何か無くなったものがないか確認に来たようだった。
最近おかしい?と思い出していたいた俺は、確実に無くなっていたエアガン一丁(しかそのとき思い浮かばなかった)のことを伝えた。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2013/10/29(火) 23:48:56.81:7RNH91Ge
数日後母親は俺の、ホルスターに入ったエアガンを持って我が家に来た。
平身低頭で、他にも何かなくなった物はありませんか?と聞いてきたが、無くなったとしても今まで困ることもなかったわけだから、俺もそれ以上は何も言わなかった。というか、同じ親として追及出来なかった。
本当はレザースキャバードに入ったマグライトや、他にも心当たりはあったのだが、まあ子供が持っていてもそれほど問題にならないだろう物だったから。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2013/10/29(火) 23:49:28.74:7RNH91Ge
それからしばらくたってから、バイクのケーブルを軽くいじろうとしてハンドルポーチをまさぐった。
PSTが無い。

「ああ、これもやられたか。」

まあ仕方ない。今さら異議申立てするほど野暮でもない。素直に諦めた。
小学生に刃物を、なんて今のご時世ならちょっとした問題になりそうな話だが、不思議とその後に起こりうる問題を予見することができなかった。
俺自身小学二年ごろ肥後の守三得から刃物に目覚めた記憶があるので、彼の気持ちもわかるような気がした。
人の道から外れるのも、小学生当時の俺がPSTを見つけたら、当時の俺ならやっちまっていたかもしれない、そんな気がした。
名前なカッター(ノ∀`) [] 2013/10/29(火) 23:50:17.81:7RNH91Ge
ただまあ残念なことに、その後噂で聞いたことには彼は盗品を自宅の外に隠していたそうな。トンビのはやにえのように。近所の空き地やら裏山に。
そしてまさしくはやにえのように、その存在を忘れてしまうようだった。
それはそうだろう彼の親も息子の部屋に不審なものがあったなら、その本来の持ち主を捜し歩いていただろうし。俺のPSTもどこかに埋まっているのかもしれない。

でもいまだにPSTだけは彼が手元に隠し続けていてほしい。他の遺失したものは俺にもそれほど愛着があったわけではない。俺がPSTに、肥後の守に対してときめいた気持ちを、彼が継いでくれるなら俺はすべて許すつもりだ。
なぜなら、さらに残念なことに、うちの息子どもは(当時のナイフマガジンのマイク真木の記事にならって)10歳の誕生日にナイフを贈っても、大してときめきも感動もおぼえていなかったからだ。泣
名前なカッター(ノ∀`) [] 2013/10/30(水) 08:46:56.52:SqTaI67j

> トンビのはやにえのように。

モズ、だなw
あぼーん [あぼーん] あぼーん
あぼーん
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2013/11/01(金) 00:12:35.28:GqWu17C7
諸刃のダイビングナイフ、ダガー規制で泣く泣く普通のナイフみたいに改造。
ある意味違うナイフに成ってしまった、元ダガーナイフとの別れ。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2013/11/03(日) 15:39:40.80:RjmfzvWC
初フォールディングナイフは安くて得体の知れないものだった
刻印はサージカルスチールとだけの中華製だと思われる
バックロックでブレードはドロップポイント、ハンドルはボーン
仕上げも動作もそこそこでフォルダーのあらゆる事を教わった気がする

釣りへ行ったときに紛失

その後は安物ナイフの教訓を活かした製品選びをしているのだが、なぜかいつも紛失した
アイツを探している様な気がする。同じ色のホーンのハンドルが目に入るとつい反応して
して、デザインを良く見て違う事が分かるといつも落胆するのだ。25年以上前の無銘の
製品が見つかるとは思えないがそんな事を繰り返してきた。でもオレには分かっている。
同じ型を見つけ手に入れてもそいつはヤツじゃないってことを・・・

ヤツは取り返す事の出来ないオレの一部も持って行きやがったんだ。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2013/12/23(月) 15:01:46.62:RndjCacc

切ない思い出ですね。
でも、使わずしまわれているよりも、使ってもらって無くされたほうが
そのナイフも幸せだったでしょう。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2014/04/28(月) 10:37:06.54:Jcf6NMgy
新年度Age
名前なカッター(ノ∀`) [] 2014/05/05(月) 04:47:58.98:awyzryC2
セベンツァ21スモールを今日無くした
高校2年の時バイトした初任給で買った 持ってるナイフの中で一番高いナイフ
いつもポケットに挟んで持ち歩いていた 剃刀みたいに鋭くして 
分解掃除でグリスも縫って どんなお守りより信頼できるツールだったのに
今日いつのまにかポケットから消えていた  バイクで2回こけても落ちなかったのに
価値の解らない奴が拾って腐ると思うと涙がでる
でも全部俺が悪いんだ いつもポケットに君がいるからそれが普通になっていた 夢の中でもポケットにあるぐらいだ
もっと気にかけてやればよかった 体の一部を失った気持だよ
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2014/05/05(月) 11:44:47.56:UBgNg6TO
俺も初任給でセベンザ買った口だ
この世の中、価値が分からない奴ばかりでは無いし
分からなくたって、良いものに触れていけば分かるようになるんだ
元々、ナイフに興味が無ければ拾わないんだろうし、扱いはどうにしろ拾った人は大事に使ってくれるだろう
名前なカッター(ノ∀`) [] 2014/09/03(水) 22:15:14.69:h3RfgjAi
また台風の季節
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2015/02/16(月) 21:59:41.89:3Xduyyj8
先日、クーパーのナイフを、某キャンプ場で拾った。
例の、真鍮ヒルトがブレードに鍛接してある、あの銘品だ。作者亡き後も、いまだ人気だと聞く。
そこそこ砥ぎ減りしており、ハンドルにも大小の擦過傷と持ち主の手の形であろう擦り減り。
そのままにしておくには忍びなく、最寄の警察署に届け出たのだが…

関東の悪名名高い、焼売県警に届け出たのが間違いだったか。
警官は受け取ったそのナイフを、レンチや万力などの重金属ぽい
拾得物の積まれた箱の中に、無造作に放り込んだ。
おまけに、刃渡り6センチ以上のナイフを持ってきたとして、銃刀法違反で
取り調べられた。不起訴処分となった今も、胸糞悪い。
「拾ったナイフだとの主張を、一応採用しておきますよ」って何だ。ネコババしといたほうが賢いってか。
もう二度と、警察に協力などしない。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2015/02/17(火) 17:28:49.60:BRjLLlkQ
警察に持っていくよりキャンプ場に預けたほうが良かっただろうな。
思い入れがありそうだし無くしたとわかれば持ち主も探しに来ただろう。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2015/05/05(火) 11:51:00.17:YSDy5f06

 粉末といえば粉末冶金製法。
 粉末ハイス鋼という材質が出た当時、HRC65以上を謳う硬

度に興奮しました。
 某ナイフショップで、粉末冶金製法の鋼のことを、勘違

いして「粉末治金」と連呼してしまい、店主に「まぁ、そん

な鶏肉は、訊いた事が無いね」とpgrされてしまい、ようや

く事の重大さに気づいて首まで赤くなり、しばらくその店

に通えなかったチキンな私。でも今さら乍らやっぱり恥ず

かしいですorz。

 ハイス鋼といえば、ファクトリーで商品展開を手広く行

ったのは、ガーバーのM2ハイスピードスチールを使った、「

アーモハイドシリーズ」と、ちょっと高級志向の「C(カスタ

ム)シリーズ」が、先駆者と呼んでも差し支えないのではな

いのでしょうか。
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2015/05/05(火) 11:51:53.66:YSDy5f06
 1970年代から90年代前半まで、分厚いクローム鍍金に覆

われたHRC61前後のハイス鋼の切れ味と永切れ、研ぎ易さは

ハンターの憧れでした。北海道のハンターが、クローム鍍

金ハンドルのビッグハンターを所有しているのを、羨望の

眼差しで見た記憶があります。
 さて、アーモハイドシリーズですが、釣り人用にも商品

展開がありました。
マスキーというモデルと、コーホーというモデルです。こ

の二モデルは、ハイス鋼ではなく当時としても良質な440C

ステンレスをブレードに採用し、耐食性を持たせた上で、

研ぎやすい素直な鋼に処理されており、またその切れ味も

素晴らしいものでした。
 かつて、コーホー6インチを愛用していた時期がありまし

た。そして、想わぬ別れをしてしまった経験があります。

今回は、そんなエピソードです。

では、以下に記述します。極度の感情移入防止のため、口

調等表現を改めます。ご容赦下さい。
371 [sage] 2015/05/05(火) 11:53:53.39:YSDy5f06
 今では、その個体数の減少からキャッチ、タグ&リリー

スがエチケットのカジキ釣り。まだ20世紀の頃は、釣り上

げたら漁港まで持ち帰り、秤で計量後に食べたり配った

り・・・要するに釣り上げた魚は殺すのが当然の頃、ちょっと

仕事が上調子だった自分は毎年、金持ちのたしなみ(笑)み

たいなスイーツ脳で、ある離島の漁船を借り切って、一定

期間カジキ釣りに精を出すような、贅沢を行っていた。
 当時自分は時代に動かしてもらっていたのだという現実

を知らず、己の力で若くして成功者に成り上がったと言う

自惚れが強く、周囲の意見を碌に聞かずに我が道を行く、

ワンマンな恥知らずだったと、今では思う。若気の至り、

と言えばそれまでだが、随分と不快にしてしまった方も多

かったことだろう。
 ご存知の方も多いだろうが、カジキ釣りは船で沖まで行

く。ポッパー、タコベイトなどと呼ばれる疑似餌(以下ルア

ーと呼ぶ)を、海面に落として糸を長く張り、船の推進力で

ルアーを流し、海面を意識している魚を誘う。あとは魚が

ルアーを獲物と間違えるか、あるいは興味本位、または怒

りに任せて食いついてくれれば、そこから釣り人と魚のや

り取りが始まる。
 首尾よく船縁まで魚を寄せることができれば、釣り人の

勝ち。途中で針が外れたり糸が切れたりしてしまったら、

釣り人の負け。特に糸が切れてしまうと、口にルアーを咥

えたままになってしまう魚の、その後の生活に関わる深刻

なダメージを与えることになるので、糸切れだけは避けな

ければならぬ、と言うのが大まかなカジキ釣りのルールだ

った。
371 [sage] 2015/05/05(火) 11:55:37.28:YSDy5f06
しかし、それも狙い通りに"カジキが釣れれば"のことで

あり、結構な割合で目的以外の魚(釣り人は外道「げどう」

と呼ぶ)が、その針に期せずとしてかかってしまうものだっ

た。その代表格が、シイラという魚だ。シイラ自体はそれ

を狙えば結構引きも強いし楽しい魚だが、大枚叩いたカジ

キ釣りでは、一日のうちの少ない時合い(一日のうち魚が食

いつきやすい、僅かしかない貴重な時間帯)を、外道のやり

取りに費やしたり仕掛けを絡まされたりと、実際には煩わ

しい事この上ないものだった。
 ところが、シイラも刺身にすると水っぽいが、揚げ物や

塩焼きにすると淡白な味わいでかなりイケる。そんなわけ

で、外道に煩わされた腹いせに、数匹だけはリリースせず

に食用として持ち帰る為、腰にはフィレナイフを装着する

のが常だった。自分の場合は、それがガーバーのコーホー6

インチだった。これはハンドルのアーモハイド(アルミハン

ドルに特殊な滑り止め加工を施したもの)
のグリップエンドがスプーン状に加工されており、腹を割

いたあとの魚の血合いを抉り出すのに最適だったし、何よ

り滑りやすい船上で、その膨らんだグリップエンドがすっ

ぽ抜けを防いでくれるので、先述通りの優秀な鋼材も相ま

って気に入りの一本だった。
371 [sage] 2015/05/05(火) 11:56:44.52:YSDy5f06
 毎年、数日間も漁船を借り切って居れば、自ずと馴染の

船宿と家族ができてくる。当時支払いはかなり弾んだほう

だった為、特定の船長が付き、通年の漁の合間に好意で探

しておいてくれたマル秘ポイントに、特別に案内してくれ

るようなパターンになっていた。おこがましいが、都心で

心が汚染されていた自分には、金銭の対価としての釣果と

して、それが当然と、思っていた。
 その船長は、当時結構な年齢だった。気さくだが遠慮が

無い。漁についてはどんな質問にも淀みなく答えるが、払

いのいい顧客である筈の自分にも、間違いがあれば容赦な

く罵声を浴びせる。そういえば、どうして当時ワンマンな

自分がそんな船長に逆上しなかったのか。多分本当のとこ

ろ、叱ってくれる人を求めていたんだろう、と思う。こん

な未熟でありながら、一丁前に人様には意見を申し上げて

いたのだ、と思うと 今更ながら顔から火が出る。
 子供の頃、田舎の祖父母に会うのを、楽しみにしていた

。懐が広く、いつも笑顔で優しく受け入れてくれた。しか

し一線を越えると、とても厳格でおっかない。そんな懐古

的な楽しみも手伝い、この年もかの老人を尋ねて、かの島

に渡った。予約も葉書(ネットはパソコン通信の時代、電話

では方言と鈍りで意思疎通が困難な上、呼び出しになるの

で却って面倒)で済ませており、準備は万端な筈だった。
 大きな島のフェリー乗り場から更に待機していた渡船で

渡った小さな離島のいつもの漁港。しかし、そこに待って

いたのは、いつもの翁ではなく、うら若い女性だった。
371 [sage] 2015/05/05(火) 11:58:14.03:YSDy5f06
「歓迎 ○○様」の画用紙を掲げた、気乗りしない表情の

彼女は、年の頃、二十歳過ぎだろうか。量の多い、太い長

髪を束ねて、日焼けした浅黒い顔に筆でサッと刷いたよう

な太目の眉毛。その直ぐ下に切れ長な二重瞼と長い睫毛。

彫りの深い顔から、南国育ちの少女の面影が感じ取れた。

背は高くは無いが(胸も大した事は無いが)、引き締まった

体つきに、楽ではない島の生活の名残が窺い知れた。
 「○○様」とは自分の事だ。と言うより、この渡船から降

りた客は自分ひとりだというのに、わざわざ思わせぶりに

画用紙を掲げている彼女の姿に、訝しいよりも妙な違和感

さえ、感じた。

 「○○さんでしょ、狭苦しい××島へ、ようこそ。」

 両手両肩に荷物満載で桟橋に降り立った自分への、これ

が彼女の、最初の挨拶だった。
 いくら当時に未熟とはいえ、自分よりもはるかに上(?)を

行くしたたかな連中との駆け引きに慣れていた自分は、彼

女の無礼な振る舞いに漂うわざとらしい雰囲気に、「誘われ

て不快な表情をしてはならない」と直感し、

 「お世話になります。よろしくお願いします。」

とだけ答えて、なるべく笑顔を作った。人間、出会いとい

うものは、本当に大切だと思う。これは、僅か数年前にバ

イクツーリングで出合った紳士、W氏の処世術を真似たも

のだった。当時はその真意を理解もせず、ただ本当に猿真

似だったのが情けないが、当時としては精一杯の「大人ぶっ

た対応」だった。
 彼女の大きな眼の、その大きな割合を占める黒目が、そんな虚

勢を張った自分をヒタと見つめる。自分は鳶色の瞳の為か

、真黒い瞳に見据えられるのはとても苦手に感ずる。キョ

ドッてしまうというのだろう。それまでのあしらいの自信

は、まるで根拠の無いハリボテだったと強く実感した。所

詮、猿真似はそれ以上のものではない。
371 [sage] 2015/05/05(火) 12:01:02.04:YSDy5f06
 彼女の運転する、スバルサンバーはMT車だった。その

助手席に収まるまで、結局荷台に荷物を乗せたのは自分だ

った。いつもなら翁とその息子が桟橋から至れり尽くせり

なのに・・・そんな不満はあったが、彼女の運転に眼を見張り

、不満を口にする所では無かった。
 船着場代わりの漁港から翁の所有船がある漁港までは、

山一つを超える。下り坂の連続急カーブで、彼女はダブル

クラッチ、ヒール&トゥーを継ぎ目無くこなし、リアをス

ライドさせつつカウンターを当てながらガードレールの無

い道路ギリギリに車をコントロールする。
 まぁ、彼女に歓迎されていないことだけは、充分に分か

った。荷物、固定もしてないのに大丈夫かなぁ。少なくとも、翁に苦情くらいは申し立ててもよいか

な、と思いながら、足を踏ん張った。
 しかし、翁の家に到着するや、信じられない申し入れを

受けることとなった。

 
371 [sage] 2015/05/05(火) 12:01:51.76:YSDy5f06
 聞けば、翁は葉書を受け取った時点で既に持病の腰痛が

悪化しており、今年は自慢の操船技術が発揮できそうに無

い状態であったこと、息子に代役を託すつもりだったが、

当時役場勤務のご子息は、ちょうど50代の管理職、離島

の観光事業を立ち上げている責任上、数日間も客の相手に

出ずっぱりになるわけには行かないこと、その他に船舶免

許を持っている親族といえば、今夏休みで大学から帰省し

ている、翁の孫娘しか居らず、今回はその孫娘のガイドで

我慢して欲しい旨・・・
 数年続いた関係でなければ、大枚叩いて来た条件に釣り

あう様なものではない。しかし、他の船宿に直ぐ乗り換え

るのも、翁やご家族の申し訳なさそうな表情を前にすると

、ちょっと言い出せそうに無い雰囲気だった。
 「分かりました。気にせんでください。では、そのお孫さ

んをご紹介下さい。」
 一応、ここまでは大人の対応ができた、と思った。翁が、
「さっきから、あんたの相手をしとったろう、あの娘よ」と

言われるまでは。
今日は、とりあえず風呂と食事を済ませて、早々に寝床に

就こう、と思った。
371 [sage] 2015/05/06(水) 17:59:00.04:iHF2rRzB
 一応、これでも忙しい身なので、万障繰り合わせての休暇。もちろん、一時たりとも無駄にせずに精一杯楽しみ、そしてまた都会の雑踏へと帰ってゆく・・・
それが更に仕事の活力となるはずだった。心地よいカジキのファイトの余韻に浸りながら。
 だが、今年は何だか不機嫌な小娘と二人きりで大海原か。嫌だなぁ。自分は、こんな離島まで来て、何で人間関係に煩わされるんだろうなぁ。
そんな事を思いつつ、また布団の中で焼酎をちびり、ちびり、懲りずに深酒をしてしまった。いっそ、このまま寝て過したいような気分だった。
 しかし、全ての人に平等に、朝はやってくる。時合いが大切な釣り、容赦なく朝の暗いうちから目覚ましが、それでなくても宿の女将さんにせかされて布団を出る。
 なんとなく二日酔いのまま、食事をしていると、女将さんが「あれまぁ!」と、テレビを見ながら素っ頓狂な声を上げている。ボーっとしか内用が頭に入らなかったが、
先日まで全く気配の無かった低気圧が大型化して、早晩台風となる可能性が高いと言う報道を見てのことだったらしい。

後に、このニュースがその後の大きな出来事に結びつくとは、到底考えも至らないことだった。
371 [sage] 2015/05/06(水) 18:01:09.32:iHF2rRzB
 ようやっと鴎が鳴きだす頃、漁港では既に件の「船長」が操船準備にかかっていた。腰まである長い黒髪を一つの太い三つ編みに束ね、末端を白いシュシュで留めている。
白いTシャツの上から青いツナギを着ているが、気候のせいか、ツナギの上衣部分ははだけたまま、腰で縛っていた。当時目新しい、二酸化炭素での自動膨張式救命胴衣を着用し、
とりあえずのマナーは大丈夫なようだ。船内を所狭しと動き回り、きびきびと動く様は、一応信用しても良さそうだ。

むしろ、良く見るとなかなか眼の保養になる、ちょっとした容姿とスタイルの持ち主だと気付いた。
 だが、昨日からの不快な態度を思い出し、またぞろどんよりとした気分になり、船への足が重くなる。第一、彼女だってとうにこちらが漁港に大荷物を持ってきていることくらい知っているはずなのに、
顔も向けるつもりは無いらしい。
 まぁ、自分はおねーちゃんではなく、魚と遊びに来たんだ、あのおねーちゃんはキノコだとでも思えばいいさ、そう、見た目は綺麗だが、実は毒キノコだ。
 腰のベルトにガーバーのコーホーが装着されている感覚を、確かめる。船に乗るのに腰にナイフを装着すべきか否か―これは両論分かれるだろう。

転倒の可能性が高いデッキで、腰のナイフの所為で大怪我をするかもしれない、だが、いざという時手元に無いと、重大な危機から救われないかもしれない
―そして、これは実に大きな意味を持つことになる・・・かも、知れないのだ。
371 [sage] 2015/05/06(水) 18:06:22.33:iHF2rRzB
「おはよう、今日は宜しく。」
そういいながら、荷物を積み込む。「船長」は、ようやくこちらの存在に気付いたようなしぐさで、
「あら、もうそんな時間?こちらこそ、宜しく。」 
とだけ、返してきた。デッキブラシでバケツの中をかき回しながら―
 一体、何が不満なのか?こうなると、むしろ彼女の態度に興味がわいてくる。反抗期か、いや、そんな年ではないだろうし、夏休みが数日潰れることに不満か?
しかし、バイト料は結構な額になるし・・・個人的事情?失恋とか?−いや、それに振り回されたら、こっちが馬鹿みたいだから考えるのは止めよう。
 スターンデッキ(船尾)にタックル(釣竿、リール、ルアーなどの総称)をセットする。ファイティングチェアーなどと言う豪華な装備は無いが、
一応それなりに古い漁船を改造して、遊漁船としても使えるような改造を施してあるこの船は、翁の所有船だ。
 あまり会話に気が進まないが、一応今日のプランを海図を元に、聞いて見なくてはなるまい。海図は海域ごとに毎年更新されるので、
最新の海図は船長が持っていなくてはならない。
 「海図の見方、分かるの?」
御嬢さん、こう見えても、貴女がまだこんなに小さかった頃には吾輩既に小型船舶一級免許所持者でして―といいたいのを堪えながら、
とりあえず船長のプランを聞く。翁の教えを忠実に守る予定らしく、一応時刻、潮位、当日の予報による風向きを考慮した上での予想を元に立てた、
ソツの無いプランを聞き、一安心。
 「帽子、飛ばされないようにネッ!!」
漁港を出るまではデッドスローだった彼女の操船は、一気にフルスロットル。
ハルが波を割りながら、プレーニング状態で船は進む。

しかし、妙に波が高くは無いか?毎年、こんなんだったっけ??
翁はこんな乱暴運転しなかったし、比べようが無いから分からないなぁ。
371 [sage] 2015/05/06(水) 18:07:54.36:iHF2rRzB
朝靄の中、ポイントを変えながら何度も有望なコースをトレースする。しかし、どうもカジキにありつけない。カジキは、ルアーが波を下るような姿勢になったときに、最も食いつく可能性が高い。
双眼鏡を手に、船長に細かい指示を出すが、上手くいかない。船長は、決して操船が下手なわけではない以上、カジキが釣れないのは指示するこちらの技量か。
 ちょっと休憩をとった後、昨年の爆釣ポイントを思い出す。確か、ここから4海里ほども行けば、時間帯的にもOKな筈だ。早速船長に移動を申し入れるが、あっさりと却下された。
「そこは無理よ。岸から五海里以上は離れられないもの。私の場合は。」
ああ、ありましたねぇ。そういう規定が。当時の小型四級船舶免許所持者ですね。船長は。早く言ってくれ・・・今更船長交代できない(一応航海上のルール)し。
仕方が無いので、海図を参考にあちこちトレースして見る。時間は過ぎるが、カジキは釣れない。ようやっとルアーを咥えた魚は、80センチはあろうかという、シイラだった。
 まぁ、それでも何もつれないよりはマシだ。それに、これはこれで結構面白い。しかし、カジキが先に釣れていればシイラもついでにキープする気にもなろうが、
今はとてもキープする気にはなれない。
 船縁まで寄せたシイラを、リリースする。そのとき、直ぐ後ろに、人の気配を感じて振り向いた。船長が、仁王立ちになってこちらを睨み下ろしていた。
371 [sage] 2015/05/06(水) 18:09:59.33:iHF2rRzB
「ねぇ。今の魚、逃がしたじゃない。カジキだって、どうせ逃がすんでしょ。」
何か言いたげな口調だ。真意を測りかねながらも、不意な問いかけに、面食らう。
「まあ―あれだ、サイズ的に満足いかなければ、逃がすだろうね、カジキでも。」
「貴方にとって、それは何なの?」
「・・・?・・・?」
畳み掛けるような問いかけをする船長の表情に、初めて見る表情が窺えた。当方に不快を抱くというよりも、何かを探し、焦っているような表情だった。
折りしも、日が高く上り、波の状況もあまりよくない。少し休憩が必要だった。
―船長に休憩を申し入れた。薄曇りの日差しが注ぐデッキで、訥々と船長の本音が出始めた。船長には、分からないという。わざわざ遠くから、
魚を釣りに来たくせに、妙な形式ばった釣り方しかせず、逃がしたりする。全くそれは、生産性の無い行為だという。今、本州の親戚に身を寄せて、
国立の大学に通っているが、大学の同期も遊びほうけて、先を見据えず、無意味な日々を謳歌している。そんな日々が嫌で、夏休みの間だけでも島に戻ってみたが、
島の皆ものんびり暮らしているだけ。こんな環境で、私だって今現在―
「一日を、無駄に過しているような気がして、仕方ないのよ。特に、貴方のように無駄な一日を、わざと過しているような人のお供には。失礼な事言って、ごめんなさい。
でも、こんな事して、なんになるって言うの?」
371 [sage] 2015/05/06(水) 18:12:23.67:iHF2rRzB
―そうか、彼女の当初からのしぐさは、そんな鬱憤が噴出した結果だったのか。
しかし、それはそれとして、接待は別と割り切るのが然るべきだろう。気持ちが行動に現れるなんて、大人気ないなぁ。
まぁ、学生なら、しょうがないのかな。しかし、それよりも気になることがあった。実は、彼女の本音が出始めた頃から、自分の右の鼻の穴に
デカイ鼻糞の存在を、感じ始めていた。しかも、凄く気になる。一度気になると、もう居ても立ってもいられない。

だが、今のシチュエーションは、鼻腔に指をねじ込むには、相当無理があることだけは明らかだった。
船長は、またあの真黒な瞳で、ヒタとこちらを見つめている―
拙い経験から、理想論を言って、この話をとりあえず切り上げたかった。
とりあえず、あれだ。過去の偉人の言葉を借りパクして、何かそれらしいことを、立派ぽい言葉を、羅列することを試みた。
結論まで至らないところで、船長はまくし立てた。

「だから、その人たちに恥ずかしくない一日を生きろって言うんでしょ!貴方の今日一日は、どうだったっていうの!?」

ネ タ バ レ し て た ! 万事休す。
呼吸するたびに、気になる。超気になる。
371 [sage] 2015/05/06(水) 18:14:45.88:iHF2rRzB
いろいろな思考が頭の中を駆け巡る。ふと、場違いにも鉄砲を担いで原野を闊歩していたときに出合った、老紳士から頂いた挨拶が、頭をよぎる。
彼は確か、会うなりにこやかに、こう言ったのだ。

    「撃てましたか」

 猟とは、獲物が獲れればよいというものではない。山の空気、枯れ草の臭い、木漏れ日の温もり、そんな風景を全身で感じながら、
不意に出会う稀有な獲物との瞬間を期待する感情―そう、「獲れたか」ではなく、「撃てたか」なのだ。
肩に担ぐ獲物の有無ではなく、楽しめたか―

「今日一日を、有意義に楽しむことができましたか」

 という、ハンターの魂の真髄を突いた、単純にして素晴らしい言葉と、後刻無性に感心した記憶があった。それが、不意に蘇った。
 この感情を、もっと船長に分かりやすい例え話にして説明したかったが、どうにもこうにも眼前に据え付けられた大きな黒目に見詰められて
キョドッてしまい、そのまま「自分は、今日一日を、有意義に過ごしたい。こんな話があってね、分かりにくいかもしれないけど―」と、話した。

 話し終えると、船長は視線をデッキに落とした。件のハンターの挨拶について、反芻しているようだった。よし、今がチャンス、右手の小指を鼻腔に突っ込んだ瞬間、
 船長がガバッと顔を上げて、こっちを見据えた。万事休すパートU。

 しかし、船長の口からは思いも寄らない言葉が出てきた。

「・・・エンジンが、止まってる・・・!!」
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2015/08/16(日) 21:55:25.75:PW/jleh6
長文さん続きまだですか?
名前なカッター(ノ∀`) [sage] 2015/12/23(水) 04:18:24.20:FmFi93fa0
ヤスリ削って作ったナイフ
スローイングナイフとして使ってたらいい音させて折れたわ
名前なカッター(ノ∀`) [] 2016/03/01(火) 15:14:06.67:wcuxsEVn
カーショーのシャッフル
何の気なしに薪にプスッと刺したら折れた
残念ながら当然の結果
あんな薄くて華奢なナイフなのに普段から荒く使いすぎてたからだな

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