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『読みました』報告・国内編Part.8


名無しのオプ [] 2014/07/10(木) 14:31:01.36:vg/Otbu3
国内編が落ちたままなので立ててみました。
過去のスレッドは後ほどリンク予定です。
よろしくお願いします。
名無しのオプ [sage] 2014/07/10(木) 14:33:44.13:l6t7NwhK
NGワード・あぼーんのススメ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■書斎魔神 ◆AnFGIeGcVrq4 とは?
かつて発狂コテにも認定された、読みましたスレに住みつく
NGワードの指定対象人物。
ネタバレを含めた持論を主張し続け、また、
議論においても他者の意見を受け入れようとしない傲慢な態度から、
他の住人からは忌み嫌われることに。
過去スレでのアホアホ発言を一部抜粋。
『 乱歩賞受賞作「暗黒予知」を読み返していた。 』(そんな作品はない)


誹謗中傷当たり前、間違いを認めない、自作自演当たり前と、
三拍子揃った厄介物。
彼の発言に反応してしまうとスレが荒れる一方だが、
反応さえしなければ独り言を言い続けるだけなので、
余程のことがなければ、NGワードに指定してのスルーが推奨される。

どうしても我慢できない・反論したい場合は最悪板で。

■NGワード・あぼーんについて
2ちゃんねる専用ブラウザのオプションのひとつ。
設定することで、任意のレスを消すことができる。

2ちゃんねる専用ブラウザに関するサイトはこちら。

ttp://http://www.monazilla.org/
名無しのオプ [sage] 2014/07/10(木) 14:34:29.00:l6t7NwhK
 || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
 || ○荒らしは放置が一番キライ。荒らしは常に誰かの反応を待っています。
 || ○放置された荒らしは煽りや自作自演であなたのレスを誘います。
 ||  ノセられてレスしたらその時点であなたの負け。
 || ○反撃は荒らしの滋養にして栄養であり最も喜ぶことです。荒らしにエサを
 ||  与えないで下さい。                  ΛΛ
 || ○枯死するまで孤独に暴れさせておいて   \ (゚ー゚*) キホン。
 ||  ゴミが溜まったら削除が一番です。       ⊂⊂ |
 ||___ ∧ ∧__∧ ∧__ ∧ ∧_      | ̄ ̄ ̄ ̄|
      (  ∧ ∧__ (   ∧ ∧__(   ∧ ∧     ̄ ̄ ̄
    〜(_(  ∧ ∧_ (  ∧ ∧_ (  ∧ ∧  は〜い、先生。
      〜(_(   ,,)〜(_(   ,,)〜(_(   ,,)
        〜(___ノ  〜(___ノ   〜(___ノ
名無しのオプ [sage] 2014/07/10(木) 14:36:39.13:l6t7NwhK
書斎魔神にどうしても我慢できなくなったり反論したくなった場合は、下記スレにて

書斎魔神・アホアホ語録指導部屋 23
ttp://http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/8993/1402401737/
書斎魔神・アホアホ語録格納庫 その33
ttp://anago.5ch.net/test/read.cgi/tubo/1325054903/l50">ttp://anago.2ch.net/test/read.cgi/tubo/1325054903/l50

【コビベ】書斎魔神ファンクラブ17【フンコロガシ】
ttp://hello.2ch.net/test/read.cgi/bobby/1403878915/l50
本スレで書斎魔神を叩いている奴ら
ttp://http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/8993/1360142714/
名無しのオプ [sage] 2014/07/10(木) 18:26:26.57:BZLKpRBf
ネタバレがありましたら作品既読の方は削除依頼に
ご協力お願いします

mystery:ミステリー[レス削除]
ttp://qb5.2ch.net/test/read.cgi/saku/1397656104/
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/07/11(金) 22:25:49.82:vyM7BPNn
「脳波の誘い」佐野洋(春陽堂書店)

テレパシーが使えると主張する老人の取材に向かった週刊誌記者水崎。
自著の出版を持ちかける老人に対し水崎は戯れにテレパシーで他人を自殺させたらと返しとある人名を告げる。
果たして数週間後、当該人物が自殺と思われる死を遂げた。それは水崎の愛人の夫であった……。

某スレからのセレクトかな。佐野洋の長編は初。面白かった。200ちょいと短いながら内容はしっかり詰まっている。
テレパシーによる殺人という怪奇趣味が割とすぐ薄れてしまうのは少し残念だが、ハウダニット主眼の本格かと思いきや後半法廷劇になったりして飽きさせない。
真相には驚いた。フェアじゃないし、爪が甘いのも気になるけど。

ただ39ページがなあ……。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/07/11(金) 22:28:23.93:vyM7BPNn
「龍の寺の晒し首」小島正樹(南雲堂)

群馬の山奥首の原村で起こる連続殺人。結婚前夜の花嫁を皮切りに妙齢の娘たちが奇怪な状況で次々と殺されていく。
死体は決まって首をもがれ離れた寺の境内で見つかるのだった。被害者の幼なじみの刑事浜中は被害者の妹の友人海老原と組んで捜査を行うことになるのだが、
生首を捜す最中に陶製の龍が消えたり空を舞ったりするところを見てしまう。
果たしてこの怪異ある殺人劇の真相とは――。

冒頭から冒頭に苦言を呈したい。キモいよ。必然性なくはないけど、もう少しオブって。
とは言え傑作である。よくもこれだけ奇想を散りばめられるものだ。汲めども尽きぬ泉の守り人。それがこじまさなのだ!
馬頭の襲撃、密室からの生首消失、独りでに鳴る鐘、飛翔する陶製の龍、付近を彷徨う生首、ボートを漕ぐ首無しの体等々。
もうただただ呆気に取られつつ読み進むしかない。前半に驚き、後半に唸り、読み終えて感服する。これだけ。

あ、そうそう動機もいい。これ一昔前なら弱いとか言われていただろうが今、十分にリアリティがあると納得させられる。
結局当人と周りの問題なんだよな。時期的にしょうがないことでは絶対ない。

疑問点は一つだけ。74ページの浜中の感想おかしくね? お前見たのかよ。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/07/11(金) 22:31:15.08:vyM7BPNn
「Sの悲劇」中町信(青樹社)

唯一の短編集。
レアのみならず中身も評判良かったので期待したのだが……まず最初の2編が詰まらない。
おいおい表題作と思いながら読み進むと「裸の密室」でやっと感心。長めの話だが伏線も丁寧で良く出来ている。
密室トリックはいいが……と思ったらやられたわ。
その次の「カブトムシは殺される」も良いね。チェスタトン的というか論理のアクロバットというか、これもやられた感十分。
残り3作もまあまあで着地は上々だった。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/07/11(金) 22:34:51.86:vyM7BPNn
「幽女の如き怨むもの」三津田信三(原書房)

同じ遊廓の同じ部屋で戦前、戦中、前後に3度ずつ計9度も起きた身投げ事件。
ミステリー作家刀城はこれらに論理的な解釈を試みるが、掴みどころのない全容に苦戦を強いられる……。

のっけからなんだが、シリーズ最低作じゃね? 糞長い癖に怖くもなくスッキリもしないんだから。
第一部とかストーリーがそれなりでも結局変格にも本格にもなってないんじゃ加点にはならん。
つか遊女ワナビの一人称て時点でもう↓↓。もうあんなシーンやこんなシーンが来るて判るやん。そして予想通りすげえ嫌だった。

長々読んで第四部でやっと解決かと思いきや……。いや確かにあの一言にはおおっと思ったよ。でもよ。やっぱ有り得んて。
“これ”を機能させるには巧く綱渡りさせなきゃ駄目なのに小島よしおやもん。
謎の取りこぼしも多い。4番目に関する浮のセリフとか死のルートに関する薄絹やら目印やらとか最初の顔とか。
あと5番目はその時いなかっただろ。

あ、一箇所だけゾッとしたとこあった。第三部ラスト。
でも結論からすると失敗作でわ。
名無しのオプ [sage] 2014/07/12(土) 22:40:59.24:P2sSqlbS
本スレにはちょっと躊躇われたのでこちらに書き込み


貫井徳郎の「症候群シリーズ」三冊読了

貫井さんのは今まで何冊か読んでいるけれど、
このシリーズの出来は正直、ひどすぎだと思う
内容も人物造形も物語も何もかもが浅くて薄っぺらい
まともに読めたのが最後の「殺人症候群」だけ
「失踪」「誘拐」は読むのが苦痛だしエンタメとしてもダメだった
全体的に掘り下げがなく中途半端、の一言に尽きる

ファンの方、気分を害したならばすみません
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/07/12(土) 23:54:44.23:KrznXL6Y

乙!彼!


即刻逝け!(w

さあ、一切の制約を脱して熱く語り合いましょう!
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/07/12(土) 23:55:43.61:KrznXL6Y
折原一「模倣密室 黒星警部と七つの密室」を読む。
既に10年以上前の作となったが、現在のところ愛すべき(?(w )
黒星警部シリーズの最終作品集である。
今読んでも結構楽しめる。妙に社会派のような題材を入れず、
「密室」という魅力的なネタで徹底して遊んでしまおうという姿勢が
良し、この手の作が許容され、受容された時代でもあったのだ。
収録作品全話講評逝ってみようか!!!
「北斗星の密室 『黒星警部の夜』あるいは『白岡牛』」
作中でも示唆されるとおり、オリエント急行ネタ(状況でなくメーントリックのみだが)。まずまず面白いものの、物置への放火という偶然性が絡む展開に
難ありか。
「つなわたりの密室」
首をめぐる大胆なトリック(放り投げ)が面白い。
グロく感じさせないのがこの作家の良い意味での作風であり、
強味かもなー。
「本陣殺人計画 横溝正史を読んだ男」
例の本陣のトリックのバリエーションで、本陣の離れ崩壊(w
大乱歩の「屋根裏の散歩者」を想起させる展開もあって、
かなり笑えて楽しめる。
「交換密室」
ハイスミス作品でおなじみのネタに密室ネタを絡めた面白い作。
交換密室のタイトルの意は読んでのお楽しみだ。
「トロイの密室」
これもおなじみ死の部屋ネタ。動く壁れした(w
それなりに面白いものの、
ヒロイン虹子の女探偵譚ということもあって、
少しはしゃぎ過ぎなのが気にかかる。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/07/12(土) 23:56:52.84:KrznXL6Y
黒星警部は登場せず、部下の竹内刑事がプライベートに遭遇した事件。
「邪な館、1/3の密室」
大魔神、コナン等の小ネタによるくすぐりをまじえながら、
ジョン風のアクロバティックなトンデモトリックが炸裂。
だけんど、ロケットのように空中を飛んで・・・とかこれは無いでしょ(w
「模倣密室」
エテ公ネタゆえ、てっきり最後までモルグで押すのかと思いきや・・・
被害者によるストーカー退治でしたか。
トリックよりは展開が面白い作。
名無しのオプ [sage] 2014/07/13(日) 00:02:36.93:YjtNzgdr
>ALL
名無しのオプ [] 2014/07/13(日) 08:19:21.00:zBXcYFVW
ルールに縛られない自由を。
ミス板の革命はまだ続くよ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/07/13(日) 17:38:17.87:xkK9ujmE
谷崎潤一郎「猫と庄造と二人のおんな」を読む。
最後まで先が読めない展開という点ではミステリと共通するものがある。
大谷崎好きな私には、今まで唯一の未読長編であった。
ある意味で最後までヌコのリリーに翻弄される人間たちの姿が鮮やか。
解説には、谷崎作品のうちでも最も見事なまとまりを示している、とあるが、
うーん、これで終わり?という感を抱いたのは、やはり俺もミスオタらしい
オチ必須主義に毒されたゆえか(w
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/07/13(日) 17:41:08.24:xkK9ujmE
奥田英朗「我が家の問題」を読む。
非ミステリ作品集だが、ミステリ作家でもある著者の作ということで
紹介しておこう。ちょいリアルな今風ホームドラマ集である。
「甘い生活?」
タイトルの「?」がクセモノな作。
フェリー二作品のようなビターな後味ではないので、その点は御安心だ(w
「喧嘩でデート」ってポピュラーソングがあったけど、本作のラストは
「(夫婦)喧嘩で仲良く」って感じだわな。
真っ当なリーマンとかで、嫁がいないとわけわからめなものでしょうな(w
「ハズバンド」
仕事が出来ない夫(イケメン、高学歴、一流企業勤務なのに)を持った料理好きOL経験有り、子持ち願望有りな専業主婦のお話。
あえて職場の夫を直接描くようなあざといことをしなかったのが、
本作を佳作足らしめたものかと思う。御都合主義でなく、それなり良い後味で
ある。
「絵里のエイプリル」
JKが主人公な両親の離婚ネタ、ヒロインの周囲(実弟、教師、友達、
ボーイフレンド等)の状況から、ユーモアをまじえて家族をめぐる
現代の世相が垣間見える感があり、
夫婦の危機自体はあからさまに描写しない手法が良しな
好短編であった。ラストはハッピーエンディングに持ってゆくのかなと予想
していたが、両親の離婚という現実に立ち向かうヒロイン、甘くはなく、
しかし、前向きなラストというのもいい。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/07/13(日) 17:41:55.28:xkK9ujmE
「夫とUFO」
派閥抗争に巻き込まれて多忙となり、UFOを見るようになってしまった夫
の身を案じる妻、シリアスな状況にもかかわらず、どこかユーモラスで
面白い話。
夫婦が河原で巻き起こすUFO騒動に翻弄される結果となる若いおまわりさん
が気の毒ではあるが(w
「里帰り」
新婚夫婦のそれぞれの実家への初めての里帰りを描いた作。
里帰り風景に北海道と名古屋というお国柄を感じさせ、
それなりに興味深く面白くは読ませるが、
明るく肯定的な面が強調され過ぎな感はある。
「妻とマラソン」
売れっ子作家の奥さんがマラソンにはまり、東京マラソンにまで出場する
というお話。
実話ネタ?な面白さありだが、収録作品中では一番平板な展開と結末
という感あり。
名無しのオプ [] 2014/07/13(日) 21:29:20.57:HVIm7+SG
一晩で、こんな素晴らしい論考をロハで、3つも読めるなんて・・・
まさに至福のひととき。
名無しのオプ [sage] 2014/07/13(日) 23:32:30.62:It7Mq+QL
「タダ」のことを「ロハ」とか言うのって、相当年輩の人だけだよね。
名無しのオプ [] 2014/07/14(月) 15:21:45.62:nQQ/TJrW
日本語として定着しているよ。誰でもわかる言葉だ。
名無しのオプ [] 2014/07/14(月) 19:38:25.74:5T13vO7m

残念ながら同意できない
教養のない人間にはわからない言葉だからね
名無しのオプ [sage] 2014/07/15(火) 00:49:21.04:Egvpd37t
なにを言われているのか理解できていない馬鹿な名無しの書斎w
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/07/20(日) 22:47:22.16:eNT/sWd9
奥田英朗「家日和」を読む。
先に紹介した「我が家の問題」に先立つホームドラマ集とでも称す
べき作品集。この作者らしく工夫された作が多く楽しめた。
大好評な収録作品全話講評逝ってみようか!!!
「サニーデイ」
ネットオークションねた。妹を利用した最後の展開が面白い。
やはりミステリを書く作家らしいものあり。
「ここが青山」
「青山」=「あおやま」でなく「せいざん」。
リストラされた主人公にとって「ここ」って何処か?
これが本作のポイントなんですわ。
軽いタッチながらいろいろ考えさすものもある小品。
「家においでよ」
「男の城」とかのタイトルなら、そのまま成程感ありだが、
ローズマリー・クルーニーのスタンダード曲を意識したと思われな
タイトルも良し。
「グレープフルーツ・モンスター」
アラフォー主婦が主人公の淫夢ネタ、ラストはどこか哀感漂うものあり、
好短編である。
「夫とカーテン」
いわゆる友達夫婦、旦那の独立ネタだが、微笑ましいエピではあるが、
その分、刺激が少ない展開で収録作品中では一番インパクトを欠く作とは
言い得る。
「妻と玄米御飯」
面白そうな短編なのに。奥さんやご近所に気を使って没扱いとか・・・
まさか実話ネタとか?
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/07/21(月) 21:30:05.96:wRUbSOya
奥田英朗「無理」を読む。
またしても奥田である(w
この作家の長編は「最悪」の創り過ぎた終盤に失望してから
手にしかねていたのだが、腕を上げたというか、
逆に上手く創って読ませるという感がある。
いわゆるグランドホテル形式で進行、登場人物たちが一堂に会する
終盤のクライマックス(玉突き事故)への展開が力技的に面白いのである。
誰にもこれといった「救い」が訪れない(「救い」を書くのは正にタイトル
どおり「無理」か・・・)、
ラストもお約束の甘口小説嫌いな俺好みなクライムノヴェル、
(殺人が発生するのは終盤に至ってからだが)
まあ、それなりに面白く、読み応えありましたわ。
明記はされないものの、誘拐されたJKの同級生たちが事件発生後も
それぞれに淡々と日々を過ごしているように読めるのがリアル。
(親友のJKなどは事件発生後は一切登場しない)
こういう細部にも凝ってるという感あり、紙数が足りなかったからって
ことはないわな(w
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/07/25(金) 22:53:19.01:Zul7RjJ7
「黄金海峡」南里征典(光文社)

一夜にして海辺の集落が家ごと消滅するという怪事件が発生。警察の捜査も空しく行方は知れない。
一方、ダイバー笛吹草介は莫大な金貨を積んだバルチック艦隊の沈没船を引き上げる計画に参加するが、謎の美女に眩惑され、彼女の別荘で起きた心中を巡る争いに巻き込まれてゆくが……。

2冊目。こっちが本領か。
当然の如く白人が出てきたり悪者どもが幾重にも絡んで進んでいく(しかし決して複雑ではない)ストーリーは海外のB級冒険小説のノリで思ったより楽しめた。

ただしエロがいまいち。寿行と比べるまでもなく、対象に魅力がないし描写も雑で短い。
あと終盤が駆け足気味で一方的な展開になってしまうのがバランスを欠いている。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/07/25(金) 22:54:23.50:Zul7RjJ7
「機密狩り」南里征典(徳間書店)

かつてコンピューター業界で凄腕の産業スパイとして暗躍した津島は突如元上司に呼び出された。
元同僚の佐久間がアメリカで事故死したというのだ。不審な点が多いため調査を依頼され、津島は佐久間の妻亜衣子を連れ渡米する。

連続。こっちもまあまあ読み捨てとしては悪くないレベル。ここまでスカスカな話書けるのも才能だよなあ。
それなりに調べていたとは思うが。
あとエロは結構頑張っていた。でも本来やられるべき相手に直接描写が無いのはマイナス。それが寿行との差か。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/07/25(金) 22:55:46.95:Zul7RjJ7
「定吉七は丁稚の番号」東郷隆(講談社)

大阪商工会議所所属のスパイが主役の中編集。
パロディとしてよく出来ていると思うし、ご当地ネタもふんだんに盛り込んでいて楽しめた部分もあったけど、紙芝居的冒険活劇だなあという印象止まりだった。
金子のお色気シーンがもっとあるとも少し☆足すんだが(笑)
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/07/25(金) 22:58:26.70:Zul7RjJ7
「死のハイテクビル・パニック」和久峻三(双葉社)

裕福な医者の娘が誘拐され身代金要求の電話が。受け渡し場所に指定された超高層ビルに向かった母親はエレベーターに閉じ込められてしまう。
ビル内のコンピューターをハッキングした大規模な誘拐事件が発生したのだった。
警察は後手後手に回り、身代金の調達もままならない。果たして人質は無事助けられるのか――?

いや酷いの一言。この事件自体はいいんだけど、他がまるでダメ。推理も捜査もほとんどなく、あるのはエログロだけ。
それも雑なエロと唐突かつ無意味なグロだから読んでて気分悪い。思うに調べたことをコピペして前後におざなりなストーリーを書き足したのだろう。
エレベーター内のシーンはページ数はあるんだからもっとねちっこくしないと。あれじゃ寒いギャグだもの。
唯一魅力的に見えた謎を放置しているのがまた残念だね。あと表紙の子が怖いよ。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/07/25(金) 23:00:21.14:Zul7RjJ7
「赤い森の結婚殺人」本岡類(角川書店)

脱サラペンションオーナー邦彦は常連客陽子から頼まれて彼女の同僚の結婚式に出席することになった。
しかし、式の最中花嫁がきえてしまう。煙に包まれたゴンドラからの消失!?
行き掛かりで警察の捜査に首を突っ込む邦彦だったが、容疑者として浮かび上がったストーカーにはアリバイが……。

白から大分経ったなあ。刊行順に落ちていくんだっけか。
うむ、ビミョー。正直発端のシーンがインパクト不足なんだよなぁ。メインの謎にノれないのは残念。
ただし、その後の展開は本格興味たっぷりで読ませる。途中で止まる逃走経路、無駄な時間の謎、死体切断の謎……。
不発気味ながら論理のアクロバットもあるしね。
しかし、肝心の部分でご都合主義になってしまっているのとフーダニットの弱さは明らかな失点。

まあ、精々中の上ってとこかな。
名無しのオプ [] 2014/07/26(土) 05:04:57.16:+3oyFd07
読後感は、荒らし書き込みをやめろや。
名無しのオプ [sage] 2014/07/26(土) 09:47:42.04:15iA/yPs
王様のブランチで門谷憲二の『クラウド』が週間ランキング1位だったんだけど読んだ人いる?
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/07/26(土) 23:28:25.62:wt8vhN4j
折原一「鬼が来たりてホラを吹く―鬼面村殺人事件」を読む。
うーん、気軽に楽しめました。
黒星警部シリーズ長編第1作である。
「神の灯」の堂々ネタばれがすがすがしいものあり、
(方位違いの2軒の似た家)
真相の急造セットねた、外れ推理の湖中の巨大鏡設置もそれなり
に面白い。
ただし、平成初期バブル時代の作だけに、古さまでは感じさせないものの、
時代に合せた浮ついた雰囲気(ドタバタとお色気)が漂うのは、
いささか(注 いささか先生ではない)鼻につくものはある。
今読むと、ヒロイン虹子がうざ過ぎ。
名無しのオプ [sage] 2014/07/27(日) 00:17:20.86:YNqElDt+
>ALL
名無しのオプ [sage] 2014/07/27(日) 00:33:13.42:dDMUFt8a
宮部みゆきの「火車」読みました。

終わり方にどうしてもフラストレーションを感じ得ません。(英雄の書も読んだ時も多少感じたが、今回はその比ではない)
新庄喬子についてずっと掘り下げてきているのに、最後の最後に答えがでないで終わってしまっていてやりきれない気持ちが抑えきれません。
それに、和也もきっかけを作るだけの役割しか果たさず、中盤から適当な口実付けのためだけにしか出て来なず、そういう人物についての心情について曖昧で煮え切らない気持ちです。

そう思うのは自分が読書家として未熟なだけだからかもしれませんが、吐き出したい気持ちがあったのでこの場を借りました。
名無しのオプ [sage] 2014/07/27(日) 15:17:25.47:EqKoQd1W
答えが誰にでも分かるように書いてある小説もつまらんよ
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/07/27(日) 21:32:27.96:dDEs9M66
折原一「七つの棺」を読む。
「五つの棺」刊行時に読んで以来、久々の再読ちゅーか、
「七つ・・」は初読。
早速、収録作品全話講評逝ってみようか!!!
「密室の王者」
密室と思わせて、胴上げ時に床に激突死、黒星警部の推理は真相そのもの
ではないが良い線では?
「ディクスン・カーを読んだ男たち」
真相を知った後だと、「男たち」というタイトルにはひっかかるものを
感じないではない。英語ならtheyで問題無しなのだろうが。
やや強引なプロバビリティの犯罪(成功する)、いくら何でも鍵に消化液の
痕跡が残るでしょうが(w
「やくざな密室」
やはりやくざの抗争と密室不可能犯罪ってミスマッチという感あり。
シェルター内での工作も上手く行き過ぎでしょ。
「懐かしい密室」
本作も人間消失や密室殺人工作(入れ替わり、死体を運び込む等)
が御都合主義展開フルモード、ガイシャ(作家)が書いた
第三の窓=時空間の窓というSFの方が、まだ面白いかもなー。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/07/27(日) 21:33:04.08:dDEs9M66
「脇本陣殺人事件」
名作のパロディでもありパスティーシュ。
四本指の男の襲撃という偶然性が絡んだ密室形成は少し残念なり、
ヒーターをオフにしたという意図せざる殺人ならぬ事故というのは
地味だがそれなりに面白いので、もう少し自然な設定に出来なかったもの
であろうか。
「不透明な密室」
夏の甲子園高校野球でおなじみ正午の黙祷の時間ネタだが、
とにかく無理有り過ぎ。笑って楽しむだけの作なのか?
「天外消失事件」
これもかなり無理ある展開。
致命傷を負ったガイシャが密室内(本作ではロープウェイのゴンドラ内)で・・
というパターンのバリエーション。
作者の文庫版あとがきを読むと、作者の好みは異常心理物や叙述トリック物であり、密室とか本格物はどちらかといえば苦手の部類に属するとあるのには、
意外感あり。後の○○者シリーズ等の方が、本領なのだな。
(勿論、カーマニアに負けないほど、その作品は読んでるそうだが)
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/08/01(金) 20:36:09.84:jFixHSq5
「君の館で惨劇を」獅子宮敏彦(南雲堂)

売れないミステリー作家三神は同業者白縫と訪れた美術館幻遊城で不可思議な事件を人知れず解決しているダーク探偵の噂を聞く。
2年後、三神の元へダーク探偵から助手の要請が届いた。探偵と共に喜び勇んで辿り着いたのはミステリーマニアの大富豪が棲む奇妙な館だった。
やがて2つの密室を舞台に惨劇の幕が開く――。

初めての現代ミステリーそれも館ものと期待して読むが、不満が4つほど。
まず登場人物表も見取り図もない。これ止めろよ。もう。
次に引用してるミステリー作品の無意味な多さね。しかも内ネタバレしてるのが9つという。ここまでやらなきゃ書けないものに読む価値があるのかね。
最後にその引用されてる作品が全て国産ものだということ。最近の新本格作家はこういう人多そうだが、どうなの?
国産派と言えば聞こえはいいが勉強不足というか偏向というか偏見というか……。こんな所にもガラパゴス化が。
一読者ならともかく本格作家なら古典本格くらい一通り読もうぜ。こんだけずらずら引用してるから歪さが余計に際立つ。

やっと中身。ビミョーなんだよなあ。大事な部分で乱歩に寄りかかりすぎてると思うし、肝心の密室も白は論外。
ただし赤はなかなか見事だったと思う。もう少し伏線が欲しかった気もするけれど。これは前例知らない。……あっさり国産であったりして(笑)
あとシリーズ化するのか知らんが、あの謎を残したのは残尿感だなあ。

追伸 中盤と終盤にそれぞれ好きなセリフがあった。これをラストに活かせば皮肉が効いてもっと良かったと思う。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/08/01(金) 20:38:00.83:jFixHSq5
「パラダイス・ロスト」柳広司(角川書店)

第3短編集。
相変わらず重厚さを感じさせないラノベタッチな小品が並んでいる。
一番マシなのはやっぱり「暗号名ケルベロス」になっちゃうなあ。でもこれ前後編だからどっちかに絞ると後編。
敵の計画がちょっと面白かった。結局ケルベロスが何なのかとか、犯人指摘の論理が薄弱とか穴はでかいけど。
他4編は特に論評する程でもない。しかし一作目をバカにしたヒョウロクダマは絶対に許さんからな!
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/08/01(金) 20:39:25.30:jFixHSq5
「犯罪待避線」島田一男(徳間書店)

某スレからのセレクト。シベリア帰りの医師都野を探偵役に据えた連作短編集。
どの短編もきちんと本格ぶりを備えており、出来も悪くない。
ベストは「或る暴走記録」。アリバイ崩し&隠し場所トリックで伏線も丁寧な良作。
次点は「首を縮める男」。画が派手でインパクトは一番。トリックはカーの某短編を思わせる。

ミステリー以外の部分だと「機関車は偽らず」のラストの犯人の呻きが何とも胸に迫る。
最初は荊木歓喜シリーズを連想しながら読んでいたけど、こういう社会派な部分には「夜より他に聴くものもなし」も思い浮かんだ。
しかし、レイプに対する意識が低いのは引っ掛かるところ。時代のせい? ペッ
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/08/01(金) 20:43:05.47:jFixHSq5
「雪に花散る奥州路」笹沢左保(文藝春秋)

某スレからのセレクト。渡世人を主人公にした読切短編集。
和製マカロニウエスタンといった趣でどれも股旅ものとして成立している上にミステリーとしてのヒネリも加えてあるので面白い。
ベストは「峠に哭いた甲州路」。迫り来る危機にジリジリしながら読み進むと思わぬどんでん返しに見舞われるという。
静かなサスペンスの醸成も巧い。中盤の別れのシーンが良いやね。
次点は「木っ端が燃えた上州路」。珍しくルーキーの渡世人が主役で渡世人の大元締なんかも出てきてクライマックスの盛り上がりがピカイチだった。
他「狂女が唄う信州路」の牢獄内の描写も圧巻。
最初も書いたがストーリーが面白いから良いね。笹沢渡世人ものはまた読みたい。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/08/01(金) 20:43:40.32:jFixHSq5
「地獄を嗤う日光路」笹沢左保(文藝春秋)

心臓病を抱えながらも恩を返すため娘を捜し求める渡世人新三郎を主人公にした連作短編集。
某スレからのセレクト。
流石に先が読めてくるし、実際「雪に花散る奥州路」より質は落ちると思うが、つまらないと感じる程のものは無かった。
前半2編が良いと思う。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/08/02(土) 06:24:11.38:YYuNKeJM
折原一「猿島館の殺人」を読む。
黒星シリーズ長編第2作。
当然ちゅーか、残念ちゅーか、虹子ちゃんも登場(w
それはともかく、モルグ、まだらの完ネタばれはOKなのに、
何でYは伏字?
このネタばれネタ(妙なワードになってはいるが)が事件の真相に
かかわるものではあるんだけんどね。
そして最終的にはオリエント急行ネタのバリエーション。
作中で盛んにオリエント急行本が出て来るのがお遊びの趣向なんでしょうな、
俺的にはやっぱり感大だが(w
第二章が「猿が彼を殺すはずがない」なら、爬虫類館ネタも入れて欲しかった
ところではあるが、既に脇本陣(目張り)で少々やってるんだわな。
全体的にはこのシリーズらしい気軽に楽しめるライトなミステリではありましたわ。

折原一「丹波家の殺人」を読む。
黒星警部の部下であり憎き(?)相棒でもある竹内刑事は登場するが、
虹子は登場せず。代わりにと言うては何だが、名探偵役を務めるのは
JK丹波リエちゃん。この辺もトレンドを読んだところかな(w
現在のところ黒星警部シリーズ最新作(作品集)である「模倣密室」には
虹子登場譚はわずかに1話である点を見ると、作者自身も、
さすがにバブル時代の象徴のような元気印虹子がうざくなってきたのか。
内容的には資産家丹波家の当主の水難死を契機にした相続人間の確執、
遂に連続殺人へ・・・
水車の発電機を利用した密室トリック、おんぶネタ(足跡の深さに言及
されていないのが難だが)による足跡トリック等々、
意外に読ませるものはある。
ただし、犯人はYの基本線上(キャラや状況は全く異なるが)にあり、
非常にわかり易いものとなっている感あり。
名無しのオプ [] 2014/08/02(土) 08:20:32.83:LX68V2/o
IDを真っ赤にしてまで必死に投稿する読後感。
批評それ自体がエンタメ芸になっている書斎。
優れた書き手がどちらかは一目瞭然。
名無しのオプ [sage] 2014/08/02(土) 08:38:39.25:ykKlMVuc
発狂老人書斎、朝っぱらから全開で狂乱ww
いいからマンガ家になった夢でも見てろ
座敷牢の痴呆ジジイwww
名無しのオプ [sage] 2014/08/03(日) 16:20:56.06:NNPczv5q
すべてはFカップになる

期待してなかったけど結構面白かった
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/08/09(土) 09:25:18.25:wb0rR/Qg
折原一「黄色館の秘密」を読む。
本作にて、現時点における黒星警部シリーズ全冊読破と相成る。
文庫書下ろし作品として刊行。
本作も時代に迎合ちゅーか、マッチさせたというか、秘宝館、混浴温泉等々、、
お色気度がアップしている感あり(これをミステリファンとしてはうざい
思うかどうか)。
昔懐かしい謎の怪盗団ネタも有り。
勿論、このシリーズ十八番な密室ネタも(w
更には、この作者の後の十八番芸である叙述トリックも終盤に来て炸裂(?)、
(語り手は、正に「見えない人」な竹内刑事であった・・・)
第一の密室のコンドーム利用の短編「茶の葉」ネタバリエーションは、
まずまず良ながら、
第二の密室の黄色い部屋ネタのバリエーション(激突の後遺症が出て死亡)は
無理やり過ぎな感あり。
空飛ぶ黄金仮面の謎=トラップにかかって空中へってのは、ここまで来ると
バカミスとして楽しめますわ。
名無しのオプ [] 2014/08/10(日) 08:26:10.90:gyG3KP1I
この論考を百回音読して勉学に励むこと。
これは命令と心得ておけ。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/08/11(月) 17:26:28.44:Hm3v4BY4
「影丸極道帖 上・下」角田喜久雄(春陽堂書店)

長らく江戸を騒がせてきた稀代の怪盗影の影丸が遂に捕まった!?
と思いきやあっさりと脱走を果たしてしまう。時を同じくして隠居した名与力松並白亭の養女小夜が何者かにさらわれ、
白亭とその息子で小夜の許婚源太郎そして小夜の兄同然の同心志賀三平らは必死にその行方を追う。

某スレからのセレクト。角田時代小説初挑戦。
某スレにあるように前半は活劇ものって感じでそれ故にどうミステリーしかも本格になっていくのだろうと期待しながら読み進めると中盤過ぎて段々と謎がはっきり浮かび上がってエンジンがかかってくる。
下巻に入ると連続殺人が起きてぐっとミステリーらしくなり、ディスカッションも行われたりして本格味も増してくる。
しかしそうやって徐々に立ち上がってくる真相?の一部が読者が掴んでいる情報と上手く重ならなかったりするから終盤まで先が見通せない。
フェアプレイに徹しているとまでは言えないまでもフーダニットとしては成立していると思う。
あと文章に関して、時々未来から振り返る感じになるのは違和感があった。

読み終わると逆に活劇ものとしては読めないなと気付く。だからミステリーという心構えは持ってね。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/08/11(月) 17:29:30.04:Hm3v4BY4
「土山秀夫推理小説集 あてどなき脱出」土英夫(長崎文献社)

長崎大学名誉教授の医学者で反核平和活動家の著者が若き日に余技として執筆していたミステリー作品集。
宝石の懸賞短編で第一席を獲得した「深淵の底」他4編と未発表中編である表題作が収められている。
乱歩も言っていたように畑違いの人が生涯で数編書いて発表されたのは大概面白いから期待して読んだ。

まず表題作。戦時中ナチの収容所に派遣された日本人医師がユダヤ人女性と恋に落ち決死の脱走を図るというおはなし。
終盤に盲点トリックが使われているものの、大体は緩いサスペンス調でこれという評価ポイントはない。
ただ文章は(全編通じて)こなれており読みやすかった。

さて第二部の短編集であるが、まず第一席の「深淵の底」。若妻の失踪から始まる事件が語り手を次々交代させて展開していく。
偶然に頼っていたりトリックの実効性も低く感じられたりしてプロットは大したことはないが、記述スタイルとラストの締めでポイントを稼いでいるかな。
「影の部分」はミステリーとしては弱いし「妄執」は官能小説ぽい。「切断」は心理サスペンスか。

総じて伏線があまり張られておらずミステリー殊に本格としては低評価にならざるを得ない。
残念ながら同じ余技作家でも隣県の宮原龍雄とは歴然たる差がある。
ま、でもこういう発掘はどんどんやって欲しい。落ち穂拾い上等!地方出版社頑張れ!
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/08/11(月) 17:32:30.57:Hm3v4BY4
「うそつき」戸松淳矩(東京創元社)

ニートの癖に見栄っ張りで虚言癖のある青年朋也は仕事の帰りに男の死体を発見する。
咄嗟に死体からバッグを奪ってしまったことから朋也は事件にのめり込んでいく。
一方文芸サークルに所属する“私”は先輩会員の助けを借りて小説を仕上げていく。
しかし、イギリスのミステリー作家の新作が“私”の作品と酷使していることを知る。
交互に語られる2つのストーリーの果てには何があるのか?

「剣と薔薇の夏」は早々に中断してラノベ一冊読んだきりだが本作は取っ付きやすそうだし、何よりブログを覗いている身としては読んどかないとと思い面白かれと願いつつ読んだ。
もう冒頭から挫折しそうになった。文章が素人臭いんだよね。ちょっとした動作にクドクドと細かく説明を付けたり心理描写を重ねたりして。
中盤でもその場限りのキャラに長々裏事情語ったりしてる。そこまで書かなくても読者は次に進めるし却ってリズムを壊したりして逆効果だから。
ただ、ストーリーが動き始めて以降はあまり気にならなくなり普通に繰れるようになった。

しかし肝心のプロットについては凡庸と言わざるを得ない。
大体においてカットバック形式の作品は底が浅いのだが(「歯と爪」然り「慟哭」然り)、本作もご多分に洩れず。
真相はやや捻りはあるが偶然に支えられていて完成度が低く、ラスト手前の突発的な出来事にも疑問が残る。
残ると言えば終始思わせぶりな印象を放ち続けていた某キャラクターが特に何もないまま終わるのも消化不良だった。
ひょっとしたら何か隠された真相があるのではとも思ったがその余地も無さそうだしなー。
付き合いもあったんだろうがこんなもんに「愉悦」を感じたなんてのりりん仕事選びなよ。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/08/11(月) 17:34:21.69:Hm3v4BY4
「カラコルムの悲劇」赤羽堯(光文社)

モンゴル帝国のスパイミクローシュは任務を終えて都へ帰還した。皇帝の暗殺を企む邪教集団の探索をしていたのである。
しかし、母をモンゴル軍に殺されたミクローシュの心中は複雑であった。
一方都では宮中に建造するからくりを巡って2人の親方が火花を散らしていた。
その最中、決定に影響力を持つ役人が密室状態の邸宅で殺される。暗殺者が迫る中、ミクローシュは上司と共に事件の捜査を始める。

某スレからのセレクト。
まあまあ面白かったです。モンケ=ハンはてっきり楊禍に石ぶつけられて死んだのかと思ってました。
東西に勢力を拡大していくモンゴル帝国を背景に桃源郷で誘う暗殺集団、ハンガリー職人の闘い、醜い王女との逢瀬、密室殺人等々
面白要素は十分、ただし全体としてはもっと妖しさというかケレン味というか、そういう雰囲気が欲しかったかなと。
密室殺人のトリックは良いのですが、スパイものとしては捻り不足だったと思います。
名無しのオプ [] 2014/08/11(月) 19:18:02.17:yE9Y0Vj2
完全な荒らしだな。
削除依頼出しておけや。
名無しのオプ [sage] 2014/08/11(月) 19:21:52.58:bkkhSsz+
読んだフリ書斎の削除依頼さっさと出せよ
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/08/16(土) 22:38:02.17:y/ntuC8+
笠原卓「仮面の祝祭2/3」を読む。
さほど期待していなかったが、まずまず楽しめる作であった。
フォーク歌手が殺害され、見分けがつかないサンタのコスをした
3人のJDが容疑者、東京では関係あり気なあらたな殺人
(大御所な演出家の毒殺)が発生、
しかし、第四の女がいたのれすというお話。
後出しキャラとまでは言わないが(実際、序盤から登場はしている)、
あくまで警察の捜査、刑事の推理でこの辺が明らかになって来る展開を
どう評価するかだわな。謎解きミステリとしてのフェア度を欠くとするか、
警察捜査小説の面白さもある(この点、マエストロ鮎の鬼貫警部シリーズと
相通じるものあり)とするか。
動機面のテーマに、今でもありがちな有名人の広告塔問題あり。
そもそもトラブル無しならOKなのだが、作者の代弁者と思われる若手刑事が
芸能人や野球選手に対する断定的な批判は、どんなものであろうか?
彼らとて生業であり、断れない場合も有り得るのではないか?
神奈川県警と警視庁の確執などは、わりとクール、ソフトに描写されている
だけに違和感があった。
糸やタイマーを使用した電話のトリックは、あまりにコテンコテンな御愛嬌
と言うたところか。
後は、事件の発端となり、メーンの舞台のひとつが鎌倉市とはいえ、
大船というのが、異色な感があった。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/08/17(日) 16:33:11.01:0WzYyfo3
折原一「倒錯の死角(アングル) 201号室の女」を読む。
十八番の叙述トリック長編だが、これはNGでしょ。
ガイシャの女の子のママも完全に頭の中逝っちゃてますわ(w
それにしても、リベンジねたにしてもストーリーそのものに無理有り過ぎ。
謎解き趣向仕立てにせずに、この異常心理をビビッドに描く方向で
書いた方が読物としては正解だったという感もあり。
ただし、スリラーではあってもミステリにはならんかもしれんが。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/08/23(土) 01:19:32.90:QY+UQso1
「平家物語殺人事件」広山義慶(祥伝社)

新聞記者諏訪はかつての親友市島からとんでもない情報を掴んだと連絡を受ける。自分を裏切り恋人美也子を奪った男だった。
平家物語に出てくる俊寛に関するものらしい。請け合わなかった諏訪だったがその直後市島は何者かに殺される。
更に諏訪の見合い相手が謎の病に倒れ、譫言でシュンカンと口にしたという。
諏訪は美也子と共に市島の足取りを辿って真相を探る旅に出るのだが……。

某スレからのセレクト。
第1章の構成から良い雰囲気を醸していて滑り出しは順調。その後俊寛を巡る謎が解き明かされていきそこに政府の秘密計画が絡んでくる過程も悪くはないと思う。
伝奇推理というと推理そっちのけでサイキックファイトになってしまったりするけれど、本作は超自然的な中にもガチな殺人を入れてミステリーの部分を残している。

伝奇ものに付き物のエロに関しても多くはないがしっかりあるので安心汁。
裏切り女の尻にぶち込むってのは新鮮だね。しかし肛門から分泌される体液ってウン汁?
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/08/23(土) 01:22:32.37:QY+UQso1
「金塊船消ゆ」多島斗志之(講談社)

戦後フィリピンから引き上げてきて40年、侘びしい老後を送っていた鳥居甚一の下へ奇妙な手紙が届く。
送り主は匿名で内容は戦時中バターンで炊いた〈四つの火〉についてであり、マニラへ来いという。
手紙は鳥居の上官であった浅田にも届いていた。〈四つの火〉、それは金塊を積んだ船を自沈させた場所の目印だったのだ。
誰が、何故今になって? 鳥居は謎を追ってフィリピンへ向かう。

某スレからのセレクト。
面白かったね〜。今までの多島スパイ小説は器は凝っていても中身が若干安酒かなっていう違和感があったりしたけれど、
これは日本人が主役で舞台も日本と、日本軍と結びつきが強いフィリピンのせいか違和感なく読み終えることができた。
それにすぐフィリピンへ行くので無しに、まず半過去の日本で一冒険やることによって主役に読者をぐっと引き寄せてから行くという構成が上手いね。中ボスの得意技も読んでて痛かったし。
難を言えばオニャノコをもっと動かして欲しかったのと、終盤のサプライズが今一つだったかしらね。ああそれと主人公に何かもう一つ欲しかったな。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/08/23(土) 01:25:35.78:QY+UQso1
「陰画の構図」井沢元彦(勁文社)

若手弁護士立花透は元恋人の女優亜紀子と再会した。婚約者がいて幸せそうな彼女だったが、その3ヶ月後、死体で発見される。
現場は施錠の上チェーンもついて密閉されておりガスが充満していた。更に亜紀子は当日に自殺を仄めかす電話をしていたこともあり警察は自殺と判断する。
しかし立花は他殺と決めつけ友人津村や亜紀子の妹由紀子と共に犯人を探すべく行動を開始するのだった。

某スレからのセレクト。
井沢の現代ミステリーを読むのは佳作「殺人ドライブ・ロード」に続き2冊目か。
密室、予告電話、更に立花が犯人と目した人物にはアリバイもあって不可能興味は抜群だし、それらの隙間を埋めるかのように配置された巧みな小手先トリックや盲点を突いた大胆なトリックにも膝を打った。
これだけならば傑作と言って差し支えないかも知れなかったが、悲しい哉、見逃せない欠点があるのだ。

それは前半のとある段落。何でこんな書き方したんだろう。台無しじゃん。
他にも明け透けに書き過ぎじゃないかという箇所はあるけれど、それらが単に難易度を下げるだけに止まっているのに対し(それもダメだけど)、こちらはストーリーの一貫性をも崩してしまっていて致命的。
もう一つ、一つの道具であれこれやり(れ)過ぎな部分もある。これらのせいで狙いは良いのに傑作と呼べないのが残念だ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/08/23(土) 19:43:00.05:DWeLfNGj
隆慶一郎「吉原御免状」を読む。
宮本武蔵の愛弟子松永誠一郎は師の遺言に従い吉原へ。
華やかな色町の裏では裏柳生の陰謀が渦巻いていた・・
主人公の痛快な剣劇満載かと思えば、それのみに非ず、デビュー作とはいえ、
手練れのベテランシナリオライターだけあって、柳生一族(宗冬、十兵衛、
そして義仙こと烈堂)、傀儡衆、水野十郎左衛門(前半だけのちょい登場だが)、
なぜか八百屋比丘尼まで登場させ、トンデモ稗史的着想の面白さで読ませる
面の方が強い作である。
吉原は江戸時代における苦界ならぬ公界(自治都市的存在)、立地的には城塞
であったというネタは、従来の吉原観を覆すものであり、斬新ではある。
後の「影武者徳川家康」で書き込まれる徳川家康影武者説(関ヶ原の戦い以後の家康は影武者の成り代わり)、
天海僧正=明智光秀説等、そのはじけたトンデモぶりはいかす。
吉原の時代考証、描写は、エロいシバリョウという観さえあり、
(シバリョウが吉原をメーン舞台にするとは考えられないし)
司馬作品も愛読するが、そのストイックさに物足りないものを感じていた
オトナの時代小説ファンを堪能させたのはわかるものあり。
名無しのオプ [] 2014/08/23(土) 20:50:43.32:XHF55p8P
書斎はいい作品を取り上げるね。
バカみたいにつまらない駄本の感想を打ち上げる読後感は猛省すること。
名無しのオプ [sage] 2014/08/24(日) 11:47:04.05:FTow41CC
八百屋比丘尼じゃ、あまりにもかわいそうw
名無しのオプ [sage] 2014/08/24(日) 13:34:49.24:fS6Y9l1K
八百屋比丘尼w
尼さんが火の見櫓に登って半鐘叩くのかよw
名無しのオプ [sage] 2014/08/24(日) 13:39:33.46:0vChgk/B
そうだね。作品はいいのに、バカに読まれて可哀そうだw
名無しのオプ [sage] 2014/08/24(日) 14:03:20.34:UxUtX0lV
駄本だとこの野郎 多島だ
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/08/24(日) 21:21:09.93:/ypN06pK
井伏鱒二「駅前旅館」を読む。
映画化(オリジナル脚本でシリーズ化もされた、ミステリでいえばハメットの
「影なき男」のような作品)された当時のベストセラー作品。
駅前旅館の番頭を主人公=語り手とした旅館にまつわる昔語りと現代模様、
当時の中・高校生の修学旅行におけるバンカラ、放蕩ぶりが笑えるほど凄い。
酒、煙草は勿論のこと、酒場でクダを巻き、女郎屋に沈没とか(w
マジかよ感あり。
江の島東浜海岸での客引き模様も時代を感じさせる面白さに富む。
名無しのオプ [sage] 2014/08/25(月) 11:01:48.49:gcCCZsJ6
たしかに森繁主演の映画よりも小説のほうが面白いですな。
名無しのオプ [] 2014/08/25(月) 11:33:01.13:WvBfBm62
書斎の書評は人の知的好奇心を喚起させるね。
名無しのオプ [sage] 2014/08/25(月) 19:11:06.33:qSWS64GY
井伏鱒二がミステリーに見えるという書斎のようなキチガイミスヲタにはなりたくないなあw
名無しのオプ [] 2014/08/26(火) 12:15:38.96:s7rpw3wK
書斎は普通に都筑を評価しているでしょ。
過大評価するヲタに苦言を呈していただけで。
名無しのオプ [sage] 2014/08/26(火) 16:49:57.49:KVy6wp39
いきなり都筑とか何言い出したんだ?
頭おかしいのか?
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/08/30(土) 21:58:43.02:sNn634kn
水野和夫「資本主義の終焉と歴史の危機」。
硬めのテーマにもかかわらず売れてる新書をミステリ板住人的に
読み解いてみた。
経済のミズノンこと日大の水野先生のコンパクトな著作である。
本書の推薦者には、佐藤優、内田樹、榊原英資、中谷巌、
溝口敦(その著作を見る限りでは、この人だけはやや意外感有りである)と
有名どころが並ぶが、このメンツから「ああ、アンチアベノミックスね」という
のはわかるものあり。
左とは言わぬまでも、現代資本主義アンチな面々である。
結局、「資本家が労働者を搾取している」「資本主義は崩壊する」
(ただし、本書でその後の世界は呈示されていない)等々のメーンな主張って、
「宗教は麻薬だ!」と断定しながら、自己の言説も宗教化していったMの世界
そのまま何ですな。
資本主義を「中心」と「周辺」(フロンティア)という観点から把握した分析は
西部劇かお(w で面白いものはあり(ゆえにフロンティアの消滅という時代
も存するわけで、これが本書でいう利潤=利子率の低下、消滅ということになる)
ドイツ主体のEUの動向を第四帝国の構築という観点も興味深いものある。
だけんど、万国の労働者が連帯するのは現実的に無理ゆえ、
国家(具体的にはG20)が団結して資本主義にブレーキをかけるって提言は
あまりに非現実的でしょ。
現代資本家サイド、ちゅーか、グローバル化した企業の国家(つまり政府)に
対する影響度から見てもね。
人間(一般的にという限定を付けても構わぬが)は皆、資本(より端的に表現
すれば金)がある方向に頭を垂れる「生き物」なのであるから。
良い悪いではなく、生存本能(実際に死なぬまでも社会的ステータスの維持
ということからも)とも言い得るものなんである。
生きたい、より高く、楽しく生きたいという方向性を否定する資格は何人にも
無いです。
ゆえに、私は断言する「資本主義は行きます!」(オボちゃん風、
あの子かわええ〜〜)と(w
名無しのオプ [] 2014/08/31(日) 07:23:16.55:0mFIBe26
よくわかりました。
買わずにすんで助かりました。
名無しのオプ [sage] 2014/09/01(月) 10:32:39.42:g9uhIl5h
還暦をむかえて絶好調だな
記憶喪失した男 [] 2014/09/02(火) 17:41:37.92:tYP8Ldxh
でつまつ君の裁判はどうなったの?
決着ついた?
名無しのオプ [] 2014/09/02(火) 17:58:13.22:LpX1KEZn
でつまつくんはなんにも不法行為はしていないから、あちこち通報しても無駄だったんですよ。
民事で行こうにもアンチには弁護士を雇う金がない(w
記憶喪失した男 [] 2014/09/02(火) 18:00:14.76:tYP8Ldxh
そうかあ。平和になったんだねえ。
名無しのオプ [sage] 2014/09/02(火) 18:31:55.13:/UKF12UE
ああ、てっきり「アンチ」を訴えると遠吠えてた告訴やるやる詐欺のことかと思ったらw
まあ何故未だにしてないかは自白してくれたからわかった
記憶喪失した男 [] 2014/09/02(火) 18:37:06.20:tYP8Ldxh
実は、最近、あまりミステリに食指がわかなくてね。
ついつい積んでるんだ。
五冊以上、積んでいる。

最近、ミステリにこれだという傑作は出たかい?
名無しのオプ [sage] 2014/09/02(火) 19:00:53.94:r4v6bVQR
お前みたいな荒らしに教えるミステリーはねえよ
記憶喪失した男 [] 2014/09/02(火) 19:06:27.56:tYP8Ldxh
ぼくが荒らし?
なんで?

ミステリ板のやつに荒らされた記憶はあるけど。
名無しのオプ [] 2014/09/02(火) 20:34:34.57:LpX1KEZn
記憶さんが荒らした証拠もなしに・・・。
名無しのオプ [sage] 2014/09/02(火) 21:34:05.36:kkC7Fyby

×食指がわかない
○食指が動かない

このざまで、作家志望なんて、ちゃんちゃらおかしいや。
名無しのオプ [] 2014/09/03(水) 01:21:43.37:0g5Jf/Kl
校正が直すからいいんだよ。
名無しのオプ [sage] 2014/09/03(水) 01:56:27.45:WYZw8Z/Y
人の手を借りないとなにもできない書斎派w

書斎なんて論考wの論旨wからして直してもらうのが当たり前だとまで言われているしw
名無しのオプ [] 2014/09/03(水) 02:01:27.64:0g5Jf/Kl
記憶さんは書斎派ではないよ。
名無しのオプ [sage] 2014/09/03(水) 07:29:48.92:t/9ygFPX
書斎と記憶、狂人どおし仲がいいね
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/09/06(土) 18:34:54.37:mDRHq1b+
「殺人航路」大谷羊太郎(講談社)

娘が持ち帰った伊豆大島で撮られた心霊写真を観た後に密室で死んだ男、前原。
彼は死の直前友人へ電話し、娘を大島へ行かせるなと警告していた。しかし、電話の相手である有田の娘は恋人と大島へ渡ってしまった!
一方イラストレーターの伊吹はヤクザ者の兄が追われていると知り、助けるために兄が向かった大島へと急いだ。
そしてついに幾多の因縁が渦巻く大島で殺人が引き起こされてしまうが……。

某スレからのセレクト。
読んだのは「複合誘拐」に続いて2冊目ですが、この人は大衆読捨作家としての意気込みが凄いんでしょうね。
本作は冒頭から心霊写真だの密室だの巻き込まれ型スリラーだのが入り乱れてこれから何がどうなるのか読者の鼻面を掴むことに余念がありません。
そういう発端のハッタリというか不可思議性は十分なんです。ただし、それが勝ちすぎてて作品全体としてのまとまりが疎かになっていまして、これは大きな弱点だと思います。

本作で具体的に言うとストーリーとストーリーとを偶然によって直接的に結びつけてしまっているんです。
より正確に言うとそれを剥き出しに見せてしまっているんです。これはダメですよ。本格としてみると特にダメです。
例えば一つの流れの中の部分部分に関わっていたとか、そういう間接的な繋がりを鮮やかに見せられれば上手いと思えると思うんですけれど。
或いは直接的な繋がりは先に見せてそこから更に展開させるとかですね。

使用されているトリックについては、密室は単純ながら効果的で上手いと思いましたし、アリバイは逆に練られていてこれもワンノブゼムとしてはアリです。
しかし本格としての作品の評価は前述の弱点のせいで精々中の上ってとこになっちゃいますね……。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/09/06(土) 18:36:14.97:mDRHq1b+
「ローカル線に紅い血が散る」辻真先(徳間書店)

女子大生真由子は友人毬子に頼まれて里帰りに同行することになった。父親に望まぬ縁談を押し付けられているという。
現地ではローカル線の廃止を巡って政治家と村人たちが対立しており、毬子の問題もそこに絡んでいた。
帰郷後父子の話は物別れとなったが、数日後毬子の父親は線路上で轢断死体として発見される。しかし、その路線は前日に廃止されていたのだ!
幽霊列車が現れたのか?
真由子は恋人の旅行作家慎と共に事件の謎に挑むが程なくして第2の殺人が!?

某スレからのセレクト。
辻のトラミスは初めてやけど面白かったわ。列車が通ってないのに轢かれてるっていう抜群の不可能興味に加えて捨てトリックを惜しげもなく投入しその伏線も撒くという徹底ぶりに拍手。
殊にメインの謎に関する多重推理場面は本作のハイライトだね。

但しそのせいでフーダニットが犠牲になっているのがウィークポイントではあるのだが……。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/09/06(土) 18:42:47.94:mDRHq1b+
「新大岡政談」笹沢左保(双葉社)
重度の偏頭痛に悩まされる大岡越前と同輩を斬って主家を去った浪人新八郎コンビの活躍を描く連作。

某スレからのセレクトであるが、小粒なものばかりでイマイチ。
密室や人間消失もあるけど、特に印象に残らず。新八郎の因縁が有耶無耶の内に幕引きになってしまったのもマイナス。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/09/06(土) 18:44:20.30:mDRHq1b+
「ホラー作家の棲む家」三津田信三(講談社)

編集者三津田信三は偶然発見した洋館「人形荘」に魅了され借りることにした。
そのことと前後して、自分が登場する小説が賞に投稿されたり送った覚えの無い原稿が発表されるなど不可解な事態が勃発する。
人形荘のルーツを知るべく調査を始めた三津田は愛読者だという稜子に出会い惹かれ始めるのだが自身を巡る怪異はエスカレートしていくのだった。

デビュー長編。ホラーとミステリーの混合物ぽいのかと期待して読んだ。
新しい屋敷怪談を志向しているのかと思うも、結果的にみればオーソドックスな枠の内で終始したようにみえる。
もっとも作中作と並行して進んでいき……という「匣の中の失楽」を意識したようなメタなスタイルや終盤のサプライズ、そしてぞわぞわと余韻の残るラストはそこそこに楽しめた。
刀城シリーズを先に読んじゃうとどうしても、ね。

作者が作中で繰り返し言っているようにホラーは短編に限るのであり、長編で心からの恐怖を味わうことは不可能に近い以上長編ホラーの向かうべき先はミステリー的な仕掛けであると確信した次第。

「作者不詳」も読もう。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/09/06(土) 18:50:08.78:mDRHq1b+
「孤島パズル」有栖川有栖(東京創元社)

推理研の紅一点マリアの誘いで南海の孤島嘉敷島へ向かった江神部長と「ぼく」アリス。
亡き祖父の遺した財宝を捜すのが目的だったのだが、台風に見舞われた2日目の夜に惨劇は起きた。
密室状態の部屋で2人が殺されたのだ。3年前、財宝の謎を解いたというマリアの従兄弟が不可解な死を遂げたことと関連があるのか?
そして惨劇は繰り返される……。

学生アリス2作目。図らずも3、1、2とノックならぬドックしてしまったが、まあまあ面白かった。
密室、ダイイングメッセージ、暗号など本格の要素が詰まっているものの、作者が中心に据えているのはフーダニットへ至るロジックであり
他はあくまでも点として整理されてしまっているところが興味深い。

個人的にはロジックへの偏愛というよりは他要素に対する冷淡さが際立って見えた。
如何なトリックも挑戦して貰ってなんぼなんだねえ……。某氏は気に食わなそう。

ただそのロジックについて、ちょっと迂遠じゃない?もう少し順を追った形で解けていけたような気もするんだよねえ。ホニャララから疑義を呈していくとかさ。
とまれ、あることからバタバタバタッと犯人へ到達する道筋が美しいことに異存はない。

「女王国の城」もいずれ。
名無しのオプ [] 2014/09/06(土) 20:57:10.22:K94vRBGl
書斎の珠玉の論考に敵わないからといって、いやがらせの荒らしはやめろ!!!
名無しのオプ [] 2014/09/06(土) 21:34:25.19:u/JNKD44
読後感の嫌がらせ、最早悪魔の域だな。
名無しのオプ [sage] 2014/09/06(土) 21:36:42.61:nimEKuLf
まともに内容を批判できないからって中傷ばかりする書斎派はみっともないな。
名無しのオプ [sage] 2014/09/06(土) 22:23:56.11:BeMiqF2a

「ホニャララ」「あること」についてメール欄を使って内容を教えてもらえるとうれしい。
読後感 [sage] 2014/09/08(月) 21:14:06.74:yuk0D4b+

それは読んでのお楽しみってことで……実は結構前に読んだのでもう記憶が曖昧で……スイマセン
名無しのオプ [sage] 2014/09/08(月) 23:08:36.09:O2EPTG3R

いえいえ、レスありがとう。また読み返してみたくなりました。
(某氏ってS・Sさんでしょうかね?ロジックよりトリックの好きそうな…)
名無しのオプ [] 2014/09/09(火) 08:37:16.27:hjnediTV
読後感の感想は極めていい加減なものだということがよくわかった。
つまりは未読に近い状態で書いているに過ぎないんだな。
名無しのオプ [sage] 2014/09/09(火) 11:07:44.78:mR+mNEce
書斎は近いどころか未読じゃん
名無しのオプ [] 2014/09/09(火) 11:22:12.25:hjnediTV
読後感の罪深さを先に断罪すべき。
書斎の場合は証拠がないからな。
名無しのオプ [sage] 2014/09/09(火) 13:16:05.14:mR+mNEce
は?
読後感の感想の方が書斎より何倍も参考になるけど?
名無しのオプ [] 2014/09/09(火) 13:35:08.10:hjnediTV
人それぞれだからねえ。
ただ絶対的評価として、読後感は果てしなくつまらない、書斎は途轍もなく面白い。
これは変わらない。
名無しのオプ [sage] 2014/09/09(火) 13:51:52.19:mR+mNEce
書斎の書き込みのどこが面白いの?
名無しのオプ [] 2014/09/09(火) 13:58:25.53:hjnediTV
石田金吉にはわからないんだろうけどね。
名無しのオプ [sage] 2014/09/11(木) 00:25:06.42:QLRKJZ5R
石田金吉がわからないです
名無しのオプ [] 2014/09/11(木) 08:45:49.17:p4XgCeXX
辞書ででも調べてこいや。クソが。
名無しのオプ [sage] 2014/09/11(木) 14:39:58.49:GGRppDv/
石田金吉などという言葉の載っている辞書が存在するのかよww
名無しのオプ [] 2014/09/11(木) 14:51:27.76:p4XgCeXX
御託はいいから調べてみろ。
それから言いたい事は言え。
名無しのオプ [sage] 2014/09/11(木) 18:06:58.63:GGRppDv/
それこそ「御託はそうしいう辞書を示してから言え」だなw
名無しのオプ [] 2014/09/11(木) 21:24:15.67:ETGTcluD
石田金吉も知らずに何を言ってるんだ?とも思ったが・・
初学者なら仕方ないね
名無しのオプ [sage] 2014/09/11(木) 21:48:18.94:M4flv1Oo
人の気を惹き付けるために、わざと間違ったり(最初はマジでw)、ネタバレしたり…
そこまでして構ってもらいたいのよ。
名無しのオプ [sage] 2014/09/11(木) 22:09:19.53:Mh78MKTg
だって書斎は家族からも見放された孤独なオッサンだもん
名無しのオプ [] 2014/09/12(金) 06:42:42.90:HHGTcWql
名無しで暴れるなよ読後感
名無しのオプ [] 2014/09/12(金) 06:58:51.50:+ch6BNz1
図星を突かれたとはいえ、読後感の荒らしは酷いねえ。
名無しのオプ [sage] 2014/09/12(金) 07:32:59.50:l1YCHNba
と、書斎が名無しでわめいております
名無しのオプ [] 2014/09/12(金) 10:51:33.64:44R1nhj+
人名の掲載されている辞書なんてのはめったにお目にかかれないねえ
名無しのオプ [] 2014/09/12(金) 11:32:05.81:+ch6BNz1
なんだ、まだ調べていないのか。
アンチは愚図にも程があるな。
名無しのオプ [sage] 2014/09/12(金) 12:34:05.80:w5Z9XE4+
ほんとアンチ読書の書斎きは愚図のうえにクズだなw

あ、辞書で調べたら「書斎魔神」という項目に「嘘つき、低能、未読の代名詞」と出ていたぜw
名無しのオプ [sage] 2014/09/12(金) 15:12:40.08:lMhrwoVZ

0点(つまらないし捻りもない)
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/09/18(木) 20:34:05.26:cInZnbTl
「半七捕物帳【一】」岡本綺堂(光文社)

言わずと知れた捕物帳の元祖にしてリアルホームズのライヴァルであります。
私は元来捕物帳とはミステリーの着想力と時代小説の描写力とを併せ持って初めて書けるジャンルの小説であると信じてきました。
然るに、片面の能力しか持ち合わせていないにも関わらず安易に捕物帳に手を出す作家が多過ぎやしないかと危惧しておりました。
誰とは言わないけれど、北国の女流作家とか。そういう秩序のない現代にドロップキックすべく原典を紐解こうと思い立った次第であります。

収録短編は全て怪奇的な出来事が合理的に解決されるという筋書きになっていて、これはミステリーの基本であり良いコンセプトです。
スタイルは明治に入って新聞記者が半七老人に手柄話を聞くと言うものでこれも良いです。

さて中身はと言うと……正直、そこまで本格としてすぐれているという訳ではありません。張り込んだり自白させたりして推理に乏しいのね。
キャラクターが魅力的という訳でもありません。女っ気もないし。
しかし、中にはちらほら及第点のミステリーもあります。ベストは「半鐘の怪」です。火事もないのに鐘が鳴る。傘が重くなる。着物が歩き出す。
頻発する怪奇現象の真相は――驚きました。オマージュでもあるようで。
他、「広重と河獺」のバカトリック(?)。「弁天娘」の奇想、「春の雪解」の幕切れなどが印象に残りました。

解説で都筑道夫が、綺堂の文章が似非捕物帳の弁護材料に使われたと書いていて吃驚怒髪天。捕物帳無理解者という言葉が頭を過ぎりました。
ちなみに末尾では捕物帳は小説のジャンルではなく短編推理小説のスタイルであると明言されており私も全く同感です。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/09/18(木) 20:38:05.75:cInZnbTl
「時のかたち」服部まゆみ(東京創元社)

短編集。
初挑戦だが、何とも独特な読み心地であった。外から来た書き手でしかも女性という特徴が+に働いてる感じ。こういうのは新本格連中じゃ味わえない。
しっとりと情感で魅せておきながらプロットは巧緻で本格としての完成度も高い。
ベストは表題作か。巻末鼎談で北村薫も言っているようにチェスタトン風味のトリッキーな良作。
個人的には「桜」も好き。事件が起きるまでが長いが、十代の主人公から覗いた人間関係が面白く引き込まれる。密室殺人+アリバイ崩し+フーダニットときて更にラストで綾を加える手管にクラクラした。
これからも読んでいきたい作家。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/09/18(木) 20:40:28.02:cInZnbTl
「ピラミッド殺人事件」新谷識(双葉社)

中東との取引で急成長した商社の社長が殺された。現場は父である会長が大学に寄付したピラミッド型のホールだった。
奇しくもエジプト通の会長から誘いを受けていた地理学者阿羅と姪の由美子の2人も行き掛かり上事件の捜査に関わることになるのだが、殺人は更に続いていく……。

某スレからのセレクト。
しかしこれはダメだわ。探偵役が誰なのかはっきりしないし誰も推理しないんだよね。思い付きをバラバラに挙げてみるだけというか。
やっぱ過程を描くのが一番難しいんだろうね。登場する毒殺トリックも「こういうの思い付いた」ってだけでどう隠すかどう解かせるかとかの部分がおざなりだし。
そもそも最初の殺人が密室じゃないのが興醒めなんだよな。その癖ピラミッドパワーだとか言い出して更にそれを刑事が承っちゃうゲンナリな展開。

フーダニットはまあそれなりの体裁を取ってはいるんだけど、犯人指摘の場面がまた不器用でなあ。
地の文がどんどん迎えに行ってるからね。関係者のコンセンサスはえー。テレパシーか。
あと六章だけ意味なく漢字。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/09/18(木) 20:45:03.00:cInZnbTl
「青い灯の館」森真沙子(角川書店)

交通事故で母を亡くし自身もピアニストととしての道を断たれた冴子は資産家の弁護士楡から彼の娘美也の個人教師の依頼を受ける。
楡家の館は明治期に建てられた洋館で敷地には先々代が造ったという奇妙な庭が広がっていた。
しかも館ではかつて忌まわしい出来事が起こっており幽霊が出るという噂があるという。着いた早々何かの気配を感じる冴子。
やがて知り合った霊媒が庭の四阿で突然の死を遂げた。冴子は心霊研究家矢上と共に館の謎に挑むのだが……。

某スレからのセレクト。
いやあ冒頭から如何にもゴシカルな展開に引き込まれましたねえ。佐々木丸美、服部まゆみ系の手触り。館からも新本格的な奇をてらった書き割りではなくストーリーの気配を漂わせています。
そして亡霊、怪物庭園、降霊会と道具立てもバッチリ。更に夜の庭に踊る白い影や荒れ果てた木立の間から覗く振り向いたのっぺらぼうの像など雰囲気が滲み出るような描写も溜まりません。

と言ってそこだけにインシテイルのではなく、ヒロイン自身のストーリーも並行して描かれます。事故の謎、母親の謎、侵入者の謎。
社会派な側面も見せつつ楡家の物語が綴られるという妙ですよ。真相も美しい。意外性とかよりもストーリーとの溶解度を評価したいですね。
この人もまた読みたい作家。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/09/18(木) 20:50:29.26:cInZnbTl
「真夏の妖雪」小林久三(講談社)

某スレからのセレクト。
短編集だがこれは歴史ミステリーとするか時代ミステリーとするか迷うな。実在の人物や事件は出てくるものの、真っ向から史実の真相を暴くという感じではない。定義に困る。
でも内容は良かった。ベストは表題作。真夏に殺された岡っ引きの懐に入っていた雪の謎。被害者の父は下手人を脱獄した蘭学者高野長英だと睨むが。
こうかこうかときて反転させるプロットに唸った。
次点は「『解体新書』異聞」。漢方医の下へ運び込まれてきた重傷患者は憎き元弟子。目を離した隙に消失してしまい、離れた河辺で見つかる。積雪の中足跡は無かった。
本書中最もトリッキーな作品。
他、大震災の直後焼け出された女中が見知らぬ男から名前を呼ばれ妹扱いされるという不可思議な出だしが印象的な「焼跡の兄妹」など。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/09/18(木) 23:54:43.35:Vy37g+Sf
読後感氏が半七に関してコメントしているので一言。
本格として疑問符を呈しながら、ミッチーこと都筑氏の
短編推理小説のスタイルであるとする見解に同意するのは不可解なものあり。
やはり捕物帳は主として江戸風物詩、人情等を描く時代小説の一ジャンル
として把握しておくのが、その作品評価を誤らないためにも妥当であろう。
さすれば、ミステリ的要素はそのスパイス(作品によりその強弱はあり)
に過ぎないと理解できる。
ミステリ的評価オンリーでゆくと、
「半鐘の怪」はモルグを読んでいれば笑ってしまう話だし、
「広重と川獺」は、タイトルの川獺ネタそのもので正に笑うしかない代物、
「春の雪解」のぞっとする後味は、ミステリでなくホラー的ものでしょ。
狂綺堂が書かんとしたでなく、書けたのはミステリ仕立ての優れた時代小説
なんである。
名無しのオプ [] 2014/09/19(金) 09:02:39.59:X2UjdwFF
読後感は基本反論できない人だから、これは書斎の不戦勝かなあ。
名無しのオプ [] 2014/09/19(金) 18:37:41.46:mvSkCble
中卒書斎が
めくら頭吊についてなにか反論したことがあったっけw
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/09/19(金) 22:03:48.12:W9yCaa3B
読後感氏が面白いと認める「弁天娘」。
この点は俺も同感。
しかし、ミステリ云々というよりも、これをスパイスとした
小説としての興趣だな。
強請やこれに関連した殺人事件は、蛇足とまでは言わぬまでも
捕物要素を入れるためのにぎやかしに過ぎない感あり。
本作を石原慎太郎の「太陽の季節」と比較して語った
今思うと、トンデモな論考あり。
障子紙をブレークするのがポコチンか舌先かの違い(w
名無しのオプ [] 2014/09/20(土) 05:14:31.49:Ry3cQ07E
圧勝の論考だね。
名無しのオプ [] 2014/09/20(土) 13:36:24.87:lwsdeBnc
書斎の論考で完成する読後感の感想文。
プロに手を入れてもらったことに感謝して謝意を明確にしておくこと。
名無しのオプ [] 2014/09/20(土) 13:38:06.55:Fh1LzUxM
うむ
名無しのオプ [sage] 2014/09/20(土) 18:05:32.56:m9veucGX
頭吊や血蛞蝓その他について手を入れてもらったくせに感謝の言葉のひとつもないバカ書斎www
名無しのオプ [] 2014/09/20(土) 20:18:05.72:Fh1LzUxM
馬鹿じゃない!!!!!!!!!!!!!!
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/09/27(土) 21:49:38.27:78isiH14
柴田錬三郎「幽霊紳士」を読む。
近々にレアな作品集「異常物語」と併せて創元から文庫が出るとのことだが、
懐かしくなって書庫たんから出し一読。
最後に幽霊が出て来て謎解きというタイトルのままなパターン、
気軽に読めるわな、まあ、それだけです。
個別収録作品に関して、詳細に論じるまでもあるまい。
(またその手の作にも非ず)
名無しのオプ [] 2014/09/28(日) 18:09:13.22:tdvNDxUg
都筑などよりもずっと大切な作家だよね。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/09/28(日) 23:51:37.64:kuQt6AH3
久々に池波正太郎「剣客商売」1、2巻を再読。
このシリーズも秋山父子事件帳、秋山小兵衛の事件簿とかネーミングすれば、
ミステリ扱いされてしまったであろう。
(ゆえに、鬼平も「犯科帳」であり「捕物帳」とネーミングしなかった池波先生、
火盗の捕物(探索等も含む)が見せ場となるエピも多いにもかかわらずだ)
実際、スリルとサスペンスを強調した先の読めない展開、どんでん返し等は、
正にサスペンス・ミステリの世界と言い得る。
するすると2冊完読してしまいますた。
名無しのオプ [] 2014/09/29(月) 08:09:56.49:cazuTdLd
ビッグ3に並ぶ大家だよね。
ミス板では話題にもならんが。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/10/04(土) 13:34:08.40:ag3sgbnt
池波正太郎「ないしょ ないしょ」を読む。
剣客商売シリーズ番外編。
ただし、小兵衛登場は物語中盤に入ってからであり、
50代前半の彼氏、子息大治郎は諸国武者修行中時代の話。
主役はあくまで手裏剣の名手となるお福ちゃんである。
うーん、身寄り無きいたいけな少女であった頃、
自身を凌辱しまくりちよこな旧主人の仇を取るという
心理が、最後まで「どうにもわからぬ」なのだ。
池波先生は説得力を持たそうと「一所懸命」な感はあるけどね・・・
まあ、現代では到底理解され難いものでしょ。
池波先生には「剣客群像」という作品集に「寛政女武士道」という
手裏剣の名手である娘(こちらは武家)が、もて遊ばれた男とその
悪い仲間を成敗し、自身も自裁するという読み応えある短編があるが、
こちらの方が自然な流れで読めるものがあった。
名無しのオプ [sage] 2014/10/05(日) 11:55:17.17:eABZvN47
櫛木理宇「寄居虫女」。

この作者は初読み。最初の女子高生の会話で挫折しかけたが
そこを超えたらぐんぐん面白くなって一気読みした。
家庭に他人が入り込みいつの間にか家族を支配しているサイコサスペンスもの。
マインドコントロールのやり口がなかなか現実的というか
ああなるほどこうやってやるのか、と感心した。
万に一つもないのだがもし他人を洗脳する機会があったら参考著書にしたい。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/10/09(木) 01:34:00.08:zR65WNyS
「猫間地獄のわらべ歌」幡大介(講談社)

譜代の小藩猫間の江戸下屋敷で御広敷番が切腹するという事件が発生した。屋敷を取り仕切る藩主の側室和泉の方は責めを負うことを避けるため、御使番の藤島に殺人に改竄せよと命じる。
しかし、現場は施錠された蔵の中。藤島は密室作りに頭を悩ませることになる。
一方、国許では妖しげなわらべ歌の通りに首を斬られた死体が続々と発見されるという怪事件が起きていた……。

前年度本格ミスなどで話題となった文庫書き下ろし時代本格ミステリー。
文庫書き下ろし時代小説のミステリーというと以前ガイド本を信用して痛い目に遭ったことがあるが、本ミスにランクインしたのなら間違いなかろうと期待十分で読む。
うむ、まあまあ。いくつもの事件と謎が天こ盛りの構成はワクワク感を誘うし、設定等も丁寧に説明されており特有の解りにくさもない。
密室作りの試行錯誤と“真相”は良い意味でバカミスという評価が出来て○。ラストのサプライズもなかなか。
ただ、“童謡殺人”とアリバイ崩しはちょっと書き込みが足りない&拍子抜け。わらべ歌くらいフルで載せましょうや。

それから時折挿入される登場人物のメタ会話がイタい。90年代のラノベの後書きによくあった座談会的なノリで陳腐。ミステリー論自体は興味深い部分もあるのだけれどね。

まあ、必読書というほどではないかな。解説は例によって褒め過ぎ。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/10/09(木) 01:36:37.11:zR65WNyS
「見知らぬ扉」森真沙子(日本文芸社)

都心にほど近いフラワーマンションの住人たちの物語を綴った連作短編集。

某スレからのセレクト。
文章はね、読みやすくて良いんですが、一編一編は大したことがなく、というかオチてるかどうかも判然としないようなものもチラホラ。
しかし全体を包む枠があってラストに真相?が明かされるのですが……うーん、大元帥が感心されるようなものがあるかな?私はあまり驚けませんでした。
ひょっとしたら気付いてない仕掛けがあるのかしら……?

ベストは308号室か603号室かな。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/10/09(木) 01:41:38.62:zR65WNyS
「法廷の疑惑」小杉健治(双葉社)

結婚を間近に控えた相羽李奈子は母親が交通事故で植物人間になったせいで婚約破棄され生活にも困窮する羽目になってしまう。
李奈子に捨てられた医師上林はこうなると解って手術を施したことに自己嫌悪を覚えていた。
そんな中、李奈子は在宅介護に追われながらも死んだと聞かされた父親の正体を突き止めようと思い立つのだが……。

某スレからのセレクト。大元帥絶賛の一冊です。しかし! はっきり言ってイマイチでした。
この後殺人事件が起きて法廷劇に入っていくんですが、そこまでがダラダラ長い。やりきれなさだけが売りの社会派を読まされている苦痛を味わいます。

それでも後半探偵役らしき水木弁護士が登場するに及んでコペルニクス的転回が起きて前半の退屈さに潜んでいた驚愕の真相が姿を現すのかと思いきや全くそんなことはなく、
それどころか中盤である出来事が起きた時点で真相に直結してんじゃないかとすら思ってしまう始末でして。
ただメインの事件におけるホワイダニットに関しては解りませんでした。でもこれだけで傑作とは到底言えません。

あと法廷劇も明確な対立構造が無いから盛り上がらないんですよね。狭いところで争ってる印象で。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/10/09(木) 01:43:36.38:zR65WNyS
「罪の女の涙は青」日下圭介(講談社)

経済評論の傍ら喫茶店を経営している木次が娘のように可愛がっていた姉妹の姉梢が自殺した。見つかった遺書には自身が殺人を犯したと3人の被害者名が挙げられていた。
木次は梢の恋人だった北原と共に梢の死の真相を追う。

某スレからのセレクトかと思ったらまとめには出てないね。じゃあどこからだろう?
ともかく面白かった! 木次たちが関係者に話を聞いていく過程にやや雑な部分があったり筆が滑った部分もあったりしたが、全体としては良作。
まず冒頭から「何が起きてるの?」と読者をグイグイ引っ張っていく力が強い。端々に細かな謎を散りばめて燃料注入にも余念がないし。
そしてストーリーもちゃんとある。推理“小説”が書けている。当たり前と言えばそうなんだけど、案外手抜きもいるからね。「法廷の疑惑」みたいに(笑)。
日下、長井、高柳辺りは流石乱歩賞というハードルを越えてきてるだけあってエンタメが解ってるよ。

フーダニットは弱めだが、解けてみれば解りやすいアリバイ崩しや写真のトリック、レッドヘリングの活用など読み応えは十分。
日下は短編集2つ読んで長編は初めてだと思うが今後も読みたい作家だ。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/10/09(木) 01:45:57.07:zR65WNyS
「女たちの捜査本部」日下圭介(徳間書店)

友達4人でペンションへ宿泊している少女香織は洗面所で白い服の女を目撃する。
女が消えた213号室は無人の空き部屋だったが、その夜別の少年がそこに死体があると騒ぎ出しベランダから部屋を覗いた香織は倒れ伏す女を発見する。
しかし、ドアを開けた時には死体はなく、ベランダから撮ったはずの写真にも写っていなかった。
一方、東京ではマンションの一室で刺し殺された男の死体が発見され警視庁捜査一課の女刑事が捜査に乗り出す。

某スレからのセレクト。
日下連読であります。「罪の女の涙は青」以上の魅力的な導入部にクラクラきました。いいですねぇ〜。全く匂いが違う2つの事件の組み合わせって展開がもう萌えますし。

フーダニットはこれを唐突と見るか意外と見るかで評価は別れそうですが、無しだとは思いませんでした。
アリバイ崩しはちょっとワンパターンかなと思いますが、消失トリック殊に写真からの消失トリックはクレイトン・ロースンを思わせる鮮やかさで感心しました。
やはり良い作家。

ところでヒロインと相棒のオッサン警部補とはこれからチョメチョメな関係になっていくのでしょうか? 今回はあっさり交わされてましたけど(笑)。
名無しのオプ [sage] 2014/10/09(木) 16:04:52.43:PwyRS0H+
相変わらず酷い悪文。
二度と来るな。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/10/09(木) 22:23:15.91:zR65WNyS
「やさしく殺して」胡桃沢耕史(勁文社)

国連本部にほど近いバーの地下に集う女たち。様々な社会的地位を持つ彼女らの共通点は2つ。処女であることと男性への激しい敵愾心。
女傑マーサ率いるアメリカ合衆国新政府設立会議は絶世の美女を大統領に擁立し男性を奴隷化しようと企んでいた。
この陰謀はアメリカ連邦調査局P0課の知るところとなったが、チーフのHは本気にせず対応をコネで潜り込んできたスパイ07号ことジェームス・モンドに押し付けた。
勇んで初任務に就くモンドだったがあっさり捕まってしまい……。

本邦007パロディとしては読むのは定吉七番以来2作目となりますが、こっちは200ページ足らずと短いのですぐ読めました。
主人公はスパイの適性のない色男なので勢い美女とのいちゃいちゃが目立ってくるのも違いかな。
ただしユーモアものだと思っているとギョッとするような場面に突き当たるのでご用心。ラストの残酷さにはびっくりした。
ひつまぶしにはいいと思うが、ハードカバーなのは×。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/10/09(木) 22:24:20.74:zR65WNyS
「殺しは惨く、美しく」胡桃沢耕史(勁文社)

色事だけが取り柄の3流スパイモンドの今回の任務はエーゲ海に浮かぶヌーディストの島へ行きソ連のスパイを捕まえること。
まずはパリへ向かったモンドは自分そっくりの殺し屋に出会い、彼に成り代わって島へ潜入することとなるのだが……。

一つ飛んで3作目。ヌーディストの女たちにマダムXなんつー元締めが出てきたからすわ1作目の焼き直しかと思ったら黒幕は別にいた。
そして例によってあっさり敵の手に落ちたモンドは激しい苦痛を味わうのだが、その内容が凄い。ネタバレになるから伏せるがもう非道いの一言。
スパイものの主人公たち受けてきた拷問は多岐に渡るだろうけどこれ以上のものはちょっと無いんじゃないかな。そのくらい残虐。
恒例モンドガールとのいちゃいちゃはあるにはあるがあまりそそらない。しかし秘書のミス・ケイトには萌える。ナイスバディなのに初心という。いつかものにして欲しい。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/10/11(土) 11:44:47.91:YbRztdgj
池波正太郎「黒白」を読む。本作も剣客商売シリーズ番外編。
「ないしょ ないしょ」と異なり、終盤は若き日の小兵衛が主役状態。
小兵衛が若い(後の大治郎の母=お貞所帯を持ち、自身の道場を開いたばかりの30男)だけで、剣客商売本編と変わらぬ展開になってしまうのは、
シリーズのファンの要望を考慮したものかもしれぬが、
ノンキャラの短編等も好む自分にような読者には、少し残念な感あり、
悲運の剣客と言える波切八郎をメーンにおいて描き切って欲しかった。
八郎、江戸の公儀ヒットマンの岡本弥助、その手先である伊之吉の
妙な三角関係状態(男色ではない)が妙に良いんである。
悲劇に終わるかと思いきや、意図せぬ偶然により悲願だった小兵衛との
真剣勝負を果たし、右腕を斬り落とされた八郎、
これもまた偶然(池波作品はこの手の展開が多過ぎなのは気にかかるが(w )
により、三条大橋上で老いた八郎とその連れ合いの女(これもいわく有りな
キャラ=お信)を幸福そうな姿を見かける小兵衛というエンディング。
小兵衛目線だけでなく、八郎、伊之吉、市蔵(八郎を慕う下僕)等の顛末も
読んでみたかった感はある。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/10/18(土) 01:35:43.83:FRJNfGxi
「四月の橋」小島正樹(講談社)

駆け出しの弁護士川路弘太郎は知人の弁護士奈々橋泉の父親栄治の弁護を担当することになった。
栄治には殺人の容疑がかけられており、被害者はかつて栄治の息子優一をひき殺した男だった。
彼の無実を信じる川路と泉は疑いを晴らすため奔走するのだが……。

新本格の驍将小島正樹の作品はとにかく読むべしと思っていたのだが、本作は敬遠していた。
タイトルからして他のいかにもというものと違ってフツーだし、あらすじもピンと来なかったし(「日本版『川は静かに流れ』」って……)。
しかし今回思い切って読んでみた。良かった!
これは読み応えのある作品だ。奇想天こ盛りの作品群とは作風がガラリと変わって地に足のついたリアルな謎と丹念に描写されていく捜査過程に引き込まれた。
鬼面人を驚かすようなものが無くともヒネリも見せ場も十分に用意されている。

個人的にはいじめの扱い方が気に入った。不自然さを覚える向きもあろうが、このくらいに捉えていた方がいいと思うわ。
生真面目な川路と気の強い泉との友達以上恋人未満の関係の行く末にも注目しとけ。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/10/18(土) 01:36:48.80:FRJNfGxi
「人形佐七捕物全集一 ほおずき大尽」横溝正史(春陽堂書店)

人形の如きイケメン岡っ引き佐七が活躍を描く第一短編集。
「半七捕物帳」は謎解きが弱いなと思い大横溝ならばと期待するも割と微妙。フェアでもなく後付けぽい駆け足の結末な感じは基本的には変わらず。
捕物帳とはこんなものというコンセンサスが受け継がれていたのかしらん。この問題は次読む「安吾捕物帳」に持ち越し。

ベストは「佐七の青春」かな。美人妻お粂のジェラシーが炸裂して追い出された佐七を襲う災難。表裏の辻褄合わせが素晴らしくユーモラスな雰囲気も○。
次点は「双葉将棋」に。作中の棋譜を使った暗号がシンプルイズベスト!
ほか表題作は敵対者を次々襲うキチガイの話だが後半の動機の物語が長いがエロい(笑)。そう、艶っぽい描写がちらほら登場するのも本シリーズの特徴か。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/10/18(土) 01:41:48.50:FRJNfGxi
「日本探偵小説全集3 大下宇陀児 角田喜久雄 集」(東京創元社)

角田目当てでも半分読むのも気持ち悪いから茹だるような思いで前半を読む。犯罪心理の描写だとか嫌な予感してたらまんまと的中。
何だろうねこれ。遺すべき作家なん?論創か作品社辺りでチョロッと出るなら解るけどさあ。トリックも無ければどんでん返しも無いかしょっぱいかって感じで……。
読んで詰まらんとは言わんよ。そこそこ読める。ただン十年経ってまでも通るべき場所じゃないってこと。「虚像」なんて長すぎるもの。だったらもっと伏線撒けやって話。

で本編。流石につのだ☆きくおはやるね。本格でありながら変格的奇妙な味的な感じもあってグーよ。倒叙アリバイものあり、島荘風奇想ものあり、チェスタトン風ありと堪能したわあ〜。
そして代表作「高木家の惨劇」。長編というには短いが、内容は盛り沢山。機械トリック、天才型VS凡人型、レッドヘリング、そして錯綜するプロット。
犯人像と真相に乖離がある気がしないでもないが、まあ良作だあね。
再読だった「沼垂の女」もやはり良い。この“目的地へ行く途中”というのがホラーの好きなシチュなのよね。四つ辻とかもゾクゾクする。「笛吹けば人が死ぬ」はタイトル倒れの凡作。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/10/18(土) 01:42:08.65:FRJNfGxi
「ノックス・マシン」法月綸太郎(角川書店)

本格ミステリを題材に採ったSF短編集。
楽しくなかった。ゴテゴテしく意匠を凝らした器に水道水入れた感じ。こんなもん売って良いの?
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/10/18(土) 01:46:13.21:FRJNfGxi
「坂口安吾全集 12 明治開化安吾捕物帖(上)」(筑摩書房)

明治の半ば、東京都下で巻き起こる怪事件の数々を解き明かすは、剣術家泉山虎之介から仔細を聞く勝海舟か。現場に赴く探偵結城新十郎か。

待望の捕物帖であります。顎十→半七→人形佐七と来て今一つくすぶっていた不満をスカらせてくれるや否や。
くれましたね。面白かったです。口上であるように毎回安楽椅子探偵VS通常の探偵という構図で二重推理が楽しめるのは大きな美点でしょう。
前半は虎之介が海舟を訪ねるところから始まる話ばかりですが、後半からまず事件を描いてその後レギュラーメンバー登場の運びとなるスタイルに移行しています。
同じスタイルじゃ飽きるからこれは良いと思います。

ベストは「稲妻は見たり」でしょうか。雷鳴響く夜お屋敷の若い女中が行方不明になるのですが……練られた犯行にチト唸りました。
次点は「ああ無情」。人力車夫が奇妙な依頼の本預かった行李から女の死体が……既読ですが発端の不可解性から錯綜する事件に意外な犯人とやはり見事な出来栄えでした。
他、「石の下」「冷笑鬼」など事件のストーリーが印象的な短編もいくつかあります。

毎回ラストの海舟の負け惜しみでないような負け惜しみのようなコメントがいい味出してます。
しかしナイフで後頭部切って悪血取るってアブナイ癖ですね(笑)。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/10/18(土) 13:48:34.25:Z1Hs0x07
野村胡堂「銭形平次捕物控傑作選3」を読む。
今は無き嶋中文庫等で読み耽った時期もあったゆえ、
未読作が収録されているものをと思い本書をチョイス。
収録作品講評、逝ってみようか!!!
・「権八の罪」
・「縞の財布」
この2作は過去に嶋中文庫版で論考済み。
・「荒神箒」
ホームズのマスグレーヴ家のエピを想起させる暗号宝探し譚である。
まあ、創りものの面白さを堪能せいや、というたところか。
・「二つの刺青」
持ち物の整理具合から計画失踪を見破る平次親分の推理は見事ながら、
ミステリ的にはお玉の替玉ネタが御都合主義的で弱いという感あり。
・「小便組貞女」
現場の状況(真新しい杉板等々)から殺しの方法、死体移動を推理する
平次親分見事としか。
あらえびす自身もお気に入りの作だったとか。
・「花見の留守」
最後は因縁話風な兄弟相討ちへ。鏨の弾丸発射殺人とか、ジョンかお(wな
機械的トリックが笑える一編。
・「死の秘薬」
おなじみトリカブトネタ、フーダニット的にはラストまで意外性に富む
(犯人がお道とは)
・「八五郎子守唄」
トリカブトネタ2連発なチョイスは頂けず。矢による殺人偽装も無理有り過ぎ。
名無しのオプ [] 2014/10/18(土) 14:34:43.97:zjS1L2VV
読後感の荒らし行為のあとの書斎の本格論考。
これがないとこのスレは意味がない。
名無しのオプ [] 2014/10/18(土) 15:21:04.83:9Ya+1m2R
みんなを笑わせ場を和ませるには書斎のすばらしい論考が必要不可欠。
名無しのオプ [] 2014/10/18(土) 19:07:56.88:mrOcdG0f
そのトオリ!!!!!
名無しのオプ [] 2014/10/18(土) 20:53:23.75:9Ya+1m2R
書斎の論考は人を笑わせるユーモアがあるから皆仲良くミス板の秩序が保たれてる。
書斎は尊敬されるべき人間なのは明白である。
名無しのオプ [sage] 2014/10/18(土) 21:45:16.44:4iU8W6Ng
×笑わせる
○嘲笑われる
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/10/24(金) 22:46:47.43:NpqRm0nf
「巨根伝説 上・下」半村良(祥伝社)

謎の美人社長に魅せられた新宿に住む男性4人組は彼女の遊びに付き合う中で突飛な冒険を思いつく。
それは怪僧道鏡の財宝を探そうというものであった。

伝説シリーズ最終作。だけどこれがシリーズ初読書。伝奇推理とあるが嘘。お色気ありの社会派って感じ。
道鏡の話が出るのは上巻の後半で実際探し始めるのは下巻に入ってから。本作の主題はそこではなくもっと生々しいもの。
はっきり言って道鏡は強引にねじ込まれた印象でその意味では失敗作だと思う。
エロ方面でも散々引っ張っといて肝心なとこでお茶を濁すという竜頭蛇尾っぷりに学刈だった。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/10/24(金) 22:49:20.28:NpqRm0nf
「作者不詳 ミステリ作家の読む本 上・下」三津田信三(講談社)

関西の出版社に勤める三津田信三は偶然迷い込んだ杏羅町の雰囲気に魅せられた。
やがて親友飛鳥信一郎を町に案内し、彼は古本屋〈古本堂〉で『迷宮草子』という同人誌を手に入れる。
七つの不思議な短編が収められたその本を読み進むにつれ、話に纏わる怪異に襲われるようになる二人。
過去の持ち主が次々と失踪を遂げていたことを知り、身を守るため各短編に隠された謎を解くべく推理を試みていくのだが……

作家三部作之二。文庫版で読んだが、いやあ面白かった。刀城以上じゃね? これ当時ランクインしてた? スルーした書評家どもはbungeeに値する。
作中作の問題編と二人の解決編とのセットを繰り返す構成は怪奇的な作風のお陰で飽かずに読めた。きっちり多重推理もやりつつ、ラストには通しの謎もあったりしてね。更にはストンと落とすアレも。
あと、この人の話はなんか依存性があるんだよね。もっと読みたくなっちゃう。ヨーロッパ的不思議小説の趣もあったりね。
ただし現実パートの怪異の部分は冗長に感じられることもあり、特に金曜日は要らない。

作中作のベストは「朱雀の化け物」かな。「霧の館」「時計塔の謎」とか雰囲気良いのは他にあるんだけど、本作の胸糞の悪さとトリックの見事さに圧倒された。
これには本当に身につまされたわ。途中で一旦読めなくなったもん。そして仕掛けが巧かった。CCの新ネタだよね。考え付きそうで付かなかったネタだ。
しかしこの話は動機の掘り下げが欲しかった。そういう意味では前掲「時計塔の謎」も多分彼女はこうだったんじゃないかなと思うが闇の中。

三作目は怪談だそうで期待大。

追伸 CCを「嵐の山荘」と「テン・リトル・インディアン」に分けたのは新鮮だった。
名無しのオプ [] 2014/10/24(金) 22:56:14.37:GGqtzhFU
荒らしは逝けや。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/10/24(金) 23:01:30.68:NpqRm0nf
「狩久探偵小説選」(論創社)

以前「訣別――第二のラブ・レター」を読んでアマチュア臭いなーと思ってそれっきりだった(物理的にも読めなかったし)が、今回まとめて読んで印象変わったわ。プロの作家だ。

作風は本格派だが、名探偵が推理するというスタイルのものは少なく警察も絡まずに終わる。作者の犯罪に対する考え方が反映されている形。
前半の四編は少数派の名探偵シリーズ「瀬折研吉・風呂出亜久子の事件簿」。
様々な密室トリックを解き明かしていく。二人の掛け合いを始めユーモラスな筆致で面白い。こういうの国内古典では他に鷲尾の酔いどれ男&ストリップ嬢しか知らないが、いいね。
ただしトリックは良いけど解明がいい加減なのがマイナス。女の特徴(偏見)を押し出した演出だとしても、本格としてはね。
ベストは「虎よ、虎よ、爛爛と――一〇一番目の密室」。全体のベストもこれかな。逆密室殺人とも言うべき事件のおはなし。多重推理=どんでん返しの密度が濃く楽しめた。

その他の短編も片腕を犠牲にした凄絶な女優を描いたハッピーエンドのデビュー作「落石」や強盗に犯される未亡人を描いた「ひまつぶし」、
凝った人間消失トリックを用いた「山女魚」にアッと言うアリバイトリックの「恋囚」、大胆な二つの密室トリックが出てくる「共犯者」と佳作揃い。
この流れで「訣別」を再読すると印象が変わってきたみたい。
「落石」のトリックはクロフツの某作と同じだし、「恋囚」のも某世界傑作短編のバリエーションであるが読んで損はない。
示唆に富む随筆も合わせてお薦めである。

追伸
・「寝室的」って新しいな。
・「すとりっぷと・まい・しん」の選評読んで乱歩の頭の悪さを再確認した。
「火刑法廷」「ありふれた死因」の真相も理解出来てなかったし、飛鳥高に短編より長編書いたらとアドバイスしたりトンチンカンなおっさんだよ、ホント。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/10/24(金) 23:06:26.00:NpqRm0nf
「ネメシスの契約」吉田恭教(光文社)

厚労省職員向井俊介は従妹から医療訴訟への協力を頼まれる。急性心筋梗塞で亡くなった患者を調べていく内不審な点が浮かび上がった。
夕刊紙記者周防正孝は自身が殺人犯の息子という事実に苦しんでいた。もしや冤罪ではないかとの思いを抱いた周防は八年前の首切り事件を洗い直すべく新潟へ向かう。
警視庁捜査一課の刑事副島佳苗は通勤途中に上司から連絡を受け目黒川から上がった死体の発見現場へと急行した。身元は行方不明となっていた少年で残虐な暴行を加えられていた。
三つの事件はやがて絡み合い、大きな悲劇が暴かれていく……。

「変若水」に続くシリーズ2作目。半本格といった感じで、本格ぽいトリックやどんでん返しがある一方、解明部分は直感頼りで甘く前々世紀的。
とまれトリックそのものは専門的ながら理解しやすい構造で○。医療トリック、首切りトリック、××トリックとあるが僕は最初のに一番感心したかな。
その後の意外な犯人及びどんでん返しも良かったのだが、そこまでやるかという不自然は残った。

小説としては前作同様軋みが散見される。幽霊に頼まれる行とか服買いに行って閃く行とか唐突で苦笑を禁じ得ない。俊介も閃き過ぎだし、仲悪い出世頭の秘密もしょぼすぎる。
大山鳴動して鼠一匹なところがこの人の弱点よね。

そして何より不満なのは美咲タンの出番が少ない! 出ても普通のいい彼女で物足りない!
やっぱ俊介との間にゴタゴタがないと美咲タンの魅力は活きてこないね。次作は一嵐来い!

最後に、作中には刑事の口を借りて死刑廃止論者批判が出てくるがこれは飛躍していて受け入れられなかった。でもラストの主人公の決断はGJ!
名無しのオプ [sage] 2014/10/26(日) 16:08:44.17:RLM6fjab
やりたい放題に荒らすなあ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/11/02(日) 19:41:25.82:DKwE/JWz
野村胡堂「銭形平次捕物傑作選2」。
嶋中文庫版で未読だった収録作品中の3作を読む。
・「九百九十両」
高利貸の盲人が検校の位ゲットのため貯めた九百九十両盗難事件、
平次は高利貸の娘からの依頼で探索を開始する・・・
最終的な金(というかこれを入れた竹筒)の隠し場所(杉丸太の間)が、
ちょい面白い程度な作か。
・「刑場の花嫁」
ちょい興を惹くタイトルだが、正に絵に描いたような勧善著悪の
ハッピーエンド。まあ、この手の話が好きという向きもあろうか(w
平次が自身に対する過信を自戒するラストは面白くなくもないが。
・「遺書の罪」
これは悪女ものとも読める偽装トリックをはじめとした展開が
楽しめる作ではあるが、武家社会の慣行として弟の敵討ちはNGな
はずなのに、何で自死したのか?
短編で基本設定が破綻してはこれこそNGかと思う(w
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/11/03(月) 23:29:00.41:+VWuL4C0
谷崎潤一郎「夢の浮橋」を読む。
タイトルから源氏物語ネタ(見立て)の話かと思いきや、
勿論それもあるが、終盤に来てのミステリ展開(ムカデによる義母殺し、
なぜ嫁に寝間着の下のそれが見えたのか)にびっくり。
しかも、作中前半には、いわゆる主人公と若く美しい継母の間を匂わせる
叙述トリック的記述さえ見受けられるという、この板住人にも、
なかなか読ませる作である。
さすがにミステリも書くし、愛読もしていた大谷崎らしいくはある。
大学生(旧制)にもなって、継母のオパーイをチュッパチャップスって自体、
主人公曰く「物狂おしい行動」「狂気染みた心」と表しているとおり、
尋常ではないわな。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/11/04(火) 00:58:54.54:ThVSI3Wj
「幻の翼」逢坂剛(集英社)

稜徳会病院で起きた血腥い殺人劇はスキャンダルを恐れる政府与党や警察上層部によって詳細が握り潰された。
警察庁特別監察官の倉木は恋人の刑事美希の協力を得て事件のリポートをマスコミに流そうと画策する。
そんな時、能登半島沖で北朝鮮の工作船が発見され、捕まった男が漏らした言葉に倉木と美希は衝撃を受けた。それは死んだはずの男の名前だった。

「よみがえる百舌」のエロシーンを読むためにシリーズ読書再開して久しぶりに2作目をば。
書評家としての逢坂剛は数年前の酔狂の選評で見限ったけど、作家としては3冊くらいしか読んでないしエロのためなら仕方がない。
前作は殆ど覚えてなかったけど、あまり困ることはなかった。もちろんネタバレはあるが。

主人公たちは刑事ばかりでも警察小説というよりスパイもののノリ。
警察官という職業を軸にして個別の事件や組織の綱引き等の「日常切り取る」小説ではなく、陰謀を軸にして様々な事件やキャラクターたちを結びつけていくといった「非日常を濾し取る」小説なのだ。
だから飽かずにどんどん読める。リーダビリティがある。ここは文学賞の選評では付け入れられる疵となるだろうが、エンタメとしては正しい書き方だ。と敢えて断言する。

前作に負けないどんでん返し(ピートリック+叙述ぽいトリック)もあるし、ヤラシイエロシーンもあるのでお薦め。

つか精神衛生法怖すぎ。もう改正されてるといいけど。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/11/04(火) 01:01:52.23:ThVSI3Wj
「砕かれた鍵」逢坂剛(集英社)

麻薬捜査中の刑事が射殺された。犯人と相討ちかと思われたが、倉木は被害者が死ぬ前に言った「ペガサス」という言葉から第三の人物がいたと睨む。
一方調査事務所を開設した大杉は倉木の依頼で警察の内部告発本を出している出版社を調べることに。
そんな中、ある病院で爆破事件が起こり倉木と美希とにとって大切な人物が命を奪われた。復讐の鬼となった美希は独力で犯人を突き止めようと動き始めるのだった。

シリーズ3冊目。相変わらずのリーダビリティの高さ。エンタメはコーディネート。
サプライズもしっかり二枚刃で仕掛けられている。ただし続けて読むとワンパターンだなと思わざるを得ない。
このトリック確かに使い勝手は良い。きちんと仕込むと読者はカタルシスを得られる。ロスマクの某作のように。本作でも成功はしていると思うので、欠点とまでは言わない。
なのでしばらく間を空けて読むと良いだろう。

それとは別にクライマックスには驚愕の展開が待っている。
ちなみに今回エロはなし。残念。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/11/04(火) 01:04:01.08:ThVSI3Wj
「よみがえる百舌」逢坂剛(集英社)

過去のある事件に関係した元警察官たちが次々と殺されていく。死体の首には千枚通しが突き刺さり百舌の羽根が残されていた。
死んだはずの百舌が生きている!? 警部となった美希は大杉と共に連続殺人に挑むが自身も狙われることに。
果たして百舌の正体は?

さあ遂にエロ天大聖ここまできた。なかなかのボリュームですがエロのためならペプシコーラ。頑張って読みました。
しかし、期待はずれ! 部分的になぶるだけだし場面も短い。手マンして羽根で背中なぞって挿入するだけ。ものた りぬ。

ミステリーとしては、百舌と百舌を操るバードウォッチャーとの2人のフーダニットで引っ張る訳だが、伏線がろくすっぽないので単なるイーッ!でしかない。
まあそれに絡んだ叙述トリックは悪くないけど、それもあくまで局地的な話であって加点は小さい。

それともう一つダメなのは思わせぶりな人物が結局何もないというところ。あの人は何か魂胆があるはずだと思うし、あの人だってあれで終わりじゃないと思うのに見たまんまなのはいただけない。
或いはこの辺りが逢坂剛の限界と言うか、本格の素養はありながらもセンスがないってことかも知れないね。

後は……自スレで評価の高い短編くらいは読んでやるとするか。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/11/08(土) 14:41:45.25:oGXRDA5S
壺井栄「二十四の瞳」、竹山道雄「ビルマの竪琴」を久々に一挙再読。
いずれも映画化作品も名作の誉れ高い。
今回、両原作を精読するに、映画は原作準拠を心掛けたのが傑作足り得た因
のひとつだと確信。
(無論、木下恵介、市川 崑という日本映画史上に残る名匠の手腕も十分評価
するに躊躇するものではないが)
ラストの一本松の写真をめぐる感動的エピ(ソンキ役の若き田村高廣氏の好演が絶品)、「おーい、水島、一しょに日本に帰ろう!」の鸚哥のエピ等々、
全て原作には有る。
ビルマの方は、作者自身が「ビルマの竪琴ができるまで」で「推理小説のようなサスペンスを工夫」と記しているとおり、序盤は水島に似たビルマ僧は本人
なのか?、であるなら何で隊に帰ってこないのか?という謎の解明で興を惹き、
後半では、ビルマのジャングルを舞台にした水島上等兵の冒険的内容で
読ませる面あり。
前者は右から、後者は左からの批判も有り得よう作だが、
(前者には作中で触れられる左翼思想の批判的観点からの指摘はなく、
後者には軍隊組織が持つ負の側面には全く言及されない)
内地と外地(戦地)という舞台の違いはあれど、共に戦争の悲劇を
メーンテーマに置いたリアルなファンタジー、メルヘンの色彩が濃いは言える。
小石先生ならぬ大石先生、水島上等兵のようなキャラ(特に後者)は
その実在性は別として「あるべきキャラ」であってこそなのであろう。
名無しのオプ [sage] 2014/11/08(土) 15:40:24.71:/B4hoaOf
林、いっしょに病院還ろう
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/11/09(日) 15:33:13.99:e+ORHmV+
西村京太郎「消えた巨人軍」を読む。
70年代、80年代初めぐらいまで(トラベルミステリ量産体制に入る前)
の西村作品はそれなりに面白いものが多いのだが、
これは今ひとつの出来、「消えたタンカー」「消えたクルー」等の
海洋ミステリのような不可能犯罪ものを期待すると見事に外されます。
張本が巨人に在籍していた頃のOH砲時代(長嶋は既に監督)、
リアルでは超キャラ立ちしている長嶋、読売の本作刊行当時の球団社長等の
存在感がゼロなのが、何とも「小説」としては残念な感はある。
阪神との対戦のため甲子園球場に新幹線移動中の巨人選手一行が
集団誘拐される、警察の捜査にもかかわらずその行方は不明、
球団関係者の苦悩は深まるばかり、ここに米国帰りのハーフの私立探偵
左門寺が活躍と相成る。十津川警部ほど人気は出なかったものの、
後にシリーズキャラとなるが、本作に関しては作品のリアリティを殺ぐ
いらない存在としか思えぬ。
集団捜査によりじょじょに犯人グループが絞り込まれ、巨人選手の
行方が判明して来るといった警察小説的書き方をした方が、
臨場感ある面白い作になったと思われだ。
まだ、プロ野球がナショナルパスタイム足り得た昔懐かしい時代、
隔世の感ありとは言い得よう。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/11/15(土) 19:08:03.54:R6ZAFWKb
「赫眼」三津田信三(光文社)

著者初のホラー短編集。
「ついてくるもの」から遡った。相変わらず良い。あらすじだけ抜き出せば似たり寄ったりな気もするがそれをあの独特な文章が各個確固とした怪談に仕立てていると思う。
ただ怪異に一応の説明すら付けずに終わっていることが多々あり、これは評価が分かれるところかも知れない。
あと合間に掌編が挿入される構成はグー。「幽剣抄」も「悪魔なんかこわくない」も良いホラー短編集はみなこうだ。願わくば短編をも凌駕する切れ味鋭いものが一つでもあれば良かったのだが……。

ベストは唯一ミステリーとしても読める「灰蛾男の恐怖」に。戦前戦後にあちこちで出没した怪人による殺人の謎に三津田が迫るというモノ。あのフレーズが耳に残る。
次点は全編通話の「よなかのでんわ」。限られた落としどころの中巧みに怖さを醸成している。

夏のミスマガに載ったのも良かったし、この人の短編をもっと読みたい。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/11/15(土) 19:09:29.04:R6ZAFWKb
「人間の尊厳と八〇〇メートル」深水黎一郎(東京創元社)

酔狂賞受賞作含む短編集。
鬼面人を驚かす類のものはなく、そこそこのサプライズが並んでる印象。
ベストはやはり表題作か。バーで隣り合った男から奇妙な勝負を持ちかけられた主人公。話を聞く内次第に引き込まれていくのだったが……。
二重のドンデン返し。抑えた筆致ながらその衝撃悪くない。
他はちょっと小粒或いは類型的かな。最後のは芸が足りないと思う。あれだけの長さならもっと伏線撒いて凄いこと仕掛けるべき。
自作解説もちと自信過剰気味でもしやあまり読んでない?

深水はウルチモで切ってたけどもすこし読んでみよかな。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/11/16(日) 18:32:57.67:Gb+qOTbx
黒川博行「後妻業」を読む。
著者の直木賞受賞後第1作、素材の面白さもあってかなり売れてるようで
ある。ヤクザ上がりの結婚紹介業者と組んだ悪女(と言うても69歳の婆)
が資産持ちの爺を文字どおり食い物(財産、更には命さえも)にしてゆく
犯罪小説。
作中で言及される現実の事件を想起させて、かなりグイグイ読ませるものあり。
ただし、時代のせいか、この現代のピカレスクロマン(悪漢小説)の貫徹は無し、
最後には後妻業に関連した殺人者たちは自滅してゆく・・・
何か惜しい感あり、ここは悪のサクセスストーリーで突っ走って欲しかった
のだが。
美大出と法律には門外漢の作者でありながら、公正証書、戸籍制度、登記制度等
の法律ネタ満載(決して手際よくわかり易く纏めたとまでは言い難いものは
あるが)で、この点は読み応えはある。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/11/22(土) 20:53:44.95:/oEbkCX/
角田喜久雄「黄昏の悪魔」を読む。
古い作であり、本格ミステリでもないが、この作者の伝奇小説でおなじみの
ストーリーテリングは健在。
戦争で両親を失った若い女性を主人公にした巻き込まれ型の
サスペンス・ミステリの世界に惹き込まれるものあり。
中盤を超えても、ヒロイン自身にもなかなか状況が見えて来ないサスペンス
は強烈なものがある。後半の横溝正史まがい(と言うては失礼な表現かも
しれぬが)の片桐家の様は前半の都会派サスペンス小説の世界との落差が
大きいゆえか、逆にコントラストが明確で面白いものあり。
加賀美警部もの等と異なり、完全に忘れ去られた作ではあるが、
案外な拾い物であった。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/11/23(日) 17:53:12.12:mHJuz6fd
甲賀三郎「妖魔の哄笑」を読む。
列車内の殺人を契機とする通俗サスペンス・ミステリというか、
臆面もない御都合主義連発で犯人捜査・追跡のスリルを強調した
いわゆる大衆スリラーであり、現在視点で多くを語るべきほどものはない
作である。
前半部分の主人公が文字どおりの素人探偵(何しろ偶然に殺人事件の現場に
遭遇した単なるリーマン)、しかし、この点からはスリルよりも何気に
ユーモアさえ漂うどじっ子ぶりの方が印象的だ。
捜査担当の水松警部からして、犯人取り逃がし常習犯(?)。
かなりのどじっ子ではあるが(w
名無しのオプ [sage] 2014/11/24(月) 10:42:00.55:6YtEcszo
乙です
甲賀三郎は当時の人気作家らしいけど青空文庫で読んでみます
名無しのオプ [sage] 2014/11/24(月) 10:43:40.99:OURsyRVo
幼稚な自演w
名無しのオプ [] 2014/11/24(月) 11:48:32.24:i7yLKBt7
書斎は自演なんかしない。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/11/24(月) 15:47:36.46:C0iC76st
西村京太郎「マンション殺人」を読む。
トラベルミステリ量産体制前で、わりと読ませるものが多い最初期西村作品に
しては今ひとつな出来だが、昭和40年代のマンションブームという
社会派ネタを取り入れた刊行当時はカレントな作と思われ。
都心の高級マンションと都下ニュータウン集合住宅で発生した2つの
殺人事件、一見、無関係に思われたが、じょじょに関連を示す背後の事情が
判明してゆく・・・
浴槽内殺人の消えた凶器の謎解きはお粗末(何と浴槽そのものが凶器という
あっさりおとぼけぶり、現場検証や検死解剖でわかるやろと・・)だし、
そもそも犯行に無理有り過ぎ、誰かには感づかれて当然な状況である。
動機面(リベンジ)に関連するマンション販売詐欺の手口も、
今から見ると非常に単純過ぎ。
以上、ミステリとしての魅力は薄い警察捜査小説なんだが、
現代では過疎化、ゴーストタウン化が問題になっている
草創期のニュータウン(多摩ニュータウンがモデルであろう)の様が
懐かしくも、隔世の感あり。
当時はニュース等でも、その開発・発展の様がよく紹介されていたものである。
名無しのオプ [] 2014/11/24(月) 16:41:25.16:i7yLKBt7
休日の夕方、書斎の論考を読みながら、グラスを傾ける。
至高のひとときだ・・・。
名無しのオプ [sage] 2014/11/24(月) 19:03:38.04:hByBwurV
復刊の「フローテ公園」読んだ。
いやぁ、びっくりしたなぁ。クロフツらしく、じみーな中盤の積み重ね。
面白くよんでいたが、なんか犯人序盤からなんとなくわかるし、
意味なく、舞台を南アからイギリスに移すのもいつものパターンだし、
アリバイトリック?おい、それ買収だけだろうと突っ込みながら、
でも、まぁこれがクロフツらしさだよなぁと、思いつつも読み終えようとしたら!
あざといトリックだよなぁ。今では通用しないものだけど、クロフツの作風の
先入観があり、そこまでべたなトリックを使用するとは思いもしなかった。
思い返せば「スターヴェルの悲劇」もそうかとは思いついたが。。
案外、リアリスティツクな作風よ思わせつつ、読者サービスに重心を置く
作者ではなかろうか。
名無しのオプ [] 2014/11/24(月) 22:13:27.90:tniTDWNR
古い本ばっかりだな・・・書斎も読後感も・・・
新刊を買う金がないのか? 
名無しのオプ [sage] 2014/11/25(火) 11:19:15.35:Xv3i4J8m
新刊がめぼしい作品が見つからないんだよ
メディアの書評はホメ殺しみたいなのが多いし…
名無しのオプ [sage] 2014/11/25(火) 12:43:18.57:Kbe/gsMk
読後感はともかく
書斎は他人様の読書感想サイトからパクっているだけだから。
名無しのオプ [] 2014/11/26(水) 07:59:59.16:1t+kmo3Y
逆でしょ。
書斎はいつもオリジナルだよ。
名無しのオプ [sage] 2014/11/26(水) 13:11:43.21:E4dvrUF9
血蛞蝓
めくら頭吊

なるほどオリジナルだw
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/11/27(木) 20:58:08.93:72I2oAuY
「後妻業」も古い本とか。
何かしょうもねぇなあ(w
まさかあの世界がタイムリーにリアルなって来るとは。
名無しのオプ [] 2014/11/28(金) 07:11:02.54:Rk8l/Sno

後妻業はともかく、大半がブックオフでも置いてないような本じゃ
感想書いても意味ないでしょ。
名無しのオプ [sage] 2014/11/28(金) 11:29:04.61:d+igCD+/
お前のレスのほうが無意味なわけだが…
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/11/29(土) 02:07:50.40:bRm6lR8W

>後妻業はともかく
まず、これを書かないと駄目でしょ(w
>大半がブックオフでも置いてないような本じゃ
アマゾンやライブラリー・・・(w
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/11/29(土) 19:11:09.42:tJjTnut8
遠藤周作「真昼の悪魔」を読む。
案外と面白く読了。サイコミステリの範疇に入る作であろう。
果たしてヒロインの女医を「サイコ」と称するか否か、
この事自体が本作のテーマでもあると思われ。
内面の神秘(ミステリー)を探る推理(ミステリー)長編小説と
文庫本カバー裏には記されているが、
「ミステリ」として読み、評価するのであれば、解説者は
叙述トリックが使用されている点を指摘しないと駄目であった。
「作中で主人公が女医の彼女とだけ書かれ、その名が終り近くまではっきり
しないのも、主人公が普遍性をもつ人物であることをしめすためだと
みなされる」
遠藤氏はミステリ作家ではないので、外しているとはまでは断言しないが、
この評だけでは駄目でしょ(w
(犯人名はこの引用文に先立つ部分で諸に明記)
193 [] 2014/11/29(土) 22:21:14.42:oOkMlgow
でも結局、古すぎて誰も興味なしw
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/11/30(日) 20:30:17.64:lXeHPJi4
遠藤周作「闇の呼ぶ声」を読む。
これもコリアン先生の手になるミステリ。
70年代前半に精神科医を探偵役にしたサスペンス・ミステリというのは
本邦では先駆的ではなかろうか。
しかも、ぱっとしない中年男(妻子と共に安アパート暮らし)というのが
リアル、ではあるが、勤務先がどう見ても慶応病院(精神医学のメッカのひとつであり、OB)というのが、いかに昔の話とはいえ「?」。
精神医学と心理学を駆使した探偵役の分析と彼に協力する若き新聞記者の調査により、謎の連続失踪事件の裏には戦時中のコリアンならぬコーリアン(w
のリベンジがあった
ことが判明するが、当然リベンジの対象たるべき人物のひとりは
完全スルー状態、殺人の実行犯は形はどうあれ生き残り、
結局、死んだ(殺されたではないのがミソ)のはリベンジとは直接無関係な親族(従兄弟)のみという、何となくすっきりしない結末。
異色作とは言えるが、連載当時、ハードカヴァー刊行当時に
ミスオタにも、一般読者の間でも話題にならなかったのは仕方あるまい。
カタルシスが無さ過ぎなんである。
若きヒロインとその恋人がハッピーエンディングなら良しというわけでもあるまい。
名無しのオプ [sage] 2014/12/01(月) 10:24:04.99:QFLx0EGq
ああ、それは野村芳太郎監督で映画化されたのを観たな
週刊新潮の連載小説だったと思うが話題にならなかったわけではないと思ったけど…
名無しのオプ [sage] 2014/12/02(火) 08:51:23.55:BsmuWy+H
遠まわしに言わずはっきり言ってやれよ。

映画見ただけで原作読んでないだろバカ書斎
って。
記憶喪失した男 [] 2014/12/02(火) 20:05:07.36:feMV35Ms
「○○○○○○○○殺人事件」 早坂吝
83位/489作品。日本語小説。
題名当て推理小説である。オチはめっちゃ傑作だった。傑作すぎて犯人が誰かわからない。
秘境ものである。ネタバレしてはいけないらしいので、思う存分語り合いたいものだが、
秘境ものだというにとどめておく。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/12/06(土) 23:37:42.46:Y1k32NEs
小林信彦「夢の砦」を読む。
著者が「坊っちゃん」61年度版(西暦)を意図したと語る
若き日のミステリ雑誌編集者時代の体験・見聞を小説化した読み応えある
青春小説である。テースト的には60年代の村上春樹と言うた感もある。
本作自体はミステリではないが、(おそらく実話ネタがありそうな鉄道トリック
まがいの社内不倫エピとかはあるが)、草創期のミステリ雑誌に興があれば、
グイグイと作中に引き込まれてしまうであろう。
編集者の業務は小説の主人公に成り難いという実体験に拠る作者の判断から、
雑誌編集の細部の様はあまり詳述されないのは、ちと残念な感はある。
本作のメーンテーマは、あくまで年代、業界、地域が限定されたものとはいえ
ある「時代」を描くということにあるせいもあろうか。
名無しのオプ [] 2014/12/09(火) 03:29:43.61:L6iQ0T5o
ttp://http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00PSJ7KPQ
SFミステリ?の短編
アマゾンのKindle出版だけどなかなか面白かった。
ただ短編一本で180円は高いかな。
作者は才能があると思うから、他の短編も出してほしい。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/12/13(土) 08:35:44.82:gN9pvsPm
井上靖「天平の甍」を読む。
堂々たる芸術選奨作ながら、若き遣唐使たちを主人公とした冒険小説
(当時の渡航は正にこの言がふさわしい)とも読める。
この著者の歴史小説の特徴であるが、詳細な歴史事項の書き込みが
本作をコンパクトでありながら読み難いものにしているのが惜しい感もある。
鑑真帰朝に至る若き僧たちの人間模様は読み応え溢れるものだけに。
萌えキャラ表紙の新書版、文庫版ミステリをアホ面して読み耽っている
ミスオタに言いたい、各人の宗教観や人生観はおくとしても、
喪前たちは本作に登場する僧たちの何万分の一、否、何百分の一さえも、
「生」を全うしているのか?と。
遂に鑑真来日を実現する普照、彼と志を共にしながらも病に倒れる栄叡、
脱落し唐人の妻子を得て異郷の土となる玄朗、
フロンティア精神に富みひたすら放浪の途をたどる戒融、
自身の才を見切りひたすら写経(主観を入れぬ原典資料収集か)にまい進
する業行・・・
そう、彼らはとにかくそれぞれに「生きた」のである。
名無しのオプ [sage] 2014/12/13(土) 10:27:44.78:tfhvVXY0
なんだか、スレ違いのような…
もちろん、書斎さんの熱い論考に敬意を表したいとは思いますが。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/12/14(日) 13:19:56.97:bGgG2nhw
藤沢周平「風の果て」を読む。
藤沢作品中ではさほど著名な作ではないが、たまたま手にして、
まずまず当たりというところであった。
現代の社内抗争にも通じるような
北国のある藩の権力闘争を描いて間断するところがない面白さである。
特に小禄ながら真面目で欲が薄い主人公が農政の現場で実績と人望を築き
ながら藩の重役である執政まで上り詰め、若き日の道場仲間たちと
権力抗争、果し合いをするに至り、権力というものが持ついわば「魔力」を
自覚せざるを得ないことになる。この展開は見事。
しかしながら、オーバーフィフティ同士のカッコ良くないものとはいえ、
藩の重役がガチンコで果し合いってのは、漫画ちっく過ぎるクライマックス
であり、やや引くものはあり。
とは言うても、この板的には、
ミステリも書く作者だけに、藩内の権力抗争をめぐる陰謀の詳細が判明
して来る後半のくだりは面白く読ませるものはある。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/12/21(日) 20:22:45.84:9tei1u3Z
有栖川有栖「高原のフーダニット」を読む。
相変わらず大好評な収録作品全話講評逝ってみましょう!!!
・「オノコロ島ラプソディ」
うーん、トラベルミステリちゅーよりは、淡路島舞台の観光小説としては
楽しめるんだけんどね。
ミステリとしてはふざけ過ぎですわ。
オコノロ庵は可動式って、何じゃこりゃ(w
元刑事のおっさんは客観的に判断すれば公判なら偽証罪成立でしょうが。
・「ミステリ夢十夜」
これは漱石ネタによるアリスのお遊び。
細かく云々するのは野暮ってものでしょ(w 
・「高原のフーダニット」
一卵性双生児の兄弟が2人共殺された。弟殺しを自白する兄からの連絡が
火村のもとにあったのだが・・・
弟殺しの犯行現場(洞窟)の立地から見て、
犯人は普通にミラーと双眼鏡持ってる香具師ってこと。
一応、理詰めとは言えるが、それだけで面白味は薄い作である。
オノコロ島同様に観光小説としての魅力は十分なんだけどね。
あとがきによると、近年の作家アリスは田舎を舞台にしたミステリを書く
ことに興を惹かれているとか。
情景描写の冴えの因はこの辺にあろう。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/12/24(水) 23:49:49.76:zgyBzqsX
「ドラフト連続殺人事件」長島良三(リヨン社)

プロ野球チーム「東京キャッツ」の監督新藤敏彦がホステスから強姦で訴えられた。
あくまで冤罪を主張する新藤だが降って沸いたスキャンダルに動揺したフロントは彼を更迭する。
新藤の娘万里子は失意の父を見かねかつての恋人で編集者の純平を頼り、協力して父の無実を証明しようとするのだが、殺人事件が発生し新藤は更なる泥沼にはまり込んでしまう……。

ミスマガの追悼エッセイで本作を知り、フランスミステリーの泰斗が如何なる創作をものしたかと期待して読んだ。
うーん、普通。駄作ではないが傑作とも言えず、凡作ということになっちゃうかなあ。
典型的な私立探偵スタイルで推理するよりは当たって砕けろで道が開けていく感じ。真相はご都合主義で展開に捻りがない。
フランスミステリー風のトリッキーなミステリーを読みたかった。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/12/24(水) 23:51:13.21:zgyBzqsX
「血の季節」小泉喜美子(早川書房)

弁護士から殺人犯の精神鑑定を頼まれた精神科医は彼の独房へ赴く。
昼間が苦手というその男は人形の足を握り締めながら自らの過去を語り始めた……。

「弁護側の証人」以来二冊目。吸血鬼をモチーフにした作品。
男の回想と幼女の惨殺事件の捜査とがクロスカッティングで進み、ラストで謎解きが明らかになるという結構であるが、はっきり言って冗長。
やりたいことは解るが長編を支えるには柱が足りない。ダラダラとだぶついた回想を読ませてバタバタと推理を提示して、では傑作とは言い難い。
ぶっちゃけ捜査パートいらないんじゃないかとさえ思う。

前半の〈お城〉での交情の場面なんかは三津田ぽさもあっていい味わいなんだけど活かしきれなかったね。

この分じゃ「ダイナマイト円舞曲」もあまり期待できそうにないな。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/12/24(水) 23:52:58.01:zgyBzqsX
「蛇棺葬」三津田信三(講談社)

母が死に幼くして父の実家である百巳家に預けられることになった僕。田舎の閉鎖的な素封家の一族の中で邪険にされていた僕の唯一の救いは元乳母の民婆と過ごす時間だった。
民から教えられた言い伝えの数々と、好奇心が仇となった“百蛇堂”や百々山での恐怖体験。そして20年後、僕は再び百巳家を訪れた……。

作家三部作最終作の前編ということで期待して読んだが、何か肩透かし。やはり「百蛇堂」とセットで評価すべき作品のよう。
なので本作のみで語れることについて書く。まずダラダラとした日々の描写が長すぎる。それ自体は複数のエピソードの連続なのでそれなりに読めるし冗長というには当たらないのだが、やはり長いと思った。
あと殆どの登場人物が語尾に「け」を付けるのがわざとらしくて鼻につく。

あと致命的だけどあまり怖くないんだよね。長さは怖さを減ずる。これホラーの鉄則。見せ場を勿体ぶりすぎるのと分散させているのが原因かな。

あと関係ないけど解説の柴田よしきはツイッターがDQNで嫌い。
まあ後編に期待。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2014/12/24(水) 23:56:22.55:zgyBzqsX
「百蛇堂」三津田信三(講談社)

編集者兼作家の三津田信三は知り合いの編集者から作家志望という男を紹介される。
その男龍巳から渡された原稿には、彼が幼い頃に預けられた父親の実家で休験したという奇怪な出来事の数々が綴られていた。
原稿にのめり込む三津田だったが、読み進むにつれ彼の周りで不気味な現象が起こり始める。そして、原稿を見せた同僚の女性は自身の恐怖体験を語った直後に跡形もなく消え失せてしまう。
龍巳の原稿のせいでただならぬ状況に陥ったと悟った三津田は親友飛鳥信一郎、祖父江耕介とともにそれに隠された秘密を暴こうとするのだが……。

「蛇棺葬」後編。前作を作中作として展開していきます。
例によって脱線が多く、おまけにすぐ荊作の謎の解明に乗り
出すのかと思いきや、現在にまた様々な怪奇現象が謎が出てきてこれがちゃんと収束されるのか心配になります。
中盤になってようやく二人の探偵役のうち、現実路線担当の
飛鳥が百蛇堂での人間消失の論理的推理を始めますが、物語
はそこで収斂するどころか、更に深淵へと伸びていきます。そして三津田がたどり着く真相は……。

作者はミステリーとホラーの融合などではなく、明確に怪談を志して本作を書いたそうで、読み終えるとその狙いは成功しているように思います。
謎を解くという行為はミステリーにおいては物語を終わりに導きますが、怪談においてはより恐しい結末へと到達させてしまうのです。
ちなみに私が一番怖かったのは、川に囲まれた家です。あの独特の雰囲気は妙に既視感があって胸に迫ってきます。
あと、リング2の影響が感じられる箇所もあってあそこも結構怖かったですね。

最後に、喫茶店の女主人のガンは未解決じゃね?
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2014/12/29(月) 20:31:14.47:M7rvXszK
大坪砂男「探偵クラブ 天狗」を読む。
最近、文庫全集が刊行されたが、その作風を知るにはコンパクトな
本書の方が適かと思う。
肌に合わないのであれば、文庫全集逝ってよし!!!(w でオールOKな
わけだし。
しかも、本巻の解説はあのミッチーこと才人都筑道夫なんである。
それでは、早速、収録作品講評逝ってみようか!!!
・「天狗」
ねらー的な主人公が笑える表題作。
そこは何気に素知らぬふりするのがオトナの男の態度やろと(w
美人の用足しシーン(文字通り)を覘く結果となってしまった男の完全犯罪
(これも文字どおり)を描く作。
話そのものはおもろいが、ダイナミック過ぎる殺人トリックはわかり難いものあり。
・「三月十三日午前二時」
三大に渡る女性家族の悲劇。本作も井戸に仕掛けられたトリックは正直言うて
わかり難いものの、長編化しても面白いテーマだったかとは思う。
・「黒子」
本作を執筆中の作家視点で進行という趣向は面白いのだが、逆にこの点で
ストーリー上は読み難くなってしまっているのが難。
・「立春大吉」
氷柱の銛ネタ。ミステリ的にはユーステスの氷の短剣のバリエーションに
過ぎず、おもしろうはないし、相変わらず独自の読み難い文体が鼻につくもの
あり。
記憶喪失した男 [sage] 2015/02/06(金) 19:41:28.76:Wzn2klWu
早坂吝が二作目だしたらしいな。
エロミスだとかwwwwwwwwwwwww
まさかのらいち推しとは。
短いページ数だし、買って読むわ。
名無しのオプ [] 2015/02/07(土) 08:32:54.15:9ukHU/iZ

デビュー作のらいちの言動から、最初からシリーズ探偵として使う構想があったとは思えないけどw
編集に請われてシリーズ化させたのか、読者人気が出たのか。
名無しのオプ [] 2015/02/07(土) 14:05:24.22:dkIL0jDT
相変わらず書斎と読後感の格差が浮き彫りになっているね
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/02/07(土) 23:25:09.23:yHn7poZF
本堂平四郎著・東雅夫編「怪談と名刀」を読む。
怪談と銘打たれているし、ドロドロな恐さかと思いきや、
時代性もあって決して読み易い文体ではないものの、日本昔ばなし的な
トンデモ、ビクーリな楽しい話も多数。
かなり楽しめるものがあった。
名無しのオプ [sage] 2015/02/08(日) 09:26:41.66:EJ5KQ+Ak

同感。読後感氏の「俺も読んでみよう」と思わせる感想に比べて
書斎の無味乾燥な粗筋ときたらw
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/02/08(日) 19:35:32.17:E+xcIOla
「忍法相伝73」山田風太郎(戎光祥出版)

貧乏リーマンが先祖伝来の巻物を読んで実は自分が伊賀忍者の末裔だったと知り、行きずりの大学教授の力を借りて巻物に記された珍妙な忍法の数々を駆使して世直しをするというナンセンスファンタジー活劇。

ミステリ珍本全集スタート! 「くの一忍法帳」しか読んでない癖にこういうのを読みたがるミーハー。それが私だ。
だがつまらん。
コンセプトは良いのだが、一編が長すぎる。アイデア本位で骨までしゃぶろうとするから間延びしちゃうの。
というか、その間延びこそメインなのかな。社会問題に関して逆説的な主張が長々と開陳されるところが。
いずれにしろ退屈。全体を繋ぐ謎も最後の最後でダッシュで種明かしする脱力ぶり。これは世に出なくて正解。入道。
他の収録短編も落ち穂拾いに相応しい出来で敢えて言及する価値はない。

つか月報がキモい。前から思ってたがこいつナルシストだよね。誰に読ませる文章なんだっつうハナシ。これがイケメンだってんならまだしもおにぎりのお化けだからね。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/02/08(日) 19:37:38.05:E+xcIOla
「十二人の抹殺者」輪堂寺(戎光祥出版)

元旦、同じ敷地内に家屋が隣接する結城家と鬼塚家の全員に届いた悪趣味な年賀状。それは凄惨な連続殺人の到来を告げる開幕ベルだった――。
密室で、或いは足跡のない雪上で、次々と屍を晒していく両家の人々。
事件の捜査に当たった広島県警の佐藤警部は入院中の甥、私立探偵江良利久一の助力を得て犯人を突き止めようとするのだった。

珍本全集2冊目。庭園内の五つの家で首吊り事件が連発する「人間掛軸」同時収録。タイトルとあらすじからして珍本の匂いがチンポンするね。
読んでみると、ポツポツとアラが目に留まる―トリックが機械的で類似的、クイーンを模してる割に推理が杜撰―し傑作とは言えないが、マニアならこの形にワクワクするのだろう。
とにかく人が死ぬ。ここまで上手く行っていいのものかってくらい順調に殺されていく。流石に犯人については途中で見当がついたが、死亡率からすると良く隠してる方かと。

「人間掛軸」は表題作以上の不可能状況が矢継ぎ早に起きる。何しろ首吊り死体が現れたり消えたり、被害者消失と死体出現にタイムラグがあったりしてこりゃどう辻褄合わせるのかと思ったら……
まさかのオチ。これ映像化したら殆どドタバタギャグだね。

正直読んで良かったとは思わんけど、「発酵人間」も読んじゃいそうでいやだなあ。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/02/08(日) 19:40:52.17:E+xcIOla
「恐怖小説コレクションV 夢」(出版芸術社)

『評価』
△、○、○、△、○、○、○、◎

『感想』
何故3巻からかと言うとコミさん(こう呼ぶと不遜であることは承知しているが、「田中氏」「小実昌先生」ではご本人が嫌がられると思うので)の「氷の時計」を読みたかったから。
かつて宮部のみっちゃん(こう呼ぶと不遜であることは承知しているが、「宮部女史」「みゆき先生」ではご本人が嫌がられると思うので)が
都筑のみっちゃん(こう呼ぶと不遜であることは承知しているが、「都筑氏」「道夫先生」だとご本人が嫌がられると思うので)が評価している風にと書いていたから。
土砂崩れで自宅が倒壊し家人を押し潰された翻訳家はどこへ消えたのか? 確かに良くできていたが、別に怖くはなかった。
ベストはラストの「Uターン病」(式貴士)としたがこれも良い話であるものの怖くはない。純粋な恐怖で言えば「いなかった男」(久野四郎)かな。でも全体的に怖くない。
記憶喪失した男 [sage] 2015/02/10(火) 19:22:12.83:uV4qMG+i
「虹の歯ブラシ」について議論していて見解がわかれたんだけど、

現代のエロ漫画における触手ものは、「射精をするし妊娠もする」という意見が出たんだけど、
おれの認識では、触手ものは「射精をしないし、妊娠もしない」というか妊娠するエロ漫画はほとんどない。
はずでどっちが正しい?
名無しさん [sage] 2015/02/15(日) 13:25:47.36:mdYH02NP
アールビバン岸田メル先生の批判をする、ひきこもりのバカ発見。
ttp://http://inumenken.blog.jp/archives/22668079.html
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/02/15(日) 19:23:01.33:5WrAbtsm
「宰領 隠蔽捜査5」今野敏(新潮社)

今日も淡々と職務をこなす竜崎の元へ伊丹から連絡が入った。国会議員の牛丸が地元福岡からの帰路行方不明になったのだ。牛丸の秘書は元キャリア警察官で、内密に彼を捜して欲しいと頼んでいるという。
渋々頼みを引き受けた竜崎だったが、大森署管内で議員の車が発見され中にはナイフで喉を切られた死体が発見される。
長男の3度目の東大受験が迫る中、正念場を迎えることになる竜崎だが……。

本シリーズは主人公の魅力に拠る所大のキャラ萌え小説或いはハウダニット小説なのですが、流石にもう飽きが来ますね。
キャリアに反感を抱くノンキャリとの対立→和解の流れも最早予定調和としか読み取れなくなってしまいました。
事件の真相に関して珍しくどんでん返しが用意されていましたが、何やら唐突な印象でした。竜崎に名探偵役があまり馴染んでないですし。

そろそろ何か大きな転換が必要だなあ。あるいは幕引きが。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/03/01(日) 17:47:06.41:u0CXTU8Q
結城昌治「赤い霧」を読む。
私立探偵真木シリーズと同様な結城昌治流ハードボイルド・ミステリだが、
弱小芸能プロのマネージャー(元劇団俳優)が主人公という異色作である。
決して短い作ではないが、往年の人気女優の殺人事件をメーンに
会話主体で物語は軽快に進んでゆく。
真木が依頼者がいるとはいえ、基本「私に命令できるのは私だけ」主義であり、
真実を追求するスタンスなのに対し、本作の主人公はその職業上、
あくまで所属タレントをガードする方向で行動してゆく、この辺の展開も
当然とはいえ、ミステリとしては実に変わった展開と言い得る。
タイトルの「赤い霧」は、実は本筋に直接の関連はせず、遺伝病による狂気
の象徴として語られる。
この辺の表現は現代では極めて不味いものがあるかもしれぬが、
現代でも通用するテーマを40年も前の作が正確に着眼しているのは見事。
綿密な取材をしたのであろうか、芸能界の有様も現代とはさして変わらない感もある。
また、登場キャラが脇に至るまで簡潔かつビビッドに描かれているのも
この作者らしい魅力、ジョッキーあがりのナイトクラブ経営者と力士あがりの
その用心棒、芸能事務所の魅力的なおデブちゃんOG等々。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/03/02(月) 01:01:55.46:39ML1VPS
「火の接吻」戸川昌子(扶桑社)

画家の家が全焼し、主人が死んでしまう。原因は火遊びをしていた三人の幼稚園児とされるが、彼らは火を吐く男のせいだと言い張った。
そして26年後、街では放火魔が跳梁し犠牲者が増え続けていた。使命感に燃える消防士、そして刑事がその正体を暴こうと追い続けるのだが……。

消防士、刑事、放火魔の3者の三人称一視点によるクロスカッティングで進んでいく。最初はありがち〜と思いきや、どんどん意外な方向に逸れてきてラストこうきたかと。
本格としては評価出来ないし、ちょっと違和感ある道具立て(ライオン)があったりもするけど、上質なサスペンスかなとは思う。外人にもこのくらいが丁度良く受けそう。
ちなみに新本格直前の84年刊。

あと流石女流作家と言うべきか、人物描写に光るところがあった。放火魔と母親との関係とか巧いと思う。ゴールドマンみたい。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/03/02(月) 01:14:23.13:39ML1VPS
「Jの神話」乾くるみ(講談社)

全寮制の純和福音女学院に入学した優子の学園生活は初日から遅刻するなど不安なスタートとなる。しかしやがて優しい先輩や仲良しの同級生に恵まれ楽しくなり始めた。
その矢先、生徒会長の真里亜が怪死を遂げた。皆から慕われていた人物の死に動揺を隠せない生徒達。優子もその一人だったが、事件を境に何故か親友椎奈とも疎遠になっていく。
一方、黒猫の異名を取る女探偵美音子は娘を立て続けに喪った父親から依頼を受ける。姉は夫ともども自宅で死に、妹は学寮で死んだ。
そして二人とも妊娠しており、死因は出産或いは流産によるショック死だったというのだ。しかも赤子の姿はなかった。
これは単なる偶然か、それとも?

どんでん返しならぬまんぐり返しのあるミステリーと聞いて期待して読むも落胆。確かにまんぐり返るけどさあ、あれだけじゃどうしようもないよ。せめて手マンくらいして貰わんと興奮しようがない。
何か所かあるレズ描写(?)はノイズがあってこれまた実用には適さない。

ミステリーとしては、奇妙な死因の謎をどう解き明かすのかと思いきや、いつの間にやら海野山風々になっちゃってちょっとびっくり。
案外自然にアウターゾーンに入ったからそこまで気にならなかったが、ミステリーじゃないわな。いや待てよ、中世ヨーロッパの魔女狩りについての歴史ミステリーとしての側面はある……かも?(笑)
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/03/02(月) 02:31:45.79:39ML1VPS
「山田風太郎ミステリー傑作選@眼中の悪魔〈本格篇〉」(光文社)

いきなりケチつけて恐縮だが本格篇と銘打ってる割には本格ぽいものが少ない。トリックや意外な犯人はあっても推理が欠落しているものが殆どで。
あと前半の短編群は男女関係絡みのどんでん返し(フーダニット)ばかりで続けて読むとちと飽きてくる。そう仕向けた的安易さも――銅婚式的よりはマシだが――マイナス。
後半200ページの中編「誰にもできる殺人」はアパートの一室に隠された日記帳に代々の間借人が住んでいる時体験した出来事を綴っていく形式の連作ミステリーで面白いのだが
――テレビのくだりは怖いし、ラストも迫力がある――、推理や動機といった要素が弱く本格としてはあまり買えない。

文句なく本格と言えるのは「逗子家の悪霊」「黄色い下宿人」「司祭館の殺人」くらいかな。どれも良い出来。
噂のパスティーシュである真ん中は確かに巧いプロットだしイギリス批判にもニヤリとさせられた。アリバイ崩しである最後も設定からして引き込まれる。

他にも前述のようにトリックが光るもの(「恋罪」)はあるし、ミステリー短編集としては良いのだが、本格と言い切るのはどうか?という話。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/03/08(日) 17:47:44.51:1up8M5To
司城志朗「相棒 劇場版」読む。
まあ、映画も長寿番組のテレビシリーズも見てない俺ではあるが、
ノヴェライズの好評を耳にしたゆえ、手に取ってみた。
2008年の作ながら、テロリストによる日本人誘拐・身代金要求、
(ただし、本作で誘拐のターゲットにされてしまうのは
ジャーナリストではなく、NPOボランティア。当時はこの方が
リアルな感はあったかも)
東京シティマラソンと今でも十分にタイムリーなネタに驚く。
ただし、政府の退去勧告伝達ミスによるボランティア男性の死、
親族(妹)たちによるリベンジ(チェスねたによる予告連続殺人、かなり理不尽)ってのは、いかにも創りものめいた展開なのは、わかり易さ前提の大衆向き
娯楽作品の宿命か。
とにかくチェスのルール等を知らないとわかり難い面がある。
テレビ番組が好きでキャラに馴染みあり(この手の者には楽しめそうなエピも
散りばめられている)なら、それなりに面白く読めるのではあろうが。
名無しのオプ [] 2015/03/08(日) 21:00:30.86:ohXkGbqp
もう「感嘆」の二文字しかない・・・
名無しのオプ [sage] 2015/03/09(月) 18:10:34.17:7k5Fk7K9

あくまで便宜的なものでしかない作品のジャンル分けに拘泥していないで作品本位で評価してみてはどうかな?
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/03/11(水) 02:45:31.46:vQE9JC3X
「卑弥呼の密室」獅子宮敏彦(祥伝社)
祖父が残したノートを元に邪馬台国の謎を解いて名を成そうという野望を持っている三文歴史ライター黒覇王樹。
うだつが上がらない黒覇はある時怪しげな男たちにさらわれかけたところを間一髪、謎の美女に助けられる。
その美女上偶一十三から誘われるまま車に同乗したし、連れて行かれた先で待っていたのは邪馬台国の民の末裔と称する男たちだった。
彼らの案内で邪馬台国の末裔たちが住む集落邪馬栄国へと向かった黒覇たち。そこには奇妙な密室殺人が待ち受けていた……。
この人は器は立派だけど中身がイマイチであると前から言ってたよね。前作を見る限りミステリーの知識は海外は殆ど読んでなくて国内も有名どころだけという印象。
そして今回ときたら今更伝奇もの?それも冴えないおっさんが美女に助けられる巻き込まれ型なんて80年代かと見紛うばかりの古臭さ!
しかし私はそんな古臭いエンタメが好きだ!大好きだ!中盤辺りにエロシーンでもあれば言うこと無しだ!
だから期待して読んだ。タイトル通り卑弥呼の密室殺人から始まり、テレポートの奇跡からネトウヨ集団の襲撃そして某国の陰謀など濃いエンタメ要素には事欠かない。
しかし、しかしである。やはり中身が甘いのだ。調べ方が足りないというか世界観の浅さ・薄さが端々で感じられる。
例えば専門家が鉢巻きの意味に気付かないとかはいくら何でも不自然。あそこはもっとマイナーな特徴にしないと。
3つ出てくる密室トリックも真新しさも閃きも特に感じないし、「その為に作った」感が抜けない。
ただし歴史推理の最大の肝である現代との繋がり、ここはまあまあ及第点かなと思う。「何故今か」も含めて。在特会やしばき隊なんて連中もいるしね。
さてストーリーを観ると、黒覇が一十三の美貌に見とれる場面が散見される。戦闘力も推理力も高い絶世の美女と運動音痴のおっさんコンビいいじゃない。ノン・ノベルでシリーズ化しろやと思っていたらあのオチ。しどい……。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/03/14(土) 21:18:52.12:0Dl8ZEhM
「真珠郎」横溝正史(扶桑社)

若き大学講師椎名は同僚乙骨の誘いを受けて夏の信州へ向かった。途中知り合った男の勧めでN湖畔に立つ春興楼に滞在することになる二人。
そこには病床の医学者鵜藤と美しい娘由美が暮らしていた。そしてもう一人。ある夜椎名は庭の木の下に佇む美少年と思しき人影を目撃する。
鵜藤の恐るべき研究の結晶たる真珠郎。彼の存在が明らかになると同時に凄惨な殺人事件は幕を開けた――。

表題作他金田一以前の横溝の作品集。元刑事の由利麟太郎がシリーズ探偵を務める。
犯人がはっきりしてるサスペンス?ビミョーと思っていたらそこは横溝だった表題作。老婆の予言、首無し死体、如何にも古典的なロマンスも絡め楽しませてくれる。
これ言うとネタバレになりかねないけど色々な面であの黄金期の英国本格を思わせる。

他収録作だと「首吊船」かな。夜霧が立ち込める川に髑髏の顔の怪人と首吊台をのせた船が現れる。プロット自体はそこまで凝ってる訳じゃないが多視点にすることで膨らみを持たせていると思った。
記憶喪失した男 [sage] 2015/03/22(日) 18:19:20.06:GFzft3PT
悪の組織は存在しなかった。陰謀論よ、さらば。世界富裕層はたったの十七万人

世界の富裕層調査 2015年3月、英ナイトフランク発表
ttp://http://content.knightfrank.com/research/83/documents/en/wealth-report-2015-2716.pdf

2014年の純資産3000万ドル(約36億円)以上の富裕層人数

*1位 アメリカ(40,581人)
*2位 日本(16,703人)
*3位 ドイツ(11,679人)
*4位 イギリス(10,547人)
*5位 中国(8,366人)
*6位 カナダ(4,341人)
*7位 スイス(4,328人)
*8位 ブラジル(4,218人)
*9位 フランス(3,865人)
10位 イタリア(3,717人)

三十六億円以上のお金持ちは世界に十七万人しかいない。
これは、陰謀論は消えそうだ。
悪の組織は存在しなさそう。
ウィキ「富裕層」にものってるから、この統計は確かなものだよ。
悪の組織なんて存在しなかったんだ。世界を支配する巨悪なんていなかったんだ。
記憶喪失した男 [sage] 2015/03/24(火) 10:43:21.77:c0V0I1+y
37歳で、千夜千冊到達。

読んだ本が1235冊足す未登録分なのですが、
同題名の作品数が1000作品に到達しました。
松岡正剛の千夜千冊に到達したのです。うれしいです。

褒めて褒めて。

蜘蛛塚拓馬の千冊順位付け 小説1000冊の面白かったランキング
ttp://mastiff.2ch.net/test/read.cgi/siberia/1405230772/221
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/04/18(土) 14:31:22.60:2mzROldb
「ひげのある男たち」結城昌治(東京創元社)

アパートさんご荘の一室で住人の死体が発見された。一見自殺に思われたが捜査を担当した郷原部長刑事は殺人だと見抜く。
被害者はみすぼらしいアパートに似合わぬ若い美人であった。他の住人によれば事件前ひげを生やした男が訪ねてきていたという。
更に捜査を続ける中で断続的に現れるひげ男の影。彼らは別人か同一人物か。そして犯人なのか?

ハードボイルド作家が書いた刑事を主人公にした本格ミステリー。と言ってもデビュー長編だけど。
意外やちゃんと手掛かりを配してフェアにやってます。主人公がズッコケ探偵でユーモラスなのも和製バークリーみたいで良い。しかも読んでないよね?
これは確かに天藤真も唸るわ。

ただ“ひげ”というテーマはあくまで象徴的なものに止まりミステリーとして深く関わってくるものではなかった。「街の殺人事件」みたいじゃないってことね。

犯人に関しちゃCCでもないのにこれはアンフェアちゃうかと思うも、小説と開き直れば推理は可能か。
とまれこのシリーズ「仲のいい死体」まで読みたい。「ゴメスの名はゴメス」「暗い落日」等もいずれ。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/05/01(金) 20:33:05.94:2dUisQkA
「彫師伊之助捕物覚え 消えた女」藤沢周平(新潮社)

岡っ引きだった伊之助は今は足を洗い、版木彫りとして脱け殻のような日々を送っていた。恋女房おすみが男を作って逃げた挙げ句に心中したことが深い心の傷となっていた。
そこへかつての親分弥八から娘おようを捜して欲しいと頼まれる。悪い男に引っかかったことから勘当していたが手紙で助けを求めてきたのだという。
義理によって引き受けた伊之助だったがおようが消えた背景には幕府に連なる恐るべき陰謀が存在していた!

かつてミスマガで池上がロスマク以来のプロットと絶賛していたのでつい読んじまったが、確かによくある時代小説家による片手落ち捕物帖ではない。面白い。
それは単なる捕物帖を目指したのではなくハードボイルドを意識して書かれているからだと思う。そこまでやるならば嫌でも推理小説を念頭に置かざるを得ないからね。

諦観に満ちた伊之助のキャラクターやつかず離れずの女将おまさとの関係、更にうっかり足を踏み入れたら行方不明になりかねない暗黒街がメインの舞台となるなど、
正しく正統派ハードボイルドの雰囲気たっぷり。そもそも日本にあるものだよね。そしてあくまで昔の看板に頼らず身を堂々と危険に晒して歩き回る伊之助は正に孤高のヒーロー。

ただし、怪盗流れ星はちょっと頂けない。話の中で便利な道具になっちゃってる。あと最後の部分に断絶があってそこもイマイチ。
名無しのオプ [sage] 2015/05/05(火) 23:26:11.93:0N/vAfEm
葉真中顕「絶叫」
期待しすぎていたためかガッカリさせられた
もっと社会派の内容を期待していたんだけれども・・・
どこかで聞いたような事件でどこかで読んだことあるようなオチ
ロストケアのほうが何倍も良かった
この路線で行ってほしい
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/05/31(日) 12:04:26.39:hkTu9QBq
「風雪殺人警報」辻真先(光文社)

日本アルプスの山中にあるホテル理想郷へゴンドラに乗ってやってきた恩地一家四人。両親と二人の娘からなる普通の家族に見えたが、そこには複雑な感情が渦巻いていた。
ホテルでは父宅朗の友人という支配人淵野辺に歓迎されるが、推理作家志望の長女遥香はその様子にどこかぎごちないものを感じる。
そして遥香は見てしまう。その夜吹雪の中ゴンドラ乗り場から従業員が墜落するのを……。

ミスマガの書評で読後もう一度最初から見返したくなるとか煽っていたから読んだが……微妙。
いや、労作だと思うし、技巧を凝らしているけれども、スカッとやられた感じではなく、労多くして、という印象。凄い先行作があるということもあるしね。
ただし細かいどんでん返しを観ていけば映像的でまあまあ楽しめるけれど。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/06/18(木) 22:02:17.62:S8vQIj+R
「股旅探偵 上州呪い村」幡大介(講談社)

渡世人三次郎は宿場町での殺人事件につい首を突っ込んでしまったことから、瀕死の病人に故郷火嘗村の実家への伝言を頼まれる。自分が死ぬと姉妹たちが殺されるというのだ、
やがて三次郎が辿り着いたのは辺鄙な山間に位置する寂しい村。名主である善七郎たちの父牟左衛門は渡世人にも親切に接してくれるのだが、三次郎の伝言も空しく事件は起きてしまう。
村外れの赤目の滝に無残にも吊り下げられた死体はしかし三姉妹ではなく、百姓の女房だった。これは村に伝わるモウリョウ様の祟りか?
更に悲劇は終わらず、次々と村人が怪死していき、そして次々と棺から姿を消していく。
世間とは関わらないと誓っているはずの三次郎だが周囲に押されて探偵役を務める羽目になるのだった。

時代本格二作目。他のシリーズ例えば「富豪同心」なんかは本格度どうなん? 注目されなかったから大したことないのかな。
さて、本作。紋次郎のパロディのような渡世人が探偵役でも雰囲気は前作とそう変わらない。大胆なトリック、不可能興味、謎の集団、抜け道、そして時折唐突に始まるメタトーク。
それらが緩〜く結びついていかにも量産型ぽい読み物になっている。これがいいとこ!
ぶっちゃけ論理も緻密とは言えないし、メタにしても深い考察がなされている訳でもない、しかし文庫書き下ろし時代小説という枠にはそれくらいで丁度良いのだ。

しかもメタで緩いところを逆手に取ったようなサプライズも仕掛けられていて感心。
428ページのSF文壇弄りも思わず笑ってしまった。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sageダブルミーニング] 2015/06/18(木) 22:07:01.94:S8vQIj+R
「どこの家にも怖いものはいる」三津田信三(中央公論社)

作家三津田信三はファンレターが縁で編集者三間坂秋蔵と知り合い、定期的に会うようになる。
ある時、三間坂は「まったく別の話なのに妙に似ている気がして……」と言い、その後日記と原稿を送ってきた。それらに綴られた怪談に目を通した三津田もまた同じ感覚に襲われる。
その後も三間坂は第3第4の怪談を発見したとして送ってきた。果たして、それらに通底する怪奇の謎とは――。

刀城以外はあまり読む気が起きないのだが、短編集ぽいので読んでみた。実話風怪談5編を包んで三津田らがそれを貫く謎を解くという筋立て。面白かった。
「何となく共通点がある」という感覚を読者にまで提示するのはかなり難しいと思うし、そこに関しては成功しているとは断言出来ないけども、真相にはアッと言わされてしまった。
あれではこっちの話に当てはまらない、これだとあっちの話が違う、と試行錯誤(ここら辺本格ぽい)していった挙げ句、メル欄が炸裂し答えに雪崩れ込む。愉悦。

各短編を怖さで並べるなら二番目か四番目になろうか。この人は「一人の怖い空間」を創り出すのが本当に巧いと思う。

おまけ
巨乳地味女の上田萌えw
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/06/28(日) 17:17:33.21:b9kbsa5T
「ミステリマガジン700[国内篇]」日下三蔵編(早川書房)

〈評価〉
○、○、△、△、△、○、×、△、△、△、△、◎、△、△、×、○、△、○、△、△、○

〈感想〉
最初に苦言を呈しておくと、単行本未収録には拘って欲しかった。仮に落ち穂拾いになったとしても、その方が価値があったと思う。
それと単行本未収録であっても、最近ミスマガに載ったばかりのもの(「温泉宿」)や
この先まず間違いなく収録されるであろうもの(「川越にやってください」「機龍警察 輪廻」)を入れるのは止めて欲しかった。「温泉宿」が好編なのは確かだが。

ベストは「少年の見た男」原りょう。実は初めて読んだが文章の巧さに巻き舌になった。比喩表現や探偵沢崎のワイズクラックなどそれ自体優れていることはもちろんだが、
文中にしっくりとはまっていて浮いていないのが凄い。日本の作家がハードボイルドや海外ものを気取ると大体空回りしちゃうんだけど、それがない。ミステリとしての構成も概ねしっかりしているし
(281ページに不自然な箇所があるが)。短篇集も長編もこれから読んでいきたい。
他、「ドノヴァン、早く帰ってきて」はラストが惜しい。二人の会話は後半だけにして、最後のセリフも変えた方が良かった。あるいは前半に伏線を張っておくか。
「暗いクラブで遭おう」は洒落た都会小説だがミステリじゃないので悪しからず。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/07/11(土) 21:59:44.28:DQULGOcE
輪堂寺耀「十二人の抹殺者」を読む。
このスレでも既に読後感氏の講評が呈示されてはいるが、
まあ、真性ミスオタ御用達作品ですわ(w
珍本と銘打ったとおり、今読んでしょうもない点を列挙しても
それこそ「しょうもない」ことかと思う。
しかしながら、表題作の犯行動機形成、取り替えっ子ネタから
まともな人間心理、ちゅーか、多少とち狂っていたとしても、
あまりに極端に展開し過ぎという感はある。
思うに、本作のエログロ(残虐殺人あり、強姦あり等々)ネタで
横溝御大や大乱歩なら、それぞれにもっと面白く、小説としての妙味
溢れる作に仕上げたのではないかとか思うてしまう。
それゆえ今日までフェードアウト状態だったのであろうが。
ちなみにタイトルに反し、抹殺者が十二人いるわけではなく、
十二人が抹殺されるわけでもない(九人があぼーん)。
併録は「人間掛軸」。
抜け穴がメーントリックと来ては、やはり今更どうこう言うても仕方ないの
だが、犯人判明、事件解決後に宝探し(黄金ハケーン!)、
名探偵の不倫肯定モード(これには超後出しの事項含みな
多少のドンデン返しも絡むが)とか、蛇足なようでいて異色な面白さはあるとは
言い得るやもしれぬ。
だけんど、2作共、現代ならユーモアミステリ、あるいは本格ミステリに対する完全なパロディ作品として書くしかないような設定と展開ながら、
これを一応、普通にストレートに書いているのが、時代性を反映し、
正に現代的視点では「珍本」と言い得ようか。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/07/12(日) 17:28:18.45:qiBu9+hP
大阪圭吉「死の快走船」を読む。
うーん、珍本とまでは言い得るかどうか。
大阪作品が珍本?と読む前からやや疑問に思うていたが、
普通に面白いか、駄作かというた作品を集成したに過ぎぬという感あり。
一応、昔日から容易に読める状態にあった表題作(ゆえに、何であえて
本作を表題作という感も受けた)、「三の字旅行会」(創元推理文庫の名作集収録済み)を除き、収録作品講評逝ってみようか!!!
・「なこうど探偵」
どうってことない話としか言い様なし。
死んだはずの鴨十さんお人好し過ぎやろと(w
・「人喰い風呂」
何とも魅力的なタイトル、不可解な人間消失の謎、
だが、二枚重ねに着てればいいトリックには思わずガクーリ、
銭湯の基礎工事にホトケを隠せは見え見えなオチでした。
まあ、本格ミステリではない町内奇譚(スリラー)程度に読む話なんでしょうな。
・「謹太郎氏の結婚」
まあ、二十の恋愛成就ハッピーエンディング、見え過ぎて読んでいられないと
いう感もあり(w
・「慰問婦人」
本作は予想外に意外性あり。
若い娘に成り済まして戦地の兵士へ慰問の手紙を書いた中年婦人、
その兵士が帰還することになって、若く美しい姪っ子を身代わりに立てた
のだが・・・オチは兵士と姪っ子が結ばれてメデタシメデタシというお約束な
展開を予想していたので、実は妻子持ちとは・・・
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/07/12(日) 17:29:21.81:qiBu9+hP
・「翼賛タクシー」
戦時色濃い目だが、それなりの人情噺に仕上がってはいる。
・「香水紳士」
大船のサンドウィッチ(本邦初の洋食駅弁)はこの頃から著名であったのかと。
ストーリーは香水ネタの犯人捕縛という先が見える駄作である。
・「九百九十九人針」
タイトルどおりのネタ。ストーリーそのものは取り立てて語るほどのものは
ないが、千人針という戦時エピを知る意味はあろうか。
・「約束」
ちょい泣かせる戦時話かもしれぬ。
当初の当事者(兵士も少女)も逝ってしまいその身代わりが・・・
今ならロリコンどうこうとか言われてしまうようなエピ。
・「子は国の宝」
これは子沢山ネタな戦時ユーモア小説。
ほのぼのしたエンディング良しか。
・「プラプイ君の大経験」
タイ人青年を主人公に異国(日本)での不安感が意外に良く書けている作
であった。だがそれだけ。
・「ほがらか夫人」
三つ子ネタ、めでたいなあ、簡単に言えばそれだけの話ですわ(w
・「正宗のいる工場」
軍需工場ネタ。ひょんなことから恋愛成就譚。それだけ。
・「トンナイ湖畔の若者」
収録作品中では最大のボリュームな二次大戦中の南樺太を舞台にした悲恋絡みの異色作。非ミステリである。
限定された舞台設定でひとつの時代を描き、
小説としての読み応えはそれなりにあった感はある。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/07/12(日) 17:30:40.47:qiBu9+hP
・「香水夫人」
モリ健(千葉県知事な元青春スターではない(w )
まあ、気軽に読んでくれ程度の作でしょ。
・「告知版の謎」
告知版とか正に今は昔状態でしょうな。
いわゆる待ちぼうけネタ、御都合主義展開とはいえ暗号ネタによる主人公の
青年の東京圏駅引き回しが面白くはある。
ラストの戦時らしい締めは、今読むとイマイチだが、まあ仕方ないか。
・「寝言を云う女」
それなりに奇抜なストーリーながら、本作も戦時らしい教訓めいた
ラストがなあ・・
・「特別代理人」
源氏鶏太とは言わぬが、リーマン小説としては面白い。
含みを感じさせるオチ(社長の台詞)も良し。
でも、当時のノータイ出勤って「ヘナヘナと崩折れ」ほどのものだったのかと。
・「正札騒動」
どこか作者の先達大乱歩の「人間椅子」を想起させる洋服タンス隠れネタ。
展開はもっと明朗ではあるが。
・「昇降時計」
これは「算盤が恋をする話」風。オチ(勘違いによる失恋)もそのまま。
・「刺青のある男」
肉襦袢ネタとはね。落語を読んでいるかのようなストーリー。
オチは戦時色ネタ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/07/12(日) 17:32:39.20:qiBu9+hP
・「唄わぬ時計」
戦時時計ネタ奇談としか。それだけです。
・「盗まぬ掏摸」
これはO・ヘンリーねた(w
・「懸賞尋ね人」
出来は今ひとつな戦時人情噺。
・「ポケット日記」
落とし主はヨメとか(w
軽いS・Sとして楽しめた。
・「花嫁の病気」
オチを巧く戦時色(いわゆる愛国国債とか)に絡めたS・S。
・「恐ろしき時計店」
これは他愛もない諜報ものでつまらんです。逝ってよし!!
・「寝台車事件」
往時の鉄道ミステリとは言い得るが、面白味は薄い諜報ものでもある。
・「手紙を喰うポスト」
タイトルとその謎解きがおとぼけ気味で面白い。
ジョンの世界だわな(w
・「塑像」
これは完全に大乱歩ワールドなナフタリンねたS・Sですわ。
・「案山子探偵」
落語的オチ(案山子の頭まで流線型)がつく、それなりに楽しく読める
ユーモアミステリであった。犯人の動機が理不尽過ぎる(流線型の自動車と
カボチャ)けんど。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/07/12(日) 21:21:50.09:jbz+yUrx
・「水族館異変」
これも大乱歩的作。この作者にしてはエロ度もわりと強い。
・「扮装盗人」
実は監督が・・・ってありそうな映画撮影秘話で面白い。
・「証拠物件」
これはさほど面白くないS・S。
・「秘密」
これは旦那さん意地悪過ぎですな。作者の書き方から見てそう取られる
とは思うていないように感じられるが、後味は良くない。
・「待ち呆け嬢」
大下氏からのお題(課題)で書かれた作。
まあ、標準程度のコントでしょ。
・「怪盗奇談」
これは家の主人と見え見えの展開で完全NGなS・Sでした。
締めの台詞は面白いが。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/07/18(土) 16:50:01.22:c++GnhAm
紀田順一郎「幻島はるかなり 推理・幻想文学の七十年」を読む。
ミステリ&ホラー好きには興味深い読物ではあったが、この著者の本を
手にするたびに思うのは「何か文章が読みづらい」ということ。
しかも、これはエッセイ・論考に関してのことであり、
本書中でも言及されている古本屋探偵等の古書ネタのミステリでは
感じさせないのである。
評論活動主体の著者だが、創作者向きの語り、文体なのやもしれぬ。
初代怪獣博士とでも称すべき大伴昌司氏とは慶応の学生時代からのポン友、
やはり特撮研究で知られる早逝した竹内博氏とも交流があったりと、
著者の志向、作風から見ると意外な交友関係とも言い得る。
怪奇小説翻訳の大家の印象がある平井呈一先生の断腸亭主人(平井先生の師匠)とのいきさつ(破門→隠棲)も、初めて本書で知ったような次第だ。
しかし、没となってしまった江戸っ子平井先生の自叙伝、読んでみたかったものである。
著者自身に関するエピでは、商事会社リーマン時代のひとり恐怖の報酬まがいの冒険譚(本書中では「恐怖への旅」と表現)が印象深いものあり7.
小ネタながら、バンパイアものの大作「吸血鬼ヴァーニイ」の全訳がいまだ実現
していないというのは残念、大昔角川文庫のアンソロジーで冒頭部分一部抜粋を読んで以来、ずっと気にかかっている作品なんですわ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/07/19(日) 22:01:26.50:VSd44KV0
司馬遼太郎「城塞」を読む。
家康の大阪城攻め、大阪冬の陣・夏の陣をメーンにした当該板的には、
歴史冒険小説と解してよい作である。
大阪城こそ「主役」とする評もあれど、通読すると、やはり「城」よりも
「人」のドラマ(群像劇)という感あり。
トリックスター的役割を勤めるかと思われた徳川方の間諜小幡勘兵衛
(後に軍学家として名を成すなかなかのくせ者)が
後半フェードアウト気味、傍役なのはやや意外だが、
「竜馬がゆく」序盤に登場した老盗キャラの使い捨てよりはマシか(w
家康の権謀術数により大阪城は物理的に外堀どころか内堀も埋め立てられた
わけだが、家康に加担した大名諸侯の「人」の「心」の内堀も巧みに埋め立て
られていたということか。
おなじみ後藤又兵衛、真田幸村は言うまでもなく、大野修理(豊臣方の家老)、
毛利勝永(秀吉以来の譜代の家)、長宗我部盛親(有名な勝親の子)等々、
いずれも数多登場する中でも印象的な実在キャラだが、本作にして初めて知る
名も多し。この辺も知識人をしておもしろしめるシバリョウならではかと思う。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/07/20(月) 14:54:12.49:ONijttfh
陳舜臣「阿片戦争」を読む。
今年1月に逝去したミステリ作家としても名高い作者の手になる
ボリューム感溢れる歴史小説(文庫3分冊)である。
世界史上有名な阿片戦争前後(つまり清朝最末期)を多彩な人物を配して
描き切った作。
大量の阿片焼却処分(本作中に記されたとおり、火で燃やすのではなく
化学反応で発火させる)で有名な林則徐はメインな登場人物のひとりでは
あるが、その範疇は出ず。むしろ後半はフェードアウト気味でさえある。
作者陳氏の創作であろう激動の時代の中に生きた若き男女たちを
描く筆にこそ力がこもる感あり。
この点が、ラストの連維材(林則徐以上にメインとなる富商)たちの思いへと
繋がって来るのではあるが、長い物語の幕切れにしてはややあっさり気味な
感あり。
これからいろいろありそう(実際の歴史でもそのとおり)、
アロー号事件あたりまで描いた続編があってもよかったではないか?
歴史小説は苦手、特に世界史中でも中国史とりわけ近・現代史部分はという
向きもこの板には多数であろうが、ひとつ歴史戦争冒険小説として手にとってみたらいかがであろうか?
貿易市場拡大のため中国進出(事実上の侵略)を図る英国との戦闘シーン
は凄惨にして、ゆえに迫力あるものとなっている。
名無しのオプ [sage] 2015/07/20(月) 14:58:39.75:brhvos7T
上記二作は必読としておく。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/07/27(月) 00:03:22.19:BRgB6xUj
春日太一「役者は一日にしてならず」を読む。
映画・テレビでおなじみの男優16人にみずからの「役者道」とでも称すべきものを語らせた非常に興味深くも面白い著書であった。
主演級だけでなく、長年に渡り名脇役として定評がある男優もセレクトされており、著者のセンスの良さを感じさせるものあり。
大学出が珍しくなくなった昨今だが、本書で紹介された男優たちの過半は
大学を出ていない(中退まで含めると大半が学歴は高卒)。
代わりに劇団や映画会社で、それぞれに演技力に磨きをかけて来た(かけて
こられた)時代ということか。
近年は重役や政治家を演じることが多い平泉成、大卒サラリーマン役が定番
のひとつである前田吟、正に絵に描いたような適役感があるこの人たちが、
全く大学生活の経験が無いというのは意外な感あり。
本書で取り上げられた男優中、2人(夏八木勲、蟹江敬三)は逝去、
殆どが70代、一番若い草刈正雄でも63歳である。
10年後といわず数年後の映画界、テレビ界の行く末に一抹以上の不安感を
抱くのは私ひとりではなかろう。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/08/01(土) 20:01:31.84:tgqN7D60
東野圭吾「虚像の道化師」を読む。
おなじみ科学名探偵湯川学准教授を主人公としたガリレオ・シリーズの
短編集。圭吾もここまで書き続ける予定はなかったようだが、
マンネリというかネタ切れだけでなく、謎解き以外の人間ドラマに
傾斜しがちなウエット展開のエピは多いのは頂けないものあり。
当初、すぱっとした科学的な解決でエンドってのが、いかにも謎解き短編
って感があって良だったのだが。
一応、収録作品全話講評逝ってみようか!!!
「幻惑す」
宗教団体絡みのマイクロ波を利用した犯行。
これは初期作を想起させるような科学ネタの面白さに富む作であった。
「透視す」
透視術が持ちネタだったホステス(ガイシャ)の悲劇。
謎解き後の人間ドラマがうざい。コールド・リーディングとか興味深い小ネタ
も散りばめられているので、もっとさっと解いて終りでよい。
「心聴る」
電磁波ネタだが、脳内音声装置とか完全にトンデモSFの世界になってしまった感あり。それはそれで面白いのだが。
「曲球る」
珍しや、プロ野球ネタ(シーズンオフのトライアウトなんて本シリーズで
出て来るとは・・)。殺人事件は脇にあるに過ぎず、自動車の塗装に関する
消火剤ネタの謎解きも小粒に過ぎる。ネタ切れでしょという感を強く抱かせる
1作と言い得る。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/08/01(土) 20:02:07.14:tgqN7D60
「念波る」
テレパシーねただが、後出しの事実多過ぎでミステリとしてはお話にならない
という感あり。当初から犯人(実行犯でなく黒幕だが)は連れ合いと見え見え
でしょ(w
「偽装う」
設定が何気に「吹雪の山荘もの」になっているのが面白い。
まあ、短編ということもあってこの点を強調したサスペンスは皆無なのだが。
偽装工作露顕の発端となる銃と死体の位置からの推理は細かいが謎解き
ミステリらしい面白さあり。
「演技る」
この作者、役者というか芸能人に少し偏見ありかな?とか思わせる。
2度刺しで事件そのものをかく乱するという発想は面白い。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/08/02(日) 18:28:35.64:ZWiJEB3Z
朱野帰子「真壁家の相続」を読む。
意外な拾い物、お薦めである。
相続ネタのリーガル・サスペンスの要素もあり、実際、「小説推理」に連載
された作である。相続に関する情報小説としても読めるが、
基本線は平凡な一族が相続により繰り広げてゆく人間ドラマの面白さを
主眼としたものである。
これを被相続人(祖父)の孫であるJD(法学部生)の視点から描いてゆく。
適度にユーモアもあり、ウェット過ぎないのも良し。
祖父の介護をしていたヒロインの母が淡々と生命保険金ゲットというラストは
書き方によっては後味が悪くなるものだが、ミステリのオチを読んだような
カタルシスがある。
ラストは階段を上がってゆく母の後ろ姿をヒロインが見つめるシーンでエンド
で良かったかも、植田君への携帯TELはお約束過ぎて蛇足感あり。
名無しのオプ [] 2015/08/02(日) 21:07:18.22:CoFyVs13
新しい講評だ。一字一句覚えるまで音読しておけ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/08/08(土) 21:30:42.48:4wLPNhlt
井上靖「敦煌」を読む。
前記した「天平の甍」同様に読み応えある歴史冒険小説と言い得る。
メインキャラが全て架空の人物ゆえ、フィクション性が高い作であり、
創りものめいた感が高くなってしまったきらいがあるものの、
その分、物語の自由な飛躍度は高まっていると言い得る。
敦煌の石窟から膨大な仏典が発見、この史実からここまでイマジネーションを
ふくらませる「作家」という職業のあり様(良い意味でも悪い意味でも)を実感させるものあり。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/08/09(日) 21:40:55.26:A1xmPZ4W
高野秀行「またやぶけの夕焼け」を読む。
ソマリアねたのノンフィクションで知られるようになった作者の
高野版三丁目の夕日とでも称すべき作品集。
悪くはないが、騒ぎ立てるほどの作ではなかろう。
昭和40年代の都下(八王子市郊外)の風景が浮かび上がるかのようだが、
内容的には全国的な共通体験と思われるものも多しだ。
クワガタ取りとかお化け話とか。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/08/15(土) 08:21:33.61:rUe7Jmrq
司馬遼太郎「箱根の坂」を読む。
室町幕府に仕える伊勢一族の末席、伊勢新九郎が遠く箱根の坂を越え、
北条早雲となるまでを描く。
まあ、本作も冒険小説的要素ありと言えぬこともなし(w
80年代の作であり、シバリョウの講談調の語りが強く出て、
やや鼻に付く面あり。もう少し事実に即して淡々と描けなかったもの
であろうか。
後の戦国の世の先駆けをなす応仁の乱以後の室町時代の特異性を
わかり易く、噛み砕いて描くことに成功している力作だけに、
創り物の面が色濃く出てしまっているのが惜しまれる。
名無しのオプ [] 2015/08/15(土) 17:48:21.34:iNcFRQ50
また書斎に教えをいただいた。
こんな僥倖は現実にはありえないんだからありがたく拝聴しておけや。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/08/16(日) 06:35:15.73:ZbZhZt39
柚木麻子「ナイルパーチの女子会」を読む。
おそらく女性読者向き(主人公たちと同世代に限らず、意外にその対象年齢層
は広いと思われ)の作品なのだろうが
男性の論者からも高評価を受けた山本周五郎賞受賞作。
東京生まれで大商社勤務キャリアウーマンと専業主婦ブロガーの一見
ハートウオーミングな出会い。しかしこれがある意味で恐怖の日々の
始まりだった。ミステリとは言い難いが人間関係、親子関係等を巡るリアルな
謎解き要素はあり、スリラーの色彩は十分で面白く読ませる。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/08/18(火) 18:41:29.67:g8dbCyvQ
「冷たい太陽」鯨統一郎(原書房)

幼稚園の園外活動が行われていた公園から高村美羽が誘拐された!
親元には身代金を求める電話がかかり、父謙二は警察には知らせずに済ませようとする。その後犯人が要求してきた内容は奇妙奇天烈なものだった……。

凄いらしいと評判を聞き読む。「あの手でもなくこの手でもない誘拐ミステリ!」「そこらじゅうに仕掛けあります」とのキャッチコピーも期待を膨らませてくれる。
メインは誘拐だが視点があちこちに飛んで群像劇のような展開を見せていく。読みながら違和感を感じた部分を箇条書きしていき自分なりに推理してみたのだが……これは解らなかった!
全く思いもよらぬところから弾丸が飛んできた感じ。まずは素直にやられたと呟いておこう。

しかぁし! ここからは文句を並べ立てなければならない。
まず「前代未聞の誘拐ミステリー」という部分について。メインの仕掛けは誘拐トリックとは言えないし、誘拐の真相は前代未聞ではない。よって看板に偽りアリ。
それともそれらを一つの作品にしたのが初ってことか? それは苦しいだろう。
次に「そこらじゅうに仕掛けあります」という文言にも疑義を呈する。真相に連なる伏線はそこらじゅうという程ではない。「それはピーだろうが!」と言いたくなる。
最後に途中で明らかになるある設定について。これだとあそこはどう解釈すればいいんだ? だっていないじゃん。

まとめると、やられはしたが誘拐ミステリーとして評価する気にはなれない。ということ。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/08/19(水) 20:43:40.02:19CYB/+X
「岡村雄輔探偵小説選」(論創社)

何やら評判が良いようなので、これは大庭宮原ラインかと読んでみた。が、惜しい惜しいの連続。
バラバラに分解して舞台設定(「ミデアンの井戸の七人の娘」のフリー・メイソン支部)やトリック(「紅鱒館の惨劇」の毒殺方法)、伏線(「紅鱒館の惨劇」の某証言)
などを個々に見れば光るものもあるが、それらを結合・構成する際の繋ぎ目たる推理が欠けている。余詰めが足りないのはまだしも手紙で〆なのは戦後はもうペケやね。
最後100ページ超を占める中編「加里の踊子」にしてもこねくり過ぎて不時着どころか空中分解していると感じた。いくらなんでもこれでは犯行計画が杜撰過ぎる。

そんな中ベストは「盲目が来りて笛を吹く」に。
これは娘が自宅の二階で殺され、重要な証人が盲目の流しという設定から、犯人の仕掛けるアリバイトリック&心理トリック&機械トリックの組み合わせを経て解明へ至る道筋がよく付けられていたと思う。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/08/22(土) 14:42:06.09:WIYkPHsH
嵯峨島昭「踊り子殺人事件」を読む。
最終的には落語にもある「ふたなり」ネタ(最初期のゴルゴ13とかにも
あったが)なミステリになるが、まあ、最初に殺害される金粉ダンサーの踊り子
は本筋に絡むことはなく、正に欲望の対象オンリー、憐れとしかいいようがない
ものあり。後半のおつむが弱い身代わり火ダルマにされる子も同様とはいえ、
人間関係皆無なまま、やられ、殺れてしまうってのはなあ・・・
主人公のしょぼい中年不動産営業マンの2人の美女絡みな極楽だか地獄だか
わからぬ日々、最後はハッピーエンディングはむしろ意外感さえあった。
難しい事は考えない前提な読物というのはわかるのだが、
それにしてはミステリとしてのテンポは悪く、やはりこの作者は純文学とは
言わぬまでも普通小説ジャンルの人なのであろう。
名無しのオプ [sage] 2015/08/22(土) 15:56:46.78:A5PsLOXG
あれだけ派手なネタバレ披露すればあぼ〜んされるわな
名無しのオプ [] 2015/08/22(土) 17:43:32.75:KhPIxJF3
意地になっている読後感、書けば書くほど明瞭な差が出てきて誰にでも勝敗がわかる始末だ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/08/23(日) 16:48:18.21:UILtZpIz
桜木紫乃「ホテルローヤル」を読む。
直木賞(2013年)受賞作だが、この板では読んだ者は少なかろう。
(ていうか俺だけかもなー(w )。
北海道の湿原に立つラブホテルを主舞台にしたオムニバス連作集である。
ただし尋常なそれではない。
第1話(「シャッターチャンス」、エロ写真撮影ネタだが、
えぐい内容にもかかわらず唯一の完全ハッピーエンド話と言えるのが面白い)からしてタイトルに冠されたホテルローヤルは廃業後、既に廃墟化している。
第3話(「えっち屋」)が創業者である父の後を継いだ娘を主人公とした
ホテル廃業の話、そして最終話(第7話)がホテルローヤル開業譚である。
この狙った時系列ばらばらな構成が興を誘うものあり。
何と第5話(せんせぇ)では、ホテルローヤルは登場さえしないのだ。
(本話の主人公である若い数学教師とその教え子がローヤルで心中したことが
第3話で言及されている)
何か「ミステリ」で使えそうな手と思わないだろうか?
ゆえに、あえて紹介してみた。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/08/23(日) 16:49:09.51:UILtZpIz
南條範夫「からみあい」を読む。
創業オーナー社長の相続をめぐる、今でいうところのリーガル・サスペンス
(法律ネタの面白さをメーンとしたもの)だが、
当時はあの大乱歩も評価したと「あとがき」にはあるものの、
前記した「真壁家の相続」のような今風の作を読んだ後だと、
さすがに古さは否めないものあり。
相続法の改正(法定相続分に関する規定等)、
医学の発展(遺伝子による親子関係診断が可能となった)等々もあって、
復刊されることはもうあるまい。
それにしても埋葬に関する手続きがいい加減過ぎな感があるが、
当時こんな事もあり得たのであろうか?
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/08/29(土) 14:46:43.41:6iN636D+
嵯峨島昭「深海恐竜(ニューネッシー)殺人事件」を読む。
本作もエロ小説で一世風靡した感がある芥川賞作家の手になる冒険ミステリで
ある。既に記憶する者も少なくなったであろうが、南太平洋(ニュージーランド沖)で日本の漁船が発見した謎の海洋生物の腐乱死体ネタ、時事ネタである。
(当時はプレシオザウルスかと騒がれ、ニューネッシーと呼称するマスコミまで
現れる始末、本作中でも触れられているが鑑定(持ち帰られた鰭の一部)の
結果、鮫の死骸ということで一件落着した)、
お気楽な取材記者を主人公とした第一部は、ニューネッシー発見をめぐる政界、財界絡みの陰謀を描き、一応はミステリしているのだが、
(余談ながら、「宗薫さんはうめえなあ」の一文には、本作の作者の正体を
知っていると、思わずクスリと来るものがある)
第二部は巌窟王かおな、脱獄、リベンジ譚へと大転換、
(作中に登場する葉巻のブランド名にモンテクリストとあるのは
作者の遊び心を感じさせて良し)
第三部では隠された財宝とニューネッシー探索の冒険ものへ、
最後には怪獣小説と化す感あり(w
まあ、全体として見れば、
ホテルからの墜落死には氷を使用した自動落下トリック(その間にアリバイ工作)、プラス入れ替わりトリック(これは雑でばれないはずない感ありだが)
あり、詩に隠された財宝のありかネタ(暗号ネタ)等々、
ミステリと冠するための要素は、一応あることはある。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/08/30(日) 22:27:31.10:GspqDq68
吉田修一「横道世之介」を読む。
俺好みの小説には非ず、70年代とも90年代以降とも異なる
80年代の東京の大学生時代ってこんな感じだったけというところ。
ただし主人公の世之介はその名に恥じず(?)女性に縁有り過ぎに
見えるが(w
このどこか飄々とした主人公が、既に実は故人だったとわかるラストに
ショックを受ける者もいるかもなー。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/08/30(日) 22:28:16.52:GspqDq68
望月三起也「W7 新世紀ワイルド7」を読む。
全頁オールカラーだし、価格も価格だしちょい心配しながら手にしたものの、
望月ワールドのトンデモ破壊力は健在でした。
アラブ産油国と日本の政略絡みの婦女子誘拐事件に飛葉をメーンとした
新ワイルド7が挑む。何とコーディネーターはあの草波隊長の息子だ!
しかし、どういう経緯か、ネバダの田舎町でシェリフをしてる飛葉ちゃん
(往年の童顔は何処、本作を読んだ古くからの望月ファン、
ワイルド7読者たちが既に指摘済みだが、いくら歳というても
面変わりし過ぎやろ(w )
今後右腕になるのはFBIの潜入捜査官のメリー安かと思いきや、
彼女が最後であぼーん、これは意外でした。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/05(土) 21:50:39.80:3aeOwZK3
結城昌治「死の報酬」を読む。
正攻法なハードボイルドも軽ハードボイルド的作も書ける作者の中間的
なテーストの作。格別な面白さはないものの、
船舶会社オーナーの娘(元芸能人)の失踪事件をめぐりプライベートアイの
東京探索は躍動感に富み、いかにもハードボイルドしている感あってスイスイ読める。
依頼者が麻薬ルートのラスボスという結末は早々と見え過ぎるけんどね。

森村誠一「日本アルプス殺人事件」を読む。
キャメラに関するアリバイトリックは凝り過ぎていてわかりまへん(w
山岳ミステリと言うてもよい初期森村作品。
ストーリー的には、ファザコンでお嬢さん育ちのヒロインを突き放すような
ラストが印象的、現代のミステリであれば独身の若手刑事設定を入れて
ロマンスを匂わすとか
救いがあるハッピーエンディング傾向に走ったんじゃなかろうか。
同時期の先行作品「超高層ホテル殺人事件」や「東京空港殺人事件」に
登場する刑事たちも登場するのだが、なぜか森村作品はシリーズものという
印象は薄い。まあ、それだけ単独作品として読めるってことでもあるが。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/06(日) 20:35:12.48:0WSgZ6uk
小林修三「間違いだらけの病院選び」を読む。
湘南地区の大病院の副院長が著した書。
医療こうあるべし、流行の病院ランキングの見方等のありがちな話題も多いが、
著者のスタンス上、
病院経営という観点からの記述が肯定的、かつ、なるべく説得力を持つように
書かれているのが面白い。

藤田孝典「下流老人」を読む。
ショッキングな書である。年収400万あっても下流老人への道の可能性大
とは。後半は朝日新聞社の発行書籍らしい左がかった理想論に見受けられる
ものが多いのが残念だが、著者の見聞をまじえたいわゆる下流老人(生保基準
相当、およびその恐れがある高齢者)の実態と分析はショッキング、
ねらーには他人事ではなかろう(w
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/12(土) 21:59:00.69:p5NMEq4y
東野圭吾「黒笑小説」を読む。
才人圭吾の筒井堂か清水義範かと思わすようなタイトルどおりな
ブラックユーモア作品集である。かなり楽しめます。
収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「もうひとつの助走」「線香花火」「過去の人」「選考会」
この4作は出版会を舞台にしたブラックユーモア全開なお話。
自意識強過ぎな新人作家、受賞落ちを繰り返すベテラン作家・・・
悲しくも哀しくおかしい。
・「巨乳妄想症候群」
軽く明るい艶笑譚ちゅーかエロ話。騒ぎ立てることもあるまい。
・「インポグラ」
時事ネタながら、プラシーボ効果まで絡んで来るオチは面白く、
同じエロねたとはいえ、完成度は前収録作よりも高い。
・「みえすぎ」
これはSF設定ながら微粒子まで見えるようになってしまった男ってのは
リアルで臨場感に富む面白さあり。
・「モテモテ・スプレー」
何かドラにありそうなエピだが(w
真性のモテナイ男である主人公が博士を殴り倒すラストは、
どこか悲しい、否、哀しくもある。
・「シンデレラ白夜行」
タイトルどおり、シンデレラのキャラを使用しての自作長編(ベストセラー)の
パスティーシュである。著名でシリアスな自作も「ネタ」にとか、
関西人はやはり凄い(w
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/12(土) 22:00:04.34:p5NMEq4y
・「ストーカー入門」
いかに著名作家のものとはいえ、ストーカー犯罪の深刻度が増している現在では問題視されそうなぶっ飛んだ作。面白いとか評すると非難轟轟やもしれぬ
かもなー。
・「臨界家族」
いわゆる玩具会社の巧みなマーケティングに軽いオチをつけたこれも
面白い作。
・「笑わない男」
高級ホテルに宿泊することになった売れない漫才師コンビ、
自己の存在証明を賭けて(というほど大げさではない感じだが)
ポーカーフェースなボーイを何とか笑かそうとするのだが・・
オチが非常にシニカルで残酷な感あり。この作者の持ち味のひとつが出ている。
・「奇跡の一夜」
最終的に怪談なんだが、ヒロインである不細工な妹が気の毒な感はあれど、
妹思いのイケメンな兄、亡妻への思慕を忘れぬ父、
そして現れた母、ハートウオーミングで後味は悪くない。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/13(日) 23:43:17.91:ylaLNn5Z
東野圭吾「怪笑小説」を読む。
この作品集も楽しめた。早速、収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「鬱積電車」
何とも身もふたもないリアルな通勤電車ネタ。
自白ガスのオチって、その後の様を想像するに凄過ぎるやろと(w
・「おっかけ婆さん」
時代がもう少し後に書かれていれば杉様ネタではなく韓流ネタだったかも。
最後はリアルホラー・・・笑えもするが怖い。
・「一徹おやじ」
諸に巨人の星ネタ(w、
オチが「アッー!」なうえに(作者が「巨人の星」を見ていての感やも
しれぬ)、語り手の娘のサド心理。
いろんな意味で面白く読み終えた作ですわ。
・「逆転同窓会」
教師嫌い(?)には痛快、かつ、先生たちにもそれなりの救いは感じられる作。
たしかに、往年の教師たちの教員になった教え子へのシンパシーはひとかた
ならぬものに見えた。
・「超たぬき理論」
つまりモモンガ―やろと(w
しかし、UFOまでたぬき(分福茶釜)説との怪論は面白過ぎる。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/13(日) 23:44:06.91:ylaLNn5Z
・「無人島大相撲中継」
これもラストの飛びっぷりが秀逸な一編。
・「しかばね台分譲住宅」
値下がり気味の分譲住宅地同士のひとつの死体をめぐり血で血を洗う
戦いへ、久々に同じ関西作家筒井堂のテーストを想起させる怪作し
仕上がっている。
・「あるジーサンに線香を」
アルジャーノンネタですわ(w
オチ少しが弱い感があるが、笑えて哀しい。
・「動物家族」
作者お気に入りの短編とのことだが、ラストがいまいちわからん。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/20(日) 06:52:47.21:IRotHTAK
伊藤元重「日本経済を『見通す』力」を読む。
昨年秋、慶応MCCでおこなわれたセミナーを元に書き下ろされた1冊。
アベノミックスのブレーンの一人だけに現経済政策には支持・同調のスタンス
である。
EUにおけるギリシャの財政破綻危機、中国の株価乱高下等、
国内のみならず経済に関するビッグニュースが続く今日、
本書で語られる(ちゅーか、議論対象となる)トピックぐらいは
押さえておく必要があろう。
いつまでも浮世離れしたミスオタ人生でもあるまいし(w
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/20(日) 06:53:24.60:IRotHTAK
朝比奈あすか「天使はここに」を読む。
何気なく手に取った若手閨秀作家の作であるが、
お気楽風な表紙から想像できない意外にビビッドでシリアス、リアルな
面白さに富むお仕事小説(企業としてのファミレスを書いた作はあったが、
こんな上からならぬ下から目線による作は初では)であった。
タイトルの意味深さは読後に実感。
さすがにヒロイン(ファミレスの契約社員)が一人の客(元新聞記者なおシャケさま、認知症が始まっている)のプライベートに入り過ぎという感は否めない。妙な表現ながら「小説」過ぎた、創り過ぎが残念。
とは言うても、過去及び現在に渡る多くの人間関係をありのままとし、
無理やりなハッピーエンディング(ヒロイン=真由子は帰省した元恋人と
結ばれるのかなと、ありきたりな予想をしていた)も迎えず、
ヒロインのお仕事な日常は続く・・・この締めは爽やかな読後感を伴う。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/21(月) 11:04:52.01:0sP4TsiR
新保博久「ミステリ編集道」を読む。
まずまず面白いものの、爺ちゃん元編集者たちの記憶の不確かさに
(半世紀近く前のエピもあって無理もないとは言えるが)、
一抹の不安(つまりインタビュアーも突っ込めない点に関しての語りの
信憑性ちゅーか真実性)を感じざるを得ないものはあった。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/21(月) 11:05:31.69:0sP4TsiR
神山典士「ゴーストライター論」を読む。
著者はゴーストライター歴豊富とはいえ、著作もあり、例の佐村河内事件の
スクープで話題になった人である。
まあ、この書でも触れられているが昔から読者もゴーストの存在は認知して
いて当然かと。
(ベストセラーになった百恵ちゃんの自伝では公然と語られていたことだし、
もっとはるか昔、志ん生師匠の自伝「びんぼう自慢」では冒頭の章から、
本書は聞き書きと明記されている)
ゆえに、その存在は前提とした現代のゴーストライター事情、その実態が
どんなものかという点に興を惹かれるわけだが、
著者の自賛ねた(ゴーストの成功例)が少し目につき過ぎるものはあり。
匿名連発とはいえ、具体的なエピの開示はそれなりに面白くはあるん
だけんどね。
書式まで呈示した業界への文書による契約関係の明確化、
チームライティング(そう言えば、現代では医療もチームが要となっているし)
という発想の転換等、この辺は非常に興味深くはあった。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/22(火) 07:50:58.50:nxPLEeSM
高木敏子・作 武部本一郎・画「ガラスのうさぎ」を読む。
終戦記念日近くに、手にした1冊。
ジュブナイルだしと手を出しかねていた作だが、
淡々とし、省略が効いた描写が逆に先の戦争の過酷、悲惨さを伝える
ものありやに思う。
もし成人向き作品と書かれていたなら凄惨な
シーンはリアルに、ヒロイン=作者敏子の心情(両親や妹を失った悲しみ、
親戚に対する恨みや反感等)はより克明に描かれていたことであろうが、
児童文学ゆえの省略(規制というか抑制)が、逆に名作足らしめる結果
となったやにも思う。
だけど、実はタイトルに冠された「ガラスのうさぎ」(ガラス職人であった
ヒロインの父の製作、戦火で変形している)は、殆ど出て来ない。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/23(水) 15:13:02.79:rCzLlGDp
結城昌治「志ん生一代」を読む。
ユーモア・ミステリも書く(というか名手)な結城氏ゆえ、
落語家の伝記小説を書いても不思議感はないのだが、
芸風から稀代の名人とはいえフラが魅力な志ん生師匠というのは、
正直言うて?であった。
多彩で器用な作風ながら基本生真面目な感がある作者ゆえ、
円ん生や文楽ならわかるんだが。
しかし、巧みな語りと志ん生師匠という主人公キャラ完全立ちの魅力
もあって、一気読みした。
師匠の自伝「びんぼう自慢」(聞き語り)とかも読んでいるが、
本作は書き込んで客観性が感じられる分、落語のような軽快さはダウン。
特に関東大震災当日のへべれけ状態、満州慰問決意のくだりなどは、
自伝ではおとぼけも入れて志ん生師匠らしく面白く語られているものの、
実態は本作ぐらいシリアスな状態だったのではないかなと。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/26(土) 22:09:57.72:/l0+lSS5
朝比奈あすか「不自由な絆」を読む。
「天使はここに」、それなりに面白かったので、
もう少しこの作者のものを読んでみようかと。
中高の同級生(特別に親しいわけではなかった)2人の主婦(リラと洋美)・
母親になってからの偶然の出会い。当初は僥倖とも思えたのだが・・・
2008年初夏から2016年春(現時点でも近未来である)にかけての
物語。
子ども同士の交友を含めリアルなママ友関係から生じるすれ違いと桎梏、
様々な小さなエピをまじえてグイグイを読ませる序盤から中盤にかけての
面白さを思うと、最後に来て同級生和解のハッピーエンディング傾向が
ちと残念、子供絡みの件だけならともかく、連れ合い同士の訴訟、傷害事件に
まで至ると、リアルでは関係は完全にエンドですわ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/27(日) 19:00:54.39:Mm7Rog9u
朝比奈あすか「彼女のしあわせ」を読む。
独身主義のキャリアウーマンな長女、結婚して子持ち不本意な地方住まいで
ブロガーな次女、石女の運命にある三女、そして夫に従う人生に疲れて自由
になりたい母親、まあ、四者四様にシリアスな状況にあるのだが、
最後はそれなりにみんな治まるところに治まる感があるハッピーエンディング。
5年程前の作だが、この当時の作者は、やはり後味の良さを重視していたんで
あろうか(版元の意向を入れたのかもしれぬが)
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/10/03(土) 18:56:40.86:Cf4mHNUJ
結城昌治「夜の追跡者」を読む。
若き一徹な弁護士(とは言っても自由な女性関係はあり)を主人公にした
ハードボイルド・ミステリ。
夜の蝶ことホステスたち、彼女たちから依頼を受ける未収金の取立屋、
用心棒・・・夜の世界がテンポ良い語られてゆくが、一応の意外な犯人も
あって短く、軽く読める話である。
まあ、本作の主人公が後の紺野弁護士を主人公にした連作の原型を成すもの
なんであろう。

結城昌治「終着駅」を読む。
非ミステリながら、「軍旗はためく下に」で直木賞を受賞した作者らしい
晩年期における吉川英治文学賞受賞作。
戦後の男たちの死に様を描いたコンパクトながら悲しくも哀しい連作集
である。前記した「軍旗・・・」の登場人物たちが仮に復員していたとしても
辿ったやもしれぬ人生の数々。
時期的にはもう少し前(終戦記念日がある8月中)に読みたかった感もあるが、
秋風が身に染みる季節にじっくり鑑賞するのも有りな作やもしれぬ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/10/04(日) 19:34:09.63:fA57keE4
東野圭吾「名探偵の呪縛」を読む。
96年文庫書下ろし、天下一大五郎シリーズ第二弾、
ちゅーか、作者自身が「本格ミステリ」という概念が存在しない
パラレルワールド天下一化するという意表を突いた番外編である。
圭吾の本格ミステリとの思いは残しながらの訣別の書とも読めるが、
10年後に本格ミステリか否か、作者自身もコメントする展開に至った
容疑者Xで見事に直木賞受賞となったのは、皮肉としか言い様がない。
ワトスン役にはいたいけな少女(しかもワトスン=犯人の要素もあり)とか、
ねらーとかではマジョリティなロリコン読者に対する配慮もばっちし(w
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/10/10(土) 14:44:07.40:iwdJIT5W
「すべてがFになる」森博嗣(講談社)

密室トリックのアイディアは秀逸だしとてもびっくりするバカミスと言ってもいいような大胆なもの。だが、他の要素などと相まって総花的な印象で物語として後を引かない。これが一つのブームになるほど継続的読者を掴んだのが解せない。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/10/10(土) 20:54:40.92:7MijcprE
東野圭吾「歪笑小説」を読む。
どう読んでも非ミステリなのだが、現代本邦ミステリ界のトップランナー
の手になるものであり、収録作品中にはミステリ作家・小説ネタはあるので、
紹介しても完全板違いとまでは言えなかろうか。
強いデフォルメがなされているとはいえ、出版界のリアルな実状を
おもしろおかしく抉っているのは確かか。
今なら電子書籍ねた、アマゾンねたとかも、当然あったかもなー。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/10/11(日) 20:37:44.07:5W9cnhrT
西村寿行「君よ憤怒の河を渉れ」を読む。
後に長者番付トップにまでなった寿行初のベストセラー(当時は新書版)。
後の濃いエロシーン連発モードは無いどころか、エロはほぼ皆無。
(映画版にあるケン高倉と良子の濡れ場シーンも原作には無い)
御都合主義とはいえハードアクションの連続で読ませようとする
和製冒険小説である。
寿行作品は、
同時代の大藪春彦作品とは異なり、主人公(検察官)が超人的であったり、
戦いのスペシャリストではないため、臨場感、緊迫感を増すこともあるのだが、
逆にまだるっこしい面も感じられ、本作でも主人公は鮫の海からの脱出に成功
するものの、一網打尽とはいかず、カタルシス全開とはいかず。
密室殺人(外部から出入り不可能な状況下における庭での薬物殺人)という
寿行作品らしからぬ謎解きの興趣が施されているとはいえ、
映画版では完全カットされたのは無理もないと思える蜘蛛の巣ネタ、
煙草の煙が蜘蛛の巣にように見えることがある→蜘蛛の巣に噴布して
容器代わりに→朝霧が精力回復に有効とか言うておけば思い切り吸い込むはず、
とか、読めばわかるが、この辺の謎解きは笑うしかないレベルかと。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/10/17(土) 14:20:40.43:NGGNmgJh
藤原てい「流れる星は生きている」を読む。
ミステリ板では戦争冒険もの(ノンフィクション)として紹介するしかなかろうが、作り物めいた冒険小説群がアホ臭く見えて来る迫力に富む書である。
前記した「ガラスのうさぎ」同様に8月中に読みたかった往年の大ベストセラー。
気象台勤務の夫(新田次郎氏)と離れた母子3人の必死の半島引き揚げ行、
引き揚げ団内部の確執もビビッドに描かれている。
本書では言及されていないが、同じ観象団の人たちはその後どうしたの
だろうか?
新田次郎氏にも書いて欲しかったテーマではあるが、書き記すどころか、
思い出すだけでも酷な体験だったのであろう。

今柊二「定食と古本」「定食と古本ゴールド」
一読、おもろかったですわ(w
外出すると近所、遠出を問わず定食(立ち食い蕎麦とかも含む)で済ます
ことが多い身としては、リアリティに富むものもあり。
購入する古本を見ると幅広い読書をする著者のようだが、
ミスオタではなさそうなのはちょい残念かな。
紹介されているショップで現在では閉店してしまったものも多いようだが、
正編の著者の古本歴語り、続編であるゴールドの学生時代の古本譚は
不変の面白さというたところか(w
時代の空気が漂って来るかのようなグッドな雰囲気や。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/10/18(日) 17:59:54.47:mTXYVRvO
汐見薫「リストラ日和」を読む。
ローカルな文学賞ながらミステリ作品での受賞歴もある著者
(金融機関勤務歴あり)だけあって、意外な展開が盛り込まれたリストラネタの
ビビッドで面白い企業経済小説である。
メガバンクから不本意な転出を経て退職した主人公、社労士試験に失敗し続け、
プライドばかり高い妻との確執、
子どもたちは就職、進学へ自己の道へまい進中・・
孤独な精神的彷徨は続く、やがて在社当時の刑事事件にまで巻き込まれてまう。
まあ、昔日の経済小説であれば完全ハッピーエンドは考えられない状況なの
だが、精神的距離感大だった妻との和解まで示唆したラスト。
バス旅行で偶然に知り合った老人が元やり手検事だった弁護士であり、
主人公にとり救世主と化し、主人公をリストラに追い込んだ連中へ引導を
渡すきっかけとなるってのは、読んでいてカタルシスはあるものの、
2時間ドラマ的過ぎるわな(w
名無しのオプ [sage] 2015/10/20(火) 20:18:41.62:sOYARX0U
小路幸也「HEARTBEAT」を読む。
大きな本屋の創元推理文庫の棚を見たら二十冊に一冊くらい挟まっている「ミステリとしてどうなの?」と言う作品の一つ。
作者は最後の一撃としてあの設定を作ったのだろうが、ミステリを読もうと思って買う読者がほとんどであるあの文庫に、
よくもあんな設定をぶち込んで来たものだ、と逆に驚いてしまう。
途中の物語も冗長な部分があり、その割に伏線の密度は薄いのでただ冗長なだけのシーンとなってしまっている。作者はミステリを読慣れていない人間だと感じた。
「東京バンドワゴン」で売れた作者ではあるが、プロットなどもお粗末で、ミステリを読みたい人ならば本屋で手に取る時間に、
その棚の別の作品を手に取った方がよほど時間の有効活用と言う物であろう。
端的に言ってつまらない上に、ミステリとしての出来が最悪。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/10/24(土) 18:40:50.90:xz+XSwfI
加藤廣「信長の棺」を読む。
今更ながら読みました。当時は人気の小泉純一郎首相(彼は信長ファン)
の愛読書としても話題になった歴史ミステリである。
うーん、時代小説家の手になるものでないせいもあって、
売れたわりには読み難いものあり。
比べるのは酷かもしれぬが、このテーマなら、
歴史薀蓄も含めてシバリョウならもっとスムースに面白く
読ませたではないかと思うてしまう
主人公太田牛一(信長の家臣で実在の人物、
武家ではあるが今でいうヒストリアン)は古稀の爺なのに
若い娘にモテモテで腹ませってのも、
何だかなあ(w ではある。
作者が東大出の金融マン(中小企業金融公庫、山一証券)のお偉いさん、
単行本出版は日経となると、メーンと想定される読者層にはウケたんかな。
タイトルからは「実は信長は本能寺を逃れ生きていた!」的トンデモストーリーを期待したのだが、真相は秀吉の策謀により脱出口であった井戸で窒息死
していたというわりとリアルなもので、
主人公に信長が託した棺はいわゆるお宝(金)であったというものでした。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/10/31(土) 03:27:15.65:VJUlxY16
「危機の数は13 X21/恐怖のエプシロン作戦」五島勉(芸文社)

PVオールマイティ・フルジェット・エレクトリクス・モデル0。世界にわずか21丁しかないこの銃は国連平和監視委員会機密捜査官にのみ携帯が許された万能の秘密兵器。
唯一の日本人捜査官である江藤昭彦は新たな任務を拝命する直前謎の組織に襲われる。それを撃退し本部に連絡するも既に委員長は敵の毒牙にかかった後だった。
昭彦は今際の際の言葉に従い、エプシロン・Bなるものを追って東京へ向かう。

「SF奇書天外」からのセレクト。
「ノストラダムスの大予言」等のトンデモ作家が書いたアクション小説だと。期待せずに読んだが、ま60年代各メディアで濫発されたであろうナンセンスエロアクション小説である。

構成は黄金時代以前の連作短編集的長編で主人公たちは各章で危機に見舞われていく。
その度に超兵器PVの星の数ほどある機能を駆使して切り抜けていく次第。プロローグ丸ごと仕組みの説明を書き連ね、その後も節々で怪しげな理系論理が開陳される。
無論マジ突っ込みなど論外(文系なんで出来ないけど)。笑読人限定。

ただしエロに関しちゃ突っ込んでもいいだろう。もうちょっと欲しかったなと。胡桃沢作品とかと同じで無精風呂焚きなのだ。
「影の軍団」は読まいでもええか。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/10/31(土) 19:16:42.96:qc5flb1h
東野圭吾「11文字の殺人」を読む。
87年と相当に前の作品、
圭吾がまだ本格ミステリ(ちゅーか、謎解きミステリ)に拘っていた頃の作
である。
主人公の閨秀ミステリ作家はワープロ使用、
一般に携帯は普及しておらず公衆電話が現役バリバリ、
VTRもまだまだ全盛という時代。
当時は当たり前のことが何かもう懐かしくさえある。
謎解きそのものは、読んでるうちに犯人は女で意外性を狙うならあ奴やろと
当たりをつけてそのキャラに着目してると、やっぱりなという展開。
ただし、勧善懲悪、コンプライアンスの方向で締めないのは、
後のダークミステリとでも称すべき作品を多く書く圭吾らしさが既に出ている
という感はあり。
名無しのオプ [] 2015/11/01(日) 06:17:16.42:7GqSFb3m
読後感が完全に負けたね。
白旗掲げて去れや。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/01(日) 13:09:45.61:zoyN4dkR
東野圭吾「超・殺人事件―推理作家の苦悩」を読む。
圭吾の短編も好きなのだが、狙った異色作過ぎる感があって長く積読状態
だった作品集。だが、読んでみればさすがに面白かった。
収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「超税金対策殺人事件」
節税(必要経費算入)のためストーリーまで変えてまう作家とか・・・
圭吾の税に対する実感も覗えるような面白作。
・「超理系殺人事件」
SFというてよい作。似非理系人間というメーンに来るネタがおもしろ。
・「超犯人当て小説殺人事件(問題篇・解決篇)」
問題篇こそフィクション内のフィクショナルな世界、
解決篇でフィクション内のリアルな世界という構成が凝ってる。
どこか筒井堂のロートレック荘(ストーリー、トリック等は全く異なるが)
を想起させる遊び心がある作。
・「超高齢化社会殺人事件」
ストーリー破綻の高齢作家藪島清彦って大藪春彦のパロディ?
「餓狼の弾痕」ちゅー、有名なトンデモ作品が思い浮かぶ(w
・「超予告小説殺人事件」
意外ならぬやはりというオチだが、小説に沿った予告殺人というネタは
面白く読ませる。
・「超長編小説殺人事件」
弁当箱かおとの評もあった一時期のミステリ小説の大作化傾向をシニカルに
描いた作。作品水増し過程が面白いが、圭吾がマジならもっと上手く書くやろと
思われ。
・「魔風館殺人事件(超最終回・ラスト5枚)」
作者急逝で落とすSSで十二分にワロタ。
・「超読書機械殺人事件」
俺のような書評を著す者にとっては、本作のショヒョックスねたはマジ藁。
読後、本が売れない時代の「読書」という行為そのものに関して考えさせる。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/03(火) 17:44:33.61:Qpk9FzqL
東野圭吾「怪しい人びと」を読む。
さすが圭吾、これも多彩な作風で楽しめる作品集であった。
・「寝ていた女」
作中でも言及されているとおり映画「アパートの鍵貸します」ねた。
まさかのトルエンおちだが、締めには男の哀感漂うものあり。
・「もう一度コールしてくれ」
スポーツ好きでもあるらしい圭吾の高校野球ねた。
審判のアウトのコールにより人生が狂うはじまりとなった元高校球児、
実はアウトだった展開で普通な面白さというたところか。
・「死んだら働けない」
リーマンねた。シニカルなタイトルが効いた一編。
・「甘いはずなのに」
偶然にも高裁で再審開始決定となった事件を想起させるねた。
しかし、誤解は解けてハッピーエンディングと他愛のないものである。
・「灯台にて」
アッーな灯台守りねたで圭吾の持ち味のひとつであるダークなサスペンス作品で読み応えあり。最後の私と祐介の「いい関係」って表現も気にかかるものあり。
・「結婚報告」
新婚の友人が巻き込まれた殺人事件の顛末。
ダークになってもよい展開ながら、あえて明るくハッピーエンディングで
締めている。その分、印象が軽くなっている感あり。
・「コスタリカの雨は冷たい」
締めの一編なのに、これはつまらんですわ。
コスタリカでは警察官もグルでしたねた。
実話なら少しは興味深い程度の出来、フィクションではなあ・・
手がかりも偶然過ぎる。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/07(土) 18:38:47.17:0NiLx3Ew
中町信「暗闇の殺意」を読む。
晩年に突如ブレークした感があった作家の短編集。
全体的には可も無く不可も無くという出来、この作者の長編が好きな者なら
読んでみてもよかろうという程度か。
大好評な収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「Sの悲劇」
ダイイングメッセージねた。このねたゆえ仕方ないかもしれぬが、
ガイシャが瀕死の状態という点を思えば、著しくリアリティを欠く感は
否めないものあり。8と書こうとしてS状態でエンドしてもうたという
アイデアを活かしたかった(だけ)な作かと思う。
・「年賀状を破る女」
ミステリではありきたりな情事と交通事故ねたという真相に
ダイイングメッセージを絡ませた作。小土→ハニへというのはやはり
無理有り過ぎ。
・「濁った殺意」
これは写真利用のダイイングメッセージねた。
あまりに凝り過ぎで白ける感あり。
・「裸の密室」
密室トリックはそれなりに成立させているとは思うが、
叙述トリックの方は?
・「手を振る女」
電車乗り換えのアリバイトリックは上手く行き過ぎ感大だし、
ガイシャは窓を拭いてただけという謎解きはガクーリ感さえある。
・「暗闇の殺意」
表題作のわりには出来はイマイチかと。
叙述トリックは一応成立してますな。
・「動く密室」
なるへそ、広い地下駐車場という設定を上手くは使用している。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/08(日) 22:35:47.38:jsfq8kqi
中町信「空白の殺意」を読む。
高校野球ネタ。
昭和55年の書下ろし作品ゆえ、まだ群馬県が現代の東北地方状態ちゅーか、
春夏含めて優勝皆無県のひとつであった頃のお話(その後、桐生第一、前橋育英が夏制覇)。著者曰く「中町版の『皇帝のかぎ煙草入れ』」、自信作とのことだが、
読後感は「うーん・・・」だな。
プロローグを読んでいて「死んでるのって猫でね?」と思うと、
(実際そう読めるような書き方だし)
既にネタが見える感あり。
皇帝ネタ書くのは今いち失敗してるかもなー。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/14(土) 22:39:37.00:T2ZJ4AdN
綾辻行人「鳴風荘殺人事件」を読む。
新本格の旗手であったアーヤの手になる90年代終盤の作だが、
それなりに論理的であっても80年代から90年代前半の館シリーズの如き
独自の輝きは既に失せたという感あり。
往年の面白いジュブナイルを紐解くかのようなドキドキ感は皆無。
鳴風荘という建物の魅力も今ひとつ活かされておらず、タイトルから嵐の山荘ものサスペンスを期待するとあっさりと裏切られ、
文字どおり「アッー!」な真相ばかりが印象に残るものあり。
果たして、あえて読者への挑戦を挿入するほどの作と言い得るだろうか?
貫井徳郎による解説、アーヤは本格の中心でなく周辺に位置する作家では
ないかとする見解(ゆえに低評価しているわけではない)は、
デビュー時からの読者には成程感あり。
決して論理詰めなガチ本格でなく、謎解きの興趣も十分なエンタメと
評した方がその実態には合うかもしれないのだ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/15(日) 22:24:53.76:snV4a7xF
歌野晶午「白い家の殺人」を読む。
初期の本格ミステリ。
この作者の持ち味と言えるダークさとトリッキーさは既に顕在。
ヒロインかと思われなJKを序盤で殺害、逆さづりとか、
最近の明るく楽しいだけのミステリには無いえぐさも許容された時代
であった。第一の殺人の振り子原理による意図しない密室の完成、
第三の殺人のロープウェイ方式のトリック等々、謎解きの興趣、
面白さは一応満載ではある。
ただし、偶発的な地震絡みな第二の殺人(意図せざるもの)は今ひとつ
という感ありだが。
「葉桜の季節に・・」でミステリ界では話題になったとはいえ、
わりと地味な存在である作者、上手く流れに乗れば圭吾的存在に
成り得たのではなかろうか。
多彩なものが書ける十分な力量の持ち主かと思うのだが。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/21(土) 13:58:22.57:sjlUUaRP
我孫子武丸「8の殺人」を読む。
新本格ミステリブームに渦中に刊行された作。
明るく楽しい漫画の如きライト・ミステリ、これが特色であり狙い
であろう。
トリックは本文中で詳しく言及される密室講義の章を含む古典「三つの棺」の
「それ」(グリモー教授の死)、ミラーねたを即座に想起させるものであった。
現代的に凝って書いてみましたというところ。
反動によりドアに磔刑という第二の殺人もかなり独創性はあって面白いのだが、
コンパクトに纏まっているとはいえ、全体的に奇をてらい過ぎ、笑いを強調し
過ぎているきらいは否めないものがあり、やはり若書きと評さざるを得ない
ものあり。この点で、
巻末に付されたシマソウの「本格ミステリ宣言」の趣旨もわからぬでもない。
余談ながら、今もこのエッセイは単独で読んでも興味深いものがあるのだが、
米に勝てそうなエンタメは本格ミステリとの言は、
近年における圭吾の容疑者Xのエドガー賞ノミネートにより先見の明有りかと思う。ただし、新本格ブームはるか前に乱歩賞(本格ミステリにしてダークな
青春学園ミステリ)を受賞、本格を書かせても腕利きな圭吾の一人勝ち状態
を予想できていなかったわけだが。
名無しのオプ [sage] 2015/11/21(土) 22:54:45.87:VMtNQ5Wz
とバカ書きの書斎でつまつがw
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/23(月) 01:06:48.02:Spn+/w5q
中川右介「角川映画 日本を変えた10年 1976−1986」を読む。
タイトルどおり、角川映画(本書中でもあらためて明記されているとおり、
この社名の映画会社は存在しないが)こと角川春樹事務所(これも現在のそれとは異なる)主導の映画製作、当初10年の様を著者の思いもある程度込め
ながら回顧した映画本である。
全体的に角川映画に対する評価が甘めという感があるのが気にかかるが、
(特に「人間の証明」はどう見てもご都合主義満載な凡作だし、
「汚れた英雄」は大作のダイジェストにも成り得なかった失敗作としか言いようがない。前者は名のみ高く森村作品中でも最良のものから程遠いし、後者は
大藪作品のライフワーク的作でありながら、その魅力を映像に活かしきれなかった)
角川には横溝作品を筆頭に当初からミステリ作品が多数製作されたので、
ミステリも映画も好きな向き、特に70年代後半から80年代前半に
青少年時代を送った向きには面白く読める著作かとは思う。
あとがきによれば、著者自身も小3でホームズと出会い(山中か?)、
リアル厨房時代に創元推理文庫はあらかた読んでしまい、森村作品を皮切りに
国産ミステリを夢中になって読んでいったという好き者(?)。
だけんど、
薬師丸ひろ子が現代のAKBもぶっ飛びな社会現象というてよい熱狂的な
人気だったり、正に隔世の感ありだ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/24(火) 01:22:45.73:yK9MX30l
山本博文「日曜日の歴史学」を読む。
本書もその例外ではないが、この先生の本は意外に読み難いものが
あるんだわな。
歴史に興があれば、内容的には惹かれるトピックが多いのだが。
広く流布する稗史的エピを資料から丁寧に読み解いてゆく過程は
正にミステリの謎解きを読むが如し。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/28(土) 18:56:18.45:U1nr5ngg
藤沢周平「麦屋町昼下がり」を読む。
表題作の他「三ノ丸広場下城どき」「山姥橋夜五ツ」「榎屋敷宵の春月」
の3作収録。
いずれもまったりとしたタイトルながら、
ストーリーは謎解き含みのミステリ仕立て、クライマックスには剣戟も
有りの作である。
初期のダークなタッチの藤沢作品とは異なり、悲劇や凄惨な事件はあっても
全てハッピーエンディングなので、お約束好きな単細胞思考の輩には安心して
読めよう。逆に俺のような曲者な読者には物足らない感ありなのだが。
「時代小説の芳醇・多彩な味わいはこれに尽きる」とのカバー裏表紙にある
キャッチコピーは「いくら何でも持ち上げ過ぎ」でしょ(w
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/29(日) 11:51:19.38:rofdpii5
藤沢周平「雪明かり」を読む。
この初期作品集は、まあ良かったです。
まだダークさと哀切さが色濃かった頃の藤沢作品を堪能できる作多し。
ただし、ミステリ色は無いものばかりなので、この板のオタ連中には
不満は残るところやもしれぬ。
早速だが、収録作品全話講評、逝ってみようか!!!
・「恐喝」
これは相次ぐ偶然性でがっかりな作。
恐喝した店の娘に偶然に助けられ、更に偶然にもその娘の危機を救うことに
なるってのは、あまりにお約束な創り過ぎ。巻頭におくべき出来の作では
なかった。
・「入墨」
今では病み、身を持ち崩した極道者の父親が飯屋を営む姉妹の危機を救う。
見える展開なのだが、父親サイドの心理描写が皆無なため、かえって哀感あり。
「何も言わないで行っちゃたよ」、この姉の台詞が心に残るものあり。
・「潮田伝五郎置文」
憧れの女性へのピュアな心情を忘れない武士の末路(とでも評するしかない)
結局、登場人物の全てが不幸な結果と相成る。
初期藤沢作品にはこの手の皮肉が効いた佳作も多かったのだ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/29(日) 11:51:48.83:rofdpii5
・「穴熊」
これは完全にマノン・レスコーねたですわ(w
主人公の博徒、そして相方となる浪人、彼らの婦女子への愛は悲劇と別れに
終わる。
・「冤罪」
同僚の死の隠蔽というヘビーな謎解き要素はあれど、
ハッピーエンディングな後味良い藤沢作品と同系列にある作で
その分、軽い印象に終わる。
・「暁のひかり」
今なら声かけ事案発生ネタだが、これぞ初期藤沢テーストという感がある
ダークで哀感溢れる世話ものだ。
いつもながらだが、冒頭、江戸の夜明け描写の見事なこと。
緊迫感溢れる幕切れも良だ。
・「遠方より来る」
足軽を主人公にした明るいタッチの海坂藩もの。
ユーモラスなラストが良し。
・「雪明かり」
表題作にして出来は芳しくないとしか評しようがない。
主人公の行動は武士にしてはあまりに無節操で、
物語としても説得力を欠くのだ。
単に義理の妹萌えやろと。
タイトルに冠された雪明かりの描写が秀逸なだけに残念な作
と言い得よう。
名無しのオプ [sage] 2015/12/01(火) 01:03:41.44:c9HpRc/u
書斎さんよ
ミステリ小説を読んだ報告なら
それがどんな退屈極まりない代物でも気にはしないが
ミステリ小説でもないものの読書感想文まで書いて水増しすんなや
全く他のスレでのネタバレ行為といい
本当に品のない御仁だよな
一体どんな躾をされたらこんな恥知らずな人間になるのか想像もつかない
きっとあんたの両親も相応に品のない連中なんだろうね
もうどうせなら魔神じゃなく疫病神とでも名乗った方がいいんじゃないの?
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/12/05(土) 18:14:47.78:j2wFR3uf
藤沢周平「日暮れ竹河岸」を読む。
派手さは無いのに読みだすと続けて手に取ってしまうことが多い藤沢作品。
本書は生前最後の刊行作品集であり、「江戸おんな絵姿十二景」(タイトルに
あるとおり1年間の各月(12ケ月)に対応した浮世絵から想を得た掌編集)と「広重『名所江戸百景』より」(これもタイトルどおり広重の浮世絵に想を得た
7作)を収録。
ミステリタッチの作も多い作者だが、いずれもこの長さ(特に前者はSS程度のボリューム)では謎解き展開は難しく典型的な世話物中心で構成。
ただし、バッドエンディングや鬱エンドとまでは言えないものの、
哀感、寂寥感溢れる作、ビターな味わいの作等が多いのが、
中期以降のハートウオーミング主な作風を思うと意外であった。
女性主役の作が多い(なぜか書名に冠された作は男の話だが)が、
登場キャラ自体は老若男女に及び、
その巧みな江戸情景描写は正に活字による浮世絵世界という感あり。
破滅型な男の孤独な老いた生き様を静かに描き切った「雪の比丘尼橋」、
(真性ねらーは心して読め!)
お使い少女が出遭ったふとした夏の一時を、アーウィン・ショーの短編を想起
させるような淡い味わいが良な「大はし夕立ち少女」。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/12/06(日) 19:56:08.77:p+ApBL9T
オースティン・フリーマン「証拠は眠る」を読む。
ソーンダイク博士シリーズ長編中の傑作との評ありだが、
通常はワトスン役のジャーヴィスはちらっと姿を見せるだけで、
語り手も別な人物(若手弁護士)というやや毛色が変わった作でもある。
さすがに今読んでみると、売りである薬物に関する蘊蓄がうざく感じられ、
語りのテンポも悪い。ヒ素入りローソクで毒殺ってのは斬新で面白いが、
まあ、これを読者に推理して当ててみろってのは無理筋ですな。
それに短編でさらっと書いた方が際立つトリックかと思う。
原題の「As a Thief in the Night」って?
名無しのオプ [] 2015/12/07(月) 09:42:58.76:nTn8ZxnB
朝比奈あすか「自画像」を読む。
婚約者に向けて中学時代を独白してゆく主人公。
顔面を覆うにきびのために生徒たちに見下されている中学生少女の目から見た教室の光景。
やがて少女は真の悪は幼い男子生徒たちではなく、別にいることを見抜く。
後半の展開は意外性と凄みがあり伏線が回収されてゆくと同時に独特の世界観には圧倒された。
グロテスクなシーンもあるものの全体的に女流作家ならではの清潔な筆致だった。
名無しのオプ [sage] 2015/12/08(火) 16:34:28.65:RAERr2SR
なにここ、糞コテのチラ裏かblog?
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/12/12(土) 18:58:08.55:L8LYizjG
ハリー・カーマイケル「リモート・コントロール」を読む。
ふーん、結構書いてるのにまだ多くのミステリファンにも知られていない
作家ってのはあったもんである。
一見、単なる交通事故や自殺に見えた事件の背後には、男女関係絡みの
隠れた真相があったというお話。
英国舞台の謎解き主体なサスペンスものでありながら、
主人公の一人である新聞記者の言動が諸にハードボイルドのノリなのが
異色に感じたが、解説によるとこの線も書いてた作家とわかり、
納得、納得・・・
バディもの(相棒は保険調査員、むしろ本作は中盤から彼氏が主役級であり、
探偵役)のテーストもある気軽に読めるエンタメとは言い得ようか。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/12/13(日) 16:15:41.82:f3ompkmQ
東野圭吾「白銀ジャック」を読む。
これは近年の文庫書下ろし作品で良く売れたものである。
傾向的には映画公開中の天空のハッチと同様なパニック・サスペンス・ミステリ
とでも称すべきもの。
スキー場に仕掛けられた爆弾をめぐる物語である。
まあ、出て来るキャラもエピもお約束というかありきたり過ぎるが、
その分わかり易いとも言い得る。
いずれ本作も映像化されるんでしょうな。
名無しのオプ [sage] 2015/12/13(日) 16:21:43.33:tC7oMG9B
すでに映像化されてるがね。
なんて反論するかはすぐに想像がつくw
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/12/19(土) 15:07:57.47:GEqUseNg
三島由紀夫「サド侯爵夫人 わが友ヒットラー」を読む。
天才三島の手になる戯曲2編を収録。
各話がコンパクトに纏まった「近代能楽集」も面白いが、
本邦における翻訳劇(赤毛もの)の伝統を踏まえた長めの中編戯曲
はいずれも趣向凝らしたものであり読みごたえ十分であったのだ。
順番に簡単な講評を付しておこう。
「サド侯爵夫人」
サド侯爵本人の直接の舞台登場は無し(最後に戸口までは来るが)
彼の妻、義母、義妹等、周囲の女たち(登場人物は全て女性)から語られる
サドという構成が面白い。
難しい理屈抜きに読んでもサドを取り巻く女たちの攻防がある意味で
スリリングで一気読みさせられるものあり。
余談ながら、出番も少なくあまり活躍もしない家政婦シャルロットは、
時代的にはあのシャルロット・コルデを意識した天才三島のネーミング
(お遊びのひとつ)であろうか?
「わが友ヒットラー」
こちらはヒットラーの極右・極左抹殺前夜を描く男だけの世界。
4人の登場人物たちの思惑、駆け引きがサスペンスフルで、
「サド・・」とは異なる迫力に富んだ作に仕上がっている。
ヒットラーの最後の台詞「そうです、政治は中道を行かなければなりません」
シニカルにして示唆に富みいかにも天才三島らしく思える。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/12/20(日) 21:44:18.02:AVyYg/wR
マイケル・イネス「証拠は語る」を読む。
大学内で発生した隕石による殺人事件、おなじみアプルビイ警部が
偽装殺人と見破り見事に犯人をあげるまでの顛末を著者十八番の
文学談義をたっぷりまじえて描く。
創元の作品集「アプルビイの事件簿」は面白く読んだクチだし、
大乱歩が高評価した「ある詩人への挽歌」、
邦訳時に年間ミステリランキングにベスト作品入りした「霧と雪」は
それなりに面白く読んだのだが、
(「アララテのアプルビイ」は異色作ぐらいの印象しかないが)
本作はSSも顔負け(マイコーはモノホンな大学の先生だしな)
ペダンティズム連発に辟易でしたわ(w
正直言うて、一般の日本人ミステリ読者向きなマイコー未訳作品って
もう無いんじゃね?
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/12/30(水) 20:02:08.76:ZGwQXXrp
オースティン・フリーマン「ポッターマック氏の失策」を読む。
ソーンダイク博士シリーズの短編「歌う白骨」等の途叙ものの嚆矢
として著名な作者の手になる同シリーズ長編途叙ミステリである。
解説によれば倒叙ものは長編では本作と未訳作品がもうひとつあるのみとか。
まあ、内容的にはDNA鑑定が当たり前だのクラッカー(wとなってしまった
現代から見れば、オークションで古代エジプトのミイラを買って来て
死体に偽装とか、もうトンデモ以外の何物でもないが、逆に今読むとこの
辺が面白いとも言い得る。
型を作成しての足跡偽装なども同様だ。
クラシックではあるが、タッチは医学者作家らしい淡々としたものであり、
妙にリアルな面さえある。
楽しい謎解き物語を期待すると外れですな。
まあ、そういう作家ではないが。
名無しのオプ [] 2015/12/30(水) 20:24:30.60:1k+Zbd0b
スレタイも読めなくなったか、書斎 w
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/12/31(木) 17:44:43.47:R0e5Aiuo
岡本綺堂「傑作情話集 女魔術師」を読んだ。
久々に綺堂テーストを堪能させてくれた作品集。
綺堂オタである俺は、収録7作品中、「磯部のやどり」
「子供役者の死」「怪談一夜草紙」「岩井紫妻の死」は
読物選集巷談編(青蛙房)で既読であったが、
表題作と「庄内の仇討」は、
現在ではこの本でなければ読めないレア作品、
しかも面白いのだから、この2作目的だけでも買う価値有りであった。
まじで光文社文庫マンセー!や。
収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「海賊船」
本作は先に末國氏の綺堂探偵小説全集第2巻に収録されているが、
未読であった。「かいぞくせん」でなく「かいぞくぶね」であり、
略奪でなく人攫い目的のクルージング船と意味合いも異なる。
かどわかされた武士の娘たち(姉妹)に仕える若干(当時ならそうでもないか)
17歳のお末ちゃんが賢くも可愛くカッコ良いのだ。
主人姉妹を連れ去られた彼女の必死の追跡行・・
終盤登場する岡っ引幸次はあの三河町の親分を想起させる好漢ながら、
目立った活躍無し。
悲惨な結末を遂げるキャラもいるが、綺堂作品には珍しくハッピーエンド、
この辺は、やや物足らないありきたりな感があるものの、
ただし「完全」とまでいかないのが、(遠い紀州のことまでは不明)、
この辺はいかにも渋い綺堂テーストではある。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/12/31(木) 17:45:20.93:R0e5Aiuo
・「磯部のやどり」
前記したとおり、選集で既読済み作品であった。
巷談編中でもかなり面白く思うた作。
文庫刊行時の季節柄に合う赤穂浪士絡みネタ。
・「子供役者の死」
巡業先で土地の顔役のイロ(年上)と良い仲になった子供役者の悲劇の
顛末。これも巷談編中では印象に残る作のひとつであった。
世の怪談の裏話ってこんなものなのかもしれぬ。
しかし、作者狂綺堂も同感のようだが、子供役者はちと気の毒な感あり。
まだ、男女関係の機微などわからぬ歳で当然なのに・・
・「怪談一夜草紙」
老女の語りに惹き込まれる感がある怪談の裏話。
すっきりしない結末が綺堂らしさ溢れるものあり。
・「庄内の仇討」
小品ながら異色の仇討ち小説。
とにかく終盤の展開が面白く、池波正太郎「仇討群像」とか
好きな向きにはお薦めだ。
なぜか過去の選集にはセレクトされていないのはその異色さゆえか、
(怪談、探偵譚、しかも巷談と称するのも微妙な武家もの)
・「岩井紫妻の死」
これは狐による諸な怪奇譚。
しかし、狐を襟巻ならぬ胴服化した茶屋の亭主は無事安泰というのは
面白い。巷談編からの作品セレクトはなかなか良だ。
ただし、本作は初出誌の方に準じた校訂とのこと。
・「女魔術師」
これは面白い。正に今年最後の拾い物と言い得る作であった。
座長でもあるセクシーな女魔術師をめぐる男絡みの情話というか、
むしろ奇譚である。劇作家らしい粋な幕切れも良。
精神的サド傾向ありなヒロインのリベンジの様はグイグイ読ませる
面白さに富む。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/01/09(土) 21:18:17.47:F0Awd1Uf
三島由紀夫「ラディゲの死」を読む。
昨年、自死から45年を迎えた天才作家の短編集。
天才三島はミステリは嫌いだったようだが、この本にはミスオタ向きな作も収録
されている。
表題作は詩人コクトオ目線でラディゲの早逝を描いた非ミステリだが
若い公務員アベックの楽しいはずのデートが思いもしない凄惨な結末を迎える、
ちょいアメリカン・ミステリ掌編風テーストな「日曜日」、
不気味なサスペンス溢れる「復讐」・・この辺は読んでみれ。
非ミステリながら、いかにも三島流のシニカルなユーモア満載な「偉大な姉妹」も
面白いぞ。
名無しのオプ [sage] 2016/01/10(日) 18:01:39.85:jjQ3vCYG
をちょい変更

書斎魔神にどうしても我慢できなくなったり反論したくなった場合は、下記スレにて

書斎魔神・アホアホ語録指導部屋 24
ttp://http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/8993/1418901075/l50
書斎魔神・アホアホ語録格納庫 その33
ttp://anago.5ch.net/test/read.cgi/tubo/1325054903/l50">ttp://anago.2ch.net/test/read.cgi/tubo/1325054903/l50
【12月23日に】書斎魔神ファンクラブ18【サンタクロース】 [転載禁止](c)2ch.net
ttp://hanabi.2ch.net/test/read.cgi/bobby/1420076225/l50

関連スレ
書斎魔神に加担する者達part3
ttp://potato.2ch.net/test/read.cgi/tubo/1351990226/l50
本スレで書斎魔神を叩いている奴ら
ttp://http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/8993/1360142714/l50
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/01/10(日) 18:13:15.70:bhLTbuBq
三島由紀夫「禁色」を読んだ。
三島長編中では、なぜか未読のままであった本作を読了。
全編にみなぎるこの作家独自の美、芸術に対する思想性を読み解くのは
決して容易ではないのだが、LGBTが話題になりがちな昨今、
この昭和20年代に早々と書かれた作を読んでみるのも意味あることかと思う。
メーンストーリーは、醜い風貌の老作家が偶然知り合ったGな美青年を利用し、
女たちへの復讐を意図するもの、と書くと昔の昼ドラとかにありそうとか
言われそうだが、そこは天才三島の手になるものだけあって、
巧みな情景描写も効果を発揮、ストーリー展開のみだけに着目しても、
グイグイと読ませるものがある。
作中でミステリに関して言及された部分がわりと目につくので、
この板の性質上抜粋して紹介しておく。

うちの家族は変わり者ぞろいだから小説(のネタ)にならないかと自慢する一家の主人
への老作家の感、
「残念ながら家長の自慢は当たっていなかった。よくそういう一家があるものである。
お互いにこれっぽちも変わったところが見出せないので、仕方なしに一家そろって
探偵小説を耽読して健康の飢えを癒やしている家族が」
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/01/10(日) 18:13:52.12:bhLTbuBq
主人公(悠一)が知り合うゲイの青年、稔(養父である神田の喫茶店主人と関係あり)
のプロファイルの一文、「彼は酒をおぼえ、探偵小説を耽読し、また煙草を喫むことを
おぼえた」
この夢想がちな稔青年の花火見物しながらの台詞、
「いいな、あんな風に」
と探偵小説の一節を思い出した稔が言った。
「人間をみんな花火に揚げて殺しちゃったら。世界中の邪魔なやつを、一人一人、
花火にして殺しちゃってさ、世界中に悠ちゃんと僕と二人っきり残ったらいいだろうな」
「パノラマ島奇談」も読んどるがな(w
でも、ミステリは現実逃避の手段、過ぎると悪癖ってのが、この大作家の観念なんだろうね。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/01/17(日) 20:32:08.56:OmXSF+Rf
岡本綺堂探偵小説全集第二巻(大正五年〜昭和二年)
うーん、狂綺堂作品と聞けば目がない俺なんだが、第一巻を読んだ時と同様に
「狂綺堂も面白くない作を結構書いてるんだな」というのが正直な感。
特に翻案もの、
舞台が外国なのに日本人読者に抵抗感がないようにという時代的配慮で、
ロザアランドの滝治とか、ロンドンの伊振先生(医師)とか、
何か今読むと違和感ありありですわ(w
また、ストーリー的にも見え見えな展開と最終的に投げっ放しの超自然現象ネタ等、
何でこれを翻案ってものばかり。
収録作品の掉尾を飾る形となる「稲城家の怪事」(後に「青蛙堂鬼談」の一篇「西瓜」
としてリライトされる)も、読み比べると出来の差は歴然。
資料価値と編者末國氏の労は認めるけど・・・という本としか評しようがない。
名無しのオプ [] 2016/01/23(土) 22:04:25.01:xgjc3N73
 
ttp://http://homepage2.nifty.com/e-d-a/scurl/Godzilla-G.html
ttp://http://homepage2.nifty.com/e-d-a/scurl/DarkKnight-J.html
ttp://http://homepage2.nifty.com/e-d-a/scurl/StarTrek.html
 
管理会社、仲介業者が苦情に対応せず困っています
これらの人と知人,家族,親類の方はお知らせ下さい。
 
●浪速建設
南野 東条
ttp://http://www.o-naniwa.com/index.html
社長 岡田常路
ttp://http://www.o-naniwa.com/company/
 
●アパマンショップ八尾支店
加茂正樹 /舟橋大介
ttp://http://homepage2.nifty.com/e-d-a/scurl/ays.html
社長 大村浩次
ttp://http://www.data-max.co.jp/2010/10/01/post_11983.html
 
●クリスタル通り122号室,205号室の入居者
 
hnps203@gmail.com
 
ttp://http://homepage2.nifty.com/e-d-a/scurl/ia-1-3.html
ttp://http://homepage2.nifty.com/e-d-a/scurl/ia-2-1.html
ttp://http://homepage2.nifty.com/e-d-a/scurl/ia-3-1.html
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2016/02/05(金) 19:02:17.18:tV11TuWN
「平家伝説」半村良(角川春樹事務所)

慎ましく平々凡々と生きてきた青年浜田五郎は、運転手として雇われている高村家の出戻り娘敏子と恋に落ちる。
どこか気まぐれで謎めいた敏子は五郎を振り回し、やがて彼の背中にある痣に興味を示す。それは鳥の形をしていて、五郎の行きつけの銭湯の主人によると平家の財宝の手掛かりになるというが……。
騙された……。もうさ、男女のゴタゴタを書きたいならはなからそうしろよ。伝奇ぽくしないでくれ。
いくら平家の蘊蓄傾けようが宝の隠し場所を推理しようが最後にオチをつけようが、やりたかったのはそれだというのは明らかジャマイカ。
そっち先行で伝奇は後付けだろ。萎えるわ〜。
名無しのオプ [sage] 2016/02/23(火) 22:28:42.19:adP0PR/6
ぜひ、ご参加ください。
【自治】ミステリー板強制コテハン導入議論スレ [無断転載禁止]©2ch.net
ttp://peace.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1456186746/
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/03/12(土) 14:33:40.69:Xw/nRTQW
富田常雄「鳴門太平記」を読む。
本作も新たに冒険スパイ小説ランキング入りしたもの。
メーンは根来忍者群を絡めて四国蜂須賀藩の騒動を破天荒に描いた作。
根来忍者に養育された主人公の青年(朱長八郎)とその実父で女敵討ち後に
脱藩した重兵衛は、大衆小説らしい運命の出遭いをするが、
終始、敵・味方の対立関係には立たず。この点では「太平記」のネーミングには「?」。
(この点では、史実からも見立てに成程感ありな池波御大の「真田太平記」
とは異なる)
文庫本上・中・下3分冊(各巻400頁超え)のボリューム感溢れる作だが、
偶然性連発、御都合主義モード全開な展開と相成るが、
まあ、この長さで多数のキャラを回すにはこれしか手はないのであろう。
60年代前半に書かれた作にしては、現代の時代小説かと見まがうほどの、
エロシーン(まず人妻(重兵衛の妻)レイプ、父娘相姦、同性愛、
執拗なストーキング等々)満載。
これは評価できるかできないか(w
ただし、主人公の恋人(と言ってよいかと思う)の商家の娘のみは
いつもレイプ寸前(文字通りの寸止め(w )でレスキューされるという
お約束過ぎる展開はイマイチ、シバレン先生や山田プータロー先生なら
容赦ないだろうになあ、後半の展開も父子二代に渡る復讐鬼誕生とかの
壮絶なものになりそうだが。
普通にハピ、ハピ、ハッピーなエンディングですわ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/04/09(土) 15:09:57.60:ivw0Lw2T
畑中章宏「ごん狐はなぜ撃ち殺されたのか 新美南吉の小さな世界」を読む。
専攻でも専門家でもないが、筆者は意外に民俗学の本を読むのは好きなんで
ある。柳田国男、宮本常一とか、今でも紐解くことあり。
更には、タイトルに冠された「ごん狐」は動物ねたフィクションとしては、
海外作品「フランダースの犬」(先日は最新の研究書を紹介済)と並ぶ
お気に入り。
童話中では、浜田廣介「泣いた赤鬼」(「りゅうのめの涙」も良だが)、
小川未明「赤い蝋燭と人魚」と並ぶ、昔から大好き作品の一角を占めるもの
である。当然、本書には手が伸びるという次第。
小学校低学年用教科書の定番、それに止まらず絵本等も多数出版され、
愛読され続ける童話「ごん狐」を初めとして、過去には宮沢賢治作品ほどには
学問的研究対象とされて来なかった(この点は本書中で著者が言及)南吉作品群を民俗学の見地から作品背景、テーマ等を簡潔かつ平易に述べた書と言い得る。
ただし、タイトルで「ごん狐」オンリーの研究書を期待すると外される、
第1章「狐のフォークロア」と締めとなる第5章「最も弱いもの」で言及
されるが、(霊獣とも見られている一方、狐=害獣という社会認識もあったゆえ、ごんは射殺されてしまったというのが結論か)、分析対象はかなりマイナーなものを含めて南吉作品全般に及ぶ。
(当然、「ごん狐」と双璧を成す南吉の代表作にして人気作の「手袋を買いに」もあり、同じ狐ねたで対照的とも言えるハッピーエンディングだが、これも良作)
ゆえに、ごん狐フリーク(?)には、2000年刊行とかなり前になるが、
「『ごんぎつね』をめぐる謎」(教育出版)という書の方が、より興味深く
読めるやもしれぬ。
(本作に関しても過去に論考あり、読みましたスレ過去ログを参照されたし)
名無しのオプ [sage] 2016/04/09(土) 23:00:26.35:6P9+twfu
書斎さん!可愛い弟子のでつまつくんのスレに何故来ないんですか?
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/04/16(土) 21:05:51.88:ff1JnIEE
青山文平「つまをめとらば」を読む。
記念すべき直木賞受賞作品、コンパクトに纏まった6作を収録した
武家もの時代小説集である。5作は男性主人公(家格は異なるものの、いずれも武士)ながら、テーマは全て「なおん(女)」ちゅーか、「女という存在」である。
(ねらーには苦手なテーマかもしれぬ(w )
しかし、固い話ではなく、難しい話でもない。
美化もず、貶めもせず、あるがままに女というものが本質的に持つ性(さが)
を描いている感あり。
テースト的には、藤沢周平ファンには推せるものあり。
名無しのオプ [sage] 2016/04/16(土) 21:15:00.79:zJMijKXx
黒川博行「悪果」
登場人物が全員腐った悪人で魅力を感じなかった
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/04/24(日) 21:49:02.32:oEUG8xZN
日影丈吉「真赤な子犬」を読む。
うーん、バカミスの走りの評、作者曰くユーモア・ミステリとの言に惹かれて手
にしてみたが、今読むと、さほど面白いものには思えず。
カー(作中でも言及されている)まがいの雪中の足跡と死体の謎も
玉乗り的アクロバティックとは・・・
2つの殺人に関するフーダニットはたいしたことないです。
これもカーまがいなスラプスティックな展開に惑わされなければ簡単に犯人
は指摘できるでしょう。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/04/30(土) 01:09:45.20:6l3FhLsZ
日影丈吉「応家の人々」を読む。
謎解きミステリとしての評価はともかく、日影作品長編では、まず本作を一に
挙げる者多し。
日本統治下の台湾を舞台にした時代と場所両面からエキゾチックな
ムード満点な作である。
意外や日活アクション映画かお冒頭から、舞台は一転、往年の台湾に
ここでは、またも意外やロスマク風な淡々としたハードボイルドタッチへ
(この辺が文学的と評された因やもしれぬ)。
最後は台湾の秘密結社とそのラスボス登場と、
またしてもB級アクション映画の世界へ(w
タイトルに冠された応家出身の妖艶なヒロインは、探偵役の主人公(公安担当の軍人)とは殆ど絡まず、わりとあっさりと退場(あぼーんされてまう)。
最初はガヤの一人かと思うた氷屋店員の美少女(13〜14歳設定)が要所
で登場、キーマンというか事件解決に至る「キー」さえ提供する。
他にも応家の幼女(2〜3歳、長男の娘)を気にかけるシーンがあったりと、
初読時にはわからなかったが、日影先生は今流行(?)、2ちゃんに多い
「あれ」傾向あったんではとか思うてしまう(w
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2016/05/06(金) 19:04:08.86:OR0Zb7CO
「秀吉 秘峰の陰謀―佐々成政の飛騨雪中行」長尾誠夫(祥伝社)

天正十二年、豊臣秀吉と敵対する越中国主佐々成政は徳川家康に援軍を求めようとしていた。成政自ら極寒の中峻険な飛騨山脈を越え浜松へと向かうのである。
一行にはかつて山中で命を狙われていたところを成政に助けられた男武松も加わっていた。
決死の覚悟で挑む男たちに雪山は容赦ない牙を剥く。更に謎の忍者たちの襲撃も重なり一行は一人また一人と数を減らしていくのだった。
彼らは果たして山を越えることが出来るのか……。

某スレからのセレクト。末森城の戦いから始まるのは戦国小説としても珍しく(花慶くらい?)、文章もキビキビしていて情感もあり最初は違うジャンルとして楽しめた。
しかしこれが如何にしてミステリーになるのかが判らず、犯人はどう設定されるのか注目していたところ、判らないままで「もぐら探し?」と思っていたら終盤まさかの!
この展開は読めなかった。論理のアクロバットに近い感じかも知れない。
ただ、ピンとこなかった。フェアじゃないのはさておくとしてもミステリーとしての演出が薄いからモードが切り替わってて時代小説読みになってしまう。もう少しぽさを出して欲しかったなあと。
やりすぎると自然に驚けないから難しいんだけどね。

あと、平気で史実と違うこと書くのはどうかと思う。名のある武将を数十年早く死なせたり。過程ならともかく結果を変えちゃいかんよ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/05/28(土) 21:48:30.80:k2j9BGpl
島田荘司「北の夕鶴2/3の殺人」を読む。
雪国を舞台に往年のシマソウらしいアクロバティックなトンデモトリックが
炸裂する作だが、この点だけで勝負しなかったのが惜しまれる作でもある。
相当に頁数を費やして描かれる吉敷刑事の別れた妻に対するウエット過ぎる
愛情譚が、とにかくうざ過ぎる。
釧路の原生林を開発して建てられた三ツ矢マンション(三つの風車型)で起きた
鎧武者の亡霊や夜泣き石伝説が絡んだ不可能犯罪という舞台設定も、
相当に魅力的なだけに残念である。
名無しのオプ [] 2016/05/30(月) 15:38:33.51:hwDU1FG7
ドラゴンフライ 河合莞爾 角川文庫

ストーリーの構成としては完成度が高いが、入れ替わった人物の設定に
一か所ミスがあったのが残念。ほんの一行、ワンフレーズなので見逃し
がちだけど、読者にとっては消化不良になるかも。
あとポケベルが出回り始めたのは1968年ではなく、1986年。
1968年の発明なら、画期的文明の利器になってしまう。

これは、作家のミスか誤植なのかは解らないけど、ちゃんとチェック
すべきところ。
名無しのオプ [] 2016/06/01(水) 10:18:40.44:gA21OWYO
「蛍の森」 新潮文庫 石井光太

純粋なミステリーというよりは、ミステリー仕立ての社会派小説かな。
元々ノンフィクションライターの筆者が地道に調べたベースがあるから
とても読み応えがあった。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/06/11(土) 21:25:03.22:lEuUSffz
伊東潤「巨鯨の海」を読む。
古式捕鯨ネタの冒険小説扱いでこの板で紹介しておくが、
それに止まるものではない。この点は、各人、心して読め!!!
「この時代小説がすごい!2014年版」の単行本部門第1位、
第1回高校生直木賞というのまで受賞した作。
うーん、JK(選考委員はこちらが多い)、DKがこれを推すかなと・・・
今では少数派であろう本好き高校生のセレクトには正直感心した。
鯨の血の匂いが漂って来るようなビビッドさ、
本好きには、甘口な現代小説やテレビドラマは、やはり物足りない
ものがあるのであろう。
収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「旅刃刺の仁吉」
連作集冒頭に収められた作としては古式捕鯨に関するターム多数で、
読み難い作なのだが、後の収録作を読むための予備知識として、
仕方あるまいか。旅刃刺のカッコ良さが目立つ、何か股旅ものの如き締め。
正直言うて、面白い作ではなかった。
・「恨み鯨」
龍涎香の盗人は誰か?、この板にふさわしいエピではあるが朝鮮人参の
くだりを見れば、ミステリ板住人であれば真相は見え見えかと。
エルのYの悲劇パターンとかは、穿った見方に過ぎようが。
・「物言わぬ海」
これって、伊東版「スタンド・バイ・ミー」?とか思わせる作。
(虚弱な少年が、後には一番の成功者となる展開とか)
スリリングな少年たちの漂流もののテーストもあって、かなり面白い。
意外というか、ラストはヘビー。
お約束な展開でなく、この連作が面白くなって来た感ありだった。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/06/11(土) 21:26:06.12:lEuUSffz
・「比丘尼殺し」
これはこの板にドンピシャなサイコ・ミステリ。
オチもその線だな。(やはり晋吉が・・・)
・「訣別の時」
主人公の少年(太蔵)が、捕鯨の根拠地である故郷(太地)を去る
旅立ちの物語(ある意味でありきたりと言い得る)かと思いきや、
後半で意外な方向に話は展開してゆく・・・これも「運命」というか。
収録作品中の一には、俺はこれを推すな。
・「弥惣平の鐘」
時代は既に維新後、衰退傾向な大地の捕鯨、
親子鯨を深追いしてしまった船団の悲劇。
これも凄まじいまでの漂流譚と相成る。
タイトルに即した淡々としたラストも良しだ。。

本作が直木賞候補になりながら、受賞にまでは至らなかったのは、
遠い昔に、津本陽「深重の海」という鯨捕りを描いた同傾向の受賞作が存する
こともあったのでは?
方言多用でリーダビリティ難な深重と比較して、その辺に配慮しながらも
現代作品らしく、適切に標準語の語りを見せる本作は、読み易さは上なんだが。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/06/12(日) 20:34:37.12:IvEvilB8
木下昌輝「宇喜多の捨て嫁」を読む。
数多の書き手を誕生させたオール讀物新人賞受賞作にして、
第2回高校生直木賞受賞作である。
「サラバ!」(受賞作)を排して本作を推したJK等は、
まじで凄い。
宇喜多直家という人物そのものが、さほど著名ではない戦国大名だし、
前年度受賞作の巨鯨同様に、
今回は乱世の梟雄宇喜多直家の業病による血膿の匂いがラストまで漂って来るかの如き作なのである。
本作とて、小説らしい創り過ぎはあるとしても、これ読んでまうと、
NHK大河なんかはバカらしくて見られない状態になってしまうのではないかな。
連作ゆえ、収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「宇喜多の捨て嫁」
実はダイレクトにタイトルに相応する内容なのは冒頭に収録された本作のみ、
宿敵後藤家に嫁入り(政略結婚)する直家の四女於葉の波瀾の半生が一気呵成
に描かれ、そこから後に続く物語となるという面白い構成。
・「夢想の抜刀術」
前収録作から、一転、主人公は八郎少年(誰あろう、この人物こそ後の・・)
一人称(「俺」)の語りとしたのが、凝っていて面白い。
基本、武家ものでありながら、タイトルからも伺われるとおり、往年のシバレンが書きそうな剣豪譚の趣がある一編に仕上がっている。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/06/12(日) 20:35:43.64:IvEvilB8
・「貝あわせ」
このタイトルからエロを想像すると外される(w
当時存した室内ゲームの事なんである。
本作は、直家の主君である浦上宗景をメーンにしたピカレスク、
直家はむしろ妻を自害に追い込まれた被害者的ポジションにある。
多角的視点の面白さ、ここに有りという感あり。
・「ぐひんの鼻」
ゴルゴ13かお(w な終盤の展開が創り過ぎなからも楽しめる一編。
・「松之丞の一太刀」
冒頭の残酷過ぎる犬追物のシーンに名作「カムイ伝」のそれを想起して
しまうのは俺だけではあるまい。
戦国の世とはいえ、とにかく、愛妻家な松之丞憐れな作だが、
「アッー!」な宇喜多家の美形刺客(剛介)がクローズアップされる。
(ただし、嫌な奴的にだが)
・「五逆の鼓」
最後に来て、戦国武将には最も縁遠いような、
この鼓名人なキャラがメーンとは・・・
ラストで「宇喜多の・・・」とリンクしてエンドと相成るわけだが、
このキャラ(の視点)を使ってこそ、客観的、かつ、印象的に物語の最後を
描けたという感もある。
書斎魔神 ◆Faci8xkPLw [] 2016/06/25(土) 09:25:46.97:SDVvuvaE
大河内常平「九十九本の妖刀」を読む。
珍本シリーズの1冊と割り切って読めば、案外と、
各収録作品のトンデモ展開を楽しめるのではなかろうか。
大好評につき、久々、収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「九十九本の妖刀」
この作者の代表作であり、映画化もされたらしい。
タイトルから時代小説かと思えば、何と先の大戦後のお話である
まあ、刀の仕上げに女を文字どおり「貫く」とか、猟奇の極みですな。
謎解きの要素は薄く、クライマックスは警官隊と猟奇刀鍛冶集団との激戦、
大アクションへと雪崩込んでゆく。岩手県人がこれ読んで怒らないことを祈る(w
・「安房国住広正」
これは、刀を弓代りにする密室トリックが炸裂する小品だが、
むしろ名刀にまつわる動機面の方に重点が置かれたもの。
普通に面白い。
・「餓鬼の館」
これは戦時中の話であり、主人公は海軍旅団長である。
エログロ展開でゆき、クライマックスは陣屋の地下に巣食う猟奇集団との軍隊
まで動員した大アクションシーンへ・・・
「アビラウンケン!」の呪文には、同じ珍本シリーズの「醗酵人間」以来、
ワロタ。
書斎魔神 ◆Faci8xkPLw [] 2016/06/25(土) 09:26:42.15:SDVvuvaE
・「妖刀記」
「餓鬼の館」の海軍旅団長(少佐)は絵に描いたような良識人で
あったが、本作に登場する野々艦長は刀剣キティそのもの
(とても、ののタンとか呼び難いものあり)、
「九十九本の・・」と相通じる猟奇ネタで一気に読ませはする。
・「刀匠」
角川文庫「宝石傑作選集2 地獄に落ちろ!」に収録とあり。
このシリーズ読んでいたのだが、なぜか本作に記憶無し。
意外な展開と真犯人ネタで読ませる作ではある。
・「刀匠忠俊の死」
これはNG作品。燭台についた指紋に無頓着とか(w
・「不吉な刀」
同じ指紋(今度は電灯スイッチ)ネタ使い回し、同様にNGです。
・「死斑の剣」
九十九本・・・と似たネタの作だが、昭和30年代の夜の都会の情景が
ビビッド活写されており、サスペンスフルだ。
そこは良(そこだけかもしれぬが)
・「妖刀流転」
タイトルからは陰惨な展開を想起するが、何と警察が妖刀の行方を追う
という異色展開。一応、意外な犯人設定もあって、きちんと合理的な解決が
なされる。わりと紙数がある短編であり、この作家はSSの如き短いものでは、
持ち味を発揮し難い人のようである。
・「なまずの肌」
これも意外な犯人設定でわりと短く纏められている。
書斎魔神 ◆Faci8xkPLw [] 2016/07/02(土) 15:12:03.29:Xu1+6gmF
笹沢左保「セブン殺人事件」を読む。
単行本刊行時に「セブンってウルトラセブン?、
笹沢左保がそんなの書くわけないか(w 」とくだらない感想を抱き、
そのままパラパラと見てスルーしてしまった。
今回、堂々の文庫再刊である。
いわゆるバディもの。ありがちな所轄と本庁の凸凹コンビが探偵役だが、
淀橋署の宮本部長刑事、本庁の佐々木警部補共に対照的な個性派キャラであり、
映像化されなかったのが不思議である。
(武蔵&小次郎を意識したお遊びなのは作中でも明示されている)
浮ついたお笑いに走りがちな近年のバディものと比較すると、
個々の出来栄えはともかくとして、
それなりに謎解きミステリの趣向があり、落ち着いた語り口は良ではある。
収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「日本刀殺人事件」
これは普通に読んでれば、普通に真相が見えて来る話ではある。
第1話ながら、宮本と佐々木の出会いエピとかではなく、
既に既知のコンビという設定。本作は宮本の完勝。
・「日曜日殺人事件」
喫茶店での錯覚を利用したトリック(とまで言えるかどうかも疑問)は、
意外にリアルなのかもしれぬが、やはりミステリとしては疑問。
今回は、過去の経緯もあって宮本が迷走、佐々木の完勝。
・「美容師殺人事件」
剛速球で殺せネタとでも言い得ようか。
これはかなり面白いシュチュエーションであった。
普通に宮本の完勝。
書斎魔神 ◆Faci8xkPLw [] 2016/07/02(土) 15:12:47.64:Xu1+6gmF
・「結婚式殺人事件」
人間消失ネタかと期待したのだが・・・
父子関係の人情話に堕してしまうのががっかり。
いたいけな幼女まで惨殺されてしまうのが、いかにも70年代
テーストではある。
・「山百合殺人事件」
まあ、当時まではこんなJKネタはショッカー足り得たんでしょうな。
今ならありがち、先を読んでいたとも言えるが。
・「用心棒殺人事件」
殺人トリック(ぶら下がりロープ)は、かなりアクロバティックで面白い。
ドラマ的には奇妙な悲劇とでも言うか。
・「放火魔殺人事件」
掉尾を飾る作だが、完全鬱エンド。
不細工ヒッキー気味男(仕事はしている)と病弱な女子のふとした接点が・・
というお話。
書斎魔神 ◆Faci8xkPLw [] 2016/07/09(土) 16:24:01.10:8pQ4PGNd
「飛鳥高探偵小説選T」を読む。
早速、大好評な収録作品全話講評逝ってみようか!!!
『創作篇』
・「犯罪の場」
うーん、東大出の工学博士にして、プロのエンジニアが書いただけあって、
この機械的トリック(振子ネタ)、正直言うて凝り過ぎでわかり難い。
・「孤独」
金庫の比重を利用したトリックはそれなりに面白いが、
まあ、それだけの作とも言い得る。
・「白馬の怪」
この作者には異色と言えるコテコテな怪奇探偵小説。
首の無い馬のトリックは笑うしかないものだし、
殺人トリック(というか工作)は、あまりに無理な展開である。
・「火の山」
人間消失トリック、これに探偵イコール犯人技。
火の山こと浅間山の高原を背景にしたのは良いのだが、
やや展開がたるいのが難。
・「雲と屍」
「火の山」の人間消失トリックを一捻り、密室殺人もあるがこれは
機械的で御都合主義に過ぎる感あり。
書斎魔神 ◆Faci8xkPLw [] 2016/07/09(土) 16:24:32.44:8pQ4PGNd
・「兄弟」
果たして真相は?という興を残す小品だが、トリックは名探偵コナンレベル
と言えばその出来はわかろう。
・「放射能魔」
SFミステリ(放射能ピストル(w )かと思いきや、そこはエンジニアの手になるものらしく、探知困難な偶然の放射能漏れという真相。
・「疑惑の夜」
作者の建築に関する蘊蓄を使った倒叙スタイルのサスペンスに始まり、
ハードボイルドまがいの行動力を有するヒロインの登場、
人間消失、密室殺人をまじえ、カーアクション、銃撃戦まであって
最後のドンデン返しへ。盛り沢山な内容ながら、トリックも他愛も無い
ものだし、いろいろ詰め込み過ぎて、どれも今ひとつ感大な作であった。
乱歩賞候補になるものの、「猫は・・・・・」に敗れたのは当然かと。
久々の再刊というも納得である。
『評論・随筆篇』
格別な感は無し。
この人、大乱歩のリアルお隣さんだったんだと思うたぐらいかな。
理科系高学歴で実務における専門分野の実績もある人ゆえ、
ミステリ作家専業にならなかったのは正解だったのではないかな。
本人もこの辺が良くわかっているような。
名無しのオプ [sage] 2016/07/10(日) 23:07:14.73:WnsCBnvd
テンプレ中の
ttp://http://www.monazilla.org/
は現在「2ちゃんねる浪人」の案内につながるように変わってしまっています。
次からはここは除外した方が良いかと思われます。
書斎魔神 ◆Faci8xkPLw [] 2016/07/16(土) 19:12:52.17:swhHJNzQ
「大河内常平探偵小説選T」を読む。
前記した「九十九本の妖刀」が意外に楽しめたゆえ、
この人の刀剣ネタ以外のミステリを読んでみたくなった。
収録作品全話講評逝ってみょうか!!!
『創作篇』
・「夜光る顔」
連作短編集。収録作品全話講評逝ってみようか!!!
(地底の墓標)
こ第1作を読む限りでは、起承転結を外したしょーもないシリーズ
なのではないかと懸念したが、次作以降は意外に謎解きミステリしてゆく。
(姿なき犯罪)
電気鞭ネタとは意外に面白い。作者が好きなのであろう競馬ネタもリアル。
(脱獄囚と宝石)
冒頭の御都合主義展開が惜しいが、宝石の隠し場所(人体)がある意味
トンデモで面白い。
(消えた死体)
タイトルから期待させるほどの不可能興味は無いものの、
死体の偽装から真の死体へというトリック、ちゅーか、展開には面白さがある。
(海底の金塊)
この作者十八番の刀剣ネタまで投入したコテコテの怪奇探偵小説。
金塊の隠し場所のトリックもスケール感あり。
書斎魔神 ◆Faci8xkPLw [] 2016/07/16(土) 19:14:11.21:swhHJNzQ
(よごれた天使)
前作とは一転、戦後の基地の町立川を舞台にした通俗社会派ミステリ風作品、
キャリアから思えば、作者が詳しいであろう進駐軍ネタ、
間抜けなゴルゴ13風味の遠隔射撃トリックもアホ過ぎて逆に楽しめるもの
あり。
・「25時の妖精」
何気に江戸川乱歩通俗長編風の作だが、人体改造のエログロさのみ目立ち、
ミステリとしての興は薄味。天才のはずなのに妖怪博士の最後が間抜け
過ぎる、水圧でドカーン!とか・・・専攻は異なっても科学者でしょうが(w
・「蛙夫人」
タイトルから何となく、ユーモラスな内容を期待すると大きく外される。
岡本綺堂こと狂綺堂が書く探偵譚のようなテーストの小品であった。
セルフタイマーねたのトリック(というか機械的なものではなく、
殺人に至る小道具に過ぎぬ扱いだが)あり、事件の舞台となる田園地帯の描写も
雰囲気たっぷりに描かれており、意外に面白く読める作であった。
どう見ても本格派ではないこの作者、刀剣もの以外ではこの方向性が
合っていたのではないかな?
・「ムー大陸の笛」
代表作と言われる作だが、
呪いの笛の正体は、仮死状態にある毒蛇でした・・・とは(w
無関係者なのに惨死した音楽家が気の毒過ぎ。
『評論・随筆篇』
格別な感無し。
作者がGHQで歩哨のバイトをしてるところに大乱歩がふらっと訪ねて
来るエピが面白かったぐらいか。
名無しのオプ [sage] 2017/03/18(土) 02:19:35.88:55lawLrM
「殺戮にいたる病」
グロいと謳われてて、どれ程かと躊躇いながら読んでたけど、大した事が無くて拍子抜けした。
名無しのオプ [sage] 2017/06/24(土) 01:40:22.59:Oa6DhvN4
「不連続殺人事件」坂口安吾
登場人物が多すぎて最初は読むのに時間がかかるが
登場人物は個性派ぞろいだし次々と死んでいくのでそういった事は気にならずに読み進む事ができる

話は割と淡々としていて盛り上がりに欠けるのだが、登場人物が変人ばかりであり
キャラの個性で読ませてくれる

ミステリーとしてはオーソドックスな作りで当時としては斬新であったのかもしれないが今読むと真相を看破しやすい
だが伏線の張り方は上手く探偵である巨勢博士の語る真相には唸らされるものがあった
名無しのオプ [sage] 2017/12/26(火) 21:25:10.01:moHAbFHG
☆ 私たち日本人の、日本国憲法を改正しましょう。現在、
衆議員と参議院の両院で、改憲議員が3分の2を超えております。
『憲法改正国民投票法』、でググってみてください。国会の発議は
すでに可能です。平和は勝ち取るものです。お願い致します。☆☆

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