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『読みました』報告・国内編Part.8


名無しのオプ [] 2014/07/10(木) 14:31:01.36:vg/Otbu3
国内編が落ちたままなので立ててみました。
過去のスレッドは後ほどリンク予定です。
よろしくお願いします。
名無しのオプ [] 2015/08/15(土) 17:48:21.34:iNcFRQ50
また書斎に教えをいただいた。
こんな僥倖は現実にはありえないんだからありがたく拝聴しておけや。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/08/16(日) 06:35:15.73:ZbZhZt39
柚木麻子「ナイルパーチの女子会」を読む。
おそらく女性読者向き(主人公たちと同世代に限らず、意外にその対象年齢層
は広いと思われ)の作品なのだろうが
男性の論者からも高評価を受けた山本周五郎賞受賞作。
東京生まれで大商社勤務キャリアウーマンと専業主婦ブロガーの一見
ハートウオーミングな出会い。しかしこれがある意味で恐怖の日々の
始まりだった。ミステリとは言い難いが人間関係、親子関係等を巡るリアルな
謎解き要素はあり、スリラーの色彩は十分で面白く読ませる。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/08/18(火) 18:41:29.67:g8dbCyvQ
「冷たい太陽」鯨統一郎(原書房)

幼稚園の園外活動が行われていた公園から高村美羽が誘拐された!
親元には身代金を求める電話がかかり、父謙二は警察には知らせずに済ませようとする。その後犯人が要求してきた内容は奇妙奇天烈なものだった……。

凄いらしいと評判を聞き読む。「あの手でもなくこの手でもない誘拐ミステリ!」「そこらじゅうに仕掛けあります」とのキャッチコピーも期待を膨らませてくれる。
メインは誘拐だが視点があちこちに飛んで群像劇のような展開を見せていく。読みながら違和感を感じた部分を箇条書きしていき自分なりに推理してみたのだが……これは解らなかった!
全く思いもよらぬところから弾丸が飛んできた感じ。まずは素直にやられたと呟いておこう。

しかぁし! ここからは文句を並べ立てなければならない。
まず「前代未聞の誘拐ミステリー」という部分について。メインの仕掛けは誘拐トリックとは言えないし、誘拐の真相は前代未聞ではない。よって看板に偽りアリ。
それともそれらを一つの作品にしたのが初ってことか? それは苦しいだろう。
次に「そこらじゅうに仕掛けあります」という文言にも疑義を呈する。真相に連なる伏線はそこらじゅうという程ではない。「それはピーだろうが!」と言いたくなる。
最後に途中で明らかになるある設定について。これだとあそこはどう解釈すればいいんだ? だっていないじゃん。

まとめると、やられはしたが誘拐ミステリーとして評価する気にはなれない。ということ。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/08/19(水) 20:43:40.02:19CYB/+X
「岡村雄輔探偵小説選」(論創社)

何やら評判が良いようなので、これは大庭宮原ラインかと読んでみた。が、惜しい惜しいの連続。
バラバラに分解して舞台設定(「ミデアンの井戸の七人の娘」のフリー・メイソン支部)やトリック(「紅鱒館の惨劇」の毒殺方法)、伏線(「紅鱒館の惨劇」の某証言)
などを個々に見れば光るものもあるが、それらを結合・構成する際の繋ぎ目たる推理が欠けている。余詰めが足りないのはまだしも手紙で〆なのは戦後はもうペケやね。
最後100ページ超を占める中編「加里の踊子」にしてもこねくり過ぎて不時着どころか空中分解していると感じた。いくらなんでもこれでは犯行計画が杜撰過ぎる。

そんな中ベストは「盲目が来りて笛を吹く」に。
これは娘が自宅の二階で殺され、重要な証人が盲目の流しという設定から、犯人の仕掛けるアリバイトリック&心理トリック&機械トリックの組み合わせを経て解明へ至る道筋がよく付けられていたと思う。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/08/22(土) 14:42:06.09:WIYkPHsH
嵯峨島昭「踊り子殺人事件」を読む。
最終的には落語にもある「ふたなり」ネタ(最初期のゴルゴ13とかにも
あったが)なミステリになるが、まあ、最初に殺害される金粉ダンサーの踊り子
は本筋に絡むことはなく、正に欲望の対象オンリー、憐れとしかいいようがない
ものあり。後半のおつむが弱い身代わり火ダルマにされる子も同様とはいえ、
人間関係皆無なまま、やられ、殺れてしまうってのはなあ・・・
主人公のしょぼい中年不動産営業マンの2人の美女絡みな極楽だか地獄だか
わからぬ日々、最後はハッピーエンディングはむしろ意外感さえあった。
難しい事は考えない前提な読物というのはわかるのだが、
それにしてはミステリとしてのテンポは悪く、やはりこの作者は純文学とは
言わぬまでも普通小説ジャンルの人なのであろう。
名無しのオプ [sage] 2015/08/22(土) 15:56:46.78:A5PsLOXG
あれだけ派手なネタバレ披露すればあぼ〜んされるわな
名無しのオプ [] 2015/08/22(土) 17:43:32.75:KhPIxJF3
意地になっている読後感、書けば書くほど明瞭な差が出てきて誰にでも勝敗がわかる始末だ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/08/23(日) 16:48:18.21:UILtZpIz
桜木紫乃「ホテルローヤル」を読む。
直木賞(2013年)受賞作だが、この板では読んだ者は少なかろう。
(ていうか俺だけかもなー(w )。
北海道の湿原に立つラブホテルを主舞台にしたオムニバス連作集である。
ただし尋常なそれではない。
第1話(「シャッターチャンス」、エロ写真撮影ネタだが、
えぐい内容にもかかわらず唯一の完全ハッピーエンド話と言えるのが面白い)からしてタイトルに冠されたホテルローヤルは廃業後、既に廃墟化している。
第3話(「えっち屋」)が創業者である父の後を継いだ娘を主人公とした
ホテル廃業の話、そして最終話(第7話)がホテルローヤル開業譚である。
この狙った時系列ばらばらな構成が興を誘うものあり。
何と第5話(せんせぇ)では、ホテルローヤルは登場さえしないのだ。
(本話の主人公である若い数学教師とその教え子がローヤルで心中したことが
第3話で言及されている)
何か「ミステリ」で使えそうな手と思わないだろうか?
ゆえに、あえて紹介してみた。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/08/23(日) 16:49:09.51:UILtZpIz
南條範夫「からみあい」を読む。
創業オーナー社長の相続をめぐる、今でいうところのリーガル・サスペンス
(法律ネタの面白さをメーンとしたもの)だが、
当時はあの大乱歩も評価したと「あとがき」にはあるものの、
前記した「真壁家の相続」のような今風の作を読んだ後だと、
さすがに古さは否めないものあり。
相続法の改正(法定相続分に関する規定等)、
医学の発展(遺伝子による親子関係診断が可能となった)等々もあって、
復刊されることはもうあるまい。
それにしても埋葬に関する手続きがいい加減過ぎな感があるが、
当時こんな事もあり得たのであろうか?
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/08/29(土) 14:46:43.41:6iN636D+
嵯峨島昭「深海恐竜(ニューネッシー)殺人事件」を読む。
本作もエロ小説で一世風靡した感がある芥川賞作家の手になる冒険ミステリで
ある。既に記憶する者も少なくなったであろうが、南太平洋(ニュージーランド沖)で日本の漁船が発見した謎の海洋生物の腐乱死体ネタ、時事ネタである。
(当時はプレシオザウルスかと騒がれ、ニューネッシーと呼称するマスコミまで
現れる始末、本作中でも触れられているが鑑定(持ち帰られた鰭の一部)の
結果、鮫の死骸ということで一件落着した)、
お気楽な取材記者を主人公とした第一部は、ニューネッシー発見をめぐる政界、財界絡みの陰謀を描き、一応はミステリしているのだが、
(余談ながら、「宗薫さんはうめえなあ」の一文には、本作の作者の正体を
知っていると、思わずクスリと来るものがある)
第二部は巌窟王かおな、脱獄、リベンジ譚へと大転換、
(作中に登場する葉巻のブランド名にモンテクリストとあるのは
作者の遊び心を感じさせて良し)
第三部では隠された財宝とニューネッシー探索の冒険ものへ、
最後には怪獣小説と化す感あり(w
まあ、全体として見れば、
ホテルからの墜落死には氷を使用した自動落下トリック(その間にアリバイ工作)、プラス入れ替わりトリック(これは雑でばれないはずない感ありだが)
あり、詩に隠された財宝のありかネタ(暗号ネタ)等々、
ミステリと冠するための要素は、一応あることはある。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/08/30(日) 22:27:31.10:GspqDq68
吉田修一「横道世之介」を読む。
俺好みの小説には非ず、70年代とも90年代以降とも異なる
80年代の東京の大学生時代ってこんな感じだったけというところ。
ただし主人公の世之介はその名に恥じず(?)女性に縁有り過ぎに
見えるが(w
このどこか飄々とした主人公が、既に実は故人だったとわかるラストに
ショックを受ける者もいるかもなー。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/08/30(日) 22:28:16.52:GspqDq68
望月三起也「W7 新世紀ワイルド7」を読む。
全頁オールカラーだし、価格も価格だしちょい心配しながら手にしたものの、
望月ワールドのトンデモ破壊力は健在でした。
アラブ産油国と日本の政略絡みの婦女子誘拐事件に飛葉をメーンとした
新ワイルド7が挑む。何とコーディネーターはあの草波隊長の息子だ!
しかし、どういう経緯か、ネバダの田舎町でシェリフをしてる飛葉ちゃん
(往年の童顔は何処、本作を読んだ古くからの望月ファン、
ワイルド7読者たちが既に指摘済みだが、いくら歳というても
面変わりし過ぎやろ(w )
今後右腕になるのはFBIの潜入捜査官のメリー安かと思いきや、
彼女が最後であぼーん、これは意外でした。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/05(土) 21:50:39.80:3aeOwZK3
結城昌治「死の報酬」を読む。
正攻法なハードボイルドも軽ハードボイルド的作も書ける作者の中間的
なテーストの作。格別な面白さはないものの、
船舶会社オーナーの娘(元芸能人)の失踪事件をめぐりプライベートアイの
東京探索は躍動感に富み、いかにもハードボイルドしている感あってスイスイ読める。
依頼者が麻薬ルートのラスボスという結末は早々と見え過ぎるけんどね。

森村誠一「日本アルプス殺人事件」を読む。
キャメラに関するアリバイトリックは凝り過ぎていてわかりまへん(w
山岳ミステリと言うてもよい初期森村作品。
ストーリー的には、ファザコンでお嬢さん育ちのヒロインを突き放すような
ラストが印象的、現代のミステリであれば独身の若手刑事設定を入れて
ロマンスを匂わすとか
救いがあるハッピーエンディング傾向に走ったんじゃなかろうか。
同時期の先行作品「超高層ホテル殺人事件」や「東京空港殺人事件」に
登場する刑事たちも登場するのだが、なぜか森村作品はシリーズものという
印象は薄い。まあ、それだけ単独作品として読めるってことでもあるが。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/06(日) 20:35:12.48:0WSgZ6uk
小林修三「間違いだらけの病院選び」を読む。
湘南地区の大病院の副院長が著した書。
医療こうあるべし、流行の病院ランキングの見方等のありがちな話題も多いが、
著者のスタンス上、
病院経営という観点からの記述が肯定的、かつ、なるべく説得力を持つように
書かれているのが面白い。

藤田孝典「下流老人」を読む。
ショッキングな書である。年収400万あっても下流老人への道の可能性大
とは。後半は朝日新聞社の発行書籍らしい左がかった理想論に見受けられる
ものが多いのが残念だが、著者の見聞をまじえたいわゆる下流老人(生保基準
相当、およびその恐れがある高齢者)の実態と分析はショッキング、
ねらーには他人事ではなかろう(w
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/12(土) 21:59:00.69:p5NMEq4y
東野圭吾「黒笑小説」を読む。
才人圭吾の筒井堂か清水義範かと思わすようなタイトルどおりな
ブラックユーモア作品集である。かなり楽しめます。
収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「もうひとつの助走」「線香花火」「過去の人」「選考会」
この4作は出版会を舞台にしたブラックユーモア全開なお話。
自意識強過ぎな新人作家、受賞落ちを繰り返すベテラン作家・・・
悲しくも哀しくおかしい。
・「巨乳妄想症候群」
軽く明るい艶笑譚ちゅーかエロ話。騒ぎ立てることもあるまい。
・「インポグラ」
時事ネタながら、プラシーボ効果まで絡んで来るオチは面白く、
同じエロねたとはいえ、完成度は前収録作よりも高い。
・「みえすぎ」
これはSF設定ながら微粒子まで見えるようになってしまった男ってのは
リアルで臨場感に富む面白さあり。
・「モテモテ・スプレー」
何かドラにありそうなエピだが(w
真性のモテナイ男である主人公が博士を殴り倒すラストは、
どこか悲しい、否、哀しくもある。
・「シンデレラ白夜行」
タイトルどおり、シンデレラのキャラを使用しての自作長編(ベストセラー)の
パスティーシュである。著名でシリアスな自作も「ネタ」にとか、
関西人はやはり凄い(w
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/12(土) 22:00:04.34:p5NMEq4y
・「ストーカー入門」
いかに著名作家のものとはいえ、ストーカー犯罪の深刻度が増している現在では問題視されそうなぶっ飛んだ作。面白いとか評すると非難轟轟やもしれぬ
かもなー。
・「臨界家族」
いわゆる玩具会社の巧みなマーケティングに軽いオチをつけたこれも
面白い作。
・「笑わない男」
高級ホテルに宿泊することになった売れない漫才師コンビ、
自己の存在証明を賭けて(というほど大げさではない感じだが)
ポーカーフェースなボーイを何とか笑かそうとするのだが・・
オチが非常にシニカルで残酷な感あり。この作者の持ち味のひとつが出ている。
・「奇跡の一夜」
最終的に怪談なんだが、ヒロインである不細工な妹が気の毒な感はあれど、
妹思いのイケメンな兄、亡妻への思慕を忘れぬ父、
そして現れた母、ハートウオーミングで後味は悪くない。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/13(日) 23:43:17.91:ylaLNn5Z
東野圭吾「怪笑小説」を読む。
この作品集も楽しめた。早速、収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「鬱積電車」
何とも身もふたもないリアルな通勤電車ネタ。
自白ガスのオチって、その後の様を想像するに凄過ぎるやろと(w
・「おっかけ婆さん」
時代がもう少し後に書かれていれば杉様ネタではなく韓流ネタだったかも。
最後はリアルホラー・・・笑えもするが怖い。
・「一徹おやじ」
諸に巨人の星ネタ(w、
オチが「アッー!」なうえに(作者が「巨人の星」を見ていての感やも
しれぬ)、語り手の娘のサド心理。
いろんな意味で面白く読み終えた作ですわ。
・「逆転同窓会」
教師嫌い(?)には痛快、かつ、先生たちにもそれなりの救いは感じられる作。
たしかに、往年の教師たちの教員になった教え子へのシンパシーはひとかた
ならぬものに見えた。
・「超たぬき理論」
つまりモモンガ―やろと(w
しかし、UFOまでたぬき(分福茶釜)説との怪論は面白過ぎる。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/13(日) 23:44:06.91:ylaLNn5Z
・「無人島大相撲中継」
これもラストの飛びっぷりが秀逸な一編。
・「しかばね台分譲住宅」
値下がり気味の分譲住宅地同士のひとつの死体をめぐり血で血を洗う
戦いへ、久々に同じ関西作家筒井堂のテーストを想起させる怪作し
仕上がっている。
・「あるジーサンに線香を」
アルジャーノンネタですわ(w
オチ少しが弱い感があるが、笑えて哀しい。
・「動物家族」
作者お気に入りの短編とのことだが、ラストがいまいちわからん。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/20(日) 06:52:47.21:IRotHTAK
伊藤元重「日本経済を『見通す』力」を読む。
昨年秋、慶応MCCでおこなわれたセミナーを元に書き下ろされた1冊。
アベノミックスのブレーンの一人だけに現経済政策には支持・同調のスタンス
である。
EUにおけるギリシャの財政破綻危機、中国の株価乱高下等、
国内のみならず経済に関するビッグニュースが続く今日、
本書で語られる(ちゅーか、議論対象となる)トピックぐらいは
押さえておく必要があろう。
いつまでも浮世離れしたミスオタ人生でもあるまいし(w
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/20(日) 06:53:24.60:IRotHTAK
朝比奈あすか「天使はここに」を読む。
何気なく手に取った若手閨秀作家の作であるが、
お気楽風な表紙から想像できない意外にビビッドでシリアス、リアルな
面白さに富むお仕事小説(企業としてのファミレスを書いた作はあったが、
こんな上からならぬ下から目線による作は初では)であった。
タイトルの意味深さは読後に実感。
さすがにヒロイン(ファミレスの契約社員)が一人の客(元新聞記者なおシャケさま、認知症が始まっている)のプライベートに入り過ぎという感は否めない。妙な表現ながら「小説」過ぎた、創り過ぎが残念。
とは言うても、過去及び現在に渡る多くの人間関係をありのままとし、
無理やりなハッピーエンディング(ヒロイン=真由子は帰省した元恋人と
結ばれるのかなと、ありきたりな予想をしていた)も迎えず、
ヒロインのお仕事な日常は続く・・・この締めは爽やかな読後感を伴う。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/21(月) 11:04:52.01:0sP4TsiR
新保博久「ミステリ編集道」を読む。
まずまず面白いものの、爺ちゃん元編集者たちの記憶の不確かさに
(半世紀近く前のエピもあって無理もないとは言えるが)、
一抹の不安(つまりインタビュアーも突っ込めない点に関しての語りの
信憑性ちゅーか真実性)を感じざるを得ないものはあった。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/21(月) 11:05:31.69:0sP4TsiR
神山典士「ゴーストライター論」を読む。
著者はゴーストライター歴豊富とはいえ、著作もあり、例の佐村河内事件の
スクープで話題になった人である。
まあ、この書でも触れられているが昔から読者もゴーストの存在は認知して
いて当然かと。
(ベストセラーになった百恵ちゃんの自伝では公然と語られていたことだし、
もっとはるか昔、志ん生師匠の自伝「びんぼう自慢」では冒頭の章から、
本書は聞き書きと明記されている)
ゆえに、その存在は前提とした現代のゴーストライター事情、その実態が
どんなものかという点に興を惹かれるわけだが、
著者の自賛ねた(ゴーストの成功例)が少し目につき過ぎるものはあり。
匿名連発とはいえ、具体的なエピの開示はそれなりに面白くはあるん
だけんどね。
書式まで呈示した業界への文書による契約関係の明確化、
チームライティング(そう言えば、現代では医療もチームが要となっているし)
という発想の転換等、この辺は非常に興味深くはあった。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/22(火) 07:50:58.50:nxPLEeSM
高木敏子・作 武部本一郎・画「ガラスのうさぎ」を読む。
終戦記念日近くに、手にした1冊。
ジュブナイルだしと手を出しかねていた作だが、
淡々とし、省略が効いた描写が逆に先の戦争の過酷、悲惨さを伝える
ものありやに思う。
もし成人向き作品と書かれていたなら凄惨な
シーンはリアルに、ヒロイン=作者敏子の心情(両親や妹を失った悲しみ、
親戚に対する恨みや反感等)はより克明に描かれていたことであろうが、
児童文学ゆえの省略(規制というか抑制)が、逆に名作足らしめる結果
となったやにも思う。
だけど、実はタイトルに冠された「ガラスのうさぎ」(ガラス職人であった
ヒロインの父の製作、戦火で変形している)は、殆ど出て来ない。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/23(水) 15:13:02.79:rCzLlGDp
結城昌治「志ん生一代」を読む。
ユーモア・ミステリも書く(というか名手)な結城氏ゆえ、
落語家の伝記小説を書いても不思議感はないのだが、
芸風から稀代の名人とはいえフラが魅力な志ん生師匠というのは、
正直言うて?であった。
多彩で器用な作風ながら基本生真面目な感がある作者ゆえ、
円ん生や文楽ならわかるんだが。
しかし、巧みな語りと志ん生師匠という主人公キャラ完全立ちの魅力
もあって、一気読みした。
師匠の自伝「びんぼう自慢」(聞き語り)とかも読んでいるが、
本作は書き込んで客観性が感じられる分、落語のような軽快さはダウン。
特に関東大震災当日のへべれけ状態、満州慰問決意のくだりなどは、
自伝ではおとぼけも入れて志ん生師匠らしく面白く語られているものの、
実態は本作ぐらいシリアスな状態だったのではないかなと。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/26(土) 22:09:57.72:/l0+lSS5
朝比奈あすか「不自由な絆」を読む。
「天使はここに」、それなりに面白かったので、
もう少しこの作者のものを読んでみようかと。
中高の同級生(特別に親しいわけではなかった)2人の主婦(リラと洋美)・
母親になってからの偶然の出会い。当初は僥倖とも思えたのだが・・・
2008年初夏から2016年春(現時点でも近未来である)にかけての
物語。
子ども同士の交友を含めリアルなママ友関係から生じるすれ違いと桎梏、
様々な小さなエピをまじえてグイグイを読ませる序盤から中盤にかけての
面白さを思うと、最後に来て同級生和解のハッピーエンディング傾向が
ちと残念、子供絡みの件だけならともかく、連れ合い同士の訴訟、傷害事件に
まで至ると、リアルでは関係は完全にエンドですわ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/09/27(日) 19:00:54.39:Mm7Rog9u
朝比奈あすか「彼女のしあわせ」を読む。
独身主義のキャリアウーマンな長女、結婚して子持ち不本意な地方住まいで
ブロガーな次女、石女の運命にある三女、そして夫に従う人生に疲れて自由
になりたい母親、まあ、四者四様にシリアスな状況にあるのだが、
最後はそれなりにみんな治まるところに治まる感があるハッピーエンディング。
5年程前の作だが、この当時の作者は、やはり後味の良さを重視していたんで
あろうか(版元の意向を入れたのかもしれぬが)
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/10/03(土) 18:56:40.86:Cf4mHNUJ
結城昌治「夜の追跡者」を読む。
若き一徹な弁護士(とは言っても自由な女性関係はあり)を主人公にした
ハードボイルド・ミステリ。
夜の蝶ことホステスたち、彼女たちから依頼を受ける未収金の取立屋、
用心棒・・・夜の世界がテンポ良い語られてゆくが、一応の意外な犯人も
あって短く、軽く読める話である。
まあ、本作の主人公が後の紺野弁護士を主人公にした連作の原型を成すもの
なんであろう。

結城昌治「終着駅」を読む。
非ミステリながら、「軍旗はためく下に」で直木賞を受賞した作者らしい
晩年期における吉川英治文学賞受賞作。
戦後の男たちの死に様を描いたコンパクトながら悲しくも哀しい連作集
である。前記した「軍旗・・・」の登場人物たちが仮に復員していたとしても
辿ったやもしれぬ人生の数々。
時期的にはもう少し前(終戦記念日がある8月中)に読みたかった感もあるが、
秋風が身に染みる季節にじっくり鑑賞するのも有りな作やもしれぬ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/10/04(日) 19:34:09.63:fA57keE4
東野圭吾「名探偵の呪縛」を読む。
96年文庫書下ろし、天下一大五郎シリーズ第二弾、
ちゅーか、作者自身が「本格ミステリ」という概念が存在しない
パラレルワールド天下一化するという意表を突いた番外編である。
圭吾の本格ミステリとの思いは残しながらの訣別の書とも読めるが、
10年後に本格ミステリか否か、作者自身もコメントする展開に至った
容疑者Xで見事に直木賞受賞となったのは、皮肉としか言い様がない。
ワトスン役にはいたいけな少女(しかもワトスン=犯人の要素もあり)とか、
ねらーとかではマジョリティなロリコン読者に対する配慮もばっちし(w
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/10/10(土) 14:44:07.40:iwdJIT5W
「すべてがFになる」森博嗣(講談社)

密室トリックのアイディアは秀逸だしとてもびっくりするバカミスと言ってもいいような大胆なもの。だが、他の要素などと相まって総花的な印象で物語として後を引かない。これが一つのブームになるほど継続的読者を掴んだのが解せない。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/10/10(土) 20:54:40.92:7MijcprE
東野圭吾「歪笑小説」を読む。
どう読んでも非ミステリなのだが、現代本邦ミステリ界のトップランナー
の手になるものであり、収録作品中にはミステリ作家・小説ネタはあるので、
紹介しても完全板違いとまでは言えなかろうか。
強いデフォルメがなされているとはいえ、出版界のリアルな実状を
おもしろおかしく抉っているのは確かか。
今なら電子書籍ねた、アマゾンねたとかも、当然あったかもなー。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/10/11(日) 20:37:44.07:5W9cnhrT
西村寿行「君よ憤怒の河を渉れ」を読む。
後に長者番付トップにまでなった寿行初のベストセラー(当時は新書版)。
後の濃いエロシーン連発モードは無いどころか、エロはほぼ皆無。
(映画版にあるケン高倉と良子の濡れ場シーンも原作には無い)
御都合主義とはいえハードアクションの連続で読ませようとする
和製冒険小説である。
寿行作品は、
同時代の大藪春彦作品とは異なり、主人公(検察官)が超人的であったり、
戦いのスペシャリストではないため、臨場感、緊迫感を増すこともあるのだが、
逆にまだるっこしい面も感じられ、本作でも主人公は鮫の海からの脱出に成功
するものの、一網打尽とはいかず、カタルシス全開とはいかず。
密室殺人(外部から出入り不可能な状況下における庭での薬物殺人)という
寿行作品らしからぬ謎解きの興趣が施されているとはいえ、
映画版では完全カットされたのは無理もないと思える蜘蛛の巣ネタ、
煙草の煙が蜘蛛の巣にように見えることがある→蜘蛛の巣に噴布して
容器代わりに→朝霧が精力回復に有効とか言うておけば思い切り吸い込むはず、
とか、読めばわかるが、この辺の謎解きは笑うしかないレベルかと。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/10/17(土) 14:20:40.43:NGGNmgJh
藤原てい「流れる星は生きている」を読む。
ミステリ板では戦争冒険もの(ノンフィクション)として紹介するしかなかろうが、作り物めいた冒険小説群がアホ臭く見えて来る迫力に富む書である。
前記した「ガラスのうさぎ」同様に8月中に読みたかった往年の大ベストセラー。
気象台勤務の夫(新田次郎氏)と離れた母子3人の必死の半島引き揚げ行、
引き揚げ団内部の確執もビビッドに描かれている。
本書では言及されていないが、同じ観象団の人たちはその後どうしたの
だろうか?
新田次郎氏にも書いて欲しかったテーマではあるが、書き記すどころか、
思い出すだけでも酷な体験だったのであろう。

今柊二「定食と古本」「定食と古本ゴールド」
一読、おもろかったですわ(w
外出すると近所、遠出を問わず定食(立ち食い蕎麦とかも含む)で済ます
ことが多い身としては、リアリティに富むものもあり。
購入する古本を見ると幅広い読書をする著者のようだが、
ミスオタではなさそうなのはちょい残念かな。
紹介されているショップで現在では閉店してしまったものも多いようだが、
正編の著者の古本歴語り、続編であるゴールドの学生時代の古本譚は
不変の面白さというたところか(w
時代の空気が漂って来るかのようなグッドな雰囲気や。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/10/18(日) 17:59:54.47:mTXYVRvO
汐見薫「リストラ日和」を読む。
ローカルな文学賞ながらミステリ作品での受賞歴もある著者
(金融機関勤務歴あり)だけあって、意外な展開が盛り込まれたリストラネタの
ビビッドで面白い企業経済小説である。
メガバンクから不本意な転出を経て退職した主人公、社労士試験に失敗し続け、
プライドばかり高い妻との確執、
子どもたちは就職、進学へ自己の道へまい進中・・
孤独な精神的彷徨は続く、やがて在社当時の刑事事件にまで巻き込まれてまう。
まあ、昔日の経済小説であれば完全ハッピーエンドは考えられない状況なの
だが、精神的距離感大だった妻との和解まで示唆したラスト。
バス旅行で偶然に知り合った老人が元やり手検事だった弁護士であり、
主人公にとり救世主と化し、主人公をリストラに追い込んだ連中へ引導を
渡すきっかけとなるってのは、読んでいてカタルシスはあるものの、
2時間ドラマ的過ぎるわな(w
名無しのオプ [sage] 2015/10/20(火) 20:18:41.62:sOYARX0U
小路幸也「HEARTBEAT」を読む。
大きな本屋の創元推理文庫の棚を見たら二十冊に一冊くらい挟まっている「ミステリとしてどうなの?」と言う作品の一つ。
作者は最後の一撃としてあの設定を作ったのだろうが、ミステリを読もうと思って買う読者がほとんどであるあの文庫に、
よくもあんな設定をぶち込んで来たものだ、と逆に驚いてしまう。
途中の物語も冗長な部分があり、その割に伏線の密度は薄いのでただ冗長なだけのシーンとなってしまっている。作者はミステリを読慣れていない人間だと感じた。
「東京バンドワゴン」で売れた作者ではあるが、プロットなどもお粗末で、ミステリを読みたい人ならば本屋で手に取る時間に、
その棚の別の作品を手に取った方がよほど時間の有効活用と言う物であろう。
端的に言ってつまらない上に、ミステリとしての出来が最悪。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/10/24(土) 18:40:50.90:xz+XSwfI
加藤廣「信長の棺」を読む。
今更ながら読みました。当時は人気の小泉純一郎首相(彼は信長ファン)
の愛読書としても話題になった歴史ミステリである。
うーん、時代小説家の手になるものでないせいもあって、
売れたわりには読み難いものあり。
比べるのは酷かもしれぬが、このテーマなら、
歴史薀蓄も含めてシバリョウならもっとスムースに面白く
読ませたではないかと思うてしまう
主人公太田牛一(信長の家臣で実在の人物、
武家ではあるが今でいうヒストリアン)は古稀の爺なのに
若い娘にモテモテで腹ませってのも、
何だかなあ(w ではある。
作者が東大出の金融マン(中小企業金融公庫、山一証券)のお偉いさん、
単行本出版は日経となると、メーンと想定される読者層にはウケたんかな。
タイトルからは「実は信長は本能寺を逃れ生きていた!」的トンデモストーリーを期待したのだが、真相は秀吉の策謀により脱出口であった井戸で窒息死
していたというわりとリアルなもので、
主人公に信長が託した棺はいわゆるお宝(金)であったというものでした。
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2015/10/31(土) 03:27:15.65:VJUlxY16
「危機の数は13 X21/恐怖のエプシロン作戦」五島勉(芸文社)

PVオールマイティ・フルジェット・エレクトリクス・モデル0。世界にわずか21丁しかないこの銃は国連平和監視委員会機密捜査官にのみ携帯が許された万能の秘密兵器。
唯一の日本人捜査官である江藤昭彦は新たな任務を拝命する直前謎の組織に襲われる。それを撃退し本部に連絡するも既に委員長は敵の毒牙にかかった後だった。
昭彦は今際の際の言葉に従い、エプシロン・Bなるものを追って東京へ向かう。

「SF奇書天外」からのセレクト。
「ノストラダムスの大予言」等のトンデモ作家が書いたアクション小説だと。期待せずに読んだが、ま60年代各メディアで濫発されたであろうナンセンスエロアクション小説である。

構成は黄金時代以前の連作短編集的長編で主人公たちは各章で危機に見舞われていく。
その度に超兵器PVの星の数ほどある機能を駆使して切り抜けていく次第。プロローグ丸ごと仕組みの説明を書き連ね、その後も節々で怪しげな理系論理が開陳される。
無論マジ突っ込みなど論外(文系なんで出来ないけど)。笑読人限定。

ただしエロに関しちゃ突っ込んでもいいだろう。もうちょっと欲しかったなと。胡桃沢作品とかと同じで無精風呂焚きなのだ。
「影の軍団」は読まいでもええか。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/10/31(土) 19:16:42.96:qc5flb1h
東野圭吾「11文字の殺人」を読む。
87年と相当に前の作品、
圭吾がまだ本格ミステリ(ちゅーか、謎解きミステリ)に拘っていた頃の作
である。
主人公の閨秀ミステリ作家はワープロ使用、
一般に携帯は普及しておらず公衆電話が現役バリバリ、
VTRもまだまだ全盛という時代。
当時は当たり前のことが何かもう懐かしくさえある。
謎解きそのものは、読んでるうちに犯人は女で意外性を狙うならあ奴やろと
当たりをつけてそのキャラに着目してると、やっぱりなという展開。
ただし、勧善懲悪、コンプライアンスの方向で締めないのは、
後のダークミステリとでも称すべき作品を多く書く圭吾らしさが既に出ている
という感はあり。
名無しのオプ [] 2015/11/01(日) 06:17:16.42:7GqSFb3m
読後感が完全に負けたね。
白旗掲げて去れや。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/01(日) 13:09:45.61:zoyN4dkR
東野圭吾「超・殺人事件―推理作家の苦悩」を読む。
圭吾の短編も好きなのだが、狙った異色作過ぎる感があって長く積読状態
だった作品集。だが、読んでみればさすがに面白かった。
収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「超税金対策殺人事件」
節税(必要経費算入)のためストーリーまで変えてまう作家とか・・・
圭吾の税に対する実感も覗えるような面白作。
・「超理系殺人事件」
SFというてよい作。似非理系人間というメーンに来るネタがおもしろ。
・「超犯人当て小説殺人事件(問題篇・解決篇)」
問題篇こそフィクション内のフィクショナルな世界、
解決篇でフィクション内のリアルな世界という構成が凝ってる。
どこか筒井堂のロートレック荘(ストーリー、トリック等は全く異なるが)
を想起させる遊び心がある作。
・「超高齢化社会殺人事件」
ストーリー破綻の高齢作家藪島清彦って大藪春彦のパロディ?
「餓狼の弾痕」ちゅー、有名なトンデモ作品が思い浮かぶ(w
・「超予告小説殺人事件」
意外ならぬやはりというオチだが、小説に沿った予告殺人というネタは
面白く読ませる。
・「超長編小説殺人事件」
弁当箱かおとの評もあった一時期のミステリ小説の大作化傾向をシニカルに
描いた作。作品水増し過程が面白いが、圭吾がマジならもっと上手く書くやろと
思われ。
・「魔風館殺人事件(超最終回・ラスト5枚)」
作者急逝で落とすSSで十二分にワロタ。
・「超読書機械殺人事件」
俺のような書評を著す者にとっては、本作のショヒョックスねたはマジ藁。
読後、本が売れない時代の「読書」という行為そのものに関して考えさせる。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/03(火) 17:44:33.61:Qpk9FzqL
東野圭吾「怪しい人びと」を読む。
さすが圭吾、これも多彩な作風で楽しめる作品集であった。
・「寝ていた女」
作中でも言及されているとおり映画「アパートの鍵貸します」ねた。
まさかのトルエンおちだが、締めには男の哀感漂うものあり。
・「もう一度コールしてくれ」
スポーツ好きでもあるらしい圭吾の高校野球ねた。
審判のアウトのコールにより人生が狂うはじまりとなった元高校球児、
実はアウトだった展開で普通な面白さというたところか。
・「死んだら働けない」
リーマンねた。シニカルなタイトルが効いた一編。
・「甘いはずなのに」
偶然にも高裁で再審開始決定となった事件を想起させるねた。
しかし、誤解は解けてハッピーエンディングと他愛のないものである。
・「灯台にて」
アッーな灯台守りねたで圭吾の持ち味のひとつであるダークなサスペンス作品で読み応えあり。最後の私と祐介の「いい関係」って表現も気にかかるものあり。
・「結婚報告」
新婚の友人が巻き込まれた殺人事件の顛末。
ダークになってもよい展開ながら、あえて明るくハッピーエンディングで
締めている。その分、印象が軽くなっている感あり。
・「コスタリカの雨は冷たい」
締めの一編なのに、これはつまらんですわ。
コスタリカでは警察官もグルでしたねた。
実話なら少しは興味深い程度の出来、フィクションではなあ・・
手がかりも偶然過ぎる。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/07(土) 18:38:47.17:0NiLx3Ew
中町信「暗闇の殺意」を読む。
晩年に突如ブレークした感があった作家の短編集。
全体的には可も無く不可も無くという出来、この作者の長編が好きな者なら
読んでみてもよかろうという程度か。
大好評な収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「Sの悲劇」
ダイイングメッセージねた。このねたゆえ仕方ないかもしれぬが、
ガイシャが瀕死の状態という点を思えば、著しくリアリティを欠く感は
否めないものあり。8と書こうとしてS状態でエンドしてもうたという
アイデアを活かしたかった(だけ)な作かと思う。
・「年賀状を破る女」
ミステリではありきたりな情事と交通事故ねたという真相に
ダイイングメッセージを絡ませた作。小土→ハニへというのはやはり
無理有り過ぎ。
・「濁った殺意」
これは写真利用のダイイングメッセージねた。
あまりに凝り過ぎで白ける感あり。
・「裸の密室」
密室トリックはそれなりに成立させているとは思うが、
叙述トリックの方は?
・「手を振る女」
電車乗り換えのアリバイトリックは上手く行き過ぎ感大だし、
ガイシャは窓を拭いてただけという謎解きはガクーリ感さえある。
・「暗闇の殺意」
表題作のわりには出来はイマイチかと。
叙述トリックは一応成立してますな。
・「動く密室」
なるへそ、広い地下駐車場という設定を上手くは使用している。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/08(日) 22:35:47.38:jsfq8kqi
中町信「空白の殺意」を読む。
高校野球ネタ。
昭和55年の書下ろし作品ゆえ、まだ群馬県が現代の東北地方状態ちゅーか、
春夏含めて優勝皆無県のひとつであった頃のお話(その後、桐生第一、前橋育英が夏制覇)。著者曰く「中町版の『皇帝のかぎ煙草入れ』」、自信作とのことだが、
読後感は「うーん・・・」だな。
プロローグを読んでいて「死んでるのって猫でね?」と思うと、
(実際そう読めるような書き方だし)
既にネタが見える感あり。
皇帝ネタ書くのは今いち失敗してるかもなー。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/14(土) 22:39:37.00:T2ZJ4AdN
綾辻行人「鳴風荘殺人事件」を読む。
新本格の旗手であったアーヤの手になる90年代終盤の作だが、
それなりに論理的であっても80年代から90年代前半の館シリーズの如き
独自の輝きは既に失せたという感あり。
往年の面白いジュブナイルを紐解くかのようなドキドキ感は皆無。
鳴風荘という建物の魅力も今ひとつ活かされておらず、タイトルから嵐の山荘ものサスペンスを期待するとあっさりと裏切られ、
文字どおり「アッー!」な真相ばかりが印象に残るものあり。
果たして、あえて読者への挑戦を挿入するほどの作と言い得るだろうか?
貫井徳郎による解説、アーヤは本格の中心でなく周辺に位置する作家では
ないかとする見解(ゆえに低評価しているわけではない)は、
デビュー時からの読者には成程感あり。
決して論理詰めなガチ本格でなく、謎解きの興趣も十分なエンタメと
評した方がその実態には合うかもしれないのだ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/15(日) 22:24:53.76:snV4a7xF
歌野晶午「白い家の殺人」を読む。
初期の本格ミステリ。
この作者の持ち味と言えるダークさとトリッキーさは既に顕在。
ヒロインかと思われなJKを序盤で殺害、逆さづりとか、
最近の明るく楽しいだけのミステリには無いえぐさも許容された時代
であった。第一の殺人の振り子原理による意図しない密室の完成、
第三の殺人のロープウェイ方式のトリック等々、謎解きの興趣、
面白さは一応満載ではある。
ただし、偶発的な地震絡みな第二の殺人(意図せざるもの)は今ひとつ
という感ありだが。
「葉桜の季節に・・」でミステリ界では話題になったとはいえ、
わりと地味な存在である作者、上手く流れに乗れば圭吾的存在に
成り得たのではなかろうか。
多彩なものが書ける十分な力量の持ち主かと思うのだが。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/21(土) 13:58:22.57:sjlUUaRP
我孫子武丸「8の殺人」を読む。
新本格ミステリブームに渦中に刊行された作。
明るく楽しい漫画の如きライト・ミステリ、これが特色であり狙い
であろう。
トリックは本文中で詳しく言及される密室講義の章を含む古典「三つの棺」の
「それ」(グリモー教授の死)、ミラーねたを即座に想起させるものであった。
現代的に凝って書いてみましたというところ。
反動によりドアに磔刑という第二の殺人もかなり独創性はあって面白いのだが、
コンパクトに纏まっているとはいえ、全体的に奇をてらい過ぎ、笑いを強調し
過ぎているきらいは否めないものがあり、やはり若書きと評さざるを得ない
ものあり。この点で、
巻末に付されたシマソウの「本格ミステリ宣言」の趣旨もわからぬでもない。
余談ながら、今もこのエッセイは単独で読んでも興味深いものがあるのだが、
米に勝てそうなエンタメは本格ミステリとの言は、
近年における圭吾の容疑者Xのエドガー賞ノミネートにより先見の明有りかと思う。ただし、新本格ブームはるか前に乱歩賞(本格ミステリにしてダークな
青春学園ミステリ)を受賞、本格を書かせても腕利きな圭吾の一人勝ち状態
を予想できていなかったわけだが。
名無しのオプ [sage] 2015/11/21(土) 22:54:45.87:VMtNQ5Wz
とバカ書きの書斎でつまつがw
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/23(月) 01:06:48.02:Spn+/w5q
中川右介「角川映画 日本を変えた10年 1976−1986」を読む。
タイトルどおり、角川映画(本書中でもあらためて明記されているとおり、
この社名の映画会社は存在しないが)こと角川春樹事務所(これも現在のそれとは異なる)主導の映画製作、当初10年の様を著者の思いもある程度込め
ながら回顧した映画本である。
全体的に角川映画に対する評価が甘めという感があるのが気にかかるが、
(特に「人間の証明」はどう見てもご都合主義満載な凡作だし、
「汚れた英雄」は大作のダイジェストにも成り得なかった失敗作としか言いようがない。前者は名のみ高く森村作品中でも最良のものから程遠いし、後者は
大藪作品のライフワーク的作でありながら、その魅力を映像に活かしきれなかった)
角川には横溝作品を筆頭に当初からミステリ作品が多数製作されたので、
ミステリも映画も好きな向き、特に70年代後半から80年代前半に
青少年時代を送った向きには面白く読める著作かとは思う。
あとがきによれば、著者自身も小3でホームズと出会い(山中か?)、
リアル厨房時代に創元推理文庫はあらかた読んでしまい、森村作品を皮切りに
国産ミステリを夢中になって読んでいったという好き者(?)。
だけんど、
薬師丸ひろ子が現代のAKBもぶっ飛びな社会現象というてよい熱狂的な
人気だったり、正に隔世の感ありだ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/24(火) 01:22:45.73:yK9MX30l
山本博文「日曜日の歴史学」を読む。
本書もその例外ではないが、この先生の本は意外に読み難いものが
あるんだわな。
歴史に興があれば、内容的には惹かれるトピックが多いのだが。
広く流布する稗史的エピを資料から丁寧に読み解いてゆく過程は
正にミステリの謎解きを読むが如し。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/28(土) 18:56:18.45:U1nr5ngg
藤沢周平「麦屋町昼下がり」を読む。
表題作の他「三ノ丸広場下城どき」「山姥橋夜五ツ」「榎屋敷宵の春月」
の3作収録。
いずれもまったりとしたタイトルながら、
ストーリーは謎解き含みのミステリ仕立て、クライマックスには剣戟も
有りの作である。
初期のダークなタッチの藤沢作品とは異なり、悲劇や凄惨な事件はあっても
全てハッピーエンディングなので、お約束好きな単細胞思考の輩には安心して
読めよう。逆に俺のような曲者な読者には物足らない感ありなのだが。
「時代小説の芳醇・多彩な味わいはこれに尽きる」とのカバー裏表紙にある
キャッチコピーは「いくら何でも持ち上げ過ぎ」でしょ(w
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/29(日) 11:51:19.38:rofdpii5
藤沢周平「雪明かり」を読む。
この初期作品集は、まあ良かったです。
まだダークさと哀切さが色濃かった頃の藤沢作品を堪能できる作多し。
ただし、ミステリ色は無いものばかりなので、この板のオタ連中には
不満は残るところやもしれぬ。
早速だが、収録作品全話講評、逝ってみようか!!!
・「恐喝」
これは相次ぐ偶然性でがっかりな作。
恐喝した店の娘に偶然に助けられ、更に偶然にもその娘の危機を救うことに
なるってのは、あまりにお約束な創り過ぎ。巻頭におくべき出来の作では
なかった。
・「入墨」
今では病み、身を持ち崩した極道者の父親が飯屋を営む姉妹の危機を救う。
見える展開なのだが、父親サイドの心理描写が皆無なため、かえって哀感あり。
「何も言わないで行っちゃたよ」、この姉の台詞が心に残るものあり。
・「潮田伝五郎置文」
憧れの女性へのピュアな心情を忘れない武士の末路(とでも評するしかない)
結局、登場人物の全てが不幸な結果と相成る。
初期藤沢作品にはこの手の皮肉が効いた佳作も多かったのだ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/11/29(日) 11:51:48.83:rofdpii5
・「穴熊」
これは完全にマノン・レスコーねたですわ(w
主人公の博徒、そして相方となる浪人、彼らの婦女子への愛は悲劇と別れに
終わる。
・「冤罪」
同僚の死の隠蔽というヘビーな謎解き要素はあれど、
ハッピーエンディングな後味良い藤沢作品と同系列にある作で
その分、軽い印象に終わる。
・「暁のひかり」
今なら声かけ事案発生ネタだが、これぞ初期藤沢テーストという感がある
ダークで哀感溢れる世話ものだ。
いつもながらだが、冒頭、江戸の夜明け描写の見事なこと。
緊迫感溢れる幕切れも良だ。
・「遠方より来る」
足軽を主人公にした明るいタッチの海坂藩もの。
ユーモラスなラストが良し。
・「雪明かり」
表題作にして出来は芳しくないとしか評しようがない。
主人公の行動は武士にしてはあまりに無節操で、
物語としても説得力を欠くのだ。
単に義理の妹萌えやろと。
タイトルに冠された雪明かりの描写が秀逸なだけに残念な作
と言い得よう。
名無しのオプ [sage] 2015/12/01(火) 01:03:41.44:c9HpRc/u
書斎さんよ
ミステリ小説を読んだ報告なら
それがどんな退屈極まりない代物でも気にはしないが
ミステリ小説でもないものの読書感想文まで書いて水増しすんなや
全く他のスレでのネタバレ行為といい
本当に品のない御仁だよな
一体どんな躾をされたらこんな恥知らずな人間になるのか想像もつかない
きっとあんたの両親も相応に品のない連中なんだろうね
もうどうせなら魔神じゃなく疫病神とでも名乗った方がいいんじゃないの?
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/12/05(土) 18:14:47.78:j2wFR3uf
藤沢周平「日暮れ竹河岸」を読む。
派手さは無いのに読みだすと続けて手に取ってしまうことが多い藤沢作品。
本書は生前最後の刊行作品集であり、「江戸おんな絵姿十二景」(タイトルに
あるとおり1年間の各月(12ケ月)に対応した浮世絵から想を得た掌編集)と「広重『名所江戸百景』より」(これもタイトルどおり広重の浮世絵に想を得た
7作)を収録。
ミステリタッチの作も多い作者だが、いずれもこの長さ(特に前者はSS程度のボリューム)では謎解き展開は難しく典型的な世話物中心で構成。
ただし、バッドエンディングや鬱エンドとまでは言えないものの、
哀感、寂寥感溢れる作、ビターな味わいの作等が多いのが、
中期以降のハートウオーミング主な作風を思うと意外であった。
女性主役の作が多い(なぜか書名に冠された作は男の話だが)が、
登場キャラ自体は老若男女に及び、
その巧みな江戸情景描写は正に活字による浮世絵世界という感あり。
破滅型な男の孤独な老いた生き様を静かに描き切った「雪の比丘尼橋」、
(真性ねらーは心して読め!)
お使い少女が出遭ったふとした夏の一時を、アーウィン・ショーの短編を想起
させるような淡い味わいが良な「大はし夕立ち少女」。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/12/06(日) 19:56:08.77:p+ApBL9T
オースティン・フリーマン「証拠は眠る」を読む。
ソーンダイク博士シリーズ長編中の傑作との評ありだが、
通常はワトスン役のジャーヴィスはちらっと姿を見せるだけで、
語り手も別な人物(若手弁護士)というやや毛色が変わった作でもある。
さすがに今読んでみると、売りである薬物に関する蘊蓄がうざく感じられ、
語りのテンポも悪い。ヒ素入りローソクで毒殺ってのは斬新で面白いが、
まあ、これを読者に推理して当ててみろってのは無理筋ですな。
それに短編でさらっと書いた方が際立つトリックかと思う。
原題の「As a Thief in the Night」って?
名無しのオプ [] 2015/12/07(月) 09:42:58.76:nTn8ZxnB
朝比奈あすか「自画像」を読む。
婚約者に向けて中学時代を独白してゆく主人公。
顔面を覆うにきびのために生徒たちに見下されている中学生少女の目から見た教室の光景。
やがて少女は真の悪は幼い男子生徒たちではなく、別にいることを見抜く。
後半の展開は意外性と凄みがあり伏線が回収されてゆくと同時に独特の世界観には圧倒された。
グロテスクなシーンもあるものの全体的に女流作家ならではの清潔な筆致だった。
名無しのオプ [sage] 2015/12/08(火) 16:34:28.65:RAERr2SR
なにここ、糞コテのチラ裏かblog?
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/12/12(土) 18:58:08.55:L8LYizjG
ハリー・カーマイケル「リモート・コントロール」を読む。
ふーん、結構書いてるのにまだ多くのミステリファンにも知られていない
作家ってのはあったもんである。
一見、単なる交通事故や自殺に見えた事件の背後には、男女関係絡みの
隠れた真相があったというお話。
英国舞台の謎解き主体なサスペンスものでありながら、
主人公の一人である新聞記者の言動が諸にハードボイルドのノリなのが
異色に感じたが、解説によるとこの線も書いてた作家とわかり、
納得、納得・・・
バディもの(相棒は保険調査員、むしろ本作は中盤から彼氏が主役級であり、
探偵役)のテーストもある気軽に読めるエンタメとは言い得ようか。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/12/13(日) 16:15:41.82:f3ompkmQ
東野圭吾「白銀ジャック」を読む。
これは近年の文庫書下ろし作品で良く売れたものである。
傾向的には映画公開中の天空のハッチと同様なパニック・サスペンス・ミステリ
とでも称すべきもの。
スキー場に仕掛けられた爆弾をめぐる物語である。
まあ、出て来るキャラもエピもお約束というかありきたり過ぎるが、
その分わかり易いとも言い得る。
いずれ本作も映像化されるんでしょうな。
名無しのオプ [sage] 2015/12/13(日) 16:21:43.33:tC7oMG9B
すでに映像化されてるがね。
なんて反論するかはすぐに想像がつくw
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/12/19(土) 15:07:57.47:GEqUseNg
三島由紀夫「サド侯爵夫人 わが友ヒットラー」を読む。
天才三島の手になる戯曲2編を収録。
各話がコンパクトに纏まった「近代能楽集」も面白いが、
本邦における翻訳劇(赤毛もの)の伝統を踏まえた長めの中編戯曲
はいずれも趣向凝らしたものであり読みごたえ十分であったのだ。
順番に簡単な講評を付しておこう。
「サド侯爵夫人」
サド侯爵本人の直接の舞台登場は無し(最後に戸口までは来るが)
彼の妻、義母、義妹等、周囲の女たち(登場人物は全て女性)から語られる
サドという構成が面白い。
難しい理屈抜きに読んでもサドを取り巻く女たちの攻防がある意味で
スリリングで一気読みさせられるものあり。
余談ながら、出番も少なくあまり活躍もしない家政婦シャルロットは、
時代的にはあのシャルロット・コルデを意識した天才三島のネーミング
(お遊びのひとつ)であろうか?
「わが友ヒットラー」
こちらはヒットラーの極右・極左抹殺前夜を描く男だけの世界。
4人の登場人物たちの思惑、駆け引きがサスペンスフルで、
「サド・・」とは異なる迫力に富んだ作に仕上がっている。
ヒットラーの最後の台詞「そうです、政治は中道を行かなければなりません」
シニカルにして示唆に富みいかにも天才三島らしく思える。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/12/20(日) 21:44:18.02:AVyYg/wR
マイケル・イネス「証拠は語る」を読む。
大学内で発生した隕石による殺人事件、おなじみアプルビイ警部が
偽装殺人と見破り見事に犯人をあげるまでの顛末を著者十八番の
文学談義をたっぷりまじえて描く。
創元の作品集「アプルビイの事件簿」は面白く読んだクチだし、
大乱歩が高評価した「ある詩人への挽歌」、
邦訳時に年間ミステリランキングにベスト作品入りした「霧と雪」は
それなりに面白く読んだのだが、
(「アララテのアプルビイ」は異色作ぐらいの印象しかないが)
本作はSSも顔負け(マイコーはモノホンな大学の先生だしな)
ペダンティズム連発に辟易でしたわ(w
正直言うて、一般の日本人ミステリ読者向きなマイコー未訳作品って
もう無いんじゃね?
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/12/30(水) 20:02:08.76:ZGwQXXrp
オースティン・フリーマン「ポッターマック氏の失策」を読む。
ソーンダイク博士シリーズの短編「歌う白骨」等の途叙ものの嚆矢
として著名な作者の手になる同シリーズ長編途叙ミステリである。
解説によれば倒叙ものは長編では本作と未訳作品がもうひとつあるのみとか。
まあ、内容的にはDNA鑑定が当たり前だのクラッカー(wとなってしまった
現代から見れば、オークションで古代エジプトのミイラを買って来て
死体に偽装とか、もうトンデモ以外の何物でもないが、逆に今読むとこの
辺が面白いとも言い得る。
型を作成しての足跡偽装なども同様だ。
クラシックではあるが、タッチは医学者作家らしい淡々としたものであり、
妙にリアルな面さえある。
楽しい謎解き物語を期待すると外れですな。
まあ、そういう作家ではないが。
名無しのオプ [] 2015/12/30(水) 20:24:30.60:1k+Zbd0b
スレタイも読めなくなったか、書斎 w
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/12/31(木) 17:44:43.47:R0e5Aiuo
岡本綺堂「傑作情話集 女魔術師」を読んだ。
久々に綺堂テーストを堪能させてくれた作品集。
綺堂オタである俺は、収録7作品中、「磯部のやどり」
「子供役者の死」「怪談一夜草紙」「岩井紫妻の死」は
読物選集巷談編(青蛙房)で既読であったが、
表題作と「庄内の仇討」は、
現在ではこの本でなければ読めないレア作品、
しかも面白いのだから、この2作目的だけでも買う価値有りであった。
まじで光文社文庫マンセー!や。
収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「海賊船」
本作は先に末國氏の綺堂探偵小説全集第2巻に収録されているが、
未読であった。「かいぞくせん」でなく「かいぞくぶね」であり、
略奪でなく人攫い目的のクルージング船と意味合いも異なる。
かどわかされた武士の娘たち(姉妹)に仕える若干(当時ならそうでもないか)
17歳のお末ちゃんが賢くも可愛くカッコ良いのだ。
主人姉妹を連れ去られた彼女の必死の追跡行・・
終盤登場する岡っ引幸次はあの三河町の親分を想起させる好漢ながら、
目立った活躍無し。
悲惨な結末を遂げるキャラもいるが、綺堂作品には珍しくハッピーエンド、
この辺は、やや物足らないありきたりな感があるものの、
ただし「完全」とまでいかないのが、(遠い紀州のことまでは不明)、
この辺はいかにも渋い綺堂テーストではある。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2015/12/31(木) 17:45:20.93:R0e5Aiuo
・「磯部のやどり」
前記したとおり、選集で既読済み作品であった。
巷談編中でもかなり面白く思うた作。
文庫刊行時の季節柄に合う赤穂浪士絡みネタ。
・「子供役者の死」
巡業先で土地の顔役のイロ(年上)と良い仲になった子供役者の悲劇の
顛末。これも巷談編中では印象に残る作のひとつであった。
世の怪談の裏話ってこんなものなのかもしれぬ。
しかし、作者狂綺堂も同感のようだが、子供役者はちと気の毒な感あり。
まだ、男女関係の機微などわからぬ歳で当然なのに・・
・「怪談一夜草紙」
老女の語りに惹き込まれる感がある怪談の裏話。
すっきりしない結末が綺堂らしさ溢れるものあり。
・「庄内の仇討」
小品ながら異色の仇討ち小説。
とにかく終盤の展開が面白く、池波正太郎「仇討群像」とか
好きな向きにはお薦めだ。
なぜか過去の選集にはセレクトされていないのはその異色さゆえか、
(怪談、探偵譚、しかも巷談と称するのも微妙な武家もの)
・「岩井紫妻の死」
これは狐による諸な怪奇譚。
しかし、狐を襟巻ならぬ胴服化した茶屋の亭主は無事安泰というのは
面白い。巷談編からの作品セレクトはなかなか良だ。
ただし、本作は初出誌の方に準じた校訂とのこと。
・「女魔術師」
これは面白い。正に今年最後の拾い物と言い得る作であった。
座長でもあるセクシーな女魔術師をめぐる男絡みの情話というか、
むしろ奇譚である。劇作家らしい粋な幕切れも良。
精神的サド傾向ありなヒロインのリベンジの様はグイグイ読ませる
面白さに富む。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/01/09(土) 21:18:17.47:F0Awd1Uf
三島由紀夫「ラディゲの死」を読む。
昨年、自死から45年を迎えた天才作家の短編集。
天才三島はミステリは嫌いだったようだが、この本にはミスオタ向きな作も収録
されている。
表題作は詩人コクトオ目線でラディゲの早逝を描いた非ミステリだが
若い公務員アベックの楽しいはずのデートが思いもしない凄惨な結末を迎える、
ちょいアメリカン・ミステリ掌編風テーストな「日曜日」、
不気味なサスペンス溢れる「復讐」・・この辺は読んでみれ。
非ミステリながら、いかにも三島流のシニカルなユーモア満載な「偉大な姉妹」も
面白いぞ。
名無しのオプ [sage] 2016/01/10(日) 18:01:39.85:jjQ3vCYG
をちょい変更

書斎魔神にどうしても我慢できなくなったり反論したくなった場合は、下記スレにて

書斎魔神・アホアホ語録指導部屋 24
ttp://http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/8993/1418901075/l50
書斎魔神・アホアホ語録格納庫 その33
ttp://anago.5ch.net/test/read.cgi/tubo/1325054903/l50">ttp://anago.2ch.net/test/read.cgi/tubo/1325054903/l50
【12月23日に】書斎魔神ファンクラブ18【サンタクロース】 [転載禁止](c)2ch.net
ttp://hanabi.2ch.net/test/read.cgi/bobby/1420076225/l50

関連スレ
書斎魔神に加担する者達part3
ttp://potato.2ch.net/test/read.cgi/tubo/1351990226/l50
本スレで書斎魔神を叩いている奴ら
ttp://http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/8993/1360142714/l50
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/01/10(日) 18:13:15.70:bhLTbuBq
三島由紀夫「禁色」を読んだ。
三島長編中では、なぜか未読のままであった本作を読了。
全編にみなぎるこの作家独自の美、芸術に対する思想性を読み解くのは
決して容易ではないのだが、LGBTが話題になりがちな昨今、
この昭和20年代に早々と書かれた作を読んでみるのも意味あることかと思う。
メーンストーリーは、醜い風貌の老作家が偶然知り合ったGな美青年を利用し、
女たちへの復讐を意図するもの、と書くと昔の昼ドラとかにありそうとか
言われそうだが、そこは天才三島の手になるものだけあって、
巧みな情景描写も効果を発揮、ストーリー展開のみだけに着目しても、
グイグイと読ませるものがある。
作中でミステリに関して言及された部分がわりと目につくので、
この板の性質上抜粋して紹介しておく。

うちの家族は変わり者ぞろいだから小説(のネタ)にならないかと自慢する一家の主人
への老作家の感、
「残念ながら家長の自慢は当たっていなかった。よくそういう一家があるものである。
お互いにこれっぽちも変わったところが見出せないので、仕方なしに一家そろって
探偵小説を耽読して健康の飢えを癒やしている家族が」
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/01/10(日) 18:13:52.12:bhLTbuBq
主人公(悠一)が知り合うゲイの青年、稔(養父である神田の喫茶店主人と関係あり)
のプロファイルの一文、「彼は酒をおぼえ、探偵小説を耽読し、また煙草を喫むことを
おぼえた」
この夢想がちな稔青年の花火見物しながらの台詞、
「いいな、あんな風に」
と探偵小説の一節を思い出した稔が言った。
「人間をみんな花火に揚げて殺しちゃったら。世界中の邪魔なやつを、一人一人、
花火にして殺しちゃってさ、世界中に悠ちゃんと僕と二人っきり残ったらいいだろうな」
「パノラマ島奇談」も読んどるがな(w
でも、ミステリは現実逃避の手段、過ぎると悪癖ってのが、この大作家の観念なんだろうね。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/01/17(日) 20:32:08.56:OmXSF+Rf
岡本綺堂探偵小説全集第二巻(大正五年〜昭和二年)
うーん、狂綺堂作品と聞けば目がない俺なんだが、第一巻を読んだ時と同様に
「狂綺堂も面白くない作を結構書いてるんだな」というのが正直な感。
特に翻案もの、
舞台が外国なのに日本人読者に抵抗感がないようにという時代的配慮で、
ロザアランドの滝治とか、ロンドンの伊振先生(医師)とか、
何か今読むと違和感ありありですわ(w
また、ストーリー的にも見え見えな展開と最終的に投げっ放しの超自然現象ネタ等、
何でこれを翻案ってものばかり。
収録作品の掉尾を飾る形となる「稲城家の怪事」(後に「青蛙堂鬼談」の一篇「西瓜」
としてリライトされる)も、読み比べると出来の差は歴然。
資料価値と編者末國氏の労は認めるけど・・・という本としか評しようがない。
名無しのオプ [] 2016/01/23(土) 22:04:25.01:xgjc3N73
 
ttp://http://homepage2.nifty.com/e-d-a/scurl/Godzilla-G.html
ttp://http://homepage2.nifty.com/e-d-a/scurl/DarkKnight-J.html
ttp://http://homepage2.nifty.com/e-d-a/scurl/StarTrek.html
 
管理会社、仲介業者が苦情に対応せず困っています
これらの人と知人,家族,親類の方はお知らせ下さい。
 
●浪速建設
南野 東条
ttp://http://www.o-naniwa.com/index.html
社長 岡田常路
ttp://http://www.o-naniwa.com/company/
 
●アパマンショップ八尾支店
加茂正樹 /舟橋大介
ttp://http://homepage2.nifty.com/e-d-a/scurl/ays.html
社長 大村浩次
ttp://http://www.data-max.co.jp/2010/10/01/post_11983.html
 
●クリスタル通り122号室,205号室の入居者
 
hnps203@gmail.com
 
ttp://http://homepage2.nifty.com/e-d-a/scurl/ia-1-3.html
ttp://http://homepage2.nifty.com/e-d-a/scurl/ia-2-1.html
ttp://http://homepage2.nifty.com/e-d-a/scurl/ia-3-1.html
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2016/02/05(金) 19:02:17.18:tV11TuWN
「平家伝説」半村良(角川春樹事務所)

慎ましく平々凡々と生きてきた青年浜田五郎は、運転手として雇われている高村家の出戻り娘敏子と恋に落ちる。
どこか気まぐれで謎めいた敏子は五郎を振り回し、やがて彼の背中にある痣に興味を示す。それは鳥の形をしていて、五郎の行きつけの銭湯の主人によると平家の財宝の手掛かりになるというが……。
騙された……。もうさ、男女のゴタゴタを書きたいならはなからそうしろよ。伝奇ぽくしないでくれ。
いくら平家の蘊蓄傾けようが宝の隠し場所を推理しようが最後にオチをつけようが、やりたかったのはそれだというのは明らかジャマイカ。
そっち先行で伝奇は後付けだろ。萎えるわ〜。
名無しのオプ [sage] 2016/02/23(火) 22:28:42.19:adP0PR/6
ぜひ、ご参加ください。
【自治】ミステリー板強制コテハン導入議論スレ [無断転載禁止]©2ch.net
ttp://peace.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1456186746/
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/03/12(土) 14:33:40.69:Xw/nRTQW
富田常雄「鳴門太平記」を読む。
本作も新たに冒険スパイ小説ランキング入りしたもの。
メーンは根来忍者群を絡めて四国蜂須賀藩の騒動を破天荒に描いた作。
根来忍者に養育された主人公の青年(朱長八郎)とその実父で女敵討ち後に
脱藩した重兵衛は、大衆小説らしい運命の出遭いをするが、
終始、敵・味方の対立関係には立たず。この点では「太平記」のネーミングには「?」。
(この点では、史実からも見立てに成程感ありな池波御大の「真田太平記」
とは異なる)
文庫本上・中・下3分冊(各巻400頁超え)のボリューム感溢れる作だが、
偶然性連発、御都合主義モード全開な展開と相成るが、
まあ、この長さで多数のキャラを回すにはこれしか手はないのであろう。
60年代前半に書かれた作にしては、現代の時代小説かと見まがうほどの、
エロシーン(まず人妻(重兵衛の妻)レイプ、父娘相姦、同性愛、
執拗なストーキング等々)満載。
これは評価できるかできないか(w
ただし、主人公の恋人(と言ってよいかと思う)の商家の娘のみは
いつもレイプ寸前(文字通りの寸止め(w )でレスキューされるという
お約束過ぎる展開はイマイチ、シバレン先生や山田プータロー先生なら
容赦ないだろうになあ、後半の展開も父子二代に渡る復讐鬼誕生とかの
壮絶なものになりそうだが。
普通にハピ、ハピ、ハッピーなエンディングですわ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/04/09(土) 15:09:57.60:ivw0Lw2T
畑中章宏「ごん狐はなぜ撃ち殺されたのか 新美南吉の小さな世界」を読む。
専攻でも専門家でもないが、筆者は意外に民俗学の本を読むのは好きなんで
ある。柳田国男、宮本常一とか、今でも紐解くことあり。
更には、タイトルに冠された「ごん狐」は動物ねたフィクションとしては、
海外作品「フランダースの犬」(先日は最新の研究書を紹介済)と並ぶ
お気に入り。
童話中では、浜田廣介「泣いた赤鬼」(「りゅうのめの涙」も良だが)、
小川未明「赤い蝋燭と人魚」と並ぶ、昔から大好き作品の一角を占めるもの
である。当然、本書には手が伸びるという次第。
小学校低学年用教科書の定番、それに止まらず絵本等も多数出版され、
愛読され続ける童話「ごん狐」を初めとして、過去には宮沢賢治作品ほどには
学問的研究対象とされて来なかった(この点は本書中で著者が言及)南吉作品群を民俗学の見地から作品背景、テーマ等を簡潔かつ平易に述べた書と言い得る。
ただし、タイトルで「ごん狐」オンリーの研究書を期待すると外される、
第1章「狐のフォークロア」と締めとなる第5章「最も弱いもの」で言及
されるが、(霊獣とも見られている一方、狐=害獣という社会認識もあったゆえ、ごんは射殺されてしまったというのが結論か)、分析対象はかなりマイナーなものを含めて南吉作品全般に及ぶ。
(当然、「ごん狐」と双璧を成す南吉の代表作にして人気作の「手袋を買いに」もあり、同じ狐ねたで対照的とも言えるハッピーエンディングだが、これも良作)
ゆえに、ごん狐フリーク(?)には、2000年刊行とかなり前になるが、
「『ごんぎつね』をめぐる謎」(教育出版)という書の方が、より興味深く
読めるやもしれぬ。
(本作に関しても過去に論考あり、読みましたスレ過去ログを参照されたし)
名無しのオプ [sage] 2016/04/09(土) 23:00:26.35:6P9+twfu
書斎さん!可愛い弟子のでつまつくんのスレに何故来ないんですか?
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/04/16(土) 21:05:51.88:ff1JnIEE
青山文平「つまをめとらば」を読む。
記念すべき直木賞受賞作品、コンパクトに纏まった6作を収録した
武家もの時代小説集である。5作は男性主人公(家格は異なるものの、いずれも武士)ながら、テーマは全て「なおん(女)」ちゅーか、「女という存在」である。
(ねらーには苦手なテーマかもしれぬ(w )
しかし、固い話ではなく、難しい話でもない。
美化もず、貶めもせず、あるがままに女というものが本質的に持つ性(さが)
を描いている感あり。
テースト的には、藤沢周平ファンには推せるものあり。
名無しのオプ [sage] 2016/04/16(土) 21:15:00.79:zJMijKXx
黒川博行「悪果」
登場人物が全員腐った悪人で魅力を感じなかった
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/04/24(日) 21:49:02.32:oEUG8xZN
日影丈吉「真赤な子犬」を読む。
うーん、バカミスの走りの評、作者曰くユーモア・ミステリとの言に惹かれて手
にしてみたが、今読むと、さほど面白いものには思えず。
カー(作中でも言及されている)まがいの雪中の足跡と死体の謎も
玉乗り的アクロバティックとは・・・
2つの殺人に関するフーダニットはたいしたことないです。
これもカーまがいなスラプスティックな展開に惑わされなければ簡単に犯人
は指摘できるでしょう。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/04/30(土) 01:09:45.20:6l3FhLsZ
日影丈吉「応家の人々」を読む。
謎解きミステリとしての評価はともかく、日影作品長編では、まず本作を一に
挙げる者多し。
日本統治下の台湾を舞台にした時代と場所両面からエキゾチックな
ムード満点な作である。
意外や日活アクション映画かお冒頭から、舞台は一転、往年の台湾に
ここでは、またも意外やロスマク風な淡々としたハードボイルドタッチへ
(この辺が文学的と評された因やもしれぬ)。
最後は台湾の秘密結社とそのラスボス登場と、
またしてもB級アクション映画の世界へ(w
タイトルに冠された応家出身の妖艶なヒロインは、探偵役の主人公(公安担当の軍人)とは殆ど絡まず、わりとあっさりと退場(あぼーんされてまう)。
最初はガヤの一人かと思うた氷屋店員の美少女(13〜14歳設定)が要所
で登場、キーマンというか事件解決に至る「キー」さえ提供する。
他にも応家の幼女(2〜3歳、長男の娘)を気にかけるシーンがあったりと、
初読時にはわからなかったが、日影先生は今流行(?)、2ちゃんに多い
「あれ」傾向あったんではとか思うてしまう(w
読後感 ◆VkkhTVc0Ug [sage] 2016/05/06(金) 19:04:08.86:OR0Zb7CO
「秀吉 秘峰の陰謀―佐々成政の飛騨雪中行」長尾誠夫(祥伝社)

天正十二年、豊臣秀吉と敵対する越中国主佐々成政は徳川家康に援軍を求めようとしていた。成政自ら極寒の中峻険な飛騨山脈を越え浜松へと向かうのである。
一行にはかつて山中で命を狙われていたところを成政に助けられた男武松も加わっていた。
決死の覚悟で挑む男たちに雪山は容赦ない牙を剥く。更に謎の忍者たちの襲撃も重なり一行は一人また一人と数を減らしていくのだった。
彼らは果たして山を越えることが出来るのか……。

某スレからのセレクト。末森城の戦いから始まるのは戦国小説としても珍しく(花慶くらい?)、文章もキビキビしていて情感もあり最初は違うジャンルとして楽しめた。
しかしこれが如何にしてミステリーになるのかが判らず、犯人はどう設定されるのか注目していたところ、判らないままで「もぐら探し?」と思っていたら終盤まさかの!
この展開は読めなかった。論理のアクロバットに近い感じかも知れない。
ただ、ピンとこなかった。フェアじゃないのはさておくとしてもミステリーとしての演出が薄いからモードが切り替わってて時代小説読みになってしまう。もう少しぽさを出して欲しかったなあと。
やりすぎると自然に驚けないから難しいんだけどね。

あと、平気で史実と違うこと書くのはどうかと思う。名のある武将を数十年早く死なせたり。過程ならともかく結果を変えちゃいかんよ。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/05/28(土) 21:48:30.80:k2j9BGpl
島田荘司「北の夕鶴2/3の殺人」を読む。
雪国を舞台に往年のシマソウらしいアクロバティックなトンデモトリックが
炸裂する作だが、この点だけで勝負しなかったのが惜しまれる作でもある。
相当に頁数を費やして描かれる吉敷刑事の別れた妻に対するウエット過ぎる
愛情譚が、とにかくうざ過ぎる。
釧路の原生林を開発して建てられた三ツ矢マンション(三つの風車型)で起きた
鎧武者の亡霊や夜泣き石伝説が絡んだ不可能犯罪という舞台設定も、
相当に魅力的なだけに残念である。
名無しのオプ [] 2016/05/30(月) 15:38:33.51:hwDU1FG7
ドラゴンフライ 河合莞爾 角川文庫

ストーリーの構成としては完成度が高いが、入れ替わった人物の設定に
一か所ミスがあったのが残念。ほんの一行、ワンフレーズなので見逃し
がちだけど、読者にとっては消化不良になるかも。
あとポケベルが出回り始めたのは1968年ではなく、1986年。
1968年の発明なら、画期的文明の利器になってしまう。

これは、作家のミスか誤植なのかは解らないけど、ちゃんとチェック
すべきところ。
名無しのオプ [] 2016/06/01(水) 10:18:40.44:gA21OWYO
「蛍の森」 新潮文庫 石井光太

純粋なミステリーというよりは、ミステリー仕立ての社会派小説かな。
元々ノンフィクションライターの筆者が地道に調べたベースがあるから
とても読み応えがあった。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/06/11(土) 21:25:03.22:lEuUSffz
伊東潤「巨鯨の海」を読む。
古式捕鯨ネタの冒険小説扱いでこの板で紹介しておくが、
それに止まるものではない。この点は、各人、心して読め!!!
「この時代小説がすごい!2014年版」の単行本部門第1位、
第1回高校生直木賞というのまで受賞した作。
うーん、JK(選考委員はこちらが多い)、DKがこれを推すかなと・・・
今では少数派であろう本好き高校生のセレクトには正直感心した。
鯨の血の匂いが漂って来るようなビビッドさ、
本好きには、甘口な現代小説やテレビドラマは、やはり物足りない
ものがあるのであろう。
収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「旅刃刺の仁吉」
連作集冒頭に収められた作としては古式捕鯨に関するターム多数で、
読み難い作なのだが、後の収録作を読むための予備知識として、
仕方あるまいか。旅刃刺のカッコ良さが目立つ、何か股旅ものの如き締め。
正直言うて、面白い作ではなかった。
・「恨み鯨」
龍涎香の盗人は誰か?、この板にふさわしいエピではあるが朝鮮人参の
くだりを見れば、ミステリ板住人であれば真相は見え見えかと。
エルのYの悲劇パターンとかは、穿った見方に過ぎようが。
・「物言わぬ海」
これって、伊東版「スタンド・バイ・ミー」?とか思わせる作。
(虚弱な少年が、後には一番の成功者となる展開とか)
スリリングな少年たちの漂流もののテーストもあって、かなり面白い。
意外というか、ラストはヘビー。
お約束な展開でなく、この連作が面白くなって来た感ありだった。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/06/11(土) 21:26:06.12:lEuUSffz
・「比丘尼殺し」
これはこの板にドンピシャなサイコ・ミステリ。
オチもその線だな。(やはり晋吉が・・・)
・「訣別の時」
主人公の少年(太蔵)が、捕鯨の根拠地である故郷(太地)を去る
旅立ちの物語(ある意味でありきたりと言い得る)かと思いきや、
後半で意外な方向に話は展開してゆく・・・これも「運命」というか。
収録作品中の一には、俺はこれを推すな。
・「弥惣平の鐘」
時代は既に維新後、衰退傾向な大地の捕鯨、
親子鯨を深追いしてしまった船団の悲劇。
これも凄まじいまでの漂流譚と相成る。
タイトルに即した淡々としたラストも良しだ。。

本作が直木賞候補になりながら、受賞にまでは至らなかったのは、
遠い昔に、津本陽「深重の海」という鯨捕りを描いた同傾向の受賞作が存する
こともあったのでは?
方言多用でリーダビリティ難な深重と比較して、その辺に配慮しながらも
現代作品らしく、適切に標準語の語りを見せる本作は、読み易さは上なんだが。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/06/12(日) 20:34:37.12:IvEvilB8
木下昌輝「宇喜多の捨て嫁」を読む。
数多の書き手を誕生させたオール讀物新人賞受賞作にして、
第2回高校生直木賞受賞作である。
「サラバ!」(受賞作)を排して本作を推したJK等は、
まじで凄い。
宇喜多直家という人物そのものが、さほど著名ではない戦国大名だし、
前年度受賞作の巨鯨同様に、
今回は乱世の梟雄宇喜多直家の業病による血膿の匂いがラストまで漂って来るかの如き作なのである。
本作とて、小説らしい創り過ぎはあるとしても、これ読んでまうと、
NHK大河なんかはバカらしくて見られない状態になってしまうのではないかな。
連作ゆえ、収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「宇喜多の捨て嫁」
実はダイレクトにタイトルに相応する内容なのは冒頭に収録された本作のみ、
宿敵後藤家に嫁入り(政略結婚)する直家の四女於葉の波瀾の半生が一気呵成
に描かれ、そこから後に続く物語となるという面白い構成。
・「夢想の抜刀術」
前収録作から、一転、主人公は八郎少年(誰あろう、この人物こそ後の・・)
一人称(「俺」)の語りとしたのが、凝っていて面白い。
基本、武家ものでありながら、タイトルからも伺われるとおり、往年のシバレンが書きそうな剣豪譚の趣がある一編に仕上がっている。
書斎魔神 ◆BVdqSIZJw0RM [] 2016/06/12(日) 20:35:43.64:IvEvilB8
・「貝あわせ」
このタイトルからエロを想像すると外される(w
当時存した室内ゲームの事なんである。
本作は、直家の主君である浦上宗景をメーンにしたピカレスク、
直家はむしろ妻を自害に追い込まれた被害者的ポジションにある。
多角的視点の面白さ、ここに有りという感あり。
・「ぐひんの鼻」
ゴルゴ13かお(w な終盤の展開が創り過ぎなからも楽しめる一編。
・「松之丞の一太刀」
冒頭の残酷過ぎる犬追物のシーンに名作「カムイ伝」のそれを想起して
しまうのは俺だけではあるまい。
戦国の世とはいえ、とにかく、愛妻家な松之丞憐れな作だが、
「アッー!」な宇喜多家の美形刺客(剛介)がクローズアップされる。
(ただし、嫌な奴的にだが)
・「五逆の鼓」
最後に来て、戦国武将には最も縁遠いような、
この鼓名人なキャラがメーンとは・・・
ラストで「宇喜多の・・・」とリンクしてエンドと相成るわけだが、
このキャラ(の視点)を使ってこそ、客観的、かつ、印象的に物語の最後を
描けたという感もある。
書斎魔神 ◆Faci8xkPLw [] 2016/06/25(土) 09:25:46.97:SDVvuvaE
大河内常平「九十九本の妖刀」を読む。
珍本シリーズの1冊と割り切って読めば、案外と、
各収録作品のトンデモ展開を楽しめるのではなかろうか。
大好評につき、久々、収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「九十九本の妖刀」
この作者の代表作であり、映画化もされたらしい。
タイトルから時代小説かと思えば、何と先の大戦後のお話である
まあ、刀の仕上げに女を文字どおり「貫く」とか、猟奇の極みですな。
謎解きの要素は薄く、クライマックスは警官隊と猟奇刀鍛冶集団との激戦、
大アクションへと雪崩込んでゆく。岩手県人がこれ読んで怒らないことを祈る(w
・「安房国住広正」
これは、刀を弓代りにする密室トリックが炸裂する小品だが、
むしろ名刀にまつわる動機面の方に重点が置かれたもの。
普通に面白い。
・「餓鬼の館」
これは戦時中の話であり、主人公は海軍旅団長である。
エログロ展開でゆき、クライマックスは陣屋の地下に巣食う猟奇集団との軍隊
まで動員した大アクションシーンへ・・・
「アビラウンケン!」の呪文には、同じ珍本シリーズの「醗酵人間」以来、
ワロタ。
書斎魔神 ◆Faci8xkPLw [] 2016/06/25(土) 09:26:42.15:SDVvuvaE
・「妖刀記」
「餓鬼の館」の海軍旅団長(少佐)は絵に描いたような良識人で
あったが、本作に登場する野々艦長は刀剣キティそのもの
(とても、ののタンとか呼び難いものあり)、
「九十九本の・・」と相通じる猟奇ネタで一気に読ませはする。
・「刀匠」
角川文庫「宝石傑作選集2 地獄に落ちろ!」に収録とあり。
このシリーズ読んでいたのだが、なぜか本作に記憶無し。
意外な展開と真犯人ネタで読ませる作ではある。
・「刀匠忠俊の死」
これはNG作品。燭台についた指紋に無頓着とか(w
・「不吉な刀」
同じ指紋(今度は電灯スイッチ)ネタ使い回し、同様にNGです。
・「死斑の剣」
九十九本・・・と似たネタの作だが、昭和30年代の夜の都会の情景が
ビビッド活写されており、サスペンスフルだ。
そこは良(そこだけかもしれぬが)
・「妖刀流転」
タイトルからは陰惨な展開を想起するが、何と警察が妖刀の行方を追う
という異色展開。一応、意外な犯人設定もあって、きちんと合理的な解決が
なされる。わりと紙数がある短編であり、この作家はSSの如き短いものでは、
持ち味を発揮し難い人のようである。
・「なまずの肌」
これも意外な犯人設定でわりと短く纏められている。
書斎魔神 ◆Faci8xkPLw [] 2016/07/02(土) 15:12:03.29:Xu1+6gmF
笹沢左保「セブン殺人事件」を読む。
単行本刊行時に「セブンってウルトラセブン?、
笹沢左保がそんなの書くわけないか(w 」とくだらない感想を抱き、
そのままパラパラと見てスルーしてしまった。
今回、堂々の文庫再刊である。
いわゆるバディもの。ありがちな所轄と本庁の凸凹コンビが探偵役だが、
淀橋署の宮本部長刑事、本庁の佐々木警部補共に対照的な個性派キャラであり、
映像化されなかったのが不思議である。
(武蔵&小次郎を意識したお遊びなのは作中でも明示されている)
浮ついたお笑いに走りがちな近年のバディものと比較すると、
個々の出来栄えはともかくとして、
それなりに謎解きミステリの趣向があり、落ち着いた語り口は良ではある。
収録作品全話講評逝ってみようか!!!
・「日本刀殺人事件」
これは普通に読んでれば、普通に真相が見えて来る話ではある。
第1話ながら、宮本と佐々木の出会いエピとかではなく、
既に既知のコンビという設定。本作は宮本の完勝。
・「日曜日殺人事件」
喫茶店での錯覚を利用したトリック(とまで言えるかどうかも疑問)は、
意外にリアルなのかもしれぬが、やはりミステリとしては疑問。
今回は、過去の経緯もあって宮本が迷走、佐々木の完勝。
・「美容師殺人事件」
剛速球で殺せネタとでも言い得ようか。
これはかなり面白いシュチュエーションであった。
普通に宮本の完勝。
書斎魔神 ◆Faci8xkPLw [] 2016/07/02(土) 15:12:47.64:Xu1+6gmF
・「結婚式殺人事件」
人間消失ネタかと期待したのだが・・・
父子関係の人情話に堕してしまうのががっかり。
いたいけな幼女まで惨殺されてしまうのが、いかにも70年代
テーストではある。
・「山百合殺人事件」
まあ、当時まではこんなJKネタはショッカー足り得たんでしょうな。
今ならありがち、先を読んでいたとも言えるが。
・「用心棒殺人事件」
殺人トリック(ぶら下がりロープ)は、かなりアクロバティックで面白い。
ドラマ的には奇妙な悲劇とでも言うか。
・「放火魔殺人事件」
掉尾を飾る作だが、完全鬱エンド。
不細工ヒッキー気味男(仕事はしている)と病弱な女子のふとした接点が・・
というお話。
書斎魔神 ◆Faci8xkPLw [] 2016/07/09(土) 16:24:01.10:8pQ4PGNd
「飛鳥高探偵小説選T」を読む。
早速、大好評な収録作品全話講評逝ってみようか!!!
『創作篇』
・「犯罪の場」
うーん、東大出の工学博士にして、プロのエンジニアが書いただけあって、
この機械的トリック(振子ネタ)、正直言うて凝り過ぎでわかり難い。
・「孤独」
金庫の比重を利用したトリックはそれなりに面白いが、
まあ、それだけの作とも言い得る。
・「白馬の怪」
この作者には異色と言えるコテコテな怪奇探偵小説。
首の無い馬のトリックは笑うしかないものだし、
殺人トリック(というか工作)は、あまりに無理な展開である。
・「火の山」
人間消失トリック、これに探偵イコール犯人技。
火の山こと浅間山の高原を背景にしたのは良いのだが、
やや展開がたるいのが難。
・「雲と屍」
「火の山」の人間消失トリックを一捻り、密室殺人もあるがこれは
機械的で御都合主義に過ぎる感あり。
書斎魔神 ◆Faci8xkPLw [] 2016/07/09(土) 16:24:32.44:8pQ4PGNd
・「兄弟」
果たして真相は?という興を残す小品だが、トリックは名探偵コナンレベル
と言えばその出来はわかろう。
・「放射能魔」
SFミステリ(放射能ピストル(w )かと思いきや、そこはエンジニアの手になるものらしく、探知困難な偶然の放射能漏れという真相。
・「疑惑の夜」
作者の建築に関する蘊蓄を使った倒叙スタイルのサスペンスに始まり、
ハードボイルドまがいの行動力を有するヒロインの登場、
人間消失、密室殺人をまじえ、カーアクション、銃撃戦まであって
最後のドンデン返しへ。盛り沢山な内容ながら、トリックも他愛も無い
ものだし、いろいろ詰め込み過ぎて、どれも今ひとつ感大な作であった。
乱歩賞候補になるものの、「猫は・・・・・」に敗れたのは当然かと。
久々の再刊というも納得である。
『評論・随筆篇』
格別な感は無し。
この人、大乱歩のリアルお隣さんだったんだと思うたぐらいかな。
理科系高学歴で実務における専門分野の実績もある人ゆえ、
ミステリ作家専業にならなかったのは正解だったのではないかな。
本人もこの辺が良くわかっているような。
名無しのオプ [sage] 2016/07/10(日) 23:07:14.73:WnsCBnvd
テンプレ中の
ttp://http://www.monazilla.org/
は現在「2ちゃんねる浪人」の案内につながるように変わってしまっています。
次からはここは除外した方が良いかと思われます。
書斎魔神 ◆Faci8xkPLw [] 2016/07/16(土) 19:12:52.17:swhHJNzQ
「大河内常平探偵小説選T」を読む。
前記した「九十九本の妖刀」が意外に楽しめたゆえ、
この人の刀剣ネタ以外のミステリを読んでみたくなった。
収録作品全話講評逝ってみょうか!!!
『創作篇』
・「夜光る顔」
連作短編集。収録作品全話講評逝ってみようか!!!
(地底の墓標)
こ第1作を読む限りでは、起承転結を外したしょーもないシリーズ
なのではないかと懸念したが、次作以降は意外に謎解きミステリしてゆく。
(姿なき犯罪)
電気鞭ネタとは意外に面白い。作者が好きなのであろう競馬ネタもリアル。
(脱獄囚と宝石)
冒頭の御都合主義展開が惜しいが、宝石の隠し場所(人体)がある意味
トンデモで面白い。
(消えた死体)
タイトルから期待させるほどの不可能興味は無いものの、
死体の偽装から真の死体へというトリック、ちゅーか、展開には面白さがある。
(海底の金塊)
この作者十八番の刀剣ネタまで投入したコテコテの怪奇探偵小説。
金塊の隠し場所のトリックもスケール感あり。
書斎魔神 ◆Faci8xkPLw [] 2016/07/16(土) 19:14:11.21:swhHJNzQ
(よごれた天使)
前作とは一転、戦後の基地の町立川を舞台にした通俗社会派ミステリ風作品、
キャリアから思えば、作者が詳しいであろう進駐軍ネタ、
間抜けなゴルゴ13風味の遠隔射撃トリックもアホ過ぎて逆に楽しめるもの
あり。
・「25時の妖精」
何気に江戸川乱歩通俗長編風の作だが、人体改造のエログロさのみ目立ち、
ミステリとしての興は薄味。天才のはずなのに妖怪博士の最後が間抜け
過ぎる、水圧でドカーン!とか・・・専攻は異なっても科学者でしょうが(w
・「蛙夫人」
タイトルから何となく、ユーモラスな内容を期待すると大きく外される。
岡本綺堂こと狂綺堂が書く探偵譚のようなテーストの小品であった。
セルフタイマーねたのトリック(というか機械的なものではなく、
殺人に至る小道具に過ぎぬ扱いだが)あり、事件の舞台となる田園地帯の描写も
雰囲気たっぷりに描かれており、意外に面白く読める作であった。
どう見ても本格派ではないこの作者、刀剣もの以外ではこの方向性が
合っていたのではないかな?
・「ムー大陸の笛」
代表作と言われる作だが、
呪いの笛の正体は、仮死状態にある毒蛇でした・・・とは(w
無関係者なのに惨死した音楽家が気の毒過ぎ。
『評論・随筆篇』
格別な感無し。
作者がGHQで歩哨のバイトをしてるところに大乱歩がふらっと訪ねて
来るエピが面白かったぐらいか。
名無しのオプ [sage] 2017/03/18(土) 02:19:35.88:55lawLrM
「殺戮にいたる病」
グロいと謳われてて、どれ程かと躊躇いながら読んでたけど、大した事が無くて拍子抜けした。
名無しのオプ [sage] 2017/06/24(土) 01:40:22.59:Oa6DhvN4
「不連続殺人事件」坂口安吾
登場人物が多すぎて最初は読むのに時間がかかるが
登場人物は個性派ぞろいだし次々と死んでいくのでそういった事は気にならずに読み進む事ができる

話は割と淡々としていて盛り上がりに欠けるのだが、登場人物が変人ばかりであり
キャラの個性で読ませてくれる

ミステリーとしてはオーソドックスな作りで当時としては斬新であったのかもしれないが今読むと真相を看破しやすい
だが伏線の張り方は上手く探偵である巨勢博士の語る真相には唸らされるものがあった
名無しのオプ [sage] 2017/12/26(火) 21:25:10.01:moHAbFHG
☆ 私たち日本人の、日本国憲法を改正しましょう。現在、
衆議員と参議院の両院で、改憲議員が3分の2を超えております。
『憲法改正国民投票法』、でググってみてください。国会の発議は
すでに可能です。平和は勝ち取るものです。お願い致します。☆☆

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